振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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最初、この作品の名前はHAMMER×HAMMERにしようとしましたが
HUNTER×HUNTERのことを全く知らないでのやめました




第13話~お詫びにタンジアビール~

 

 

 扉を開ける。

 

「ねぇ……今日はどこへいっt」

 

 扉を閉めた。

 

 ……おかしい。なんでアイツが俺の家にいる。別に鍵をかけていたわけではないから、誰でも俺の家に入ることはできる。

 でもおかしい。

 

 自分の家に帰ってきたら何故か人が居たとか、普通に怖い。ホントなにやってんの!?

 

 少しばかり混乱した頭を必死で整理していると、家の内側から扉が開いた。

 

「なんで閉めるの!」

 

 なんで君が此処にいるの!

 

 そんな相棒の様子は明らかに『私、怒ってます!』みたいな感じだった。

 怒ると直ぐに膨らむ頬がちょっと可愛らしい。

 

 つまり、アレだ。どうしてかはわからないけれど、どうやらバレたらしい。

 

「え、えと……どうかしましたか?」

「どうかしたよ! 私を置いてクエスト行かないって約束したじゃん!」

 

 あかん。本当に怒ってる。全面的に俺が悪いのだし、これは謝ることしかできない。

 今の相棒は初めてイャンクックを見たときよりよっぽど怖い。こやし玉をぶつけて逃げたい気分だ。そんなことしたら殺されそうだけど。

 

「いや……その……本当にすみませんでした」

「……何のクエスト行ってたの?」

 

 極々自然な流れで正座。おかしいことなんて何もない。

 外の地面は予想以上に冷たかった。

 

「……お金が欲しかったので遺跡平原の採取ツアーに行っていました」

 

 顔を下に向けたまま彼女の尋問を受ける。

 お願いします。弁護士呼んでください。

 

「ふ~ん……一人で?」

 

 とてもじゃないが嘘をつけるような状況ではない。

 でも、なんだろう。此処で彼女と二人で行ってきました。なんて言ったら大変なことになりそうだ。別に後ろめたいことは何もなかったけれど、そもそもクエストへ行く時は彼女に声をかけると約束をしたのだ。

 そして俺はその約束を全力で破った。

 ヤバイですねー。超ヤバイですねー。言い逃れはできそうにない。

 

「どうなの?」

「え、えっとですねぇ……一人ではなかったんじゃないかなぁって思ったりします」

 

 はい、言っちゃいました。

 もう、どうとでもしてください。でも、できれば優しくしてくれた方が俺は嬉しかったりします。

 

「……そっか」

 

 顔は地面に向けたまま。相棒の表情は見えない。それでも聞こえてきた声は、何処か憂いのような感情を読み取ることができた。

 罪悪感がヤバい。

 

 正直なところ、別にこの相棒と一緒にクエストへ行っても問題なかった。コイツならいくら採取ツアーでも一緒に来てくれそうな気がするし。

 それでも一緒に行かなかったのは、単に俺が恥ずかしかったと言うだけ。だってあのクエストへ行った目的が、この相棒から借りたお金を返すと言うものだったんだ。そんなクエストへ誘うのは気が引けた。

 

 まぁ、そのせいでもっと大変なことになったわけなんだけどさ。

 

 暫くの間沈黙が続くと、今まで立っていた相棒が俺の前に座るのが視界の端に映った。

 な、何が始まるんですか?

 

「……ねぇ」

「ど、どうしました?」

 

 今までも下を向いていたけれど、更に下へ視線を落とす。

 

 

「……やっぱり、私がいると邪魔だったの?」

 

 

 聞こえてきたのはそんな言葉だった。

 どんな言葉で罵倒されるのかと思った。けれども、相棒の言葉にはそんな意味が込められているようには聞こえない。

 

 下を向いていた顔を上げる。

 そして見えてきたのは不安そうな表情だった。

 

「いや、そんなこと思ってないけど」

 

 そりゃあ、この相棒はまだまだ強くないし、もっと頑張って欲しいと思うこともある。

 けれども、一緒についてきてくれて有難いと思っている。最初は足手まといだって感じた。でも、今はもうそんなことは感じない。

 

 それは嘘偽りない事実。まぁ、恥ずかしいから口に出せるわけがないんだけどさ。

 

「本当?」

「うん、本当だよ」

 

 ……えっ、なに君、そんなこと思っていたんですか?

 

 この相棒は操虫棍使いだ。明らかに調整ミスの強武器。俺のように入っただけで部屋に居た全員が退室するような武器じゃない。そんな武器を使う彼女を邪魔だと思えるほど、俺は上手くない。

 

 うん? じゃあもしこの相棒が操虫棍以外の武器……例えば太刀やランスだった時、俺は彼女と一緒にクエストへ行こうとはしなかったのか?

 

 ――いや、そうじゃない気がする……良くわからないけれど、例え彼女が違う武器でも俺は断らなかっただろう。

 それだけははっきりとわかった。

 

「……じゃあ、どうして私を置いて違う人と一緒に行ったの?」

 

 これ応えないとダメ? 滅茶苦茶恥ずかしいんですが。

 まぁ……ダメか。

 

 ……しゃーない。正直に応えよう。

 

 

「……俺さ、君からお金を貸してもらったじゃん? だから今日はそのお金を稼ぎに行っていたんだよ。でもそのお金を稼いでいる姿を見られるのはですね、その……恥ずかしいと言うか……」

 

 要はドヤ顔でお金を返して、格好つけたかっただけです!

 格好つけて何が悪い! 俺だってハンターなんだ、カッコイイ方が良いに決まっている。

 

「……じゃあどうして二人で行ったの?」

「ああ、それは俺が誘ったわけじゃなくて、ついてきただけ。別に断る理由もなかったし」

 

 たぶん、彼女は俺がこの世界の人間じゃないって薄々感じていたんだろう。どうしてそう感じたのかはわからないけれど、たぶんそう言うことだと思う。

 

 彼女はいきなりこの世界へ飛ばされたとき、何を感じたんだろうな。

 

「そうなんだ」

 

 そうなんです。

 だから別に、君を邪魔だと思って置いていったわけじゃない。それはわかって欲しいかな。

 

 

 そしてまたお互い、無言に。

 どうなんでしょう……俺は許されたのだろうか? もしかしたらもう一緒に来てはくれないかもしれない。まぁ、でもそれも仕様が無いことなのかな。

 ひねくれているこの性格が悪い。そんな性格のせいで損ばかりの人生だ。俺もこの相棒みたく、もう少し素直になれれば良いのにな。

 

 

「……ご飯」

 

「うん?」

 

「それとお酒っ!!」

 

 ああ、そう言うことですか。

 

 それくらいで許してもらえるのなら、いくらでも払おう。此処まで一緒に狩りをしてきたんだ。そんな彼女と別れてしまうのはやっぱり切ない。

 

「それで許してもらえるのなら、いくらでも……」

「許す! まだちょっとモヤモヤするけど、私は心が広いから許してあげる!」

 

 ……うん、ありがとう。

 

 相棒に手を引かれ集会所へ。

 どうせまた酔いつぶれて俺が運ぶことになるんだろう。まぁ、良いさ。これからも長い付き合いになる。それくらいの仕事は喜んで引き受けよう。

 

 至らないところもあるかと思いますが、改めてよろしくお願いします。

 そんな小っ恥ずかしいことを心の中でそっと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 いつかのように酔い潰れた相棒を家に運んでから、自分の家に帰りベッドへ倒れ込んだ。疲れたんです。

 相棒のお酒を飲むペースが明らかに早かったけれど、無理です。止められませんでした。酔った相棒は泣いたり笑ったり怒ったりと、見ていて非常に愉快。

 ただ、アレだ。酔っ払いって面倒くさいね。

 

 クエストへ行く時は絶対に私に声をかけること。と何回も約束させられた。置いていかれたのがよっぽど堪えたらしい。

 本当にすみませんでした。

 

 それでも、最後の方はいつもの調子に戻って……はないか。酔っ払っていただけか。ま、まぁ、とりあえず機嫌は治ってくれたと思う。……たぶん。

 

 

 そしてベッドに横になると、眠気が一気に襲ってきた。

 俺と同じように違う世界から来たあの彼女。色々と考えなければいけないことがある。けれども、適度に入ったアルコールのせいで考えはまとまらない。

 様々な想いが浮かんでは、消えた。

 

 

「これからどうなるんかねぇ……」

 

 

 独り言が溢れる。

 いくら考えたところで、そんな独り言の答えは出ない。たぶん、あの彼女だってどうすれば良いのかわからないのだろう。

 どうすれば良いのかなんてわからない。この世界に攻略本は存在しないのだから。あるのは1000時間以上プレイして頭と身体に染み込ませただけの知識。それは役に立たないことも多く、結局一番知りたいことはわからない。

 

 考えても仕方無いとは思う。でも考えずにはいられない。

 

 謎解きは苦手だ。

 自分はそんな性格だってわかっている。できることなんて、我武者羅にハンマーを振り回すことくらい。それくらいの方が俺には合っていると思うんだ。

 

 むぅ、ダメだ。自分でも何を言っているのかわからない。

 

 

「寝ます!」

 

 

 防具が完成するまで時間はまだかかる。

 だから今は前に進むことはできそうにないけれど、進む準備くらいはできるだろう。できる限りのことをやっていけば、また何かが見えてくるはず。

 

 そう思うのです。

 

 






はい、進みませんでした(´・ω・`)サーセン


と、言うことで第13話でした
武器防具を作るのに時間がかかると言う設定にしたことを激しく後悔しています
一瞬でできるようにすれば良かった……

次話ではお願いですからケチャワチャと戦って欲しいところ
頼んだぞ主人公
では、次話でお会いしましょう

感想・質問なんでもお待ちしております


~語句説明~

飛ばしても良いのよ

~エリアホスト~
オンラインにおいて同期の基準となるプレイヤーのことです
“ホスト”とか“エリホス”なんて言われます
モンハンでオンラインをする時、ネットを経由するのでどうしてもズレが生じます
ですのでモンスターへ与えるダメージ計算などは全てこのエリアホストが基準となります
簡単に言いますと、いくら自分の画面でモンスターへ攻撃していようが、エリアホストの画面で攻撃が当たっていなかった場合なんのダメージにもなりません
そうなる辛いのがハンマーなどの鈍器武器です
鈍器武器はだいたいスタンを目指して、モンスターのあの小さな頭をひたすら殴るわけですが、このエリアホストになっていない場合、いくらモンスターの頭を叩いたところでスタンしないことがあります
まぁ、逆に頭を叩いてないのにスタンすることもありますが……
鈍器以外の武器は別にエリアホストを取らなくてもそれほど問題はなきかと
ハメなど、微妙な動作が影響する場合は別ですが
また、エリアホストですが、そのエリアへ一番最初に入ったハンターがエリアホストとなります
ですので、もしオンラインでパーティーを組んだとき、仲間にハンマーなどがいた場合エリアホストを譲ってあげたりすると喜ばれます

長くなったので、今回は一つで
では、また

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