クセになってんだ、溜めながら歩くの
「君の操虫棍ってさ、もう虫に餌あげちゃった?」
「ううん、まだ何もあげてないよ。これってどの餌をあげれば良いの?」
クエストの帰り道。
今日はそれほど眠くはなかったから、いつものように反省会でも開こうかと思ったけれど、特に反省することもないので雑談。その雑談ついでに、操虫棍のことを相棒に尋ねた。
「ん~……好みもあるんだけど、スピードをひたすら上げるのが一番使いやすいと思う」
属性を強化すれば、なかなかの威力にはなる。でも虫を飛ばすより斬った方が強い。ゲームをやっていた時も操虫棍を担いでいる奴らの腕についていたのは、ほとんどがオオシナトかメイヴァーチルだったし。
ハンマーにもその虫だけもらえないだろうか?
「わかった。じゃあスピードを上げてみる」
ケチャワチャも倒したことだし、これで操虫棍の強化はできると思う。
そうなると相棒の武器のレア度は2。一方俺は1。こりゃあ、そろそろダメージ量が逆転しそうだ。たぶん武器倍率も負けるよなぁ……ボーンロッド改の武器倍率って120くらいあった気がするし。
「それでこれからはどうするの?」
「君の武器が強化できればHRを上げていけば良いけど……どうすっかなぁ。俺の武器も強くしたいんだよね」
できればブーステッドハンマー。それかクラスターハンマー辺りを作りたい。ブーステッドハンマーを作るのにはテツカブラの素材が、クラスターハンマーを作るのにはネルスキュラの素材が必要になる。難易度はどちらも変わらないけれど、ネルスキュラならついでに相棒の武器スニークロッドを作ることもできる。ただ、ブーステッドハンマーの方がカッコイイ。
むぅ、悩みどころだ。
「そう言えばさ。HRってどうやったら上がるの?」
肝心なことを忘れていた。
ゲームなら決められたキークエストをクリアした後、緊急クエストが出てそれをクリアすればHRは上がる。でもこの世界ではどうなんだろうか?
聞いたこともないクエストとかあったし、もしかしたらゲームとは違うのかもしれない。
「私も詳しくは知らないんだけど……なんか頑張っていると、ギルドマスターのおじいちゃん経由でクエストを依頼してくれるんだって。それでそのクエストをクリアできればHRが上がるって聞いたよ」
頑張っているとねぇ……。キークエスト的なものはなさそうだけど、今の俺たちはどうなんだろうか? まぁ、それもあのほっほほじいさん次第か。
「そのクエストって一人ずつじゃないとダメなのか?」
「ううん、パーティーでも良かったはず。それにクリアできれば全員上がると思う」
あら、それは便利ね。
ゲームもそう言うシステムなら良かったのに。そうすれば全く関係ない部屋に入ってきて『くえてつだって』とか言う人も多少は減っただろう。アイツらのせいでどれほどの部屋が壊滅したことか……『ハチミツください』の方がよっぽど可愛い。
まぁ、若しくは緊急クエストはソロじゃないとダメにするとかか。
「結局どうするの?」
ん~……悩む。
ソロではないのだし、このままの装備でもごり押せる気がする。でも、あんまり好きじゃないんだよなぁ。できるなら準備は整えてから進みたい。
ブーステッドハンマーかクラスターハンマーか……
うん、決めました。
「テツカブラでも良い?」
「私はいいよ」
ありがとう。もしかしたら寄り道になってしまうかもしれないけれど、やはり此処はドリルを選ぼう。
ドリルとブーストとか本当にカッコイイ。見た目だって大切なのだ。
――――――――
バルバレへ帰り報酬素材を受け取ってから直ぐに加工屋の元へ向かった。
其処で虫餌と必要な素材を渡し、相棒の武器を強化。完成するのは例のごとく明日の夕方らしい。まぁ、つまりこれで一日暇になってしまった。
加工屋へ武器強化の依頼をした後は再び集会所へ戻って乾杯。先に依頼をしたのは、いつものように相棒が酔い潰れてしまう前にやっておきたかったのです。
「明日はどうすっか?」
いつのもようにタンジアビールとポポノタンを注文。どこの世界でも美味しいビールは偉大だ。
「どうしよう。武器ができるのは明日の夕方だったよね。う~ん……」
相棒の武器がないせいで明日はクエストへ行けそうもない。俺一人なら行けるけれども、そんな度胸もありません。そんなことをしたら今度こそパーティーを抜けられるかもしれない。
ケチャワチャ素材だけで作ることのできるハンマーでもあれば良かったのに。
ん~……お金には余裕があるし、闘技大会でも見に行こうかな。ケチャワチャあたりとか。
「んじゃあ、明日は休日だな」
「そだね。…………また私を置いて勝手に行かないでよ?」
ジト目だった。
あの時は本当にすみませんでした。
「大丈夫、流石にもうしないよ。また泣かれるのやだし」
「な、泣いてはないでしょ!」
いや、お酒呑みながらわんわん……ああ、ダメだ。この子、絶対あの時のこと忘れてる。この調子じゃまた周りの人から変な噂を流されていそうだ。
ぼっちが加速する。友達少ないんです。
今はまだ問題ないけれど、そのうち二人でも辛くなる時が来るかもしれない。その時もためにも周りの評価は落としたくないんだけどなぁ……ちょうど良い新米ハンターとかいないかね?
「地底洞窟って此処からどれだけかかるかわかる?」
「泣いてない」
「あ~……はい、泣いてませんでした」
むぅ、いらんこと言っちゃったなぁ。
相棒のことだし機嫌は直ぐに直ると思うけれど、少々申し訳ない。
機嫌を治してもらうために追加で龍頭を注文し、相棒に渡した。まるで餌付けをしているみたいでちょっと面白い。口には出さんけど。怒られるのやだし。
はぁ……こんなことばかりやっているから、お金が直ぐになくなるんだろう。なかなか学習してくれない人間だ。
「えと……地底洞窟だったよね。私が行った時は朝出発して着いたのは夕方前くらいだったよ」
「えっ、地底洞窟に行ったことあるの?」
なんですと? 俺はまだ遺跡平原しか行ったことがないと言うのに……ちゃっかりしているじゃないか。
「うん、地底洞窟って鉱石がいっぱい取れるから結構行ったよ」
此奴やりおる……。でもまぁ、鉱石を集めるのなら地底洞窟へ行った方が良いよなぁ。俺も一度くらい行けば良かった。
そして行くのにほぼ一日かかるのか。まぁ、それくらいなら問題ないか。ただ、あの乗り心地の悪い馬車に一日近く乗っているのは、それだけで疲れるかもしれない。
「ああ、そうだ。今って火山活動は大丈夫なのか?」
もし地底洞窟の火山が活動していたら、其処は地底火山となってしまう。俺たちのHRは1。だから地底火山へ入ることは許されていない。
一週間ほど前はジンオウガの彼女がグラビと戦っていたのだし、その時は地底火山だったはず。ああ、でもグラビは原生林でも出るからわからないか。
「う~ん、それは聞いてみないとわからないけど、まだ大丈夫だと思うよ。少なくとも一ヶ月前は大丈夫だったし」
むぅ、火山活動でエリアが変わるのは面倒だな。どれくらいの期間なのかはわからないけれど、今のうちに地底洞窟でやれることをやっておかないといけない。これを逃したら、次がいつになるかわからないし。
「了解、んじゃあ次は地底洞窟で」
「おおー」
コツンとぶつかるグラスとグラス。
騒がしい集会所に良い音が響きました。
焦ったって仕様が無いのだ。明日はゆっくり休んで、次に備えよう。今は順調に進んでいるけれど、いつの日かそう上手くはいかない日が絶対に来る。
難しい人生です。
明日はどうっすかなぁ……
MH4Gの操虫棍はパワスタスキル延長のオスパーダドゥーレとアムルマリキータが一般的ですがMH4の時はスキル延長などなかったので、この作品ではとりあえずスピードを上げます
と、言うことで第15話でした
なんでフィールドへ行くまで一日とかかかるようにしたんだろ……
武器防具もなかなかできないし……
ま、まぁのんびり書いていきます
次話はたぶんテツカブラです
たぶん……
では、次話でお会いしましょう
感想・質問なんでもお待ちしております