振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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第17話~口の中にカブトムシ~

 

 

「……ご、ごめんなさい」

「いや、すまん。まさか乙るとは思わなかった」

 

 完全に舐めていた。

 テツカブラくらい余裕だろうと思っていた慢心が原因。どう考えても自分のせいだ。

 

 さて、反省会を開いている場合じゃない。クエストの時間にはまだまだ余裕があるとは思うけど、これで色々と追い詰められた。

 う~ん、しかし困ったな。このまま行ってもさっきと同じようにやられるだけだろう。しかもさっきより体力は減っているんだ、戦い方を変えないと。

 

 むぅ、こんなことになるのならスタンを取らなければ良かった。一度スタンを取ってしまったせいで、耐性値は上がっている。まぁ、たられば言っても仕様が無いことくらいわかっているんだけどさ。

 

「それで、どうするの?」

 

 とりあえず、あの生肉をどうにかしないとダメだ。流石にさっきのは運が悪かったからだろうけれど、それでも生肉が走り回っていたら面倒臭い。かと言ってこやし玉なんて持っていないし、あの生肉には松明も意味なかったよなぁ……

 

 ん~、どうすっかね。

 

 

「……ちょっと狭いけど崖の上で戦うか」

 

 

 たぶんそれが一番良いはず。流石に崖の上まで生肉は来ないだろう。来たらお手上げだ。

 

「崖の上って、エリア8に入って直ぐのところ?」

「うん」

 

 落とされたら面倒だし、テツカブラが落ちても面倒臭い。けれども、此方はもう後がないんだ。どんなに面倒だろうが、もう一度来るよりはよっぽどマシと言うもの。

 

 とりあえずテツカブラがエリアチェンジしてくれれば問題ない。エリア3も戦い易い場所ではないけれど、生肉は彼処にいない。それだけで充分だ。

 

「行けそうか?」

「がんばります!」

 

 うん、頼むよ。

 

「時間はかかっても良いから無理はしないように。とにかくクリアだけを目指そう」

「おおー!」

 

 むぅ、まさかテツカブラにこれほど苦戦するとは……

 でも良いさ。それくらいの方がやりがいはある。そう思うことにしよう。

 

 さて、反撃を開始させてもらおうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 エリア2から飛び降りエリア8へ入った瞬間、テツカブラに見つかった。本当ならよろしいことではないけれど、今ばかりは都合が良い。

 

「回復するときはエリアを離れても良いから、とにかく安全に」

「了解です!」

 

 崖の下のさらに遠くの方で咆哮をしているテツカブラを見ながら、相棒へアドバイス。もう此方に後はない。とにかく命を大事に。

 

 大きな咆哮をしたテツカブラは直ぐに地面へ牙を突き立て、大きな岩を掘り返した。

 そしてずるずると後ずさり。

 

 そのせいで、どんどんと俺たちから離れていく。

 

 あのカエル、何やってんだろ……

 

 頭の良い生物ではないと思うけれど、もうちょっとこう……なんとかならないのだろうか。あんな頭の弱い奴にやられたのか……

 

 地面へ牙を突き立て、大岩を掘り返して後ずさり。そんな意味のわからない行動をもう2回繰り返してから、漸く此方へ近づいて来た。

 

「来るぞ」

「う、うん、わかってる」

 

 背中に担いでいたハンマーを右腰へ。

 そして、崖下からジャンプで上ってきたテツカブラへスタンプ。溜まっているスタン値はない。上昇量も高いだろうし、どんなに取れてもあと2回が限界だろう。面倒臭い相手だ。

 

 崖から落とされないよう、できるだけ真ん中で戦うように意識。無茶な行動はせず、岩を砕いた後や、連続突進の後に確定でやる威嚇モーション中を中心に狙う。

 もう失敗はできないことからのプレッシャーで、嫌な汗が止まらない。良い緊張感だ。嫌いじゃない。

 

 そして、怒り咆哮を躱してからカチ上げをぶち込んだとき、2本目の牙が砕けた。これで目標は達成。後は倒すだけ。まぁ、それが難しいんだけどさ。

 

 牙を砕いてからは戦い方を変え、手や足、膨らみ白くなった尻尾を中心に狙う。流石に頭の前はちょっと怖いです。相棒を吹っ飛ばさないよう、カチ上げとスタンプは使わず、溜め1と縦振りをメインに。

 手数を減らし、回避を優先。ダメージを受けたら直ぐに回復。そんなことを心がけた。

 

 そして、戦い続けること暫く。漸くテツカブラが疲労状態となった。

 

 畳み掛けろぉ!!

 

 口を開き、苦しそうに呼吸を繰り返す疲労状態のテツカブラ。そんなテツカブラへ攻撃をしようとしたが、ホームランを尻尾へ当てる前に土の中へと潜り込んでいった。

 

「うぅ……まだ倒せないの?」

 

 多くても6割くらいしか削れていないんじゃないかな。

 

 今回は回復薬も持ってきているから、薬にはまだまだ余裕がある。ただ、アレだ。精神的にかなり疲れた。体力はまだまだあるけれど、嫌な汗は止まらないし無駄に手足が震える。

 相棒の表情もかなりキツそうだ。これ、倒せっかなぁ……

 

 まぁ、そんな弱音を吐いている場合じゃないんだけどさ。

 

「かなり削ってはいると思うし、もうちょいだろ」

 

 まだ時間はかかると思うけど頑張ってくれ。

 

「……がんばります」

 

 

 

 

 砥石を使い武器を研いでからテツカブラを追いかけエリア3へ。

 エリア3へ入ると、未だ疲労状態のテツカブラと直ぐに目が合った。此方も彼方もボロボロだ。

 

 動きの遅くなったテツカブラへとりあえずカチ上げと横振り。ローリングで距離を取り直ぐにまた右腰へ構える。

 そして後ろから相棒の虫が飛んできて、テツカブラの顔に当たった。パキンと光るスタンエフェクト。

 其処でテツカブラがスタンした。

 

「えっ?」

 

 何とも間の抜けた相棒の声。ナイスです。

 

 スタンしたテツカブラへカチ上げを決めてから、横振り始動でホームランを顔面へ。ローリングでテツカブラの左側へ回り込み、もう一度横振り始動でホームラン。

 

 起き上がったテツカブラが大きく息を吸い込むのが見えた。んもう! 疲労状態終わるの早くないですか!?

 

 一拍置いてから咆哮をフレーム回避。右腰へハンマーを構え――

 

「あっ、まず……身体が動かない……」

 

 そんな声が聞こえて来た方を向くと、痺れながら相棒が倒れていた。ロケット生肉の次はブナハブラが邪魔をしてくるらしい。

 明らかに相棒の方を向いているテツカブラ。

 

 大ピンチです。

 

 

「……ごめんっ!!」

 

 

 そう言ってから本当はやりたくなかったけれど、溜め3スタンプで相棒を吹き飛ばした。

 相棒を吹き飛ばした後は直ぐにローリング。その瞬間、テツカブラが大口を開け地面を抉りながら通り過ぎて行った。

 

 ヤバいヤバい、起き攻めとかこのカエルマジ怖い。

 

「あ、ありがとう?」

 

 気にすんな。

 

 ちょっとした段差に上りハンマーを構える。乗り攻撃は一度当てている。乗り値に減少はないはずだから、あと一回で乗りダウンを奪える。

 

 テツカブラと目が合った。

 右腰へ構えたハンマーへ力を入れる。

 

 呼吸が荒い、心臓の音が五月蝿い。できるとわかっていても怖いものは怖いのだ。

 

 大口を開け突進してくるテツカブラ。失敗すれば大ダメージ。成功すれば一気に削ることができる。ハイリスクハイリターン。そんな博打も嫌いじゃない。

 

 そしてテツカブラの突進に合わせて段差から飛び、ジャンプスタンプを叩き込んだ。

 

 

 

「っつ……!」

 

 

 結果、失敗。タイミングが少々遅く突進が直撃。吹き飛ばされました。

 乗りダウンを奪うため直ぐに起き上がる。攻撃は入ったはず。しっかりとした手応えはあった。

 

 だからダウンは奪え――

 

 

「終わった……の?」

 

 ……起き上がると其処には仰向けに倒れたテツカブラの姿があった。

 

 どうやら自分が思っていた以上にダメージが入っていたらしい。まぁ、相棒の武器だって強化したんだ。火力は出ていたんだろう。

 

 

「はぁ…………疲れた」

 

 

 本当に疲れました。

 無駄に緊張してしまったせいで心身ともにボロボロ。いくら強くはない相手とは言えダメだね、舐めてかかっては。

 

「ん~疲れたぁ……ほら! 剥ぎ取ろうよ」

 

 わかってます。

 ハンマーの強化にはコイツの大牙が4本必要。どう見てもコイツに牙は2本しかないけれど、運がよければ一回で4本揃う。

 

 まぁ、報酬を受け取ってみなければわからないんだけどさ。

 ただ、もう暫くこのカエルとは戦いたくないかな。

 

「なぁ、知ってるか?」

「何を?」

 

 残念なことに剥ぎ取りでは大牙が出ない。捕獲なら出るはずだから、捕まえちゃえば良かったね。

 まぁ、今更そんなことを言っても遅いんだけどさ。

 

「コイツの口の中ってカブトムシがいるんだぜ」

「……何言ってんの?」

 

 ゲームとは違い、体をすり抜けることができないため、仰向けに倒れているテツカブラの口の中を見ることができない。

 

 はてさて、この世界にもゲームスタッフの遊び心は届いているのかね?

 

 そんなどうでも良いようなことを思った。

 

 






カブトムシは喉の根元あたりにいます
ちょいと見づらいですが、是非探してみてください

亜種は……どうだったかな

と、言うことで第17話でした
まさかテツカブラに2話も使うとは……わからないものですねぇ

次話は武器を強化したりするので、また日常みたいなお話でしょうか?
まだ何も考えていませんが
では、次話でお会いしましょう

感想・質問なんでもお待ちしております

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