振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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いろいろありましたが、今日も私は元気です




第18話~夢の中でさようなら~

 

「あたっ」

 

 ガトゴトと揺れる馬車の上。一際大きな揺れによって泥のように眠っていたのにも関わらず目が覚めてしまった。

 んもう、もう少しくらい道を整備してくれたって良いだろうに。

 

 辺りは暗く、たぶんバルバレへ着くまではまだまだ時間がかかるはず。

 馬車の揺れる音の他には何かの虫の声や風のそよぐ音。そして、静かな寝息のような音が聞こえるばかりだった。

 そんな寝息は隣から聞こえてくる。其方を見ると、俺の肩を枕代わりに相棒が気持ち良さそうに眠っていた。

 

 まぁ、今日はいろいろあったのだし、この相棒だって相当疲れていたのだろう。

 

 鼻でも摘まんでイタズラをしようと思わないでもなかったけれど、それは止めておいた。

 今回のクエストは俺のためのもの。それに付き合ってくれたんだ。今ばかりはゆっくりと休んでもらおう。

 

 辺りは暗く、今どんな道を進んでいるのかはっきりとわかることはない。けれども、決して真っ暗な世界ではなかった。

 

 ふと、上を見上げる。

 其処には満天の星空が何処までも広がっていた。

 

 星に詳しくはない。どの季節にどんな星座が見られるのかなんてわからない。でも、この景色を向こうの世界で見ることができないことははっきりとわかった。

 科学の発展したあの世界に星空が映えることは、ほとんどないのだから。

 

 

「……でっけぇな」

 

 

 真っ暗の世界で輝く星々は、少し手を伸ばせば届くんじゃないかってくらいだ。馬鹿みたいな距離が離れていることだってわかっている。

 それでもあと少し、もう少しで手が届きそうだった。

 

 きっとこの世界では、こんなにも綺麗な星空が当たり前のことなんだろう。

 俺のいた世界とこの世界は違う。この世界に来てからは、戸惑いだらけの毎日だ。どうして俺がこの世界に来たのかなんてわからないし、たまに此処がゲームの世界と言うことを忘れそうにだってなる。

 この世界は人の手によって作られた世界だ。

 

 けれども、この星空ばかりは人の手に届かない場所にあってもらいたい。

 

 な~んて、言葉に出せるはずもない恥ずかしいことを、そっと心の中で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

「着いたー! 長かったー!!」

「寝てただけだけどな」

 

 まだ朝方と言うこともあってか、いつもは騒がしいはずの集会所にも、違う空気が流れていた。

 緊張した顔でクエストに出発する者。慌ただしくクエストの準備をする者。疲れた顔を隠そうともせず、俺たちと同じようにクエストから帰って来た者などなど。

 

「なにさー、君だってどうせ寝ていたんでしょ?」

「まぁ、そうっちゃそうだな」

 

 結局、あの後も星を眺め続けた。

 どうせこれから飽きるほど見ることになるだろうけれど、何故か寝ようとは思わなかった。

 あっちの世界ではなかなか見られない景色だったしなぁ。

 

「全くカッコつけちゃって。ん~……でも今回はぐっすり寝られた気がする。そんなに疲れていたのかな?」

 

 そんな言葉を落としてから首を傾げた相棒。

 

 正直なところ、あの馬車の乗り心地は褒められたものではない。

 それでも、この相棒がぐっすり寝られたと言うのは……まぁ、俺を枕にしたからなんだろうなぁ。

 そんなことを言ったらまた騒ぎ出すだろうし、本人には伝えないけど。

 

「んじゃとりあえず、報酬をもらいに行くか」

「うん、そうだね」

 

 今回テツカブラを倒したのは俺の武器を強化するため。だからもし、これで素材が足りなければ、またあのカエルと戦わなければいけなくなる。

 ……それだけは勘弁してもらいたい。別にカエル相手に苦手意識はないけれど、どうにも上手く戦える気はしなかった。

 

 

 

 受付へ行き、報酬金と素材を受け取る。

 そして祈るように素材を確認すると、運が良いことに大牙は4本あった。

 

 だからどうして2本しかないテツカブラの牙が4本あるんだよ! なんて言うツッコミを入れたくなったが

 

『じゃあ、2本いただきますね』

 

 とかギルドの人に言われても困るため、ツッコミはぐっと自分の中へ押し込んだ。

 まぁ、そんなこと言わないと思うけど。

 

「素材、足りそう?」

「うん、足りた。お金も余裕があるし、これで武器も強化できるよ」

 

 良かった。これでまたロケット生肉に舌打ちをしながら戦わなくてすむ。

 大型モンスターに苦戦するのは良いけれど、メインじゃないモノに苦戦するのはどうにも嫌いなのだ。

 

「おおー、そりゃあ良かったよ。じゃあもうテツカブラとは戦わなくてもいいってこと?」

「そうだね、素材は足りてるしこれで武器を強化して次は……まぁ、HRを上げていく感じになるのかな」

 

 しかし、HRを上げるにはどうすれば良いんだろうね? 相棒が言うには、ギルドマスターがクエストを依頼してくるそうだけど……

 ま、今度聞いてみれば良いか。

 

「この後はどうするの?」

「とりあえず加工屋へ行ってくるよ。んで、どうせ武器ができるのは明日の夕方とかになるだろうしそれまでは……」

 

 どうすっかね。

 う~ん、今日も含めまた二日ほど暇になってしまうのか。流石に二日間もプーギーの腹をつつき続けるのはヤバい気がする。

 かと言って、魚釣りなどのクエストへ行こうとも思わないし……しまったなぁ。こんなことになるのなら、もう一本ハンマーを作っておけば良かった。

 

「何かやりたいこととかある?」

「私も特にはないかなぁ。あっ、でもせっかく帰ってきたんだしお酒飲みたい!」

 

 ん~……お酒か。でもまだ昼間なんだよね。てか早朝です。

 別に朝からお酒を飲んでも悪くはないと思うけれど、どうにも気が進まない。それにお酒は夜に飲んだ方が美味しいと思う。

 

「了解。ああ、でもお酒飲むの夜からでも良い?」

「別にいいけど、何かあるの?」

 

 何もないです。ただ単に気分的な問題と言うだけ。

 

「なんとなくかな。んじゃあ、飲む時になったらまた声をかけるよ」

「う~ん、わかった」

 

 そんな言葉を交わしてから相棒と別れた。

 さて、加工屋へでも行くとしますか。

 

 

 

 

 

 いつもの加工屋へ素材と料金を渡して帰宅。そしてそのままベッドへ倒れ込んだ。

 

 ああ、疲れた……。

 

 けれども、これで武器も防具も揃ったわけだから、これから一気に進むことができるはずだ。ゴアやゲネル、グラビには苦戦するだろうけれど、それ以外は問題なくいける。

 まぁ、それもゲームの中ならって言う話なんだけどさ。どうせ実際に見るゲネルとか滅茶苦茶気持ち悪いだろう。やだなぁ、虫苦手なんだよね。

 そんなことを言っている余裕なんて、あるはずもないってことくらいわかっているけどさ。

 

 そんな考え事しながらベッドの上で横になっていると、意識は直ぐに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 ふわふわと身体の浮く感覚。

 地に脚は着かず、自分の状態も良くわからない。俯瞰的な景色。けれども、そんな景色は何処か危なげだった。

 

 ああ、夢か。

 

 それは直ぐにわかった。

 浮いているはずの身体は何故かやたらと重く、上手く動かすことはできない。

 何かが見える。でも何が見えているのかわからない。やはり気持ちの良いものではなかった。

 

 

「――は、――ね……」

 

 

 たぶん声が聞こえた。

 けれども、誰の声でなんと言っているのかはわからない。

 

 

「そう―――てわかっ――。――て、君―――ったから……」

 

 

 やはり、何と言っているのかはわからない。なんだろうか。この感覚は。

 

 

「――と会えて、――――でした。……あ―――う」

 

 

 相変わらず何を喋っているのかはわからない。でも何かが見えた気がした。

 大きな岩のような……山のような何かが。なんだろうか、アレは。

 

 

「さようなら。――――きな人」

 

 

 そんな声が聞こえたところで、世界は崩壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

「ん……ああ、寝てたのか」

 

 目が覚めると、家の中は薄暗くなっていた。

 たぶん、もう夕方なんだろう。どうやら随分と長い時間寝ていたらしい。

 

 ベッドから起き上がり、寝ていたせいで固まってしまった体を伸ばすと、お腹が鳴った。

 

 ……むぅ。

 

 まぁ、仕方無いね。今日はまだ何も食べていなかったのだから。

 う~ん、それにしても随分と無駄な一日になってしまったじゃないか。これならプーギーの腹をつついているのと何ら変わりはない。

 いやホント、アイツの腹は癖になる柔らかさなんだ。撫でるタイミングを間違えると、頭突きをして何処かへ行っちゃうけど。

 でも、きっと丸焼きにして食べたら美味しいんだろうなぁ。

 

 そんなことを考えたらまた腹が鳴った。

 

「……相棒を誘いに行くか」

 

 お腹減りました。自分に嘘は付けない性格なんです。

 寝起きのせいで未だに少しだけ頭はボーっとするけれど、まぁお酒を飲んだって問題はないだろう。

 

 もう一度伸びをしてから家の外へ。

 そして隣にある相棒の家のドアをノック。家の中にいてくれれば良いけど。

 

 

「あっ、はい! ちょ、ちょっと待って!」

 

 

 ガタゴトと随分騒がしい音がした。何をやっていたんだろうね。でもどうやら家には居てくれたらしい。

 

 相棒が出てくるのをドアの前でボーっと待っていたら、勢い良く扉が開き俺の顔面へ直撃した。超痛い。

 

「うわっ! な、なにやってるのさ!?」

 

 いや、ただ待っていただけなんですけど……。それにそんな勢い良く開かなくても……

 ヤバい、ヤバい。コレ、鼻血出るんじゃないか。俺の年齢はまだ二十歳をちょっと超えたくらい。見た目には気をつけたい年頃なんです。

 

 ……はて、そう言えばこの相棒って何歳なんだろうか? 見た目は俺よりも若そうだけど、お酒を飲んでいるのだしやっぱり二十歳は超えて……いや、世界が違うんだ。二十歳を超えていなくてもお酒を飲むかもしれないからわからないか。

 

 ま、別に何歳だろうと関係ないか。

 

「飯行こうぜ」

「あっ、うん。行きます。でも顔、大丈夫?」

 

 たぶん大丈夫。どんなに酷くても鼻血が出る程度。

 

「大丈夫だよ。それより、飯とお酒を飲みに行こうぜ。お腹空いた」

「う~ん、それなら大丈夫……なのかな? そだね、行こっか」

 

 それで良いと思います。

 

 さてさて、今日は予定通り浴びるように飲むとしよう。たまにはそんな日があっても悪くはないだろう。

 

 

 






テツカブラを20数回ほどやってみましたが、大牙が4本出たのは1回だけでした
しかも、サブタゲ報酬を含めてギリギリです
つまり、今回の主人公は運が良かったんでしょうね


と、言うことで第18話でした
これで、ひとまず武器防具は揃いました
次からはHRを上げるために進めていく感じとなりそうです
伏線っぽいものを書きましたが、回収するかはわかりません

次話はもしかしたら緊急クエストへ出発しているかもしれません
たぶんダメだろうなぁ……
では、次話でお会いしましょう

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