振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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第20話~ネバネバ彼女へ横振り~

 

 

「到着―! 緊張してきたー!!」

 

 早朝に出発はしたけれど、例のごとく地底洞窟へ着く頃には日が沈み始めていた。

 ゲームのように集会所から出て直ぐ到着とかだったら楽だったんだけどなぁ。まぁ、それはそれでおかしな話なんだけどさ。

 

「ずっと緊張してたじゃん」

「今はもっとしているの!」

 

 そうですか……

 まぁ、クリアさえできれば問題ないから、どうか頑張ってください。

 

 今回ネルスキュラを討伐するのは、HRを上げるためでもあるけれど、同時に相棒の新しい武器を作るためでもある。名前はスニークロッド。毒の操虫棍です。

 フルフルのように毒ダメージがほとんど入らない奴や、ダレンみたいにそもそも毒にならない奴もいるけれど、毒武器が一本あれば、ほぼどんなモンスターに持って行ってもそれなりのダメージが期待できる。それに武器倍率だって、今相棒が担いでいる武器よりも高かったんじゃないかな。

 

 これでまた俺との火力に差が開きますね。

 

 必要素材は覚えていないけれど、操虫棍って武器を作るときってそれほど大量の素材を使うイメージはないし、たぶん一回行けば足りるだろう。

 そう言う面でも操虫棍は優遇されていると思う。まぁ、虫餌はちょっと面倒なんだけどさ。

 

 

「よっし、そんじゃ行くかっ!」

「おおー!」

 

 とにかく今は目の前の敵に集中しよう。色々考えたところで、クリアしなければ意味はないのだから。

 

 支給品ボックスの中身を半分もらってから出発。解毒薬美味しいです。

 ネルスキュラの初期位置はエリア6。前回と違い、雑魚モンスターに振り回されることもないだろうし、ネルスキュラ一匹に集中できる。

 

 ベースキャンプから飛び降りて直ぐに左へ行き、エリア4経由でネルスキュラの待つエリア6を目指す。

 

「ああ、そうだ。ネルスキュラと戦う時なんだけどさ」

「うん、どうしたの?」

 

 エリア6を目指しながら、相棒へ助言……と言うかお願いをする。

 

「アイツと戦う場所はだいたい上段と下段に分かれているんだけど、戦う時は基本上段で戦うようにしてもらって良いか?」

「ん~……わかった。そうする」

 

 下段でも戦えないことはないけれど、戦うのなら上段の方がやりやすい。下段だと、鬱陶しい攻撃してくるし。

 まぁ、どうせ上段で戦っていても下へ落ちることになるとは思う。

 

 他に気をつけることは……特にないか。今まで戦ってきたモンスターとはかなり違う動きをするけれど、口で説明できるような動きじゃないし。

 

 

 そしてエリア6に到着。

 

 キシキシガサガサとネルスキュラの動く音が聞こえたけれど、無視して柱を上り上段へ。

 

 俺たちが柱を登り終え上段へ行くと、ネルスキュラが此方に気付いた。

 

「えっ、何アレ、キモっ……」

 

 そんなこと言ってやるなって。まぁ、可愛くないことは確かなんだけどさ。

 捕食したゲリョスの皮を被り、弱点である雷に耐性も持たせ、更に背中にはそのゲリョスの毒を結晶化させた毒刺を生成。

 キモイと言えばキモイ。でもコイツの装備ってカッコイイんだよなぁ。

 

「赤は頭、白は脚と爪、橙は胴体!」

「りょ、了解!」

 

 エキスの場所を教えてから、発見時の威嚇をしているネルスキュラへカチ上げを一発。

 爪に吸われる事が多いせいでスタンは取り難いけれど、スタン耐性自体は高くなく、上昇量もそんなになかったはず。そして何より、頭ひるみを取れば大ダウン。ハンマーにはもってこいの相手だ。

 

 カチ上げを決めてから直ぐにローリングをして、前方爪攻撃を回避。

 ネルスキュラの動きは馬鹿みたいに速いため、残念ながらハンマーでは追いつかない。だから相棒を吹き飛ばさないよう気をつけながら、溜め攻撃をメインで戦う。

 普段は邪魔な集中が今は欲しいです。

 

 

「よっし、集まった! 乗り攻撃しても良いんだよね!?」

「おう、気をつけながらどんどんしろ」

 

 エキスを集めるのにも慣れてきたのか、集める時間はどんどんと早くなってきている気がする。まぁ、集めやすい相手ではあると思うけどさ。

 

 3色集めたことで、神々しい輝きを放ちながら宙を飛ぶ相棒を横目に、ひたすらネルスキュラへ溜め攻撃。1回目のスタンまであともう少しだと思う。

 

「おっ、の、乗った!」

 

 俺のカチ上げが爪に吸われひるんだところへ、相棒のジャンプ攻撃がネルスキュラへ当たった。そして乗り攻撃へ。

 たぶんダメだろうなぁ……なんて思いつつ砥石を使って切れ味を戻す。

 ハンマーも新しくなり切れ味も良くなっただろうけれど、他にやることもないから砥石。乗り攻撃中って暇だよね。

 

 

「あっ、無理です」

 

 

 そして振り落とされる相棒。知っていました。

 振り落としモーションで顔が上がり、それがまた落ちて来た所へカチ上げ。ピキンと綺麗なスタンエフェクトが出た瞬間、ネルスキュラは体半分を地面へ埋めるように仰向けに倒れた。

 

 むぅ、まだスタンじゃないのか。

 溜め1、振り上げを決めたところで、ネルスキュラと共に下段へ落ちる。背中から下段に落ち、バタバタと暴れるネルスキュラ。所謂大ダウン。

 

 流石にそろそろスタンを取るだろうから、縦1始動のホームランを腹へ一発。モジモジしてキモいねー。

 ホームランを決めてから顔の前へ移動し、ハンマーを右腰へ構え溜める。そしてネルスキュラが起き上がったところでカチ上げ。

 其処で本日1回目のスタンを奪った。祝ノルマ達成。

 

 スタンを取った後は、顔に縦1始動のホームラン、溜め1、振り上げ、そしてもう一度縦1始動でホームランをその顔面へ。

 振り上げ、振り下ろす度に出るブーステッドハンマーのブーストが本当にカッコイイ。うむ、この武器を作って正解だったな。

 

 スタンから起き上がったネルスキュラは顔を上げ、威嚇。その口からは白く染まった空気が溢れ、目と腹の模様が真っ赤に染まった。どうやら、ネルスキュラさん怒ったらしいです。

 

「上段へ上がるぞ!」

「わ、わかりました……」

 

 怒り状態のネルスキュラにひるんでいるのか、相棒の元気がちょっとない。蜘蛛が苦手なのだろうか。

 

 怒り状態のネルスキュラはちょっと面倒臭い。ただでさえ速かった動きは更に早くなり、攻撃力も上がる。

 上段へ上がってからは、のしかかりと飛びかかりに注意しつつ、また溜め攻撃メインで戦う。何処に仕舞ってあったのかわからない鋏角はネルスキュラの腹下へ潜り込んで躱し、後は全部横ロリで軸をずらす。

 蜘蛛の糸や睡眠攻撃さえ喰らわなければ、強い相手ではないと思う。

 

「うわっ、なにコレ! ネバネバする……」

 

 喰らわなければ……

 うん、まぁ、3連糸発射避け難いもんね。仕方無いね。

 

 白色のネバネバに拘束されるってちょっとエッチだよなぁ。とか思いながらも相棒に横振りを当て、拘束を解いてあげる。

 

「ありがと!」

 

 ……ネルスキュラに襲われる相棒の薄い本はよ。

 

 いや、冗談ですよ?

 

 

 そんな馬鹿なことを考えつつ、ネルスキュラを見ると爪を高く振り上げ威嚇をしていた。チャンスタイム。

 ハンマーを右腰へ構えつつ接近。そして2回ハンマーが光ってから、威嚇をしているネルスキュラへハンマーを高く振り上げ……たところで、ネルスキュラが何処かに隠していた、鋏角が現れた。

 

 ああ……そう言えば、下位でも威嚇の後は予備動作なしの鋏角かみつきへ派生するんだったよな。

 

 そしてハンマーを振り下ろす前に鋏角が直撃、ダメージはそれほどないけれど、吹き飛ばし+毒状態。さらに、ネルスキュラの身体が沈み、此方へ飛びかかろうとしているのが見えた。

 

 マジ洒落にならん。コンボが華麗すぎる。

 

 ネルスキュラの飛びかかりの判定は腹下まであり、なかなか厚い。だから横ロリでとにかく距離を……いや、これ無理だわ。絶対に間に合わん。

 

「乗ったー!!」

 

 ナイス。超ナイス! 相棒さん素敵! 結婚して! ホント、完璧のタイミングです。

 

 相棒がネルスキュラの背中へしがみついている間に急いで、解毒薬と応急薬を飲む。ああ、もう! どうしていちいちガッツポーズなんてせにゃならんのだ!!

 

 応急薬を飲み終わり、砥石まで済ませたところで、ネルスキュラが仰向けに倒れ込んだ。

 

 

 ……えっ、乗り攻撃、成功したんですか?

 

「よっしゃー!! 見た? 成功したよ!!」

 

 ごめん、見てなかった。

 また今度お願いします。

 

 上段で乗りダウンを取った場合、ネルスキュラは直ぐに下段へ落ちてしまう。だからまた右腰へハンマーを構え、ネルスキュラの落ちた穴から溜め切ったところで飛び降り、ジャンプスタンプとホームランを当てる。

 ホームランを当て、仰向けに倒れたのに暴れている爪に邪魔されない位置から、ネルスキュラの顔面へ縦1始動でホームラン。

 さらにもう一度ホームランを当てたところで、本日2回目のスタンを奪った。

 

 2本あった爪も1本は完全に壊れ、ゲリョスの皮で覆われていた胴体も今は、はっきりと露出している。うん、そろそろ終わりだろう。

 

 スタンしたネルスキュラの顔へ縦1、縦2、そしてホームラン。

 腕にしっかりとしたヒットストップがかかり、スタンエフェクトが光った瞬間。ネルスキュラは完全に倒れ、動かなくなった。

 

 少々、危ない場面もあったけれど、今回はかなり上手く行った方だと思う。0分針と言うことはないと思うけれど、確実に10分針は切ったはず。順調順調。

 まぁ、武器と防具も作ったのだから、これでグダっているようじゃダメなんだけどさ。

 

「ふふん、ねぇねぇ、私の乗りダウン見た?」

 

 乗り攻撃が成功したのがよほど嬉しいのか、いつも以上にテンションの高い相棒。

 すみません、研ぎ終わったハンマーを眺めていて見ていませんでした。乗り攻撃中もガッツポーズしてました。

 

「ああ、おめでとう。次からもよろしく頼むよ」

「うん、任せて!」

 

 たぶん次は失敗するんだろうなぁ……

 

 けれども、まぁ、成功したことは確かなんだ。この相棒は確実に上手くなっている。それだけで充分だろう。

 

 ちょっと頼りない武器ですが、これからもよろしくお願いします。

 

 






今回も主人公と同じ装備でやりました(アイツと違ってソロだけどね!)
やってみて気づきましたが、思ったよりネルスキュラの体力が多く、スタン耐性と上昇量が低いです
4スタンで10分針です
3スタン5分針くらいだと思ったんだけどなぁ……


と、言うことで第20話でした
これで晴れてHR2ですね
氷海と原生林へ行けるようになりました
☆2のクエストでは特に苦戦するモンスターはいないので、できるだけポンポン進ませようかな
なんて考えていますが、どうせダメなんだろうなぁ

次話は……どうしましょうか?
では、次話でお会いしましょう

感想・質問なんでもお待ちしております

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