振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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第21話~追加でフォルティッシモ ~

 

 

「いやぁ、今回は上手くいって良かったね!」

 

 緊急クエストであるネルスキュラを倒しての帰り道。

 隣が五月蝿い。

 

 確かに戦っていた時間は短かったけれど、それでも疲れていないと言うことはない。てか、もう日は完全に沈み月だって顔を出している。時刻は夜だろう。

 つまり、俺は眠いので寝たいのです。

 

 そうだと言うのに、相棒のテンションは未だ高く、なかなか俺を寝かせてくれない。小学生の修学旅行じゃないんだからさ……

 

「ああ、うん。そうだね。今回は良かったと思うよ。だから寝て良い?」

「ふふん、これで漸く私も操虫棍を使えるようになってきた気がする。ねぇ、次はどんなモンスターを倒しに行くの?」

 

 ああ、ダメだ。この人、俺の話を全然聞いてない。クエストの帰り道はいつも、この相棒の方が早く寝ていた。そうだと言うのに、今はこの様子。元気ドリンコでもキメてるんじゃないだろうか。

 

 とは言うものの、正直この相棒の上達スピードはなかなかのものだ。このクエストだって俺一人だったら倍以上の時間はかかっていたと思う。

 だからこの相棒にはちゃんと感謝している。操虫棍と言う武器のおかげもあるだろうけれど、実力だってかなりあるのだろう。俺みたいに知識ばかりに偏り、実力の伴っていない人間とは大違いだ。

 

「ん~そうだね、次は……」

 

 とりあえず、これでHRは2となった。だから氷海や原生林へ行けるようになるわけだけど……どうすっかね? ゲームの中ならキークエストはレイア、フルフル、ザボア、ガララだったはず。この中で一番苦労せずにクリアできそうなのは……レイアかフルフル辺りだろうか? 初見でザボアやガララはちょっと辛い気がする。

 まぁ、防具を新しく作り直すつもりはないから、いつか行かなきゃいけないんだけどさ。

 

 

 よし、決めました。

 

「次はフルフルを倒しに行くか」

 

 怒ったときの攻撃力はなかなか凄まじいけれど、動きは其処まで速くないから一番戦い安い気がする。ただフルフルさんって見た目がちょっと怖いんだよね。

 

「フルフルってあのかわいい奴のこと?」

 

 ……うん? かわいい? フルフルが?

 

「……いや、可愛くはないだろ」

 

 異様に首は伸びるし、ブヨブヨしてるし、鳴き声は甲高く不気味。血管とか浮き出て見た目もかなりグロテスク。昔の生態ムービーとかもう……

 

「あれ? 私の思ってるのと違うのかな? 白くてのぺっとして可愛いモンスターじゃなかったっけ?」

 

 マジで? アレが可愛いの!? アオアシラとかならまだわかるけれど、フルフルはわからん。どの辺りが可愛いのだろうか……

 相棒さんが余計にわからなくなった。

 

「あ~……うん、たぶんそれで合ってると思います」

 

 そっか、フルフルは可愛いのか……

 今度ジンオウガの彼女にも聞いてみようかな。

 

 可愛くはないと思うんだけどなぁ……

 

「ま、まぁ、とりあえず次はフルフル辺りを目標にしよう。あと、新しい君の武器を作りたいと思うんだけど良い?」

「えっ、いいの? そりゃあ嬉しいけど……あと、新しい武器ってどのモンスターの素材?」

「ネルスキュラ」

 

 素材が足りていると嬉しいが。

 まぁ、足りなかったら俺の素材を渡せば良いのかな。たぶんネルスキュラの素材は使う予定なんてないだろうし。

 んで、新しい武器を作っている間にクエストへ行きたいなぁ。なんて思っているところです。フルフルが相手なら、ボーンロッド改でもスニークロッドと期待されるダメージはそれほど変わらないと思う。

 

「なんだ、そうだったんだ。それならちょうど良いね。うんじゃあ、新しい武器お願いします」

 

 これでスニークロッドができれば更に火力は上がる。

 相棒ばかりが強くなっている気もするけれど、其処は我慢。せめて足を引っ張らない程度には頑張ろう。たぶん、相棒は気づいていないと思うけれど、既に火力は彼女の方が出ている。それに気がついたとき、もしかしたらこのパーティーも解散することになるのかもしれない。

 まぁ、それも仕方無いことなのかね。

 

「あと、お願いがあるんだけどさ」

「どうしたの?」

 

 例えそんな未来が訪れるとしても、今は自分にできる最大限のことをやっていこう。

 大丈夫、他人から避けられソロで戦わされることになることは慣れている。いつだってそうだったから……

 

 

「もう寝ても良いですか?」

「あっ、はい。どうぞ」

 

 だからそれまではよろしくお願いします。

 おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 ……寝ちゃった。

 

 どうやら彼も結構疲れていたらしく、寝て良いか私に聞き、目を閉じて直ぐに寝息が聞こえてきた。

 

 ちょっと私が舞い上がっていたせいで、寝られなかったみたい。ごめんね。

 

 今回のクエストで私は初めて乗りに成功した。たぶんギリギリだったと思うけれど、とにかく成功した。そのことが本当に嬉しかった。

 だって、初めて私が役に立ったような気になれたから。

 

 

 今、寝息を立て眠っている彼は――上手い。

 

 闘技大会で彼の戦う姿を見ていたから彼が上手いことは知っていた。でもこうやって実際、一緒に戦うことでそのことはさらにはっきりとわかった。

 彼はちょっと抜けているところもあるし、何を考えているのかわからないことも多い。そしてHRは私と同じ。そうだと言うのに、私と彼の間には埋めることのできないほどの差がある気がする。

 

 私が上手くないことくらいわかっている。頭で考えていることと実際に体を動かした結果は全然違うものだし、戦っていると周りなんて直ぐに見えなくなる。

 そんな私でも此処まで順調に進めているのは、やっぱり彼と一緒だったから。私一人じゃきっと今頃も採取ばかりをしていただろう。

 

 だから今日は嬉しかった。下手っぴな私が少しでも役に立てた気がしたから。

 

 

 ……どうして彼が私と一緒に来てくれるのかなんてわからない。

 いつこのパーティーが解散してもおかしくはないと思う。私には彼が必要だけど、彼には私が必要ではないから。

 解散するのは……怖い。てかイヤだ。だって一人じゃどうして良いのかわかんないもん。

 

 だから先日は彼にそんな私の我が儘をぶつけた。彼が遠くに行ってしまったようで、怖くなったから。自分でも思った、酷く我が儘な人間だって。

 そんな自分が嫌になる。それに私が我が儘をぶつけたあの時の彼の顔は忘れることはできそうにない。心から申し訳なさそうなあの顔を。

 別に彼は悪いことなんてしていない。そりゃあ、約束したのに、二人で(ここ重要!) 勝手にクエストへ行ってしまったのは悲しい。

 でも私にはそのことを止める権利なんてない。私が彼を縛り付けて良いはずなんてないのだから。

 

 それでも、彼は私の我が儘を受け入れてくれた。こんな酷い人間なのに、彼は私に謝ってくれた。

 そのことは嬉しかったけれど――それ以上に心は痛んだ。

 

 たぶん、彼のことを思うのなら私が離れた方が良いと思う。今の状況は彼にとって私は足枷でしかない。だから私が離れること。それが一番なはず。けれども私にはそんな勇気がないのです。この臆病者はまだ一人で戦えるほど強くはないのです。

 

 技術的にも。

 精神的にも。

 

 だからもう少しだけ、この彼との関係が続けば良いなぁ。なんて私は思います。そりゃあずっと一緒に居てくれれば良いけれど、そう上手くはいかないことくらいわかっている。

 

 きっと彼と別れるとき、私はまた泣いてしまうと思う。笑って別れてあげたいけれど、それはきっと難しい。弱い人間なんです。

 

 きっといつか来る別れ。

 けれども、それまではどうかよろしくお願いします。

 

 ただ、願わくはできるだけ長く一緒に居てくれると嬉しいなって私は思うのです。

 

 

「不束者ですが、これからもよろしくお願いします」

 

 

 そんな言葉をそっと呟いてから、いつかのように彼の肩を借り私も目蓋を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、着いたぞー」

 

 彼の声で目が覚めた。

 景色は明るく、どうやらもう朝らしい。

 

 寝起きのせいか、一瞬自分が何をしていたか忘れてしまったけれど、直ぐに思い出すことができた。

 ああ、そっか。ネルスキュラ倒したんだった。

 

 そうだ、これで私たちのHRも2へと上がったはず。新米ハンター脱出と言ったところかな?

 

「おはよう!」

「あっ、うん。おはよう」

 

 とりあえず起きたのだから挨拶。挨拶は重要なのです。

 彼は少しだけ戸惑っていたけれど、私は気にしません。

 

 彼にそんな挨拶をして、此処まで運んでくれたネコちゃんにお礼の言葉。いつもありがとね。本当に助かっています。

 そうしてから彼と一緒に集会所の中へ。報酬楽しみだね!

 

 

 そして集会所へ入ると――

 

「あっ、帰ってきた」

 

 いつかのジンオウガ装備の彼女がいた。でも、私が見た時とは違い、武器はハンマーから狩猟笛へと変わっている。

 そう言えば、彼はこの彼女と知り合いなんだっけ? いつもソロで有名な彼女だと言うのに、何処で知り合ったんだろう。

 

「おっす、おっす。って、あれ? 今日は笛を担いでいるけど、ハンマーはやめたのか?」

「……うん、もう待つのは飽きちゃったもん」

 

 飽きちゃった? 何のことだろう? でもこの人もすごいよね。ずっとソロなのに、HRは私たちよりも高く、あのジンオウガ装備だもん。年齢は私とあまり変わらなそうなのに、きっとめちゃくちゃ上手いんだろうなぁ……

 

「ん~……どう言うこと?」

 

 どう言うことだろうね。私もわかりません。てか、私は彼女とお話したこともないし。

 なんか、こう……話しかけるなオーラがすごいんです。そんな彼女に話かけるのは、ただでさえ弱虫な私じゃとても無理です。

 

 

「だから私も貴方たちのパーティーに入れて」

 

 

 ……え゛?

 

 






フルフルって可愛いんですかね?
あの世界では女性の方からの人気がすごいそうですが……


と、言うことで第21話でした
これで3人パーティーとなるのでしょうか?
ハンマー、虫棒、笛となんだか変なパーティーです
遠距離武器がいればバランスは取れる……のかなぁ
まぁ、当分新キャラは出ないと思いますが

そしてな何より、名前を決めていないせいですごくわちゃわちゃしそうです

次話はクエストに……行くのかなぁ
なんか行かない気がします
では、次話でお会いしましょう

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