振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

25 / 69
第24話~帰り道でありがとう~

 

 

「笛ちゃんが私たちのパーティーに入ってくれて本当に楽になったね!」

 

 クエストの帰り道。

 流石に慣れてはきたけれど、乗り心地の悪い馬車の上で操虫棍を使う彼女が言った。

 

 あと笛ちゃんって言うのは……私のこと?

 そんなふうに呼ばれたことがなかったからちょっと恥ずかしい。

 

 彼女は私と違ってよく喋る娘だ。私は自分から話しかけるのが得意ではなかったから、彼女みたいな性格は羨ましいって思う。

 私の場合、何かを喋ろうと思っても言葉が出てきてくれない。頭の中ではこう喋ろうって思っても、私の口から声が出てきてくれることは少ない。だから彼女が羨ましかった。

 

 私も彼女のような性格だったら、もっと生きやすい世界になっていたのかもしれない。

 

 

 あの彼がいるパーティーへ入れてもらって初めてのクエストは、上手くいったと思っている。こっそりと笛の練習をしてきたかいがあった。

 うん、まぁ、別にこっそりと練習する意味はなかったのだけど……知り合いなんてほとんどいないし……

 

「貴女の乗り攻撃も良かったから……」

 

 私も彼女に対して何か呼び方を決めた方が良いのかな? 私が笛ちゃんだから、彼女は……虫ちゃん?

 ……いやいや、ダメだ。悪口にしか聞こえない。

 

「ふふっ、ありがと」

 

 うん、良い笑顔。

 笑顔がよく似合う女の子だね。

 

 

 このパーティーへ入れてもらえるかは不安だった。最初はダメかなぁって思った。だって、彼と彼女の二人でパーティーとかカップルにしか見えないから。そんなところへ私なんかが入れるわけがない。

 

 けれども、どうやらそうではないことがわかった。彼女の方はわからないけれど、少なくとも彼はそんなことを考えてはいないみたい。

 だから私は強引ではあったけれど、彼のパーティーへ加えてもらえないか尋ねた。

 

 私の中のちっぽけな勇気を振り絞りました。頑張りました。

 

 そして運が良いことに願いは叶った。ずっと憧れていたパーティーでの狩り。勇気を出して良かったって思う。

 

 チラリと横目で彼の様子を確認。

 目は閉じている。寝ているのか、起きているのかはわからない。

 

 私がこのパーティーへ入りたかった一番の理由が彼。私と同じよう、違う世界から何故かこの世界へ来てしまった人間。

 一番初めに彼と会ったのは、私がジンオウガのクエストから帰ってきた時だった。何かのクエストへ出発しようとしていた彼と目が会い、何故かハイタッチ。意味はわからなかったけれど、悪い気分ではなかったかな。

 

 それから彼とは少しだけ喋るようになった。一緒に食事をしたり、少しだけ雑談したり……

 それは普段の私なら絶対にやらないようなこと。元々話すことは苦手だったし、何よりこの世界の人を私と同じ人間だって思えなかったら。

 

 けれども、彼だけはそんな気持ちにはならなかった。

 彼は何か違うって思った。

 

 それが少し気になったから、あの時の彼がひたすら挑んでいた闘技大会を見ることに。闘技大会を見ることは今までも何回かあった。でも私の性格的に、他人の戦う姿を見るよりも自分で戦う方が合っているみたいで、あんまり面白くはなかったかな。

 それに、ゲームの闘技大会のようにいかに早く討伐するかを目標としていない闘技大会はちょっと退屈。だから、闘技大会を見ることはあまりしなかった。

 

 けれども、彼の出場する闘技大会を見たときの驚きは忘れない。

 まず、一人で闘技大会へ出場するハンターなんていないのに、彼は一人。モンスターの隙を攻撃するのが普通なのに彼は違う。立ち回りで無理矢理モンスターの動きを制限し、隙を作り出しながら攻撃。パターンでも決めているかのような乗り攻撃。

 

 他のハンターとは動きが全然違う。滅茶苦茶だった。

 

 そんな滅茶苦茶な動きのせいで何度も攻撃を受けていたし、挙げ句の果てに体力もなくなりアイルーに運ばれる始末。

 

 でも、そんな滅茶苦茶な動きは確かに私の知っている闘技大会の動きだった。

 もう随分と昔のことになってしまったように思える記憶が、蘇った気がした。

 

 何かが違うと思っていた彼。そして直感でしたかなかったけれど、その何かがわかった。

 そして何より、私は一人じゃないんだって思えてそれが嬉しかったかな。

 

「あら? また寝ちゃってる。んもう、今日くらいは起きてればいいのに」

「いつもそうなの?」

 

 それから彼を追いかけてしまうようになっちゃったのは、仕方の無いことだと思う。なんとなく、一人でクエストを進めていくのだろうと思っていた彼がパーティーを組んだのは意外だったけれど、私がそれを止めることはできない。

 それに、もしかしたら私ともパーティーを組んでくれるかもしれないのだし、悪いことではない。なんて思った。

 

「ん~……いつもは私の方が寝てる気がする。で、でも最近は彼の方がよく寝ているよ」

「別に寝ちゃうのは悪いことじゃないと思うけど……」

 

 そして、ついに私は彼のパーティーへ入れてもらえるように。これでずっと使おうと思っていた笛を使うこともできるし嬉しい。ソロだとちょっと厳しかったけれど、やっぱり自分の好きな武器を使いたいって思っていた。

 

 まだ全然慣れていないから、笛を上手くは使えていない。今日だって、何度も彼を転ばせてしまった。反省。今まではずっとソロでやってきたから、どうしても上手く立ち回ることができない。

 彼のハンマーが私に当たることはなかった。でも、私の笛は幾度も彼に当たった。もっと上手くならないとだ。

 

「まぁ、そうなんだけど……でも、今日は笛ちゃんが私たちのパーティーに入ってくれて初めてのクエストなんだもん」

 

 ……優しいね。貴女は。

 

 この彼女は私たちとは違い、元々この世界にいた人だと思う。それは私が苦手にしていた人。でも、この彼女の優しさは嬉しい。話していても苦にならないし、突然パーティーに加わったのにも関わらず、彼女は嫌な顔なんてせず、むしろ歓迎してくれた。

 このパーティーにいたのが貴女のような素敵な人で良かったって心から思う。

 

 そんな言葉も私の口からは出てくれないけれど、ちゃんと感謝している。

 

「……良いパーティーだね」

「うん、私もそう思うよ!」

 

 そっか。それなら良かった。

 

 この二人より私のHRは高い。でも私はそんなに心が強いわけじゃないから……ずっと一人で戦っていけるほど強くはないから……パーティーに入ることができたのは本当に良かった。

 

 そんな弱虫な私ですが、精一杯頑張るのでこれからもどうかよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

「これからの予定って何か決まってるの?」

「いや、特に決めてないよ」

 

 クエストを終え、集会所へ戻り報酬を受け取ってから直ぐに加工屋へ行き、彼女の武器を受け取った。

 そして、その後は彼女が言っていたように打ち上げ。まだ良くわからないけれど、どうやら彼女はお酒を飲むのが相当好きみたい。

 私もお酒は嫌いじゃないけれど、元々そんなに飲む方ではなかったから、ちょっと戸惑ってます。これもいつか慣れるのかな?

 眠っていた彼も集会所へ着く少し前に起き、今は美味しそうにビールを飲んでいる。

 

「次、どうすっかなぁ……そう言えばさ、この世界ってキークエストある?」

 

 彼女へ聞こえないようにか、小さな声で彼が私に言った。

 

「……たぶんだけど、決められてはいないと思う。それに緊急クエストも」

 

 どれだけのクエストをクリアすれば良いのかとか、詳しいシステムはわからない。

 それに私の場合HR2から3へ上がるための緊急クエストはゴアじゃなくレウスだった。上位ハンターになるための緊急クエストはダレンみたいだけど。

 

「あら、そうだったのか……むぅ、それじゃあ手当たり次第にクエストをやっていくしかないのか」

 

 ある程度クエストを熟すと、あのおじいさんから声をかけてもらえるって感じだと思う。もしかしたら明確なラインがあったりするのかもしれないけれど、たぶん緊急クエストが来るのはあのおじいさん次第。

 

 面倒と言えば面倒だけど、もしかしたらゲームより少ないクエストクリア数で緊急クエストを受注することもできるかもしれない。

 

「どうすっかなぁ……へい、相棒。何か行きたいクエストってあるか?」

「うん? ん~……そだね。あっ、フルフル! フルフルに行きたい!」

 

 あぅ…………フルフル、ですか。

 

「了解。そんじゃ次はフルフルへ行くとするか」

「やたっ、生フルフルとかきっとすごく可愛いんだろうなぁ……」

 

 おいこら、待ちなさい。

 今、なんて言った?

 

 フルフルが可愛い……? ちょっとその感覚はわからないのだけど。

 

「勝手に決めちゃったけど、君もフルフルで大丈夫?」

「えっ……あっ、うん。大丈夫」

 

 正直に言うと、フルフルは好きじゃない。のぺっとして、ぶよぶよして不気味だし、叫び声のようなあの甲高い鳴き声には鳥肌が立つ。

 ゲームをやっていた時も好きではなかったけれど、この世界へ来て生でフルフルを見たときはクエストをリタイアしようか真剣に迷った。

 

「ね、笛ちゃんも可愛いって思うよね」

「……う、うん」

 

 そんな彼女に言葉に私が否定できるはずもなく、頷いた。

 もしかして私がおかしいの? 打ち解けてきたかと思っていたけれど、どうやらこの彼女と私の間にはまだまだ大きな壁があるらしい。

 確かにフルフルは妙に人気のあるモンスター。でも、可愛くはない。決して! 可愛くはないっ!! てか、可愛いモンスターなんていない。

 

「……え? 君もフルフルを可愛いと思っていたの? マ、マジですか? ま、まぁ、好みは人それぞれだもんな……うん、良いと思いますよ」

 

 何と言うか同情のような視線を彼が私へ向けた。心が折れそうだ。

 ああ待って、違うの。本当はフルフルを可愛いとは思ってなんかいないんです。ただ否定できなかっただけなんです。

 

「ふふん、これで2対1だね。君の負けー」

「負けとか言われても……いや、だってフルフル可愛くないじゃん」

 

 私もそう思う。

 でも、もう言っても遅いんだろうなぁ……

 それに私じゃやっぱりそのことを声には出せやしない。

 

 何と言うか……やっぱり人生って上手くいかないって思った。

 

 






フルフルカワイイデス


と、言うことで第24話でした
クエストへ行くのは2話に一回くらいになりそうです
MH4の集会所にはキークエストと緊急クエストが全部で36あります
現在のHRは2であと、30ほどクエストが残っています
ですので単純に計算すると、この作品が完結するのはあと60話くらいでしょうか?

MHX発売に間に合いません
本当にありがとうございました

次話こそフルフルな気がします
てか、相棒さんフルフルが可愛いとか言っていますが、次はソレを狩らないと……
では、次話でお会いしましょう

感想・質問なんでもお待ちしております
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。