ハンマーと言う武器を担ぐにあたって、頭の共存と言うのは不可欠なこと。
スタンをしたら火力の低い俺は退き、虫棒や大剣に譲れば良い。けれども、その前にスタンを取らないとどうしようも無い。
一応、SAを維持させながら殴り続ける攻撃もある。けれども、如何せん火力が出ない。ホームランを入れることで初めてハンマーは使える程度の火力になるのだ。
ハンマーのホームランは自分の身体の右側から正面にかけて当たり判定がある。だから、狭い範囲を共存した場合は相手の右側へ立てば問題ない。そう……俺がホームランで吹き飛ばす問題はないんだけど……
困ったことに、今後も頭を共存していくであろう笛は右側に強い判定のある攻撃をしなければ火力が出ない武器だ。だからもし俺が右側にいるとその攻撃は確実に当たる。
じゃあ、左側に立てば良いのかと言うとそうでもなく、笛は左側にも攻撃する。あと俺のホームランが当たる。
あれから色々と考えてみた。
スタンや乗り、脚ひるみなどで倒れたら俺は頭へ行かず違う部位へ行けば良いんじゃないかとか、例え火力が落ちようがSAの維持できる攻撃はすれば良いんじゃないかとか、そもそも俺が――ハンマーをやめれば良いんじゃないかとか……
でも、それらの考えは何かが違う気がした。
自分にできることは全てやりたい。けれども、それで火力が落ちパーティーに迷惑をかけるようじゃあ仕方無いのだ。
本当に色々と考えました。
さして良くもない頭を使って考えてみました。
そして、そんな俺の出した答えは――
「えと、お願いがあるのですが……」
「……どうしたの?」
笛の彼女にお願いすることでした。
自分でも情けないって思う。けれども、これが一番だと思うんだ。いや、本当に一番なのは俺がハンマーをやめれば良いってことだけど、それは勘弁してください。ハンマー好きなんです。使いたいんです。
そんな我が儘は許して欲しいかなって思う。
「できればで良いのですが……これからはダウンを取ったときの立ち位置を決めませんか?」
前回のクエストはソレを決めていなかったせいで、二人共モンスターの頭のほぼ真正面に位置取っていた。
そうなればSAのない俺はひたすら転ばされる。ダウン時の立ち位置なんてすごく大事なことなのに、今までは相棒としかクエストへ行っていなかったせいで、すっかり忘れていました。
位置取りを決める時は基本的に二人共頭の正面には立たず、少しずれた位置へ立つことになる。そうすればいくらリーチの長い笛でも攻撃は当たらない。だからお互いに頭へ行けるようになる。
しかし、だ。この位置取りを決めると言うのは、この笛の彼女にとってメリットは何もない。つまりこれは完全に俺の我が儘なんです。
「……そう言えば決めてなかったね。うん、わかった。貴方はどっちに立つの?」
……あら、予想以上にあっさりと納得してくれたようで驚いた。
「え、えと。頼んでおいた俺が言うのもアレだけど本当に良いのか?」
「……? 何をそんなに気にしているのかわからないけど……だってそうしないと私の攻撃が当たっちゃうもの。だから私も決めておいた方が良いと思う」
ああ、良い娘だ……
笛の彼女の優しさに感動した。どうかこれからもその優しい君のままでいてね。
「うん、ありがとう。別に俺はどっちでも構わないけど……そうだな、じゃあ俺は正面から見て左へ行くから君は右をお願い」
「了解」
おおー、お願いしてみるものだ。
良かった……これで、これで漸く俺も前見たく気にせず頭をガツンガツンできる。やっぱりハンマーなら頭を殴りたい。
「何かをずっと考えているのかと思ったら……そんなことを考えていたの?」
「うん? ああ、だって前回のクエストは俺がほとんど攻撃できなかったからなぁ」
現在はガタゴトと揺れる馬車の上。
向かうは氷海。目的はフルフルの捕獲。朝出発し、今はそろそろ日が暮れ始めるくらいだろう。その間、ずっと考えていました。
氷海には丸々1日かかるそうだし、着くのは明日の朝になるはず。
「私のことなんて気にせず言ってくれても良かったのに……」
それができない性格なんです。
それに今回のお願いは俺の我が儘なんだ。こんな形になってしまったのも仕方無いと思う。
「それに何かあればどんどん言ってくれた方が私も嬉しい」
……そっか。
もう君も俺たちの仲間だもんな。
うん、了解です。できるだけ頑張ってみます。
「へい、相棒」
「ん~? どしたの? そろそろ寝ようと思ってたんだけど」
本当に眠いのか、目蓋は少し下がり気味。眠いところ悪いね。
あ~……それなら明日、言った方が良いのかな? この相棒、寝たら忘れそうだし。まぁ、また明日も言えば良いのか。
「今回、スタンを取ったら、頭を攻撃してくれないか?」
「いいの? 君を転ばせちゃうけど」
大丈夫、俺は退きますので。
今までのモンスターは頭以外にも柔らかい部位のあるモンスターだった。けれども今回戦うフルフルは頭以外はかなり硬い。
そしてこのパーティーの中で一番火力が高いのはこの相棒だ。だからスタンを取った時くらいは頭へ行ってくれた方が助かる。
「その時、俺は胴体を叩いているから大丈夫。頼んだ。超期待してる」
「うん、わかった。頑張る」
よろしくお願いします。
さて、そんじゃ俺も寝ようかな。
クエスト直前まで寝ていると気分的に体も動かない気がする。それなら早めに寝るのが吉と言うものなのだ。
――――――――
どうやらいつの間にか寝てしまったらしい。
そして、目が覚めてまず初めに思ったことが――
「寒っ!」
そんなことだった。
砂漠の近くと言うこともあってか、バルバレは基本的に温暖な気候。そんな場所に慣れてしまっていたせいか、この寒さは流石にキツイ。
「あっ、起きたんだ。もうちょっとで着くって、ネコちゃんが言ってたよ」
そんな寒さの中でも相変わらず元気な様子の相棒。
太陽はまだ昇っていないけれど、空は明るくなり始めていた。むぅ、本当に丸々1日もかかるのか……面倒くさいな。もし必要素材の関係でマラソンすることになったとしても、氷海はやめておこう。馬車の上でじっとしているのは苦手なんです。
とりあえず腹に何かを入れようと考え、焼肉セットを取り出し肉を焼く。
「あっ、私も食べたい」
了解です。焦げたらごめんね。
さて、相棒は起きているけど、笛の彼女は……ああ、まだ寝てるわ。毛布に包まってすぴすぴと寝息を立てている。
俺も次からは毛布を持ってこようかな。
「ふふっ、ぐっすり寝てるね。これって起こした方がいいのかな?」
――上手に焼けましたー♪
おっし、成功。あともう一つか。上手に焼けた生肉を相棒に渡し、再び生肉を焼く。
ん~……どうなんだろう? せっかく寝ているのだし、着くまで寝かせておいてあげたいけれど……まぁ、でも起こした方が良いのかな?
気持ちよさそうに寝ている笛の彼女の様子を見るとそんな気も失せるんだけどさ。
「……あぁ^~ラグでモンスがぴょんぴょんするんじゃぁ^~」
――上手に焼けましたー♪
寝ている彼女から何か聞こえた。
この彼女、時たま意味わからないこと言うよね……
「……何言ってんだろ、笛ちゃん」
俺にもわかりません。
こんがりと焼きあがった肉へ齧りつく。溢れ出る肉汁がやみつきになりそうだ。ああ、お肉は今日も美味しい。
「ほら、笛ちゃん。そろそろ着くよー」
「うぅ、アカムの三連飛鳥文化なんて聞いてない……」
何その地獄絵図になりそうな攻撃。
ゆさゆさと相棒が揺すったけれど、なかなか起きない笛の彼女。鼻つまんで口から元気ドリンコを流し込めば起きるだろうか。
いや、やりませんよ? ちょっとやってみたいとは思うけれど。
そして、太陽が完全に顔を出したくらいの時になって漸く彼女は起きた。
ぐしぐしと目を擦っているところを見るあたり、まだまだ眠そうだ。てか、どんな夢を見ていたんだろうね?
そんな明らかに寝起きな状態の彼女は自分のアイテムポーチをガサゴソといじってから、何かを取り出し、それを飲み込んだ。
僅かに広がるハチミツの香り。
ああ、元気ドリンコ持っていたんだ。俺も持っているけれど、それは全部相棒が調合してくれたものだから、自分で調合したものは一つも持っていない。
いい加減俺も自分で調合するか。
「おはよう! 笛ちゃん」
「……うん、おはよう」
元気ドリンコを飲んだおかげか、もう眠そうには見えない。便利なものだね。
そんなことから暫くして氷海へ着いた。
氷海がこの調子だと、天空山はどれくらいかかるのかね? 近くはないだろうし、マラソンをするならやっぱり遺跡平原が一番か。
アイルーにお礼を言ってから馬車を降りる。
今回は初の捕獲クエスト。幸いなことに、フルフルは捕獲するタイミングがわかりやすいから、間違えて倒してしまう可能性は少ないはず。
怒りの時の火力の高さや、壁際へ追い込まれてのハメは怖いけれど、倒せない敵でもない。
支給品ボックスからホットドリンクなんかのドリンク系と携帯シビレ罠、捕獲玉を持ち出発。
「おっし、行くかっ!」
「おおー!」
「……おおー」
目標は4スタン。
見た目はアレだけど、苦手な相手ではない。
そんじゃ、ひと狩り行きますか!
一度しかやっていませんがフルフルは4スタン、10分針でした
クンチュウがヤバいです
wikiなんかをみるとフルフルの初期スタン耐性は200と書いてありましたが、たぶん間違えています
少なくとも160以下じゃないかなぁとか思います
またスタン値上昇量若しくは減少量は少な目かと
と、言うことで第25話でした
ま~た、フルフルを倒さずに終わっちゃいましたね
次話はようやっとフルフルとの戦闘です
たぶん、直ぐ終わります
では、次話でお会いしましょう
感想・質問なんでもお待ちしております