振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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第26話~微笑み浮かべて乗り攻撃~

 

 

 フルフルの初期エリアは6。段差もなく戦い易いエリアではあるけれど、天井と壁があるせいでフルフルさんってば直ぐくっついちゃうのよね。

 アレをやられるとせっかく溜めたスタン値がモリモリ減っていくから少し苦手だった。

 

 ま、今はソロじゃなく笛の彼女もいるのだし、スタンはかなり取れると思うけど。

 

 

 支給品ボックスから取り出したホットドリンクを一気に流し込む。

 クーラードリンクと比べ、絶対に飲まなければいけないアイテムではないけれど、できる限り携帯食料は飲みたくない。

 ホットドリンクの調合素材は苦虫とトウガラシ。正直、美味しそうではない。けれども実際に飲んでみると、味は其処まで悪くなかった。なんか味噌みたいな味でした。

 ホットドリンクを飲むと、今までは寒いと感じていたはずなのに、その感覚が一切なくなった。便利なものだ。

 

 そんな準備をしてからベースキャンプを出て、エリア5経由でエリア6を目指す。シャクシャクと積もった雪を踏む感覚がちょっと面白い。

 エリア5ではクンチュウを横目にピッケルで採掘。ドラグライト美味しいです。

 

 そしてエリア6に到着。

 

 のそのそと何かが動いている音が頭の上の方から聞こえた。

 なんでコイツっていつも天井に張り付いているんだろうか。

 

「わっ、わっ、フルフルだ! 本物だ!」

 

 興奮気味の相棒。何に興奮するのか全くわからない。

 初めてリアルに見たフルフルは……うん、やっぱり可愛くはないと思う。

 

 さっさと天井から降りてきてもらうために、フルフルの真下でウロウロしてみる。打ち上げタル爆弾でも持ってくれば良かったかもしれない。

 そして、フォルティッシモ独特の演奏音が流れた時、フルフルの首が伸びあのやたらと甲高く不気味な咆哮が響き渡った。

 緊急回避ー。

 

「うるさっ!」

 

 相棒が耳を塞ぎながら何かを言っていたが、よく聞こえなかった。

 緊急回避から起き上がり直ぐに、笛の彼女の方を目指す。最初に狙われるのは絶対に彼女だろうし。

 

「赤は頭か首。橙は胴体。白は脚か翼。任せた!」

「りょ、了解です」

 

 天井から彼女目掛けて飛び降りてきたフルフルへとりあえずカチ上げ。

 初期スタン耐性はそれほど高くなかったはず。できれば怒る前に一度くらいはスタンを取りたい。

 

 フルフルの動きはかなり遅い。まぁ、見た目とかいかにも遅そうなモンスターではあるんだけどさ。ただその分、コイツの攻撃は出が速い。予備動作がない攻撃も多く、腹下へいると放電を喰らうことだってある。

 

 彼女が後方攻撃をするのを見て、横からフルフルの頭へカチ上げ。フルフルは何処から頭で何処から首なのかが非常にわかりにくい。だからできるだけ先っぽの方へ当てる。先っちょ! 先っちょだけだから!!

 攻撃を一度入れたら直ぐに回避をして距離を取る。そうしないと回転攻撃に間に合わないんです。

 

 フルフルが身をよじり、その身体が青白く光るのが見えた。

 

「お先にどうぞ」

「……了解」

 

 笛の彼女へ一言。その一言で意思は伝わってくれたらしい。

 フルフルの放電が当たらない場所で、右腰へハンマーを構える。

 そして彼女が笛を大きく振り上げてから、その笛を叩きつけた。それは放電の範囲外からの笛、最大威力の叩きつけ攻撃。

 その後、彼女に続いて俺も放電の範囲外からスタンプ。スタンプをする時はちょっと前に出ちゃうから、少しだけ気をつける。

 

 其処で、本日1回目のスタンを奪った。

 

「頭、頼んだ!」

「あっ、はい」

 

 エキスを3色集めきり神々しくなっている相棒へ言葉を落とした。

 

 スタンをしたら頭は虫棒にさっとゆずる。悲しいけれど、これがハンマーにできる一番のことなんです。スタンエフェクトも出ず、ヒットストップもさしてない、フルフルの腹へホームラン。やっぱりちょっと物足りない。

 

 スタンから起き上がったフルフルはその口から青白い吐息を吐き出した。その攻撃チャンスへ、彼女の後方攻撃と俺のカチ上げを決める。

 

「乗るよー」

「任せた」

 

 そして相棒のジャンプ攻撃。

 何だかハメっぽくなっているけれど、それだけパーティーが上手く立ち回れているって言うことだと思う。パーティープレイなぞ、突き詰めていけばハメと変わらないのだ。

 

「えへへ、背中がひんやりしてきもちいい。ふふっ、可愛い奴め」

 

 ……アイツ病気なんじゃないだろうか。

 フルフルを可愛いと言った笛の彼女も、背中に乗った相棒の言葉には流石に引き気味だった。変わった奴だと思っていたけれど、まさか此処までだとは思わなかった。

 恍惚とした表情のままフルフルの背中を斬り付けている相棒の姿なぞ猟奇的にしか見えない。なるほど、これがヤンデレか。

 

 とりあえず相棒の性癖は良いとして、まずは砥石。

 笛の彼女はその間、攻撃強化と風圧無効の演奏をしてくれた。助かります。

 

 相棒の乗り攻撃を成功し、倒れたフルフルへ近づき直ぐに縦1を叩き込む。

 

「ふふん、ねぇ見てた?」

 

 自慢するように言葉を落とした相棒さん。はい、今回は見ていました。

 あまり見たくはない光景だったけど……

 

 さらにクエストの出発前に打ち合わせたよう、左側から頭へ縦2、ホームラン。彼女もちゃんと立ち位置を変えてくれたらしく、フルフルの頭を挟み反対側で笛を振り回していた。

 そしてもう一度、縦1始動からのホームランを入れ、彼女の左ぶん回しがフルフルへ当たった時、2回目のスタンを奪った。

 うむうむ、良い連携だ。これからもこの調子でお願いします。

 

 

 その後も、特に問題なく狩りは続いた。

 強いて言うならトリップした相棒が乗りを失敗したことと、転がってくるクンチュウにブチギレた笛の彼女がフルフルそっちのけでクンチュウを叩きのめしに行ったくらい。

 笛さん超怖い……。怒らせないようにしようって心から思った。

 

 そして、エリアも5番へ移り戦っていると、ピタリと急にフルフルの動きが止まった。

 その動きを見てから急いで納刀。そしてアイテムポーチからシビレ罠を取り出してから設置。間に合えー!

 

「えっ? もう置いちゃうの?」

 

 うん、もう捕まえられます。

 運も良く、シビレ罠が間に合いビリビリと痺れているフルフル。自分自身だって電気を使うのに、シビレ罠にはかかるんだね。

 そして痺れているフルフルへ捕獲玉を2回当てた。

 

 その瞬間、フルフルは横に倒れ、眠ってしまった。捕獲クエスト完了です。

 

「おおー。すごい。捕獲できた!」

 

 流石に0分針ではないと思うけれど、10分針は切ったと思う。お疲れ様でした。

 

 ん~……疲れた。早く帰って温かい食べ物を食べたいところ。

 

「そんじゃ、帰るか」

 

 何と言うか、非常に表現のし辛い笑みを浮かべて寝ているフルフルを見つめている相棒と、未だクンチュウへの怒りが収まっていない彼女へ言葉をかける。もう、やめてあげてよ……

 なんだか変なパーティーだとは思うけれど、悪いパーティーではないんじゃないかなって思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 クエストからの帰り道。ふと、目が覚めた。

 辺りは真っ暗で、いつもなら見えていたはずの満天の星空も雲に覆われているせいか、その姿を確認することはできなかった。

 クエストを終え、いつものように馬車に揺られて帰ったのだけど、その時は直ぐに寝てしまった。相棒もかなり上手くなってくれたおかげで、するような反省もない。

 

 昼間から寝たら夜寝られなくなるんだろうなぁ。とは思っていたけれど、適度に揺れてくれる馬車は容赦なく夢の世界へと旅立たせた。

 

 そして、案の定起きたら夜だ。目もばっちり覚めてしまい、これ以上寝ることも難しい。かと言って、上を見上げてもいつものように瞬く星々を見ることはできない。

 

 暇になってしまいました。

 

 

「……起きたんだ」

 

 ぽそりと静かな声が聞こえた。

 暗いせいで、その表情をしっかりと見ることはできなかったが、その声をかけてきたのがあの笛の彼女だと言うことはわかった。

 

「うん、今ね。相棒は?」

「ぐっすり寝てる。たぶん、ちょっと前までずっと騒いでいたから疲れたんだと思う」

 

 まぁ、今日はやたらとテンション高かったもんな。

 そんなにフルフルと戦えたことが嬉しかったのだろうか。

 

「……このパーティーに入って良かった」

 

 それも静かな声であったけれど、馬車の揺れる音にかき消されることはなく、はっきりと聞こえた。

 

「そっか。そりゃあ良かったよ。正直、俺と相棒だけじゃいつか絶対に躓いてしまう日が来ただろうし」

 

 それもきっと遠くない未来で。

 その時はハンマーを諦めようとも思っていた。けれども、どうやらそれをしなくとも済みそうだ。それは本当に嬉しいこと。

 

 自分の一番好きな武器で戦えないのは辛い。例え、弱いとか邪魔とか言われようが、ハンマーはカッコイイのだ。周りの意見などどうでも良いくらいに。

 モーション値が落ちた? スタンの価値が減った? DPSが低い? ……そんなもん関係ない。コイツの魅力と比べればまだまだお釣りは十分にくる。

 

 使ってみればわかる。

 ハンマーはそれくらいカッコイイ武器なのだ。だからそんな武器を担げている今は楽しい。

 

 そう……楽しいとは思っているんだ。

 

 

「……貴方はまだ帰りたいって思う?」

 

 再び、彼女の声。

 それはいつかした質問と同じものだった。

 

「どうだろうな。確かに帰りたいって気持ちはあるけれど……」

 

 俺はこの世界の人間ではない。だから帰りたいって思うことは当たり前のことなのかもしれない。

 でも、どうして帰りたいのかと聞かれても、きっと俺は答えることができないだろう。これと言った目標もなく生きていたあの人生。そこにこの世界以上の魅力があるのかと聞かれても俺にはわからない。

 

 それくらいには今の世界が気に入っていた。

 

 

「私は今楽しい」

 

 うん、俺もそう思うよ。

 本当にそう思う。そうは思うのだけど……

 

 

 それでも、やっぱり俺は――

 

 

「でも――やっぱり私はあの世界へ帰らないといけないんだと思う」

 

 ……ですよね。

 

 こればっかりは理屈じゃないのだ。

 例えこの世界がどんなに面白かろうが、やっぱり俺たちは帰らないといけないんだろう。

 

 帰りたいか、帰りたくないか。そんなことはわからない。

 

 けれども、帰らなければいけないって思うんだ。どうやったら帰ることができるのかなんてわからないけれど、それでもやるだけやらないといけない。

 それが俺の使命だと思う。

 

「わかってるよ。それはわかってる。だから今も我武者羅に前へ進んでいるんだ。……でもさ、どうせ進むんだったら楽しみながら進んでやろうぜ」

 

 それくらいならきっと許してもらえるはず。

 

「……うん、そうだね」

 

 そう言った彼女の表情はやっぱり見えなかったけれど、たぶん笑ってくれていたと思うんだ。

 

 うん……大丈夫、きっとこのパーティーならどんなクエストだってクリアできる。

 そう自分へ言い聞かせた。

 

 

 






この作品だと氷海へ馬車で行っちゃってますが、どうやら普通は船で行くらしいですね
そうらしいですが、気にせずこのままの設定で行きます


と、言うことで第26話でした
これで漸くフルフルさんは終了です
上位ではフルフル原種の出番がほとんどないのでもう出てこないかもしれません

次話は……ザボアかガララな気がしますが、たぶんクエストには行かないんだろうなぁ
では、次話でお会いしましょう

感想・質問なんでもお待ちしております



~お知らせ~

活動報告でも書きましたが、現在私と一緒にMH4Gをやっていただける方を募集しています
この作品のロケハンも兼ねています
またそうではなく、普通に遊ぶだけでも声をかけてくれればホイホイついていきますのでお気軽にどうぞ
ただ、難しいと私がクリアできないので優しいクエストでお願いします

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