振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

38 / 69
第36話~押し付けに撃龍槍~

 

 

「き、緊張します」

 

 砂上船の甲板の上で、不安そうな相棒の声が響いた。

 

 上を見上げれば雲一つない空に浮かんでいる太陽が輝いていた。照りつける日差しは強く、まさに砂漠と言った感じ。砂の上を走っているせいか、細かな砂が顔に当たり、少しばかり鬱陶しい。

 そしてそれは随分と懐かしい感覚だった。

 

 ああ、そうか。あの時からもう2ヶ月も経ったのか……

 

 それは俺が初めてこの世界に来た時と同じ感覚。あの時は何が何だかわからなかった。けれども今はこの世界にもそれなりに慣れてきたのかなって思います。

 

「……きた」

 

 その巨体を回転させながら、砂の中から現れた全長100mを超える巨大な身体。砂の中からそんな奴が出てきたせいか、顔に当たる砂の量が一気に増えた。今までの敵とはスケールが違う。流石は超巨大古龍と言ったところか。

 

 さてさて、それじゃあ――また一歩進ませてもらおうか。

 

 

 

 

 

 色々と考えてみたけれど、今回はとにかく安全に行こうと決めた。

 ダレンの背中には乗らず、船に用意されている道具をフル活用する。ゲームなら砲術マスターとネコの砲撃術を発動させれば、ソロでも船の上にある道具だけで決戦ステージへいけるはず。

 そして今回はソロでなく3人もいる。それなら十分にダメージは足りるだろう。

 

 適当にしか計算してないけれど、対巨龍爆弾を二つと撃龍槍を当てれば、後は大砲を45発とバリスタを16発当てるだけで決戦ステージへ行くだけのダメージを与えることができる。

 

 だから火力に関しては問題ない。問題があるとすればダレンの攻撃力だ。大タックルは全て阻止する予定だけど、岩石飛ばしで乙るようだと少々マズい。

 まぁ、たぶん大丈夫だと思うけど……

 

 

 そんなわけで、今回は武器を使いません。だからクエスト前に食べる食事もネコの砲撃術が発動するように、肉・乳製品の蒸し料理を選んでもらうことに。

 相棒はその意味がわかっていないせいか、首を傾げていたけれど其処は了承してくれた。飯を食べるだけで火力が1.1倍になるのは大きいんです。

 

 そんな準備をし、相変わらず長ったらしいギルドマスターの話を聞いてから、俺たちはクエストへ出発した。

 砂上船の運転って誰がしてくれるんだろう……なんて思っていたけれど、其処はどうやらギルドの人が責任をもってやってくれるらしい。あと、救出とかもしてくれるんだって。安全運転でお願いしますよ。

 

 砂上船に乗り込んでから直ぐに支給品を受け取った。

 俺はバリスタ用拘束弾とバリスタの弾を10、そして支給用大タル爆弾を2つ。

 相棒がバリスタの弾を10。

 そして対巨龍爆弾は笛の彼女に任せた。

 

 つまるところ、このダレンからこの船を守る仕事はほぼ全て俺が引き受けることに。まぁ、相棒に任せるわけにはいかないから良いんだけどさ。

 

 そして船が揺れ始め、終に砂の上を走り出したことがわかった。

 中にいても仕方が無いため、全員揃って甲板へ。

 

 日差しが強い。

 当たる砂が痛い。

 

 でも、悪い気分じゃない。

 

 いつも通り相棒は緊張している様子。笛の彼女は……たぶん、いつも通りだと思う。いつものクエストとは形式が違うってこともあり、俺もやや緊張気味です。

 

「っしゃ、行くか!」

 

 だから声を出した。

 臆病な自分を前へ進ませるために。

 

「おおー!」

「おおー」

 

 そしてその姿を現したダレン・モーラン。超デカイ。

 

 さて、お祭りの始まりだ。

 

 

「最初は大砲で」

「りょ、了解です!」

 

 ダレンの行動パターンは最初に岩石を飛ばしてくる。けれども、その前に一発は大砲を当てられたはず。

 甲板の後ろの方に一人15発用意された大砲の弾をせっせと運び、大砲へセットしてぶっ放す。轟音と爆風。そして、ダレンの巨体へ着弾した時の爆発が心地良い。

 

 大砲を当てると、ダレンが背中を丸めるような行動をした。

 

「岩石来るぞ!」

 

 できるだけ攻撃を喰らいたくはないから、直ぐに退避。パーティーだと誰狙いなのかわからないのがちょっと辛い。

 彼女の演奏音が響いた。防御力アップ助かります。そして、ダレンの飛ばした岩石が先程まで俺がいた場所へ落下。ダメージがどれくらいなのか確かめてみたいけれど、今ばかりは自分の身が可愛いです。

 

 岩石を避けてから直ぐに、大砲を運ぶ。最初はとにかく大砲! 15回撃ち切るまでひたすら運搬!

 3発目の大砲の着弾を確認。

 

「撃龍槍やってくる。爆弾頼んだ」

「……了解」

 

 そう彼女へ頼んでから急いで船首の方にある撃龍槍のスイッチの場所へ移動。

 ダレンが砂上船へその身体を押し付けようとするモーションを見てから、撃龍槍のスイッチを全力で叩いた。

 キュルキュルと仕掛けの音が鳴り、回転しながら突き出た撃龍槍がヒットエフェクトを弾けさせ、ダレンの立派な角へ直撃。

 むぅ、3ヒットか……できればフルヒットしてもらいたかった。

 

 撃龍槍を撃ってからはまた直ぐに大砲の弾を運搬する作業へ戻る。今のところ行動パターンはゲームと同じらしい。

 まぁ、例え行動パターンが変わっていてもやることは変わらないんだけどさ。

 

「……任務完了。退避ー」

 

 爆弾を置いてきてくれたらしい彼女がダレンの背中から飛び降りてきた。そんな彼女となんとなくハイタッチ。乾いた音が乾いた空気に響いた。

 お疲れ様。助かりました。

 

 その後は三人揃ってひたすら大砲の弾を運んだ。一度ダレンの飛ばした岩石が俺に直撃したけれど、即乙はしませんでした。うむ、これならいける。

 応急薬を飲んで体力をマックスに戻してから、また大砲運びへ戻る。

 

 そして直ぐにダレンの小タックルが砂上船へぶつけられた。

 ダレンの小タックルはバリスタの位置では当たるけど、大砲の位置なら当たらない。

 

「な、なんか、ミシミシ言ってるけど、これ大丈夫なの?」

 

 不安そうな相棒の声。

 大丈夫。この船かなり頑丈だから、あと20発くらいは耐えるよ。

 

 小タックル後、2回大砲を運んでから俺だけバリスタの位置へ移動。ダレンが大きく身体を引いたところで、バリスタ用拘束弾を発射。俺の発射した拘束弾がダレンへ当たると、更に数本のワイヤーが伸びダレンを拘束した。

 面倒なので流石に大タックルは防がせてもらいます。

 

「大砲、終わっちゃった! どうすればいい?」

「バリスタをどんどん頼む。狙うのは角以外で!」

「了解です!」

 

 むぅ、もう15発打ち切ったのか。意外と早いんだな。

 未だ拘束されているダレンへ彼女と一緒に大砲を当てる。これで俺も大砲の残りは5発。

 

 更に大砲を当てていると、ようやっと拘束を解いたダレンの身体が少しばかり砂へ沈んだ。この時は大砲がダレンの上を通り過ぎてしまうためちょっと待機。大砲もバリスタみたいに向きを変えられれば良かったのにね。

 そして何処に隠していたのかわからない角のようなものが、ダレンの背中から生えてくるのが見えた。それを確認してから、最後の大砲をぶっ放した。

 これで俺も大砲は終わり。バリスタ撃ちます。

 

 できるだけ多くバリスタを当てたいから、怯ませないよう、角以外の部位をバリスタで狙う。ダメージはもう足りていそうだけど、念の為できるだけダメージを稼ぐのです。

 

 背中を丸めるようなダレンのモーションが見えた。慌ててバリスタの位置から退避。その瞬間、ダレンの背中から角のような岩石が発射され、バリスタのあった場所を塞いだ。……面倒臭い。

 

「うわっ、なんかある! えと……これ、どうすればいいの?」

 

 そのための爆弾です。

 支給品から受け取っていた大タル爆弾2つをセット。そして武器出し攻撃で起爆してから、一拍置いて爆風をフレーム回避。

 バリスタを塞いでいたものを破壊完了。作業へ戻ります。

 

 

「……ダメージ足りそう?」

「たぶん、もう足りていると思うけど……自信はないかな」

 

 支給品として受け取ったバリスタ10発も撃ち終わり、船の上にあるバリスタの弾を拾っていると彼女が声をかけてきた。

 計算が正しければもう決戦ステージへ行けるだけのダメージを与えたはず。だからもう銅鑼を鳴らしても良いはずだけど……やっぱりちょっと不安です。

 

 ま、足りなかったら足りなかったで良いか。

 

 そんなことを思い、そしてバリスタの弾を10発拾ってから、銅鑼を鳴らすためのスイッチを叩いた。

 そして砂漠に広がる轟音。更に砂上船へ頭から突進しようとしていたダレンがその銅鑼の音に怯んだ。

 

 これで、ダメージが足りていれば決戦ステージへ。足りていなかったら、砂上船を飛び越え今とは反対側でまた戦うことになるはず。

 

 銅鑼を鳴らしたは良いものの、やっぱりちょっと不安だったから、先程拾ったバリスタをできるだけダレンが潜る前に当てておいた。

 

 ゆっくりと砂の中へ沈んでいくダレン。

 飛ぶなよ……出てくるなよ……なんて心の中でお祈り。

 

 そして、暫くしてもダレンが船を飛び越えることはなかった。どうやらダメージは足りていたらしい。一安心です。

 

 

 さて、この後はどうなるのかな。なんて思っていると、ギルドの人が出てきてダレンが潜るのを止め、完全に砂上へ現れたことを確認したから其方へ向かうと教えてもらった。

 どうやらこのお祭りもそろそろ終盤らしいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砂上船を止め、砂漠へ降り立つと船の後ろにはうっすらとだけど、バルバレの姿が見えた。

 おおー、思っていた以上に遠くへ来ていたんだな。

 

「い、今からアレと戦うんだよね……どうすればいいんだろ」

 

 そして、そのバルバレのある反対側からはのそのそとゆっくりしたスピードでダレンが近づいてくるのが見えた。

 

「バリスタ撃ってれば大丈夫だよ」

 

 30数発で倒せるはず。

 お祭りの終盤とは言え、はっきり言って此処からは何も危ないことはない。角も壊していないからダウンも取れるし、たぶん大砲が届く距離となる前に倒すことができる。

 強いて言うなら飛ばしてくる岩石に気をつけるくらいだと思う。でも、あの攻撃でも即乙はしないのだし……

 

 

 つまるところ……この勝負は俺たちの勝ちです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その後は本当に何事もなくダレンを討伐することができた。倒したのは初期から船のある位置の半分くらいと言った場所。あの場所なら大砲は届かなそうだ。

 うむうむ、やはりソロじゃないって言うことが本当に大きかったね。

 

「おおー倒した!! すごい、見て! 倒したよ!」

 

 いつも以上に興奮している様子の相棒さん。

 しっかり見ているので大丈夫です。

 

「……お疲れ様」

「うん、お疲れ」

 

 そして、彼女ともう一度ハイタッチ。意味があるのかはわからないけれど、なんとなく気分は良い。

 

 さて、漸くこれで俺たちも上位ハンターだ。

 でも、本当に大変なのは此処からだよなぁ……

 

 

 







~ダメージ計算あれこれ その2~

前回の続きです
また、長いです
超長いです
飛ばしていただいて何の問題もありません

また、今回は私独自の考えがかなり含まれておりますので、あまり鵜呑みにはしないでください
これは私の個人的な意見と思ってください

では、始めます

前回のあとがきでダメージ計算について書きましたが、まぁ、面倒臭い仕様なんだな。と思っていただけたかと思います
そのことに関連して今回はDPSについて書きます

以前単語説明でDPSについて書きましたが、DPSとは要は火力の指数のことです
ただ、このDPSの計算が非っ常に面倒臭いのです
DPSの計算ですが、簡単に書きますと、モンスターに与えたダメージをその攻撃していた時間(秒)で割れば出すことができます

そう書くと簡単そうですが、前回のあとがきに書いたようにその与えたダメージを算出することがとても面倒です
攻撃をする時、当たり前ですが、モンスターは動きます
しかし、DPSを計算する場合、同じ部位に攻撃を当て続けなければいけません
そのため、太刀などの攻撃範囲がとても広い武器でDPSを算出するのは、ほぼ不可能なんじゃないかなぁと思っています
更にガンナー……特に貫通弾となりますが、クリティカル距離の問題や、ヒット数の問題、貫通するせいで違う肉質へダメージが入る問題がありますので、もうどうして良いのかがわかりません
現に、MH4Gの各武器別の信頼できるDPSの値を算出されている方は見たことがありません
たま~に、個人ブログなどでDPSの値を書いている方もいますが、条件を書いていなかったり、いやいや、それMPSじゃないですか? とか、ちょっと信用が……

もちろんDPSを算出できれば良いのですが、それは難しいと言うのが私の考えです
そこで、じゃあ火力の指数は何で判断すれば良いのかとなりますが、MPFと言うものがあります
MPF:Motion Per Frameの略です
どう言うものかと言いますと、1F辺りのモーション値となります
これならダメージを計算する必要がないため、空振りでも計算することができます
MPF算出方法ですが……
以前書いたようにモンハンは30fpsです
ですので、動画を作成し更に1秒に30コマにカットして、その武器の最高の火力となる攻撃をやります
そしてその攻撃全てのモーション値を足し、その攻撃にかかったコマ数で割ればMPFが算出できます
私は機材の関係で手伝ったことしかありませんが、この方法なら火力の指数の算出ができなくもないです
そして、実際に色々な武器でMPFを計算してくれた方がいますので、調べると割と簡単に各武器のMPFが見つかります
因みにですが一番高いMPFはやっぱり操虫棍です
ぶっちぎりです

ただ、このMPFにも問題があります
どんな問題かと言いますと、以前ごく説明で書いたように、モンスターへ攻撃するとその肉質と武器の切れ味によってヒットストップがかかります
そしてMPFの計算方法ではこのヒットストップを全く考慮していません
特に手数の多い武器ではMPFは変わりませんが、DPSは絶対に落ちます
そのため、DPS=MPFではないこともあります
また、ヒット数がわかりませんのでガンナーのMPF算出はやはり困難です

さて、また長くなってしまったので今回も此処までにします
今回私が言いたかったことは、そもそも計算できないのだからDPSなんてあまりあてにならないのではないでしょうか。と言うことです
火力の目安にするのは良いと思いますが、それだけが武器の強さではありません
確かにDPSの低い武器は強くありません
けれども、DPSだけでその武器の強さを語るのはちょっと違いそうです

まぁ、つまりDPSなんて気にせず好きな武器を使いましょうってことです
ダメージ計算だけが全てではないのですから

わからないことや意見などがあればお気軽にどうぞ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。