振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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第42話~ゴリ押しに山権現~

 

 

「っしゃー! 鳥竜玉出た!!」

 

 思わず、大きな声を上げてしまった。だってたぶん、これでもう倒したドスジャギィの数は9頭目になると思うから。

 他の素材は足りていたけれど、玉がなかなか出てくれないせいで、ジャギィSの腕だけ作ることができなかった。けれどもこれで漸く俺も上位の一式防具を身につけることができる。

 他の二人はとっくに素材は集めきり、既にジャギィS一式を装備している。そうなることはわかっていたけれど、全員が同じ装備って言うのはやっぱり変な感じがした。まぁ、武器まで同じってわけではないからまだ良いのかな?

 

「おおー! おめでとう!」

 

 うん、ありがとう。悪いね、俺のためだけに付き合ってもらっちゃってさ。

 この相棒にも、笛の彼女にも随分と長い時間付き合ってもらってしまった。出ないものは仕方無いけれど、やっぱり申し訳ない気分になる。

 

 さて、これで漸く上位防具一式を装備することができる。だから次は武器を作っていきたいわけだけど……俺の場合、山権現があるから当分は問題ない。

 そうなると彼女の笛か、相棒の操虫棍になる。そして彼女は既に加工屋へマスターバグパイプを依頼していると言っていた。相変わらず仕事の早いことで。

 

 つまり、次にやらなければいけないのは相棒の操虫棍を強化することだけど……操虫棍ってホント、武器の種類が少ないんだよね……

 今使っているスニークロッドを強化するのが一番だとは思うけれど、そのためにはレビテライト鉱石が必要。そしてそのレビテライト鉱石は天空山でしか出ない。現時点じゃ上位の天空山へ行くことはできないから、下位の天空山のクエストへ行くことになるのだけど……正直、面倒なんです。

 

 いや、行った方が良いのはわかっているんだけど、此処までテンポよく進んで来たのにそれが戻ってしまうようでちょっと嫌だった。それに天空山って遠いらしいし。

 むぅ、飛び級した弊害がこんな形で出るとは思わなかった。でも相棒の武器を強化するのが、このパーティーの火力を上げるために一番大切なんだよなぁ……そうなるとアサルトロッド? むぅ……毒と睡眠を比べた時、どっちが良いんだろうか。最終的にはヤマタになるとは思うけれど、それまでが難しい。

 

 どうしたものか……ま、正直なところどっちでも良いのだし、本人が好きな方を選べば良いか。きっとそれが一番なはず。

 

 そんな考え事をしながらドスジャギィから更に剥ぎ取り。そう言えば、これでもうコイツと戦うことはないのか。

 たぶん、このドスジャギィはイャンクックの次に俺が倒したモンスターなはず。

 

 

「ありがとう。いただきました」

 

 

 そして剥ぎ取りを終え、最後の挨拶。

 これからドスジャギィと戦うことはないと思う。俺が初めて会い、初めて倒されたモンスター。それも此処でお別れ。上位のドスジャギィと初めて戦った時は蔦ハメを使った。けれども、あの後どうにもまた蔦ハメをやる気にはならなかったのと、蔦エリアへの誘導が上手くいかないせいで、結局蔦ハメを使うことはなかった。

 そのせいで、どうしても討伐にかかる時間は増えてしまったけれど、やっぱり俺にはこっちの方が合っているかもしれない。ハメが悪いとは思わないけれどさ。

 

 うん……ありがとう。お前のおかげで俺は此処まで来ることができた。

 感慨深いこともあるけれど、そんないつも通りの言葉を落とす。お前に倒されてからそれなりの時間は経ったけれど、自分はちゃんと前に進めている。これからも止まるつもりはない。

 

 さようなら。

 お前からもらったこの素材、きっと大切にさせていただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

「これからはどんどん上位のモンスターと戦っていくんだよね?」

 

 遺跡平原の帰り道はこのパーティーでは珍しく特に会話もなく、さっさと皆して眠ってしまった。

 そしてバルバレに戻り俺の防具を加工屋に頼んだ後、例のごとく相棒がせっかくだから飲もうと言ったので、3人仲良くいつものように打ち上げ。そしてお金がホントにピンチです。護符が買えません。

 まぁ、これで防具も揃ったのだし、今のところは良しとしよう。

 

「そだね。でもとりあえず君の武器を強化しないとかな」

 

 クエストで疲れた身体に冷たいエールは良く染みる。

 ビール美味しいです。

 

「強化……スニークロッドの?」

「うん、それでも良いし、新しいのでも良いし」

 

 本当にそれはどっちでも良い。毒と睡眠どっちが好きなのかで選ぶくらいで良いんじゃないだろうか。必要になるのはどの道ネルスキュラ素材。

 ただ、スニークロッドを強化するのなら下位の天空山へ行かないとってだけ。

 

「それってどっちがいいの?」

 

 それはなんとも言えないです……

 ん~……どっちが良いのだろうか。ゲームをやっていた時はヤマタしか担がなかったせいで、どっちが良いのかがわからない。

 

「君の好きな方で良いよ」

 

 だからぶん投げました。

 だって、俺もわかんないんだもん。

 

「えー、それはちょっと怖いよ……ねぇ、笛ちゃんはどうした方がいいと思う?」

 

 相棒がそう尋ねると彼女は、えっ、私に聞くんですか? 的な顔をした。それがちょっと面白かった。でも、ちゃんと会話に参加してください。

 

 そう言えばこの彼女は操虫棍を使ったことはあるのだろうか? ゲームの中や、この世界で。

 

「新しい武器って言うと……アサルトロッド?」

 

 そんな彼女の質問。

 

「うん、そのつもりで喋ってたけど……他って何かあったっけ?」

 

 あるとしたら、キリン棒やソリッドグレイブとかになるのかな? でもキリンとは戦えないし、ソリッドグレイブは……うん、まぁ、武器が武器なのだし弱くはないと思うけど、ちょっとなぁ……

 ヤマタが強すぎるせいか、他の操虫棍の印象がどうしても薄くなる。

 

「えと……今の段階じゃ特にないと思う。アサルトロッドで良いんじゃないかな」

「わかった、じゃあソレにする」

 

 彼女の言葉を聞き即決した相棒さん。

 知識の差的に俺たちの意見を参考にするのは良いことだと思うけど、もうちょっと我が儘を言っても良いんだけどなぁ……ただ、アサルトロッドを選んだことが間違っているわけでもないから難しいところです。

 

「了解。んじゃあ、次はネルスキュラだな」

 

 上位のネルスキュラって行動パターン変化したかな。ん~……ちゃんと覚えてないや。まぁ、なんとかなるか。

 

「君の武器はいいの? その武器って確か下位の武器でしょ?」

 

 いや、まぁ、俺だって強化できればしたいけど……ブーステッドハンマーには下位のゲネル・セルタスの素材が、ファッティプッシュを強化するにしてもレビテライト鉱石が必要なんです。山権現に至っては上位のダレン素材が必要だからかなり先のこととなる。

 それに山権現だって弱いわけじゃない。斬れ味が青まであるのは大きいです。だから、行けるところまではこれで行きたい。

 

「まぁ、俺は当分大丈夫だよ」

 

 俺がそう答えると、相棒は少しだけ不満そうな顔をした。

 あら、もしかして逆に気を遣わせてしまったのだろうか。でもなぁ、例え俺の武器を強化したところで、滅茶苦茶強くなるかと言うとそうではないのですよ。ファッティプッシュをヘビープレッシャーまで強化すればそれなりに強くは……たぶんなる。でも、其処まで強化するのはまだ無理だったりします。

 それに俺の防具の素材を集めるため、二人の進行を妨げてしまった。そんなことも気にしているのです。

 

「むぅ……また遠慮してるでしょ?」

「してない、してない」

 

 本当はちょっとだけしてます。

 でも、作る武器がないと言うのは本当のこと。操虫棍と比べてハンマーを武器の種類が多い。多いのだけど……まぁ、アレだ。現時点で作ることのできるハンマーって全部似たり寄ったりなんです。そんなところも不遇だと思う。

 

「じゃあ、いいけど……でも、別に私は君のためだけにクエストへ行くことを気にしないよ?」

「……私も」

 

 ああ、いや、それは嬉しいけど……本当に今回は大丈夫なんです。

 あ、あぅ……ちょっと恥ずかしい。

 

「うん、ありがとう。でも今回は大丈夫だから、そだね……次に防具を作るとき、よろしくお願いします」

 

 色々と悩んだけれど、どんな防具を作るのかは決めました。

 その時は下位のクエストへも何度か行かなきゃいけないことになる。その時、改めてお願いします。

 

「ま、とりあえず今は相棒の武器を強化しよう」

 

 なんとも恥ずかしかったから、やっぱり無理矢理話をまとめた。

 きっと顔は赤くなっていると思うけれど、それはアルコールのせいだと信じたい。うむ、やっぱり俺にはもったいないくらい良いパーティーです。

 

 上位のネルスキュラならドスジャギィのようにはいかないと思う。ああ、でも防具もあるし割と簡単な気も……う、うんまぁ、油断せずにいこう。

 

「了解!」

「……了解」

 

 とりあえず防具は揃った。

 当分はこれで進むことはできるはず。もし止まるとしたら……ブラキから先だよなぁ。それまでにはなんとか防具も組んで、俺の武器だって強化しないとだ。

 

 

 そして、それはまだまだずっと先のことだけど……相棒の防具、どうしよう。

 

 

 


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