振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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第44話~再会は明後日~

 

 

「ほっほほ。上位ハンターとなっても順調みたいだね」

 

 原生林からバルバレに戻り、報酬を受け取ってから相棒の武器を作るために加工屋へ行こうとした時、ギルドマスターに捕まった。

 声をかけてくれるのは良いけれど、お話は短くしてくれると嬉しい。いくら防具が揃ったとは言え、上位ハンターとなってから倒したモンスターはドスジャギィとネルスキュラだけ。焦ったところで仕様が無いけれど、できるだけ早くHR5となり上位の氷海や天空山へ行きたい。

 

「まぁ、今のところはね」

「うむ、よきかな、よきかな」

 

 順調とは言っても、防具はジャギィ装備で武器だって強いわけじゃない。まだまだ駆け出しの上位ハンターと言ったところ。

 

「そんなキミたち宛に“緊急クエスト”が届いたよ」

 

 ……うん? 緊急クエストですと?

 

「……それは流石に早くない?」

 

 笛の彼女の言葉。同感です。

 流石にこれは早すぎる。防具も揃ったわけだし、悪いことではないけれど……

 

「うん、確かに早い。けれども、前も言ったように今はとにかく上位ハンターが不足しているんだ。そしてタイミング悪く、そろそろ地底洞窟の火山が活動を始めると言う報告が入った。だから此方としても直ぐにHR5以上のハンターが欲しい。そんな理由でキミたち宛に緊急クエストが届いたんだよ」

 

 ふむ、どうやらギルドもかなり苦労していそうだ。

 そして地底洞窟の火山がねぇ……つまり地底洞窟は地底火山へ変わるってことだろう。地底火山には厄介なモンスターが多い。ブラキとかブラキとか……

 流石にこの装備でブラキはキツいです。即乙だってあるかもしれない。

 

 さてさて、どうしたものか。話の内容的に地底洞窟はまだ火山マップとはなっていないってことだろう。そうなると、この緊急クエストは……ゲーム通りレイア亜種になるのか? 苦手な相手じゃないけれど、ジャギィ装備って良く燃えるんだよなぁ……

 

「それで、その緊急クエストの内容って何なんですか?」

 

 あら? 珍しく相棒が怯んでいない。

 もうちょっとわたわたするのかなと思ったけど……

 

「ゴア・マガラの狩猟だよ。ゴア・マガラは非常に謎の多いモンスターだ。どうやら狂竜化ウィルスと関係があるみたいだけど、今のところ詳しいことは全くわかっていない。けれども、危険なモンスターには違いない。そこでキミたちに頼みたいんだ」

 

 おっと、そっちが来たか。

 ん~……そっか、飛び級をしたせいか俺たちは下位でゴア・マガラとは戦っていないもんな。何処かで戦うだろうとは思っていたけどさ。

 ゴアなら今の装備でも、なんとかなる気がする。ゴアは決して弱い相手じゃない。それでもちゃんと装備さえ整えれば負けないはず。だから、せめて相棒の新しい操虫棍が完成するまで待っていてもらいたい。

 

「それは何時までに受ければ良いんだ?」

「そうだね。遅くても10日以内にはお願いしたいかな。とは言っても断ってくれても構わないよ」

 

 10日……それならもし素材が足りなかったとしても、またネルスキュラのクエストに行く時間と、武器が完成するのにかかる時間はありそうだ。俺の防具は今日中に完成するはずだし、それならなんとかなるかな。

 

 さて、俺は此処でHR5となってしまいたいところだけど……他の二人はどうなんだろうか。

 

「どうする?」

「……私は大丈夫」

 

 彼女の声。

 

「うん、私も大丈夫だよ」

 

 相棒の言葉。

 そんな言葉には少し驚いた。でも、無理をしているようにも見えはしなかった。何かあったのかな?

 

「了解。それじゃあ、その緊急クエストを受けるよ。準備ができたらこっちからまた声をかける」

「ほっほほ。うん、待っているよ」

 

 さて、これで次にやることが決まった。

 相棒の武器が完成したら直ぐに行きたいところだけど……一つやりたいことがあった。本当は今回のクエストで集まってしまえば楽だったんだけどなぁ。そしてそれは一人で問題なくできること。

 だからちょいと時間をくれれば嬉しいけど。

 

「とりあえず、加工屋へ行くか」

「うん、そうだね」

 

 ま、これで素材が足りなければもう一度ネルスキュラへ行くことになる。

 それでネルスキュラへ行くことになれば、俺の欲しい素材だって手に入るだろうし丁度良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、アサルトロッド改だな。確かに素材は受け取った。明後日の夕方までには完成させておくよ」

 

 ……素材足りちゃったよ、おい。

 ホント、どうなっているのだろうか。いや、決して悪いことではないけれど、簡単に集まりすぎじゃない? 妖怪イチタリナイが全く仕事しない。物欲センサーどこ行ったよ。

 ああ、後俺の防具も受け取りました。これでジャギィS一式が揃い、俺も晴れて上位防具です。

 

「えと、それでこれからはどうするの?」

 

 相棒の声。

 さて、どうしようか。俺はちょいと行きたいクエストがあるのだが……

 

「どの道、相棒の武器が完成するまで待たないとだけど、それまでは……何か行きたいクエストってある?」

「……ノヴァクリスタルって今の段階で採取できたっけ?」

 

 ああ、うん、確か原生林と地底洞窟の……いや、ダメか。そう言えば秘境行けないじゃん。採取できないわ。むぅ、ノヴァって地味にレア鉱石だよね。それでいて色々な装備に要求されるし。

 まぁ、獄炎石よりはまだマシかもしれない。

 

「現状じゃ採取は無理かなぁ。だからゲリョスからになると思う。何に使うの?」

「……クロムメタル」

 

 ああ、腰の胴系統倍化か。

 俺は今のところ使う予定は無いけれど、いつか使うよなぁ。最終的にはグリードやバンギスになるとは思うけれど、それまでだって使うかもしれない。

 あと、完全に俺の趣味だけど、腰の胴系統倍化はクロムメタルコイルが一番好きだ。女性のクロムメタルコイルとか本当に好みです。二人には是非装備してもらいたいと思わないでもない。

 

「……じゃあ、私は上位のドスゲネポスくらい。貴女は?」

「私は特にないよ。てか、何を作ればいいのかわかんないもん」

 

 まぁ、相棒はそうだろうな。いつかちゃんと装備だって考えてあげないとだ。んで、彼女はドスゲネポスか。ん~……記憶が曖昧だけど、ガララ笛にドスゲネポス素材を使った気がするし、たぶんそのためだろう。

 

 ドスゲネポスなら……二人でも行けないかな? 動きが早く鬱陶しいけれど、しっかりと動きを見れば強い相手では無い。相棒だってドスゲネポスが相手なら3色集められるだろうし。

 

「あー……その、ですね。一つ提案しても良いですか?」

「そりゃあいいけど、どしたの?」

 

 このメンバーなら俺のクエストを手伝ってくれるとは思う。でも下位クエストで、しかも旨味なんてほとんどないものに連れて行くのはちょっと申し訳ない。

 

「俺は下位の氷海へ行きたいんだけど、一人でもクリアできるだろうし、君達が行ってもメリットがほとんどない。だから俺一人で行こうと思っていますが……ど、どうですか?」

「……目的は?」

「うさぎ」

 

 前回の報酬を受け取ったとき、回避性能6スロ2と言う、俺には珍しくかなり良いのが出てくれた。回避性能があれば世界が変わる。だから今はうさぎの腹甲が欲しいところ。

 

「……わかった。じゃあ、私たちはドスゲネポス行ってくる」

 

 おおー、良かった。

 俺が行ってもドスゲネポスが相手じゃほとんど戦力にならないだろうから、助かります。ハンマーは小さい相手との乱戦が苦手なんです。

 

「んじゃあ、暫くの間は別行動ってことで。明後日の夕方には俺も戻っているだろうから、その時にまた会おう」

 

 できれば2頭クエストへ行きたいけれど、例え1頭クエストで流石の俺でも、一回行けば素材は足りるはず。そして回避性能がつけばこれから一気に楽になる。ゴアなんかは特に。

 

「う~ん……了解。それじゃあ私は笛ちゃんと一緒にクエストへ行けばいいんだよね?」

 

 相棒も何かを言いたそうではあったけれど、どうやら納得してくれたらしい。悪いね、せっかくのパーティーなのに、別行動をとっちゃって。

 

「うん、そうだね。ま、二人ならドスゲネポスだって倒せると思うよ」

 

 この二人は普通に上手い。

 それこそ、今の状態でもゴアを倒すことができるんじゃないだろうか? 俺も足を引っ張らないよう頑張らないと。

 うん? ああ、でもこの二人だけでクエストへ行くのって初めてなのか。まぁ、仲だって悪くないだろうし、問題はないと思う。ただ、どんな会話をするのかちょっと気になるかな。俺の悪口で盛り上がらないことを願う。

 

「そんじゃ、サクッと行ってきたいから俺はもう出発するわ」

 

 なんでウルクススさんってば遺跡平原に出ないんだろう。そうすればもう少し楽なのに。ゲームならイベントクエストとかもあり、闘技場でも戦えたんだけどなぁ。まぁ、無いものをねだっても仕方無いか。

 

「えっ? もう行くの? 別に急ぐ必要はないと思うけど……」

 

 だって氷海遠いんだもん。

 それにやりたいことが決まっているのに、動かないのはどうも性に合わない。止まっていることが苦手なんです。

 

「ま、大丈夫だよ。行くときに寝れば疲れだって取れると思うし」

「そうかなぁ……気をつけてね」

 

 そちらこそ頑張ってください。

 

 それじゃ、また二日後に。

 

 なんて言葉を落とし、手を挙げてから二人と別れた。

 

 さてさて、久しぶりのソロクエストだ。それをちょいとばかし楽しみにしている自分がいます。

 

 


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