振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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第45話~滑空へホームラン~

 

 

「君ってどう言う防具にするの?」

 

 原生林へと向かう馬車の上で彼女に質問した。

 先日は久しぶりのソロでクエストへ行ったわけだけど、何と言うか……まぁ、やっぱり少し寂しかったです。クエストは問題なくクリアでき、装飾品を作ることもできた。でも、ソロと言うのは精神的になかなか疲れる。それが良いことなのか、悪いことなのかはよくわからない。

 けれども、回避性能のスキルをつけることができたわけだし、行って良かったとは思っている。これでフレーム回避がかなり楽になりますな。

 

 彼女たちも問題なくクエストをクリアできたと言っていたし、やはり別れて良かったかもしれない。それにしても、二人はどんな会話をしたんだろうなぁ。

 

「頭がディア、胴ナルガで腕はグラビ。あとは胴系統倍化にする」

 

 えと、それでつくスキルは……匠、回避性能とあとはなんだろうか。まぁ、スロットは沢山あるし、他にも色々とつきそうではある。でも、ディア素材って確かブラキ素材と交換だったよなぁ……うん、頑張ろう。

 

「貴方は?」

「ゴアゴアにしようかなって思ってる」

 

 すごく良く燃えるけれど、当たらなければ良いのだ。匠挑戦者はそれ以上に価値がある。挑戦者を付けるための装飾品を作ることができればもっと選択肢はあったんだけどなぁ。

 いっそナルガ倍化もありかなとは思った。でも、やはり火力は欲しい。あと、スカルヘッドはちょっと……

 

 ふむ、彼女はナルガ胴を装備するのか、人気もあるし俺だって可愛い装備だとは思うけれど……

 

「……どうしたの?」

 

 こてりと首を傾げられた。そんな彼女の身体の一部に自然と視線が移る。

 今はジャギィ装備だからそれほど目立ちはしない。でも、ナルガ胴装備となるとそうはいかないだろう。

 

「……いや、なんでもないです」

 

 彼女がそのことを気にしているのか、気にしていないのかはわからないけれど……まぁ、余計なことは言わないに限る。

 それにほら、全員が全員大きい方が好きってわけでもないのですよ。うん、だから頑張れ。

 

 俺、個人的な意見だと、ないよりはあった方が良いです。

 

 

「ねぇねぇ、ゴア・マガラってどんなモンスターなの?」

 

 それと比べてこの相棒の方は……いや、もう考えるのは止めよう。そんなことを考えたところで誰も得をしない。

 

「ん~……身体は黒くて、口から濃い紫色の奴を吐き出すよ。あと飛ぶ」

「なにそのバケモノ」

 

 いや、化物ですし。

 分類的には、確か飛竜でも古龍でもなかったと思う。まぁ、動き自体はシャガルと変わらないのだから、もう古龍で良い気がするけど。ああ、でもアイツは罠にかかるのか。それじゃあ古龍と認めるわけにはいかんな。

 一応、設定上はシャガルの未成熟個体だったはず。でも、今のギルドは其処までのことをわかっていないと思う。あと、シャガルと違って閃光玉は効かない。どうやらゴアには目がないらしい。

 

「ブレスと土下座にさえ気をつければ大丈夫だと思うよ」

「土下座?」

 

 うん、土下座。叩きつけとか、倒れ込みなんて言われることもあるけれど、土下座が一番しっくりくる。予備動作がわかりやすいし、当たることはほとんどないと思うけれど、当たるとすごく痛い。

 あと咆哮のフレーム回避が難しいかな。判定自体は短いけれど、やたらと出が早いです。他のモンスターと同じタイミングでフレーム回避をしようとするとまず失敗する。

 

「う、う~ん、よくわかんないけど、そんなに強いモンスターではないの?」

 

 それはどうだろうか?

 流石に俺は慣れたけれど、初見はとてもコロコロされた。懐かしいなぁ。

 

「弱い相手じゃないよ。今まで戦った相手の中じゃ一番じゃないかな」

 

 正確に言うとジョーが一番だろうけれど、アレはノーカン。

 

「あっ、やっぱり?」

 

 てか、これから戦っていくモンスターで弱い相手なんていないと思う。モンハンはここからがキツい。

 だからこそ面白いのだが。ぬるま湯に浸かったままじゃあ、面白くない。

 

 このクエストをクリアできれば、HR5となり活動範囲はさらに広がる。うむ、楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 彼女たちと軽く会話をし、一眠りして暫くすると原生林へ着いた。

 

「っしゃ、行くか!」

「おおー!」

「おー」

 

 そんないつも通りのかけ声。うん、やっぱりパーティーの方が気合の入り方も違う。

 ゴア・マガラの初期エリアは5番。ウチケシの実を持ってきた方が良かったかなぁ。なんて考えながら、ゴアの初期エリアを目指す。

 

 そして、2番から5番へ入ると直ぐにゴアの姿を確認できた。

 

「なんか……黒いね」

 

 相棒の声。他に感想はなかったんだろうか。まぁ、パッと見どんなモンスターなのかよくわからないし、仕方無いと言えば仕方無いかもしれない。

 そして俺たちに気づくゴア・マガラ。目が会うことはないけれど、しっかりと此方を向いている。

 

「赤は顔、胴体と翼が橙、脚が白。乗り頼んだ」

 

 いつも通りエキスの場所を教えてから、とりあえずカチ上げ。弾けるスタンエフェクト、僅かにかかるヒットストップ。頭を狙いやすいのは好きだけど、スタン耐性の上昇値が高いのはいただけない。

 3スタン取れるかなぁ。

 

 カチ上げした後、少しだけディレイをかけてから発見時の咆哮を回避。

 いつもなら、こう……咆哮の振動が肌に触れるかなぁってくらいでローリングをするけれど、ゴアでそれをやると間に合わない。何故かコイツだけタイミングが違うんです。それでいて、触角が生えた時の咆哮はまたタイミングを変えてくるからちょっと苦手。

 

 でも、今は回避性能がある。以前よりは確実に戦い易くなったと思うんだ。

 フレーム回避後、直ぐにハンマーを右腰へ構えてもう一度カチ上げ。気をつけるのはほぼノーモションの突進と、バックジャンプで風圧を喰らってからのブレス。

 

 なんて思っていると、早速突進が直撃した。

 無理です。頭の前にいるとどんなに頑張っても避けられません。せめてもう少しだけ突進の予備動作があればなぁ。

 

「この黒い霧みたいな奴ってなに?」

 

 相棒の声。

 ゴアさんからの素敵な贈り物です。ちょっと入って斬るだけで会心率が上がる素敵なものだよ。

 

 ……相棒へ事前に教えておくの忘れてました。

 

「その霧に当たったら、モンスターを攻撃しまくれ! そうすれば強くなるから」

 

 発症したらちょっと不味いけれど、エリアチェンジでもされない限りは大丈夫。一度でもダウンを取れば直ぐに克服できる。

 

 とりあえず、回復薬を飲んで喰らった分を回復。そしてガッツポーズしていると、もう一度ゴアの突進が直撃した。それホント、やめてください。

 もう無視して戦ってやろうと思わないでもなかったけれど、命は大事にいきたいから仕方無しに回復薬を飲み込んだ。

 

 さて、反撃開始だ。

 

 

 

 

 ゴアは決して弱い相手ではない。

 そんなことはわかっていたし、油断していたわけではなかった。けれども、どうにもその日は色々と噛み合わなかった。

 

 そして、そろそろスタンが取れるかなぁって思ったとき、急にゴアの動きが止まった。うん? こんな動きあったかだろうか。

 そんな様子のおかしいゴアへ、カチ上げを決める直前にわかった。

 

 ああ、そう言えば相棒って今、睡眠武器じゃん。

 ヤバいと思ったときにはもう遅い。俺のカチ上げがゴアの頭へ直撃し、本日1回目のスタンを奪った。

 

「……ごめんなさい」

 

 今は謝ることしかできやしない。

 

「……どんまい」

 

 取ってしまったものは仕方無いから、彼女と立ち位置が被らないよう動いてからスタンをしたゴアへハンマーを振り下ろした。

 むぅ、睡眠爆破もったいなかったなぁ。どうにかもう一度眠らせてくれないだろうか。

 

 スタンが解け、起き上がったゴアの咆哮。

 ホームランの硬直が残っていたせいで、フレーム回避失敗。さらに、今までは翼にしか見えなかったものを地面に置いてから、もう一度咆哮を上げた。

 その瞬間、視界は一気に暗くなり、あの霧のようなものが漂い始めた。

 

 なんか触覚は生えたし、6本脚だし、なんとも不気味な姿となってしまったけれど、頭の肉質は各段に柔らかくなる。あと俺がシャガルと戦うのに慣れているからだろうけれど、この状態の方が戦い易い。

 

「……なにこれ、超怖い」

 

 かなり引き気味の相棒さん。

 どうやらゴアは可愛くないらしい。

 

 さてさて、俺が欲しいのはその触覚だ。これからの防具のために破壊させてもらおうじゃないか。回避性能もあるし、此処は多少の無理ができるはず。

 

 とりあえず、触角へ攻撃しようとしたとき、シューと何かを吸い込む音が聞こえた。

 それを聞いてから直ぐにローリングで距離を取る。流石に拡散ブレスは喰らいたくはないです。

 

「えっ? えっ? な、なにが起こるのですか?」

 

 ゴアの顔の前でわたわたしている相棒の姿。

 ……何故お前はそこにいる。

 

 そして、黒色のブレスが弾けた。どうやら直撃っぽいです。あまり言いたくはなかったけれど、今度からは事前にモンスターの攻撃パターンを教えた方が良いかもしれない。

 耐えるだろうと思っていたけれど、どうやらその前からダメージを喰らっていたらしく、相棒はそのままネコに運ばれていった。いくら拡散ブレスでも流石に即乙はしない。けれども、思っていたよりダメージは大きいかも。

 

 ま、まぁ、まだ1乙。たぶん大丈夫。

 

 左腕始動の連続叩きつけを躱してから頭へカチ上げ。今はとにかくその生えてきた触角が欲しい。シャガルもそうだけど、攻撃の隙が大きいからカチ上げを決め易い相手だとは思う。どっかのブラキもコイツらを見習ってくれないだろうか。

 ソロならスタンプ連打でするだけで良いけれど、流石にパーティーじゃ無理。突進後の振り向きや、土下座の後を中心にひたすら頭へハンマーを振り上げ続ける。

 

 それじゃあ火力が出ていないことはわかっているけれど、他にできることがないんです。

 

 さらに暫くすると、いつの間にか相棒の姿があり、ジャンプ攻撃が見えた。

 

「乗ったー!」

 

 そろそろ、スタン取れるかなぁって思っていたとき、相棒の元気な声が響いた。

 神々しくなってはいないから、たぶんベースキャンプから戻ってきて直ぐ、エキスを取る前にジャンプ攻撃をしたんだろう。

 

 さて、それじゃあ、砥石でもと思いアイテムポーチをガサゴソいじっていると、相棒が乗り攻撃へ移る前に彼女の後方攻撃がゴアの頭へ吸い込まれていくのが見えた。

 

 そして、スタンエフェクトが弾けると同時に、暗くなっていた視界が元に戻り、ゴアが後ろへ吹っ飛んだ。どうやら狂竜化が解けたっぽいです。

 

「……あっ、ごめん」

 

 そればっかりはしゃーない。

 乗り攻撃が決まった瞬間って、一発だけ攻撃したくなっちゃうよね。

 

 そして、狂竜化の解けたゴアの顔の向く先は俺の方。……マジかよ。勘弁してください。砥石中です。

 

 研ぎ終わり、何故か武器を確認しているところにゴアのブレスが直撃。砥石高速化スキルのおかげで研ぐことはできたけれど、体力がそろそろヤバい。もう一度ブレスを耐えることは流石にできない。

 

 少々慌てながら、回復薬を飲む。ガッツポーズ。

 此方へ走ってくるゴア・マガラが見えた。なにそれ……

 

 突進は直撃しました。

 

 ああ、もう。なんだか上手くいかないなぁなんて思いながら、もう一度回復薬を飲もうとした時、ゴアがバックジャンプへ移るモーションが見えた。

 

 ソレを見て何かを考える前、反射的に背中へ担いでいたハンマーを取り出し右腰へ構え、風圧をキャンセル。

 

 いやいや、俺は何抜刀してるんだよ。もうこっちは1乙してるんだ。直ぐに回復しなきゃ……って頭ではそう思った。

 

 でも、身体は言うことを聞かなかった。

 

 カチリ――と俺の中で何かが噛み合った。

 

 明るくなったはずの視界は白黒に変わった。心臓の音ばかりが響く。

 

 白黒のはずの視界は何故か今までよりも鮮明に見えた。

 ああ、またこの感覚か。そう思った。

 

 

 ただ、悪い気分じゃあない。

 

 

 ゴアの空中ブレス。

 狙いは俺。

 ローリングで回避。

 

 

「滑空来る! 避けてっ!」

 

 

 珍しく彼女の大きな声が聞こえた。

 でも、何を喋っているのかまではわからない。

 

 もう一発でも喰らえばベースキャンプ行きは避けられない。そんなことわかっている。

 此処で俺が乙れば状況は一気に悪化する。そんなこともわかっている。

 

 それでも俺はハンマーを握った手に力を込めた。

 

 ゴアを確認。

 距離はローリング4回分ほど。

 縦振り……間に合わない。横振りを一回。

 ゴアが僅かに後ろへ下がる滑空の予備動作が見えた。

 

 ディレイはかけず、横振りから更に縦2。

 

 頭を突き出し、俺の方へかなりの速さで飛んでくるゴア・マガラ。それが当たればベースキャンプへ一直線。

 

 でも、もう止められない。

 

 

 そしてハンマーを一度グルリと回してから、最大威力のホームランを俺目掛けて飛んできたゴアの顔面へぶち込んだ。

 

 

 







決まることは少ないですが、ゴアの滑空に合わせてホームランは本当にカッコイイです
動画などもあるので、気になる方は是非

ただ、パーティーでそれを決めるのはかなり難しいです
ロケハンでは6回ほど挑戦して1回も決まりませんでした……

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