振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

49 / 69


それをすてるなんてとんでもない!




第47話~捨てた想いは恋心?~

 

 

「HR5かぁ……全然実感がわかないけど、ホントにそうなんだよね?」

 

 バルバレに戻り、報酬を受け取ってギルドマスターから有難いお話を聞いた後、予想通りに相棒が打ち上げをやろうと騒ぎ出し飲むことに。まだ朝と言っても良いような時間だけども、もう気にしないことにしました。こんなの楽しんだもん勝ちなのだ。

 ああ、今日もビールが美味しい。昼間から飲むこの背徳感も合わさり、より一層美味しく感じられる。

 

「まぁ、まだHR5だけどそうらしいね。でもこれで漸く全部のエリアへ行けるようになったな」

 

 全部のエリアへ行けるようになったとは言え、地底洞窟はまだらしい。どうやら火山が活動を始めたから今はちょいと危ないんだってさ。あと数日で行けるようになるとは言っていたけれど、正直行きたくないです。ブラキとかホント勘弁。

 とは言え、此方の活動範囲が広がったのは事実。何より天空山と氷海へ行けるようになったのが大きい。これで、レビテライト鉱石やノヴァクリスタルを採取することができる。

 

「これからの予定はどうするの?」

 

 現在それを悩み中です。

 大きく分けると防具を作るか、武器を作るかだけど……どうすっかね? 防具を作るとしたら、俺はゴア。彼女はグラビ、下位のブラキと胴系統倍化になる。武器を作るとして、現時点でできるのは……彼女の笛くらいか。俺は作るものがないし、相棒も現時点では強化ができない。

 そうなると彼女の笛を強化してしまった方が良いのかな? ガララ笛なら耳栓を演奏してもらえるし、かなり楽になる。ゲームだとガララとレイアの抱き合わせがキークエだったけれど、この世界ではどうなんだろうか? レイア素材を使う予定はないから、できれば1頭のクエストが良いのだけど。

 

「んじゃあ、次はガララで良い?」

「私はいいよー」

 

 一度戦ったことのある相手だし、ガララなら相棒も大丈夫なはず。

 

「……私の武器ってこと?」

「うん、ガララ笛ができちゃえばこの先楽だし」

 

 戦うかはわからないけれど、フルフルなんかと戦う時は高耳がほしい。あとグラビでも高耳があればかなり楽になる。できないことはないけど、グラビの咆哮ってフレーム回避が難しいんだ。

 

「でも君の武器はいいの? 確か、今の笛ちゃんの武器だって上位武器でしょ?」

 

 いや、そうなんだけどさ……前も言ったようにホントに作るのがないんだ。

 現在の武器倍率状況は俺が120、彼女が140、相棒が160です。んで、これで彼女の武器ができれば150となる。どう見ても俺が足引っ張ってますね。だから本当は俺の武器を強化したいところだけど、如何せん作るものがない。

 

「……ジンオウハンマーとかは?」

「碧玉とか出る気がしない」

 

 ジンオウガの碧玉が1回のクエストで出ない確率は80%弱くらいだと思った。つまり20%以上の確率で碧玉は出る。けれども、俺の運の悪さ+物欲センサーを考えるといったいどれほどのジンオウガを倒せば良いのかがわからない。

 いや、いつかマラソンをしなきゃいけなくなることはわかっているんだけどさ。でもできればレア素材のない装備が良いです。じゃあ、何を作るのかって聞かれるとブラキハンマーになる。まぁ、そればっかりは仕様が無い。それにアレを作っておけば最後まで使える。

 

「とりあえず彼女の武器を強化しちゃおう」

 

 防具や俺の武器はその後で良いと思う。

 いっそ俺が違う武器を使うって言う選択肢もあるけれど、できればずっとハンマーを使い続けたい。

 

 そして、そんな俺の提案に二人は納得してくれた。二人共何か言いたそうではあったけれど、これが最良の選択肢なはず。たぶん、きっと。

 

 

 その後、いつも通り相棒が酔いつぶれてしまったため、明日の朝また集会所でと言ってその日は別れることに。それにしても何故、毎度毎度この相棒は酔いつぶれるまで飲むのだろうか……運ぶ俺の身にもなって欲しい。いや、まぁ、これくらいで文句は言わないけどさ。むしろ女の子を背負っているのだし、感謝しなきゃいけない……ってのは流石にないか。

 

 そんな相棒をいつも通り家まで送り届け、さて俺はどうすっかなぁ。なんて考え、とりあえずフラフラと出歩いて見ることにした。

 時間はまだお昼くらい。酔い覚ましにもなるし丁度良い。

 

 

「なんだ? 珍しく今は一人なのか?」

 

 お酒のせいで多少覚束無い足取りでフラフラ歩いていると、いつもの加工屋から声をかけられた。

 

「まあね。さっきまでは一緒だったけど、今は皆バラバラだよ」

 

 でも、なんだかんだで俺たちも仲の良い方だとは思う。たぶん一人だけでいる時間より皆と一緒にいる時間の方が長い。

 

「そう言えばお前さんはどうするんだ?」

 

 いや、何のことだよ。いきなりそんなことを言われてもわからないでしょうが。

 

「何のことさ?」

「いや、だからどっちとくっつくって話」

 

 ……? どっちとくっつく?

 

 余計にわからなくなった。なんだろう、もしかして俺がおかしいのか? 流石に頭が回らなくなるほど酔ってはいないと思うんだけどなぁ……

 まぁ、自分じゃ酔っていないって思っているだけかもしれない。

 

「どう言う意味?」

 

 俺が加工屋へそう聞くと、ため息を一つ落された。その呆れ顔が無性に腹が立つ。

 だって、わからないものはわからないのだ。

 

「だからさ、狩猟笛と操虫棍の女の子のどっちを狙ってるのかって話だよ」

 

 

 …………言葉が出なかった。

 

 どうしてそんな話になった。

 

「いや、意味わからんぞハゲ。どうしてそうなる」

「ハゲてねぇよ。ふさふさだわ。だってあんな可愛い子二人と一緒なんだ。んなもん、どっちを狙うかくらい決めてるんだろ? あっ、もしかして、もうどっちかとくっついていたりするのか?」

 

 ……いや、まぁ、そりゃあ俺だって男ですし、そう言うことに興味がないと言ったら嘘になる。けれども、どっちを狙っているとかそう言うことは全くない。そもそも恋愛ごとが苦手な俺にはそんなことできません。

 

「いや、狙うとかそう言うのはないんだけど……」

「それ本当かよ……もったねぇなぁ。せっかく一緒にいるんだしもっとなんかあったりするだろ? それに、どっちかとくっついてもらわないと、困る奴が沢山いるんだが……」

 

 もったいないとか、そう言う話じゃないと思うんだけど……。それに縦しんば、もし、仮に、例えば、俺が彼女と相棒の何方かに告白でもしてみろ。まず断られるだろ? そして、その後のパーティーの空気とか考えたくもない。その瞬間にパーティーの壊滅は決定だ。

 それだけは……って、あれ? 困る奴が沢山いる?

 

「おい、ハゲ。困る奴が沢山いるってどう言うことさ?」

「だからハゲてねぇって。ちょっと薄い部分があるだけだわ。……お前さんたちってダレンを倒してから一気に有名になっただろ? だから俺みたいな加工屋とか雑貨屋で集まった時、よくお前さんたちのことが話題に上がるんだが、その時賭けをすることになったわけだ」

 

 ああ、そう言うことでしたか……

 つまりアレでしょ? その賭けの対象が……って話でしょ?

 

「んで、その賭けってのは、お前さんがどっちとくっつくかって内容なわけだ。だから、どっちかとくっつかないとほぼ全員が困るってこと」

 

 いや、そんなこと知らんがな。

 勝手に賭けの対象にされ、勝手に外しただけでしょ。どう考えても自業自得だ。俺の悪い点が全くもって見つからない。

 

「……んで、ハゲはどっちに賭けたのさ?」

「おい、ハゲじゃねぇって。ちゃんと残ってるとこあるだろうが。それで俺だけど……まぁ、言わないでおくわ。いらんこと言ってもしょうがないしさ」

 

 充分いらんこと言ってたじゃん。

 はぁ……なんだろうね。多少有名になったことはわかっていたけど、そんな目で見られているとは知らなかった。

 

 うっわ、これじゃあ明日彼女たちと会う時、どんな顔をして良いのかわかんないじゃん。なんとも面倒な話を聞かせてくれたものだ。

 

 てか、賭けの対象にされているのだし、少しぐらい俺にも賭け金が回ってきても良いんじゃないだろうか? そして、最初に賭けをやり始めたのは誰だ? 今なら躊躇うことなくハンマーを振り下ろせる気がする。

 

「でも、本当にそう言うこと思ってないのか? お前さんがどっちとくっつこうが勝手だが、二人共あれだけ可愛いんだ。しかも、ダレンを倒したことでかなり有名になった。狙ってる奴は少なくないだろうな」

 

 ああ、やっぱりそうなのかねぇ……

 とは言っても、本当にそう言うことは考えなかった。無理矢理頭の外へ追いやって、考えないようにしていただけかもしれないけれど。

 しっかし、狙っている奴らは少なくないかぁ……そりゃあ、アレだ。なんだかちょっとモヤっとしますな。ま、まぁ、でも俺から何か言うことはやっぱりないと思う。成功しないってのもあるけれど、それ以上にこのパーティーが壊れてしまうのが嫌なんです。

 

 例え臆病者と言われようが、それくらいこの今のパーティーが気に入っているのだ。

 

「……それでも、俺は誰かくっつくことはないかな」

「自分を縛りすぎだろ。息苦しくないのか?」

「縛りプレイくらいが丁度良いんだよ」

 

 俺がそう答えると、加工屋はやはり呆れたようにため息を一つ落とした。

 

「んじゃあなハゲ、良い素材が手に入ったらまた来るわ」

「ハゲてねぇって言ってるだろ。良い加減泣くぞ。ああ、またいつでも来いよ」

 

 別れの挨拶を交わし、手を挙げてから加工屋の元を離れた。

 おかしな話を聞かされてしまったせいか、酔いなんてすっかり覚めてしまった。はぁ、酔い覚ましにはなったけれどこれじゃあなぁ……

 

 ……彼女たちが誰かとくっつこうと、それを止めることはまずできない。そんな権利なんて俺にあるはずがないのだから。

 しかしどうにも、そんな未来のことを考えると……こうモヤっとするのですよ。贅沢で我が儘なことってのはわかっているんだけど……モヤモヤが晴れることはない。

 

 ホント、面倒なことを聞かせてくれたものだ。

 どう考えたって俺の一人相撲で彼女たちは全く悪くないわけだけど……

 

 明日からどんな顔して彼女たちと会えば良いのやら……

 

 

 

 

 

 因みに、ついつい気になって聞いたのだけど、2票差で相棒の方へ多く賭けられているらしい。

 

 

 






“ほっほほ”が口癖のじいさんが賭けをやろうって言い出したらしい



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。