先日はもうなんか色々とあったけれど、彼女たちの話を聞き俺も落ち着いてきた。
加工屋から聞いた話を忘れることなんてできないのだから、以前と全く同じとは言えないけれど、それでもだいぶマシになったと思う。
それも彼女たちのおかげです。
「グラビモスってどう戦えばいいの?」
そして今は、漸く解禁となった地底火山へ向けてガタゴトと揺られているところ。
地底火山は地底洞窟と比べ、危険度の高いモンスターが多い。楽に倒すことのできる相手は少なくなるだろう。でも、比較的バルバレから近いので助かります。
んで、今回の相手はグラビモス。剣士殺し筆頭。MHP2Gの武神闘宴では多くのハンターがコイツに悩まされたことだと思う。まぁ、アレは亜種なんだけどさ。
馬鹿みたいに硬い肉質。巫山戯たほどの体力。近接武器を蹴散らすガス噴射と正直、剣士では戦いたくない相手だった。けれども、MH4になり状況は一変。
「ん~……ひたすら乗り攻撃をすれば勝てると思う」
乗りと言う新システムの導入があのグラビモスの強さをぶち壊してくれた。
乗り成功時のダメージは固定で、どんな武器だろうと2回乗れば背中が壊れる。背中さえ壊れてしまえば、あとはブレスを誘導してからお腹を殴るだけ。更に、もう4回乗れば乗り成功ダメージだけで胸部を2段階破壊することだってできる。
しかも、グラビさんってば乗ってくれと言わんばかりに乗り耐性値は低いし、上昇量も少ない。そして乗り自体も全然難しくない。
剣士ソロで戦うにはその体力の多さがちょっと面倒な相手だけど、パーティーで戦う場合、グラビは其処まで強くない。
グラビは隙も多いし、3人でジャンプ攻撃を繰り返せば6回くらい直ぐに乗ることはできると思う。パーティーの有り難みを感じることのできる良い相手です。
「……えと、頭殻が欲しいのだけど、頭は私がやった方が良い?」
ぽそりと彼女がそんなことを聞いてきた。
彼女の笛も前回ガララを倒したことで無事強化することができた。名前はハザードコール。麻痺も取れるし、耳栓と攻撃力アップを演奏できるかなり優秀な笛。
でも、これでこのパーティーには睡眠と麻痺って言う状態異常武器が二人になっちゃったんだよね……絶対にいつか麻痺、睡眠、スタンが被る。
麻痺からスタンして眠らされるとか普通にありそうだ。ガンナーならまだ良いけど、剣士で状態異常管理とかできる気がしない。
「うん、頭は任せるよ。俺の武器じゃあ壊せるかわかんないし、多分俺は腹を殴っていた方が良いと思う」
忘れそうになるときもあるけれど今担いでいる山権現は水武器。属性値も350とグラビ相手ならなかなかのダメージが期待できる。
「じゃあ頑張る」
おう、頑張れ。
はてさて、サクッと倒すことができれば良いんだけどね。
――――――――――
「着いたー! むわっとする!」
到着一番、相棒の元気な声が響いた。
うむ、確かに地底洞窟だった頃よりはかなり暑い。まぁ、溶岩が流れているわけだしそれで暑くない方がおかしいんだけどさ。
グラビモスの初期エリアは8。そして2,3,5,8,9番エリアでクーラードリンクが必要となるはず。今はベースキャンプだからそれほど暑いとは思わないけれど、そのエリアへ入ったらきっと滅茶苦茶暑いだろうなぁ。
「あっ」
「どうしたの?」
しまりました。
「えと……クーラードリンク忘れたわ」
そうか、出発前にアイテム整理をしていたとき、何か足りないなぁって思っていたけど、クーラードリンクだったのか。
むぅ、今まで暑いマップになんて来たことがなかったから、頭の中から抜けていたんです。でもホットドリンクは持ってきていたりします。いや、飲まないけどさ。
「……暑さ無効演奏できるよ?」
うん、それは知っているけど、アレって効果時間があまり長くないんだよね。まず戦っている最中に切れる。そしてまた彼女に演奏してもらうと流石に負担が大きい。演奏効果を4つも維持していたら攻撃機会が減ってしまう。
「それでも良いんだけど……相棒さん、2つほどもらえないでしょうか?」
「んもう、準備はちゃんとしないとダメじゃん」
返す言葉もありません。
ホットドリンクなら忘れてもまだなんとかなるけれど、クーラードリンクがないのは流石に厳しいです。
その後、クーラードリンクは相棒からちゃんといただけました。ありがとう。
ベースキャンプを離れてからは、これからの防具なんかにも必要となるため、虫や鉱石を採取しながらエリア8を目指した。マレコガネと獄炎石がほしいのです。
そしてクーラードリンクを飲んでから、エリア8へ。クーラードリンクの味だけど……うん、まぁ、美味しくはないです。ホットドリンクの方が俺的には飲みやすいと思った。
そんなこんなで、エリア3から8へ入るとあの巨体を崖の上から確認することができた。
「でかいね」
でかいな。
すごくゴツゴツとした真っ白な外殻は、薄暗い地底火山で良く目立っていた。俺と相棒はグラビと戦うのが初めて。ただ、まぁ、なんとかなると思う。
そんじゃ、行きますか。
笛の彼女の演奏音が2度響いた。これでスキル高耳が発動。
「助かる」
「……最初の乗りはお願い」
崖から飛び降りると、グラビがそんな俺たちに気づき、あの特徴的な大咆哮を上げた。けれども此方には耳栓がある。ピリピリと震える空気をかき分け、一気に近づいてから段差を利用してジャンプ攻撃。
そして、1回目の乗り。
「が、がんばれー!」
なんとも気の抜ける相棒の声が聞こえた。
あれ? そう言えば俺が乗るのっていつ以来だ? もしかしてアルセルタス以来とか?
そんなことを考えながらも、懐のナイフを取り出してからグラビモスの背中を斬りつける。そして、彼女の攻撃力強化【大】の演奏が終わったところで、乗り成功。
「私はどこ行けばいいの!」
「尻尾頼んだ!」
乗りが成功し、吹っ飛んだ身体の体制を戻しながら相棒へ指示。
急いで倒れているグラビへ近づき、もう身体を密着させるくらいの場所から、縦1始動でホームランを2回。横振り始動でホームランを1回。
乗りダウンからグラビが起き上がったところで、また段差を利用してひたすらジャンプ攻撃。とにかく背中を壊してしまわないと戦い難い。
そしてグラビの怒り咆哮。まぁ、耳栓があるから今は関係ないんだけどさ。つけることは少なかったけれど、耳栓って便利だね。ただ高耳までつけるとなると流石に重いんだよなぁ……
怒り咆哮が終わり、腹から睡眠ガスを噴き出そうとした時。
「の、乗りましたぞ!」
相棒が2回目の乗りを奪った。
てか、なんですかその口調……でもナイスです。これが成功すれば背中の破壊は完了。あとはひたすら腹へハンマーをぶち込み続けるだけ。
相棒が乗り攻撃を続けている間は、砥石をしながら彼女の演奏を聴いた。
泥・雪無効とか、寒さ無効とか明らかに関係ない演奏だったけれど、きっと彼女なりのお茶目心の現れだと思う。まぁ、乗り攻撃中って暇だし笛を担いでいるとついつい演奏したくなるよね。その気持ちわかります。
相棒の乗り攻撃は無事成功。グラビの背中が砕け、ヒビが入ったのを確認。うむ、順調順調。
先程の乗りダウンと同じように、俺は腹、彼女は頭、相棒は尻尾を担当。そして縦1始動のホームランを2回決めたところでグラビがスタン。
「……頭、壊れた」
ナイスです。これで彼女も腹へ攻撃ができる。
スタンをしたグラビはわざわざ一度起き上がってからまたゴロリの横に倒れ……ようとした時、急に前へ走り出した。
滅茶苦茶ビックリした。
「し、尻尾斬れました!」
お、おぅ、そう言うことだったのか。いったい何事かと思った。
そう言えば、尻尾を斬るのも初めてかもしれない。武器的に俺じゃあ斬れないし、彼女だってきれないことはないけど柄攻撃なんてしない。そして唯一の斬撃武器である相棒も、普段は尻尾じゃなく脚ばかりを攻撃していた。
もしかして、俺が脚を頼むって言っていたからだろうか……
「助かる。次は腹、頼む」
「了解です!」
これで、背中も頭も尻尾も破壊完了。そうなってしまうと後は腹を攻撃するだけになるわけだけど……まぁ、SAのない俺じゃやっぱり厳しい。だから腹は彼女たちに任せ、俺はひたすらジャンプ攻撃に専念することにした。
此処は適材適所。自分にできることを精一杯やるだけ。
その後、俺が2回乗り胸部は2段階の破壊が完了。更に、相棒の操虫棍によって寝た時、一度睡眠爆破を入れることもできた。
そろそろ倒せるかなぁ。なんて思っていると、彼女が2回目の麻痺を引き最後のラッシュをかけたところでグラビモスは倒れ動かなくなった。
いくらグラビモスとは言え、パーティーで連携をすればたぶんこんなものなんだろう。ソロじゃ戦いたくない相手ではあるけれど、今はパーティーなんだ。そんなパーティーの大切さが改めてわかったクエストだったのかな。
なんて思った。
さてさて、これで一山超えることができた。防具はジャギィS一式と何とも頼りない。それでも、此処まで進むことはできている。
次はいよいよブラキになるんだろうなぁ。
そんな直ぐに訪れる未来のことを考えると、何とも複雑な気持ちとなった。