HR6となるための緊急クエストも無事クリアすることができ、バルバレへ帰還。
じいさんから有り難い話を聞いた後、爆砕の破鎚ができることを期待しながら報酬を確認。しかし、残念ながら砕竜の剛拳と砕竜の堅黒曜甲が足りず、俺のハンマーを強化することはできなかった。
まぁ、1頭のブラキから4つも拳が出たらおかしな話ではあるけど。
そんなことで、彼女たちには申し訳ないけれど、また上位のブラキを討伐することに。ディオステイル改だって弱い武器じゃない。でも、爆砕の破鎚ができてしまえばずっと使えるんです。まぁ、ダラのハンマーであるラグナができてしまえば使わなくなると思う。いや、ラグナが強すぎるんですよ。
そして次の日。俺の武器強化のため2日続けてブラキと戦うことに。この世界ではわからないけれど、なんて言うか、こう……同じモンスターを何度も何度も倒すって言うのはモンハンをやってるって感じがする。
モンハンの世界へ来たと言うのにおかしな話だよ。
そんなブラキのクエストだけど、今までと同じように徹底的に罠や乗りを利用した。これじゃあ上手くはならないと思いはするけれど、コイツばっかりは許して欲しい。
その結果、特に苦労することなく捕獲完了。
そしてバルバレへ戻り報酬を確認したところ、拳が1つ足りなかった。
どうやら俺が戦っていたブラキの片手は飾りだったらしい。
「……現実を見て」
すみません。もう一度お願いします。
彼女たちに申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、3日連続でブラキのクエストへ出発。
最近はコイツとばかり戦ってきたおかげか、以前感じていたような苦手意識はかなり薄れてきた気がする。でも、罠は全力で使わせてもらうがな!
そしてバルバレに戻り報酬を確認。
すると、なんと宝玉が一気に2つも来た。ゲームをやっていた時も、何故かブラキの宝玉ってなかなか出ないイメージだったから嬉しかった。ただ、ハンマーに宝玉を使わないのが残念なところ。
まぁ、宝玉が手に入ったのだから悪いことじゃあない。
「……拳は?」
……ちょっとソロでブラキと戦っ「手伝う! 手伝うから! 別にこれくらい気にしないからっ!」いつも迷惑かけて本当にすみません。
結局、俺の武器を強化するのに上位のブラキと4回も戦うことになってしまった。スキル挑戦者を発動させる装飾品にブラキの素材を使うから、ブラキの素材はいくらあっても良いと思うけれど、彼女たちには感謝しきれない。
いつもありがとう。
しかしこれで俺も武器が完成。表示攻撃力は884。武器倍率換算で170。さらに爆破の属性値も260。斬れ味は匠込みではあるけれど白ゲージと文句無しの強武器。これで漸く俺は全ての装備が整った。
そんなわけで、次は彼女たちの武器の強化だけど……まず、相棒の武器の強化にはティガレックス希少種の素材が必要らしい。俺たちのHRは6。残念ながらソイツと戦うのはまだ無理です。最低でもダラを倒した後じゃないと戦うことができない。
そう言うことで彼女の武器を強化することに。彼女の今の武器はデンジャーコール改。強化先はパラハザードコールで、ガララ素材は足りているけど、レウス亜種の素材が足りないらしい。
次のターゲットが決まった。
リオレウス。別名は天空の王者。その名の通り本当に良く飛ぶ。良く飛ぶって言うより、むしろ降りてきてくれない。最近は嫁さんもやたら飛ぶようになったり、低空の王者などと馬鹿にされることもあるが、弱い敵じゃない。
俺もソロで一度戦っているけれど、かなりギリギリだった。まぁ、あの時はソロで下位の武器だったのだし苦労するのは当たり前だと思うけど。
そして今回戦うこととなったのは、その天空の王者の亜種である蒼火竜。通常種と比べ、肉質が全体的に固くなっている。そして何よりなかなか降りてこない。通常種も飛んでばかりだったけれど、亜種はヤバい。降りて来ない。本当に降りて来ない。
そんなんだからブラキほどじゃないけど、コイツも苦手だった。だって、空飛んでたらハンマーじゃ何もできないんだもん。
じゃあ、どうやってレウス亜種と戦えば良いのかって話だけど――
「……閃光玉は私に任せて」
と、彼女が言ってくれた。よろしくお願いします。
こうやってしっかり役割を決められるのもパーティーは大きい。
俺の武器が完成するのを待ってから、レウス亜種を倒すため天空山へ出発。
そう言えば、天空山へ行くのは初めてだ。彼女たちは俺がソロでやっている間、ジンオウガと戦っていたはずだから天空山へは行ったことがあるはず。
そんな天空山だけど、今までのどのフィールドよりも遠く、移動に一番時間がかかった。ゲームの中で登場したシナト村は天空山の近くにあるはずだけど、俺が行く機会はあるのだろうか? もし行くことができたら、あの14代目に何か言ってやりたい。そもそもこの世界へ来たのはアイツが原因なのだから。
まぁ、今のこの生活だって悪くないと思えているのだし、怒っているってわけじゃないんだけどさ。でも、何か言ってやりたいとは思うんだ。
そして天空山へ到着。
天空山はもうどうして形を保てているのかわからないくらい、不安定なフィールド。そんなボロボロなフィールドとなってしまったのはダラが原因だと思ったけれど……この世界にダラって何頭いるのだろうか? 1頭はいると思うけれど、1頭だけで武器や防具を全部作ることができるとは思わない。先のことではあるけれど、どうなることやら……
そんなことを考えつつ、レウス亜種の初期エリアである8へ。
どう言う仕組みなのか全くわからないけれど、このエリアは傾く。自分の卵があることなど全く関係なしに、レウスが暴れると何故か傾く。そしてもっとわからないのが、傾いたエリアがまた戻ること。
まぁ、アタリハンテイ力学のある世界に俺たちの世界の常識は通用しないってことだろう。
それでレウス亜種との戦いが始まったわけだけど――
笛の彼女がすごかった。
レウス亜種に何かの恨みでもあるんじゃないかってくらいの閃光玉祭り。レウスが少しでも飛ぶと視界が真っ白になる。天空の王者と呼ばれるあのレウスがほとんど飛べなかった。
更に、乗り麻痺睡眠スタンと此方も全力。たぶん状態異常になっていない時の方が少なかったんじゃないだろうか。
そんなこともあり、かなりあっさりとレウス亜種を討伐することができた。
「レウス嫌いなの?」
「……最小金冠の出ないアイツが悪い」
……そうですか。
俺はあっさりと出てしまったので、何と声をかければ良いのかわからなかった。出た者に出ない者の気持ちはわからない。
せっかくだし採掘とかしておけば良かったと気づいたのは、帰り道だった。
―――――――――
レウス亜種の討伐を終え、バルバレに戻り報酬を確認したところ、幸いなことに必要な素材は足りたらしい。
この差はなんなのだろうか。彼女は蒼火竜の翼が3つ必要と言っていた。そして翼ってなかなか手に入らなかったと思うけど……
相棒のことは良いとして、この彼女も充分おかしいと思う。その運を俺に少しくらいわけてくれても良いのに。何と言うか、裏切られた気分だ。
いや、別に彼女たちは全く悪くないんだけどさ。
そしてそれは、俺と彼女の武器強化が完成し、これからどんなクエストをやっていこうか集会所で相談している時だった。
「……ちょっといいかい?」
あのギルドマスターが俺たちへ近づいて来て、そんな言葉を落した。
もしかして、次の緊急クエストが届いたりしたのだろうか? 流石に早過ぎる気もするけれど、今までのことを考えるに有り得ないことはない。
「どうしたのさ?」
「キミ達にね、お願いがあるんだ」
しかし、ギルドマスターはいつものように柔らかな表情ではなく、何処か緊張したような顔だった。
何か……あったのか?
「これは本当ならキミ達に頼むべきでない。でもね、さても運の悪いことに腕の立つハンター達は皆、最近やたらと現れるようになったラージャンの狩猟へ行ってしまっているんだ」
やたらと現れるようになったラージャンねぇ。
この世界ではどうかわからないけれど、俺のいた世界じゃラージャンなんて毎日何頭狩られていたのやら……
そして、どうやらじいさんは何かのクエストを俺たちに頼みたいって話らしい。
相変わらず回りくどい話し方だ。
「……いや、むしろ彼らがいたとしてもキミ達に頼んだかもしれない」
ありゃ、随分と信頼されているんですね。
俺たちだって弱くはないと思うけれど、流石に俺たちより上手いハンターはいるだろうに。とは言え、悪い気分じゃない。
「それで……俺たちにクエストを頼みたいってこと?」
「ほっほほ。理解が早くて助かるよ」
さてはて、どんなクエストなのやら。
「クエストの内容は?」
俺が聞いた。
「覇竜……アカムトルムの討伐をキミ達にお願いしたい」
ギルドマスターが答えた。
ん~……アカムか。
すごく大きいけど一応飛竜種。飛ぶところは見たことないけど飛竜種。まぁ、動きはティガと似ているし、飛竜種と言われてもそれほど違和感はないが。
「最近になって溶岩島でアカムトルムが現れたとの報告が入ったんだ。アカムトルムは非常に凶悪なモンスター。そんなモンスターを見逃すことはできないし、今キミ達以外に頼めるハンターもいない」
いや、そんなこと言われたらもう断れないんですが……
「いくらキミ達でもアカムトルムが相手では辛いことはわかっている。でもどうか、私の頼みを受けてはくれないかな?」
ふむ……たぶん今のパーティーならアカムにも勝つことはできると思う。たぶん、かなり苦労するとは思うけれど勝てない相手ではない。
それに最終手段だって……
そして、此処でこのクエストを受けクリアすることができればギルドからの信頼はまた上がる。
「あ~……俺は引き受けても良いんだけど……君達は?」
「……私は大丈夫」
「うん、おじいさんも大変そうだし私も頑張るよ!」
はい、決まりましたね。
「了解。うん、じゃあ、そのクエストを受けるよ」
俺がそう言うと、ギルドマスターはいつものように、ほっほほと笑った。
「キミ達ならそう言ってくれると思っていたよ。ほっほほ。ありがとう。どうかよろしくお願いするよ。それじゃあ、準備ができたらまた私に声をかけなさい」
ギルドマスターはそう言って一度頭を下げてから、離れていった。
ふむ……これで次のターゲットも決まったか。
本当ならHR7となってから戦う相手。しかし此方の装備は揃ったし、それがちょっと早くなっただけで特に問題はない。
「えと、私は全然知らないんだけど、アカムトルムってそんなに強いモンスターなの?」
そんな不安そうな相棒の声が聞こえた。
まぁ、今まで戦ってきたモンスターとはちょっと違うから、何とも言えないけど強いことは確かだ。
「……現金自動預け払い機」
そして、ぽそりと聞こえた彼女の声。
こら、やめなさい。怒られるでしょうが。それはゲームの中でしかも昔の話なんだから。横アカムとかATM呼ばわりできないくらい強かったじゃん。
「うん、強いよ。アカムはすごく強いモンスターだと思う。でも……」
「でも?」
あ~……なんて言えば良いんでしょうね? 確かにアカムは強いんだ。でもそれは普通に戦った場合と言いますか……アイテムを使わなかった場合と言いますか……
「倒すことはできると思う」
「いや、それじゃあなんか不安なんだけど……」
いや、だってそれはゲームの話であって、この世界でも実際にできるかはわからないんだ。
今までの経験的にできるとは思うんだけど……
「……やるなら全力でやらないと。変な意地張って失敗したら意味ない。ダメだったらダメで良いから」
彼女の言葉。
うん、そうだよな。
よし、決めました。
「ん~……どう言うことさ?」
こてりと首を傾げた相棒。
でも細かい説明はまた今度で。
「へい、相棒」
「えっ、え? な、なに?」
アカムと戦う場合、持っていくと便利なアイテムはいくつかある。
そしてその中でも――
「閃光玉を調合分まで準備しといてくれ」
やるなら徹底的にやらせてもらおうか。