振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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第5話~アイテムポーチへ焼肉セット~

 

 

 闘技大会も無事目標を達成することができた次の日の朝。自宅のベッドの上、今日も今日とて、ところどころにシミの見える天井をボーっと見つめながら考え事。

 

 これからどうすっかなぁ。

 

 とりあえず武器と防具を揃えなければ何も始まらない。それはわかっているが、何を作るのかを決めていなかった。

 やっぱり最初に武器を作った方が楽だろうか。初めてMH4をプレイした時も、ダレンまでは初期防具でごり押すことができたのだし。まぁ、ゴアには何度も乙させられたんだけどさ。

 

 ……ふむ。それなら武器から作ることにしよう。とりあえず、ウォーハンマーを2回強化してアクセルハンマーを作ろう。余裕があればブーステッドハンマーまで強化して、最終的にパワーofグレア……は流石に厳しいか。

 と、なると最初はアルセルタスだな。決して強い奴ではないけれど……虫モンスターって好きじゃないんだよなぁ。だってアイツら、倒したのにも関わらず脚動くし。

 まぁ、どっかの女王虫よりは幾分かマシなんだけどさ。アイツとだけは二度と戦いたくない。この世界にはいないことを願おう。実際にあんなものを目にしたら発狂する自信がある。

 

 さて、そうと決まれば行くとするか。アルセルタスくらいなら初期武器でもいけるだろう。閃光玉でもあれば楽だけど、残念ながらピカ虫も素材玉も持ってはいない。

 そう言うアイテムも用意しておかないと、空の王者さんで苦労しそうだ。

 

 アイテムボックスから、生肉となけなしのお金で買った焼肉セットを取り出す。

 そう言えば、この生肉っていつのやつだろ。食べても大丈夫だろうか……。ま、まぁ、食べてみたらわかるか。

 

「そんじゃま、行きますか」

 

 いつものように一つ声を出し気合を入れる。お隣さんから壁ドンをされないよう、ボリュームは抑え目で。

 

 

 

「あれ、お隣さんかな? 初めまして。今から狩りへ行くの?」

 

 家を出て直ぐ、女性のハンターからそんな声をかけられた。

 たぶん、彼女は俺の隣に住んでいるハンターなのだろう。この世界に来て一ヶ月以上経つけれど、会うのは初めてだった。

 装備は俺と同じブレイブ一式に武器が操虫棍の……たぶんボーンロッド。つまり、初期装備に初期武器。親近感が湧く。

 

「ああ、初めまして。アルセルタスを倒しに行こうかと思っていたんだよ」

 

 虫棒ねぇ……。強いのはわかっているけれど、どうにも使う気にはなれなかった。これもハンマー使いの僻みだろうか?

 

 

「おおー。徹甲虫かぁ。そっか、そっか。え、えと……それ、私もついて行っていい?」

 

 

 …………はい?

 

 

「そ、そんな顔しなくてもいいじゃんか! だって一人じゃアルセルタスなんて倒せないんだもん。それに、私みたいな新米ハンターを手伝うようなもの好きもいないし……見たとこ君だって、まだ私と同じ新米ハンターでしょ? それなら一緒に戦った方がいいと思うよ!」

 

 いや、確かに俺も採取ツアーしか受けことがないけれど……なんだろう。この彼女は地雷臭がヤバい。実際に戦ってみなければわからないけれど、今の俺には他人のことを心配する余裕なんてない。

 俺はジャギィすら倒したことがないのだ。

 

「よしっ、そうと決まれば早速行こっか」

 

 あの……まだ何も決まってないんですが。

 ああ、ダメだ。彼女、他人の話聞かないタイプだ。

 

 結局、彼女には押し切られ一緒に行くことになりました。

 はぁ、面倒な人と会っちゃったなぁ……。まぁ、女の子と一緒に狩りができると考えよう。

 人生前向きに生きていった方が良いはずだから。

 それが生きていくことの秘訣だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

「こんにちは、ハンターさん! こっちの受付に来るなんて珍しいですね。今日は闘技大会へは参加しないんですか?」

 

 一ヶ月ぶりに下位クエストの受付嬢と会話。相変わらず彼女は元気だった。

 

「目標は達成できたからね。当分、闘技大会へ出ることはないと思うよ」

 

 てか、どうして彼女は俺が闘技大会へ出続けていたことを知っているのだろうか。やっぱり噂になってたんかねぇ。

 目立つのは好きじゃないんだが……

 

「そうですか。じゃあ受付の彼女も寂しくなっちゃいますね。だからたまには顔を出してあげてくださいよ。よし、それじゃあクエスト紹介です!」

 

 偶には、か。まぁ、それくらいなら出場しても良いのかな。俺だってできればクック片手ソロで4分を切りたいし。

 そんなことを頭の隅で考えながら、紹介されたクエストを確認。

 

「このクエストを頼む」

「はい、“美味との遭遇? ”ですね! 場所は遺跡平原でメインターゲットはアルセルタス一匹となりますが、大丈夫ですか?」

「うん、お願いするよ」

 

 このクエストはキークエストだったはず。この世界にキークエストがあるのかはわからないけれど、やっておいた方が良いことは確かだ。

 アルセルタス倒せるかなぁ……。今更になって不安になってきた。大型種の中では最弱だと思うけど。

 

「参加人数はどうされます?」

「一人で」

「ちょ、ちょっと! ち、違います。二人! 二人です!!」

 

 ダメか。もしかしたらいけるんじゃないかと思ったけれど、流石に誤魔化せなかった。本当にこの彼女と一緒に行って大丈夫なんだろうか。

 別に自分が上手いとは思わないけれど、どうにも不安です。それに一人なら失敗しても迷惑が他人にかかることはない。その分、気は楽と言うもの。

 

「わっかりました。お二人ですね。それでは準備ができ次第、出口へ向かってください」

 

 受付嬢の話を聞き、契約金の300zを払った。

 ああ、もう残り1万zを切ってしまった。お金もどうにかしないとなぁ……。序盤では必ずと言って良いくらい立ち塞がってくれるお金の問題。効率の良い稼ぎ方って何があったかな。

 

「そんじゃ、飯食ったら行くか」

「…………」

 

 彼女へそう声をかけたが、無言で睨まれた。

 睨むと言っても俺の方が背が高かったため、それは上目遣いに見えなくもなかった。頬なんかを膨らませているしちょっと可愛いかも。

 

 むぅ、怒っちゃったよ。

 

「冗談だったんです。ごめんなさい。飯奢るので許してください」

 

 此処は素直に謝罪。

 パーティーの仲を悪くするわけにはいかないのだ。

 

「……うん、じゃあ許す」

 

 そりゃあ、良かったよ。

 これで300zの出費か。上手くいかない人生ですなぁ。

 

 

「龍頭とピンクキャビアの煮込み料理で」

 

 空いている席へ座り、料理を注文。これでKO術がついてくれれば儲けものだ。どうやら食材は始めから揃っているらしく、食材クエストをやる必要はないらしい。食材クエストの中には旅団クエストも含まれていたからどうなるのかと思ったけれど、これは助かります。しかも食材は全て新鮮らしい。

 お食事券いらないね。闘技大会に出場していたから結構持っているんだよなぁ。

 

「う~ん、私はどうしよう」

 

 どうにも注文が決まらない様子の彼女。

 俺の場合、クエスト前は多分肉と魚の煮込み料理しか頼まないんだろうなぁ。これもハンマー使いの運命なんです。

 

「たてがみマグロとマスターベーグルの揚げ料理がオススメだぞ」

「そうなの? 食べたことないや。じゃあ、ソレお願いします」

 

 できるだけ自然な流れで“防御術【大】”の発動する料理へ誘導。味は知りません。食べたことないもん。不味いということはないと思うけど。

 

 運ばれてきた料理は彼女の口にあったらしい。とりあえず一安心。

 

 

「あっ、そうだ。ちょっと買いたい物があるから、少し待っててくれんか?」

「うん、いいけど。何を買うの?」

「ピッケル」

 

 武器を強化するために、大地の結晶と鉄鉱石が必要なんです。アクセルハンマーは一発生産ができるけれど、ウォーハンマーから強化していった方が安い。

 良いよなぁ、虫棒は最初から切れ味が緑ゲージまであってさ。流石に優遇されすぎな気がする。

 

 そして、160zのピッケルを5本とついでに砥石を20個購入。回復薬は買わないでおいた。支給品の応急薬だけでなんとかなるだろうし。

 はぁ、みるみる所持金が減っていくよ……。しゃーない、必要経費です。

 

 買った商品をアイテムポーチの中へ入れる。どうやって入れたのかとか、聞いてはいけない。何故か入るんです。焼肉セットとかどうやって入ったんだろうか……

 

「よしゃ、準備できたし。行くか」

「そだね。行こっか。いやぁ、緊張してきたよ!」

 

 遺跡平原までは半日かかる。その間に緊張など抜けるだろう。

 俺は緊張より、不安が抜けてくれない。うん、頑張ろう。

 

 彼女と二人で集会所の出口へと向かう。

 

 

 それじゃ、ひと狩りいきますか。

 

 






“クイーンランゴスタ”で検索すると予測検索に“クイーンランゴスタ キモい”と出てきて笑いました

と、言うことで第5話でした
アイテムポーチってすごいですよね
大タル爆弾Gからドス大食いマグロまでなんでも入っちゃいます
どうなってんでしょうか?

次話はアルセルタスとの戦いっぽいです
では、次話でお会いしましょう

感想・質問なんでもお待ちしております

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