結果だけを見れば余裕で、けれども内容はかなりギリギリでアカムを倒すことができた。もし閃光玉を使い果たし、それでも倒しきることができていなかったら、どうなっていたかはわからない。
装備は文句無しに良いものだけど、如何せん防御力が足りていない。特に俺と彼女は。
そんな中でも倒すことができたと言うのは、運が良かったとでも言うべきなのだろうか。
流石にそろそろ防御力を上げないと厳しいよなぁ……
今の装備を最終装備にしようとだなんて思っていないせいで、どうにも鎧玉を使うことが躊躇われる。ただ、そろそろ良い時期なんのかもしれない。これからは古龍種のモンスターみたく強い奴らと戦っていかなきゃいけないんだ。出し惜しみしている場合じゃないかもしれない。
「これからの予定って何か決まってるの?」
「得には決まってないかな。でも、そろそろHR7になるための緊急クエストが出ても良いと思う。まぁ、じいさん次第かな」
ゴリラやイビル、金銀にテオクシャなどなど。戦いたいモンスターは沢山いる。それにあるかはわからないけれど、ギルドクエストだって挑戦したい。
てか、ギルドクエストがないとキリンと戦えないんだよなぁ……キリンと戦いたいって言うのもあるけれど、彼女たちはにキリン装備を是非……なんてね。
ゲームの方はもうやりたいことなんてなくなってしまっていたけれど、今の世界は違う。やりたいことはまだまだ沢山ある。
それが嬉しかった。
――――――――――
「おお、戻ってきてくれたか。よくぞ無事に……そしてアカムトルムの討伐を成功させてくれたね」
バルバレへ戻ると、直ぐにギルドマスターに捕まってしまった。
そして、どうにも周りのハンターから見られているような感覚がする。ダレンを倒した時ほどではないけれど、今回もなかなかだ。
むぅ、目立つのはあまり好きじゃないんだけどなぁ……
「まぁ、なんとかね」
たらればを言ったところで仕様も無いが、もし閃光玉がアカムにきかなかったらどうなっていたかはわからない。よく馬鹿にされるけど、アカムさん普通に強いし。
「ほっほほ。クリアできただけで充分過ぎる働きだ。さて、そんなキミ達にギルドからHR7となることを認めても良いと言う、連絡が来たよ。おめでとう。これでキミ達はこのギルドの中でもトップであるHR7だね」
うん? HR7が一番なのか? それはつまり上限開放組がいないと言うことになりそうだが……
ゲームの中ではダラの緊急クエストをクリアすることでHRは上限が開放された。でも、この世界にダラが沢山いるとは思えなかったし、また別の条件でHRの上限は開放されるのかと思っていたんだが……どうなのだろうか?
まぁ、とりあえずHR7となったのだし、それはまた今度考えるとしよう。
「ほっほほ。それじゃあ、さても素晴らしき活躍を期待しているよ」
そう言ってからギルドマスターは離れていった。
HRが上がればラッキーだって思ってはいたけれど……うむうむ、なかなか良いじゃあないか。是非とも古龍種のモンスターと戦いたい。
「HR7かぁ……もうそんな所に来ちゃったんだね」
不安そう……ではないけれど、なんとも複雑そうな相棒の顔。
たぶん、俺たちのこのHRの上がり方はこの世界じゃ異常なんだろう。上位ハンターでさえ、尊敬されるような世界。その中で俺たちはトップに立っている。そりゃあ、相棒だって複雑な気持ちにはなるか。
そんな異常な早さでHRが上がれば、周りのハンターたちからも見られるのも仕方無い。
「……次の予定は?」
ぽそりと聞こえた彼女の声。
この彼女は今の状況をどう思っているのだろうね?
「ん~……古龍種と戦いたいなぁって思ってるけど、どう?」
「私も戦いたい」
ですよねぇ。せっかく装備も整い、HRも7となったんだ。強いモンスターと戦うには丁度良い。
「でもクエストあるのかな? そもそも古龍種が現れないから、クエストも全然ないと思うけど」
そこは聞いてみないとわからない。
ただ、やっぱり戦いたいじゃないか。もうこの際ダレンでも良いからさ。
「うん、ちょっと聞いてみるわ」
贅沢なことだけど、できるならテオかシャガルが良い。
クシャも悪くはないけれど……また閃光祭りになりそうだからちょっと遠慮したいです。それにクシャは頭が小さいからちょっと苦手。
そんなことを考えながら、上位の受付嬢の元へ。
そこで、古龍種のクエストがあるか聞いたところ――運の良いことにテオのクエストが届いているらしかった。
っしゃ! と一度心の中でガッツポーズをしたけれど、よくよく考えてみると俺の防具でテオと戦うのはかなりキツい。だって、テオにゃん火を吹くもん。
しかし此処でモタモタしていると、他のハンターにテオのクエストを取られてしまうかもしれないし……むぅ、どうしたものか。
まぁ、とりあえず、彼女たちに相談か。
そして、彼女たちにテオのクエストがあることを伝えると――じゃあ行こう。と言うことになった。笛の彼女の目が珍しく輝いて見えた。相棒はよくわかってなさそうだったけれど……
そんな短すぎる相談をした後、再び受付嬢の元へ行き、そのクエストを受けることに。場所は地底火山。最近は暑いエリアばかりだ。
いや、まぁ、テオが寒いエリアにいたらおかしいんだけどさ。
そんなことで、アカムとのクエストを終えたばかりだと言うのに、飯を食べてからまた直ぐクエストへ出発することになった。疲れはないし、そのことに問題はない。でも、やっぱり不安なところはある。だって、このクエストで乙る可能性が一番高いのは俺なのだから。火属性-43は本当に良く燃える。
「……なんでネコ飯をネコの火属性得意にしなかったの?」
地底火山へ向かう途中、彼女に聞かれた。
……しまった。
「ヤバい、忘れてた……」
そうか、そう言えばそんな便利なスキルもあったじゃないか。
今回は何スタン取れるかなぁ。とかウキウキ気分でKO術の発動する飯を食べていた。馬鹿かよ。馬鹿ですね。
「い、いや、まぁ、当たらなきゃ問題ないし」
括弧震え声。
「……ホントに忘れてたの?」
疑うような彼女の視線。
何を疑われているのかはわからないけれど、俺にモンスターからダメージを多く喰らうことで喜びを感じるような趣味はない。被ダメはできるだけ減らしたいのです。
「うん。いつもの癖で……」
正直なところ、KO術を発動させたところで、恩恵は其処までない。KO術が発動するとスタン値が1.1倍にはなるけれど、そのおかげで1回分多くスタンを取ることができるかと言えば、それはかなり怪しい。
じゃあ、どうしていつもKO術を発動させるかと言うと……お守りみたいなものだと思っている。験担ぎだとかそんな感じ。
まぁ、KO術に全く意味がないとは言わないけどさ。
「そう……気をつけて」
「うん、わかってる」
さて、俺の火耐性は-43。つまり火属性攻撃を受けたとき、1.43倍のダメージを受けるわけだけど……
当たらなければ良いと震え声で言ったアレは、正直なんとかなると思っている。予想でしかないけれど、テオの攻撃に火属性が付与されているものは、非怒り時のブレスだけなんじゃないだろうか。
スーパーノヴアなんかも火属性が付与されていそうだけど、あんなもん現段階の防具じゃ耐えられる方が少ない。細菌研究家スキルのおかげで爆破はしないし、そもそもアレは無属性。それに怒り時のブレスも無属性じゃないかって思っている。まぁ、だからと言ってそれを確かめる余裕はないんだけどさ。
つまり気をつけるのは非怒り時のブレスのみ。それなら攻めすぎなけばきっといける。それくらい、テオとは戦ってきた。
何回も何回も戦い、嫌になるほどアイツの行動を頭へ叩き込んだ。それでも上手くいかないことは多かったし、頭じゃわかっていてもその通りに行動できないことも多かった。
でも、今は違う。
あの時に蓄えた知識と経験をずっと上手く活用することができる。
だってこの世界は――ゲームじゃないから。
さてさて、久しぶりの古龍種が相手なんだ。精一杯楽しませてもらおうじゃないか。
本文で、テオにゃんの火属性攻撃は非怒り時のブレスとスーパーノヴァのみと書きましたが、どうなんでしょうか?
私が確かめたときは、粉塵爆破系の攻撃がやたらと被ダメージが低かったのでそう書きましたが、実際のところはわかりません
教えていただけると嬉しいです