「テオ・テスカトルってどんな感じのモンスターなの?」
地底火山へと向かう途中であの娘が彼に尋ねた。
どんなモンスターと言っても……説明するのは難しそうだ。
「んと……4足歩行で翼が生えてて、火を吹いたり突進したりするモンスターかな。あと顔が大きい」
……いや、間違っちゃいないけれど、その説明はどうなんだろう。もっと教えておいた方が良いことがある気がする。
「へぇー。よくわかんないや」
うん、でしょうね。
私もそれだけじゃわからないもの。
とは言っても、口で説明するのが難しいのは確かなこと。今まで戦った中で同じような骨格のモンスターっていないし。
「まぁ、実際に見てみればどんなモンスターかはわかるよ」
「それはそうでしょ。う~ん、何か気をつけることってあるの?」
気をつけること……それは沢山ある。近距離爆破と遠距離爆破。後方爆破と前方爆破の違いとか。
でも、一番気をつけることと言えば――
「スーパーノヴァかな」
その攻撃になると思う。たぶん今の私たちの装備であの攻撃を耐えられる人はいない。だってあの攻撃、鬼みたいに強いんだもん。
「えと、なにそのカッコイイ攻撃」
「んと……テオの怒り状態が解けた時にやる攻撃かな。当たったらまず倒れると思う」
初めて戦ったときは、何が何だかわからないまま乙った。あんな攻撃聞いてない。そして何より迫力がすごい。衝撃派みたいな奴で空間が歪んだように見えるし。
「えっ……そんなのどうすればいいの?」
「ノヴァを止める方法は色々あるけど……まぁ、君が乗れば大丈夫だよ」
ノヴァの条件はテオの怒りが解けた時。テオの怒り時間は90秒。それさえ覚えていれば大丈夫。
とは言え、タイマーなんてないから、怒りが解けた時のあの独特な鳴き声で判断した方が良いかも。それに、粉塵も消えるはずだからよく見ていればなんとかなる。
「せ、責任重大だ……」
「えっと、だな。そのノヴァをやる時だけど、乗り以外でもスタン、睡眠、尻尾切断、頭怯みでも止めることができるんだ。だからそんなに無茶はしなくても良いよ? 一回でも乗ってくれれば十分だし」
テオは嫌いじゃないけど、この時間に追われながら戦わされるのがちょっと苦手。ソロじゃ全部のノヴァを止めることなんてできない。
でも、今はパーティーでこの彼なら止めてしまうような気がする。
「そうなの?」
「うん、たぶん。んで、今考えてる流れだけど……」
そう言って始めた彼の説明をまとめると、最初のノヴァは私と彼が頑張ってスタンを取ることで止める。次はあの娘が乗って止める。その次はもう一度スタン。その後は……頭破壊か睡眠か乗りで止めるって言う流れ。
つまり、今回の目標はテオに一度もノヴァをさせないこと。簡単に言ってくれるけれど、そんな楽なことじゃない。
「まぁ、ノヴァをしそうになった時は言うから、その時は全力でテオから離れるように頼む」
それで間に合うかなぁ……操虫棍って一回一回の動作がすごく長いんだよね。
「了解! 頑張ります!」
そして、あの娘の心配をしていられるほどの余裕が私にもそろそろなくなってきている。いくら戦い慣れている相手とは言え、此処はゲームの中じゃないし、相手は古龍種。
うん、私も頑張らないとだ。
あっ、そう言えば……
「……上位テオって引っ掻きの後、牙を鳴らして粉塵爆破したっけ?」
いつも曖昧になってしまう。あの攻撃は鬱陶しいけれど、アレをしてくれた方が戦い易い。ギルクエはしてくれたと思ったけど……
それが気になったから彼に聞いてみた。
「いや、星7のテオはしないはず。するのは高レベルのギルクエとJUMPテオかな。まぁ、だからと言ってしないとは限らないんだけどさ」
そっか。しない可能性の方が高いっぽいんだ。
むぅ、できればしてほしいんだけどなぁ。
ふむ、とにかく今回は乙らないよう頑張ろう。
――――――――――――
「よしゃ! それじゃ行くか!」
「おおー!」
「おー」
いつも通りのかけ声。彼と別れ、あの娘と二人でクエストをやっていた時は、このかけ声がなかったせいで、なんとも変な感じがした。
そんなことを考えるとクスリと何かが落ちる。ただ、悪い気分じゃない。
テオの初期エリアである2へ向けて出発。
その途中で、聴覚保護の演奏を1回。これがないと何もできずに突進を喰らってしまうことがある。
「ありがとう。助かる」
どういたしまして。
暑さ無効を演奏するかちょっと迷ったけれど、どうせ旋律維持なんてできないだろうから止めておいた。
そして、エリア2へ。
エリア2の流れる溶岩の上、アイツがいた。
……やっぱり、実際に見ると迫力がある。テオにゃんなんて呼ばれるくせに全く可愛くない。
「あっ、ちょっと可愛いかも」
……うん、そうだね。かわいいね。
そんな緊張感のないあの娘の言葉を聞きながら自分強化を演奏。
彼はハンマーを腰へ構えながら一気にテオへ近づいていき、あの娘は虫を飛ばしていた。
そして、私の演奏が終わると同時にテオの咆哮が響いた。
咆哮の終わったテオは私に向け突進。むぅ、笛はヘイトを稼ぎすぎる。彼はそれを羨ましがるけれど、私は其処まで嬉しくない。一人静かに演奏していたいんです。
「遠方爆破!」
私に突進をしたテオが、その翼をゆっくりと羽ばたかせた。
それを見てから直ぐ、彼の声が響く。チャンスタイム。
急いでテオの頭へ行き、彼の邪魔にならないよう立ち位置を変えながら頭へ叩き込む。テオは顔が大きいから共存も難しくない。
カチリと牙を鳴らす音が聞こえ、遠くの方が爆発した。それを確認してから直ぐにローリングを2回して距離を取る。あの出が早い突進は怖い。やっぱりテオと戦う時は回避性能より距離の方が便利だ。
突進を回避して、テオがバックステップ。そして威嚇をしたところで、彼のカチ上げが頭に入りテオが怒った。あれだけ頭をポコポコされれば怒るよね。
此処から時間との戦いも始まる。制限時間は90秒。そんな戦いがテオを倒すまでずっと。
こればっかりはやっぱり苦手だ。私の集中力はそんなに持たない。
それでも、やらなきゃいけない。
「前方粉塵!」
了解。
たぶん、1回目のスタンは問題なく取ることができると思う。問題は2回目以降のスタンと……彼がまた無茶をして乙った時。
もし彼が乙った場合、私たちは一気に崩れる。だから無茶をして欲しくはないんだけど、クエストが始まると彼って言うこと聞かないんだよなぁ……
危ないってわかってるはずなのに、突っ込んでくんだもん。今だって、前方粉塵と自分で言っておきながらテオの頭の前でハンマーを振り回している。ああ、もう何をやっているのか。
あの時、できるだけ気をつけるって言ったのに……
そしてギリギリまで攻撃して、カチリと聞こえてから爆破をフレーム回避。流石に一発で乙りはしないと思うけれど、見ていてすごく危ない。そんな無茶しなくても良いのになぁ……
そんな彼に呆れながら後方爆破後のテオへ後方攻撃。
あっ、スタン取った。
「ナイス!」
できればもうちょっと時間が経ってからスタンを取りたかったけれど、こればっかりは仕方無い。
彼、大丈夫かなぁ……うん、粉塵を用意しておこう。
――――――――――
……ヤバい。テオにゃん超楽しい。
頭へぶち込んだときのヒットストップが、弾けるスタンエフェクトが最高に素晴らしい。
一発でも喰らったら乙るんじゃないかって言う緊張感がすごい。視界なんてとっくに白黒で、音だって自分の心臓と呼吸くらいしか聞こえてこない。
もう飽きるほど戦った相手。でもそれは、ずっと戦いたいと思っていた相手だった。
ハンマーでテオと戦う時は、どれだけブレスと粉塵爆破を誘導できるかが大切。下手な距離を取ると突進を連発され、時間を稼がれてノヴァを止められなくなる。
そうさせないため、テオの90°ターンに合わせてテオの顔を横切るようにローリング。それでブレスを誘導。ブレスのモーションが見えたら直ぐに、ハンマーを腰へ構えて、ブレスの終わり際にカチ上げと横振り。
突進の出は早く避け難いけれど、そこは回避性能で無理矢理避ける。正直このテオが相手なら攻撃なんて当たる気がしない。
コイツばっかりは倒してきた数が本当に違う。
何度も何度も失敗した。だからこそ――練習した。
そんな経験があった。
1発喰らえば終わる攻撃はいくつもある。でも、そんなものギルクエと何も変わらない。むしろいつも通りだ。
「乗ったー!」
一度目のスタンを取り、2回目の怒り状態となってから暫くして相棒が乗った。ちょっと早い気もするけれど、乗ってくれただけで充分。ナイスです。
空中でテオの背中を切りつける相棒を見つつ、彼女の演奏を聞きながら砥石を使って準備。落ちてくるテオの真下へ爆弾を置いても良いけど……まぁ、やめておこう。
落ちてくるテオの頭の位置を確認。
そろそろ終わるかなぁと言うくらいから、縦1始動でハンマーを振り下ろした。
そして、テオが落ちて来たところへホームランを叩き込む。タイミングは完璧。超気持ちいい。頭の大きなモンスターはやっぱり好きだ。
乗りダウンしたテオへ、更にホームランを2セット叩き込むと、立ち上がったテオは翼を激しく羽ばたき、その身体の周りには赤色のモヤモヤしたものが漂い始めた。
直ぐにハンマーを腰へ構える。
「近距離爆破! 避けて!」
誰かの声が聞こえた。
近距離爆破はテオの顔の左側からグルリと反時計回りで爆発する。
でもその攻撃の判定は見た目以上に薄い。
今にも粉塵爆破しそうなテオの顔へ、最初の爆破に巻き込まれない右側からのカチ上げ。
その瞬間自分のすぐ隣が爆発した。そして更に、テオの身体をグルリと回りながら爆発。そんな爆発の最後をフレーム回避。
まさに紙一重での回避。ギリギリの戦い。ずっと待っていた緊張感。
それはゲームではできなかったこと。自分にそれだけの腕がないせいでずっとずっとできなかったこと。
でも今は違う。
ボタンを押し間違えることもなければ、カメラ操作をミスることもない。甘いスティック入力が原因で前ロリは暴発しないし、ディレイだって簡単にかけることができる。フレーム回避だってずっとずっと上手くできている。
それは此処がゲームの中じゃないからできること。
自分の思ったように自分が動く。それが心の底から楽しかった。
「あはっ」
無意識に変な笑い声が溢れた。
それくらい面白かったってことだと思うんだ。
テオと戦い始めて10分と言ったところ、此処まで2スタン、2乗り、1睡眠、1麻痺。頭の破壊も終わっているし、そろそろ倒せるかなぁ。なんて思っていると、テオが脚を引きずった。
っしゃ、もう少しだ。とは思ったものの、結局エリア2で倒しきることはできず、そのまま逃げられた。まぁ、こればっかりはしゃーない。
スーパーノヴァは全部防げているし、細かいダメージは受けたものの、ほぼノーダメージ。そして0乙。今回はかなり調子が良い。
「おおー、もう少しだ!」
そんな相棒の声が聞こえた。
ふと気づけば、白黒だった視界も戻っている。たぶん集中力が切れたんだろう。
そして砥石で武器を研ぎ、クーラードリンクを飲んだところで、何故か彼女から蹴られた。
「あたっ、えっ? え、どうしたの?」
お、怒られるようなことをしただろうか? 特にそんなことはしてないと思うけど……
しかし、彼女は何も言わずにテオを追いかけるため、エリア8へと続く崖を飛び降りていった。
えと……なんだったんだ?
エリア8にテオの姿はなく、そのままエリア9へ行くと、気持ち良さそう……ではないけれど、テオは寝ていた。
これ起こした瞬間、スーパーノヴァだよなぁ……
「えと、どうすればいいの? 罠とか使う?」
「とりあえず爆弾かな。あと古龍種に罠はきかんぞ」
言ったような気がするけど、言ってなかったかな? まぁ、どうして古龍種に罠がきかないのかは俺もよくわかんないけど。
「……起きたらノヴァだよね?」
彼女の声。
「うん、そうだと思う。だからちゃんと距離を取らないと」
そのことを知らなくて、最後の最後で泣かされた記憶がある。
悲しい事件だった。
爆弾を翼の近くにセット。彼女たちが距離を取ったのを確認してから、マタタビ爆弾をセット。んで、ダッシュでテオから距離を取った。
マタタビ爆弾特有のピンク色の爆風が見えてから、大タル爆弾が起爆。
大タル爆弾の爆風に包まれる中直ぐにテオが起き上がり、飛んでから大爆発した。
ゲームの中でもすごい迫力だったけれど、生で見たスーパーノヴァはすごかった。それを充分距離を取ったところで観察。
「……たまやー」
そのセリフはどうなんだろうか。
いや、確かに綺麗だけどさ。
そんなスーパーノヴァも終わり降りてきたテオへ相棒が虫を当てると、テオが倒れた。
えと、うん……
……お疲れ様でした。
「え? た、倒したんですか?」
うん、君の虫が倒したね。
ふむ、最後はちょっと微妙な終わり方だったけれど、内容は悪くない。相手はあの古龍種であるテオなんだ。胸張っても良いんじゃないのかな。
そんじゃ、剥ぎ取らせてもらおう。
なんて考えながら倒れたテオへ近づいて行くと、また彼女に蹴られた。
んもう、何ですか?
「……後で反省会」
「あっ、はい。わかりました」
普段通りの表情ではあったけれど、そんな彼女がひたすらに怖かった。
MH4のテオは怒り状態が解けた時、スーパーノヴァをします
その時間は怒ってから90秒で、本文でもありましたが怒り状態が解けるときは、「きゅいっ」と言うような独特の鳴き声が聞こえます
また、テオの身体にまとわりついていた粉塵も消えるので、それさえ知っていればノヴァで蒸発することは少ないです
ただ、MH4Gになってからはノヴァの後怒り状態が解けるようになりました
そのためMH4Gで初めてテオと戦うハンターさんより、MH4でテオと戦い慣れていたハンターさんの方がノヴァを喰らってしまうことに……
あの仕様変更は本当に驚きました……
因みに、MH4Gでは怒り状態から100秒後にスーパーノヴァです