てなわけで2つ目
相棒さんがメインのお話です
彼と彼女が消えてしまってから幾星霜……って言うのにはちょっと大袈裟だけど、もう一年以上の時間が経ってしまった。
そして別れ際にあの二人が残した“また”と言った言葉。けれども、あの二人がまた戻って来てくれることはなかった。なんとなくわかっている。もうあの二人が戻ってくることはないんだろうなって。
でも、期待しちゃうのですよ。その可能性が限りなく低いとしても、願ってしまうんです。また戻って来てくれるんじゃないかって。
そんな淡い期待があるせいで、私のパーティーには二人分の空きが残っている。
いつまでもこのままじゃダメだってわかってはいるけれど、どうしても捨てきれないのです。そんなんだから二人と別れてしまったあの日から、私は一歩も前に進むことができていない。頑張ろうとは思えているけれど、結局のところ私は一歩踏み出すことができていないのだ。
このままじゃ良くないんだけどなぁ……
「また暗い顔してますよ?」
あの二人のことを思い出していると、ふいにそんな言葉をかけられた。
その言葉をかけてくれたのは、弓を使う女の子で今は私と一緒にパーティーを組んでいる。
「ん~? そうだった?」
弱いところなんて見せたくはないから惚けてみせる。でも、何度も見られているんだろうなぁ……だって、私はそんなに強くはないもの。
「そう言えば、弓ちゃんの新しい武器できたって?」
「いえ、あと一日かかるそうです。その間、どうしますか?」
そんな唯一の仲間である弓ちゃんはすごく真面目な子です。良い意味でも、悪い意味でも。
まぁ、あれですよ。真面目と言うか真っ直ぐと言った感じ。あと、ちょっと腹黒い。
一緒にパーティーを組もうと言って来たのは、この子の方からだった。そんな提案にちょっと悩んだけれど、私は受け入れることに。だって、この子は彼と一緒にクエストへ行ったことのある子だったから。
確かこの子との最初の出会いは、集会所で相席をした時だったと思う。その時のこの子のHRはまだ1で、本当に駆け出しと言ったところ。そんなあの子を見ていると、なんだか昔の自分を思い出して、つい私から声をかけた。
それがこの子との最初の会話。でも、この子はこの子でかなりお堅い性格だったから、普通に会話をするようになるまで時間がかかった。それでも、一緒にご飯を食べるくらいには仲良くなれたのです。
その時のあの子は緊急クエストにかなり苦しんでいる様子だった。それも一人で。なんとか手伝ってあげたかったけれど、私だけじゃちょっと不安だった。だからあの彼へ頼むことに。彼になら安心して任せられるのです。
そして、いつの日か私たちのパーティーへあの子も入ってくれればなぁとか思っていました。だって3人よりも4人の方が楽しそうだったんだもん。
結果的に、そんな私の願いは半分だけが叶った。
あまりにも大きすぎる犠牲の上で。
「どうしよっか。何か行きたいクエストとかある?」
「いえ、私は特にありません」
あの二人と別れてしまってから、暫くの間は何をして良いのかがわからなかった。でも、不思議と涙が溢れることはなかった。
自分で言うのもアレだけど、どうやら私たちのパーティーは思っていた以上に有名だったらしく、私の知っている人も知らない人も関係なく、色々な人から聞かれた。
あの二人はどうしたんだ。って。
その質問に私は一度も答えたことはない。それを聞かれた時は、笑ってから――私もわからない。と言うようにしている。
私がそう答えると、それ以上詳しく聞かれることはなかった。
一人になってしまった私。防具はジンオウSで武器は渾然一体の薙刀ヤマタと何方も一級品。特に武器の方なんかは、この世界じゃ私しか持っていないとまで言われた超一級品。
そんな装備をしているハンターはお世辞にも一級とは言えなかった。
一人になってから色々なモンスターと戦いました。とりあえず、下位のモンスターから始め、最終的には古龍であるクシャルダオラまで。
ただただ我武者羅に戦い続けた。
でも、そんな一人でのクエストはちっとも面白くなんてなかった。
疲れるだけだったんです。体と心が。
今思い出しても、辛い日々だったと思う。
そんな時、あの子から声をかけられた。一緒にパーティーを組んでくれませんか? と。今までだって決して少なくない人からパーティーを組んでくれと頼まれた。けれども此処でパーティーを組んでしまったら、あの二人のことを忘れてしまうんじゃないかって思い、それが怖くて全部断っていた。
でも、この子は別。あの彼と一緒にクエストへ行ったことのあるこの子だけは別だったのです。
それに一人じゃもう限界だったんだと思う。いろいろと。
その時のあの子のHRはまだ3だったけれど、少し悩んだ後その提案を受け入れた。
それからはあの子のHRを上げることに。そのせいで私が高難度のクエストへ行く時間はなく、ギルドには迷惑をかけてしまったと思う。けれども、あのギルドマスターはそんな私を応援してくれた。
――やっぱりキミは一人よりもパーティーの方が合っていると思う。確かにキミが前線から外れてしまうのは痛いけれど、また戻ってきてくれるよう願っているよ。
そんな嬉しい言葉で。
そして久しぶりにやったパーティーでのクエストはやっぱり楽しかった。ギルドマスターが言ってくれたように私はソロが合っていないらしい。
「それじゃ、とりあえず集会所へ行って、何かクエストがあるか聞きに行こっか」
「そうですね」
そんなあの子のHRも7となり、一流のハンターと言ってもおかしくない。まだまだちょっと危ないところはあるけれど、すごく上手くなったと思う。
防具はラギア一式。武器は爆砕の征矢とあの彼と同じブラキディオスの素材を使った弓。まぁ、それが完成するまで、あと一日かかるみたいだけど。
この子からよくお礼を言われることがある。でも本当にお礼を言わなきゃいけないのは私の方だ。だってあのまま一人で戦い続けていたら、私はきっと壊れていた。だからこの子には心の底から感謝しています。
私のHRはもうそろそろ100へ届くところ。今のこのギルドの中では一番高いみたいだし、一番上手いハンターだなんて言われることもある。でも、中身はあの頃と変わっていないのです。外面だけ見繕ったところで、結局のところ中が変わらないと意味がない。
それはわかっている。わかっているけれど、やっぱり私は前に進んでくれやしなかった。
「……なんだか、今日の集会所は妙にざわついていますね」
「うん。何かあったのかな?」
あの子とともに集会所へ。
集会なんていつも騒がしい場所ではあるけれど、今日はそれとはまた違った騒がしさだった。そして、どうも色々な人からの視線を感じる。
う~ん、何があったのやら。
よくわからなかったけれど、とりあえず受付嬢さんのところへ行き、何のクエストがあるか聞くことに。
そうしようと思ったとき、ギルドマスターが私たちに声をかけてきた。
「ほっほほ。狩りは順調かい? さて、いきなりだけど、キミ達はドンドルマと言う街を知っているかな?」
ドンドルマ……その名前くらいは聞いたことがあった。
「はい、知っていますが……」
どうやらあの子も知っているらしく、ギルドマスターへそんな返事をした。
「ほっほほ。それは良かった。それなら知っているかもしれないが、そのドンドルマには大老殿と呼ばれる宮殿があってだね。そこにはごく一部の、それも高い実力と実績を兼ね備えたハンターのみが入ることができる。さて、喜びなさい。その候補にキミ達が選ばれたんだ。そして、その最終試験とも呼べるクエストがキミ達宛てに届いた」
……なんだかすごいことになっちゃいましたね。
私にそんな実力があるとは思えないんだけどなぁ……だって大老殿と言えば、今まで私たちが受けてきた上位クエストの更に上。つまりG級のクエストが依頼されてくるはず。
流石にそんなクエストをクリアできる自信はない。
「なるほど、わかりました。それで……クエストの内容は?」
「ふむ、崩竜……ウカムルバスの討伐だよ。キミ達の実力なら充分やり遂げられる依頼だと思うけれど……どうかな?」
ウカムルバスかぁ……戦ったことはないけれど、ものすごく強いモンスターだと思った。そしてそれを倒すことができれば私たちはあのG級ハンターになる。
でも、それはつまり、私が前に進まなければいけないと言うこと。
「どうしますか?」
あの子の声。
答えなんてわかりきっている。そして、その答えを出すのが怖かった。
でも、そろそろ私は前へ進まないといけないんだと思う。何時までもあの二人を待っているだけじゃダメなんだ。
怖い、怖いけれど……私は一歩、前へ進まないといけない。
「はい、そのクエスト受けます」
このギルドマスターにだけはあの二人のことを話した。突然消えてしまったことと……たぶん、もう帰っては来ないことを。
そんなせいか、酷く私のことを心配してくれたし、沢山お世話になった。だからこれはこのギルドマスターへの恩返しも含まれていると思う。
「ほっほほ。それは良かった。うむ、良きかな良きかな。それじゃ、準備ができたらまた声をかけなさい」
あの二人を忘れることなんてないけれど、私は前に進みます。
「……良かったのですか?」
心配そうな顔のあの子。
頼りないメンバーでごめんね。
「……うん、もう大丈夫。それにいつまでも止まっているわけにもいかないもん」
何時までも帰ってこないあの二人がいけないんだ。
私はもう充分待った。……充分すぎるほど待ったんです。
「でも、出発するのは弓ちゃんの武器が完成してからにしよっか。だからクエストへ行くのは明日の朝かな」
「あっ、はい。わかりました……」
やはり不安そうなあの子。
優しいね、君は。
その日の夜は眠ることがほとんどできなかった。
――――――――――
そして次の日。
ほとんど寝ていないはずなのに、体は予想以上に重くない。
家に帰ってから目を瞑っている間、色々と考えました。本当に色々と考えたんです。
そこで決めたことが一つ。
もう迷いません。私は一気に進みます。
あの子と合流し、朝一番に武器を受け取ってから集会所へ。
朝早くの集会所はやっぱり騒がしくはない。
「お待ちしてました。お話は聞いています。これでまた一人、大老殿へ旅立って行かれるのですね……ふふふ。まだ少し早かったでしょうか? でも、貴方たちなら問題なくクリアしてくれると信じています。もちろんケガしたら、絶対ダメですからね」
そっか、これでこのクエストをクリアしたら、もう此処へ帰ってくることはほとんど……
いや、もう決めたじゃないか。一気に進むんだと。
「お願い」
「ふふふ。はい、わかりました。参加人数は二……えっ? あれ? え、えと……」
急に、戸惑い始めた上位クエストの受付嬢さん。
いや、いつも通り二人でいいのですが……流石に一人では行きたくないし。
「うん、4人で頼む」
そんな声が聞こえました。
すごく懐かしい声が。
「……戻ってきていきなりウカムとかキツい」
そしてまた懐かしい声が一つ。
どうして? とか。何故? とか色々な感情が溢れてきたけれど、それ以上に嬉しくて……でも、やっぱり頭は混乱していて……グルグルと何かが私の中で回って……
どうにか後ろを振り向く。
そこにはあの日と変わらない二人の姿。
「や、久しぶり。ちょっと遅れちゃったな」
「……でも、ギリギリせーふ」
色々と言わなきゃいけないことがあった気がする。
でも、私の口から言葉はなかなか出てきてくれやしなかった。
結局、再会して最初に出た言葉は――
「おかえり」
だなんて、酷く平凡な言葉となってしまった。
でも、別にいいのです。だって、言葉なんてまたこれから出せばいいのだから。
そしてその日、私は一年ぶりの涙を流した。
色々とすっ飛ばし、とりあえず3人が合流です
主人公と笛の彼女が合流するまでの経緯はまた今度で
後日談はそれも含め、あと2つほど書く予定です
次話は……このお話の続きとなりそうです
~お知らせ~
誠に勝手ではありますが、ランキングに乗らないように設定を変えさせていただきました
本編が完結しているのにランキングに乗るは心苦しかったので……