振り向きへホームラン【完結】   作:puc119

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第6話~崖上からジャンプスタンプ~

 

 

 1、2、3、ほい。

 音楽に合わせ、一定のタイミングで焼肉セットを使い焼いていた肉を上げる。

 

 ――上手に焼けましたー♪

 

 こんがり肉ができあがると共に、何処からかそんな声が聞こえた。

 あの肉を焼いている時に流れる音楽は、焼肉セットからとして……この声は何処から流れているんだろ。やっぱりこの声も焼肉セットからなのだろうか。相変わらず、わからないことだらけの世界だ。

 

「そう言えば、君ってハンターになってからどれくらい経つんだ?」

「ん~、二ヶ月くらいかなぁ」

 

 あら、じゃあ俺よりも先輩だったのか。まぁ、一ヶ月しか変わらないのだし、それほど違いはなさそうだけど。

 

「二ヶ月も経つのに初期装備のままかぁ……」

 

 もう一度こんがり肉を作るために、焼肉セットへ視線を移す。

 

「べ、別にいいじゃんか! 私は私のペースで進んでいるのっ」

 

 俺は独り言のつもりだったけど、どうやら聞こえていたらしい。失礼しました。

 実際のところどうなんだろうね。ゲームなら二ヶ月もあれば大きい蛇さんを倒し、ゴリラの乱獲作業への準備へと移行しているだろう。

 けれども、此処はゲームの世界じゃない。それなら二ヶ月経っても初期装備と言うのはおかしいことではないのか? ちょっと遅すぎる気もするけど。

 

「今まではどんなクエストをやっていたの?」

 

 音楽が鳴り止んでから3つ数えて肉を上げる。

 

 ――上手に焼けましたー♪

 

「……無駄に肉焼くのうまいね。えと、今までは採取ツアーで素材を集めたり、茸を採ったり、魚を釣ったりしてたよ」

 

 ああ、なるほどそう言うクエストしか行っていなかったのか。

 素材は沢山持っていそうだし、防具や武器を作れば良かったのにね。俺の場合、素材なんて全く持っていないせいで強化のしようがない。

 

「えっと、じゃあ……もしかして、これが初めての狩猟クエスト?」

「うん、そうだよ」

 

 ……これ、大丈夫か?

 

 いや、まぁ、俺もこれが初めての狩猟クエストなんだけどさ。

 う~ん、ドスジャギィへ行った方が良かったのだろうか。

 

「へい、アイルーあとどれくらいかかりそうだ?」

「今、ちょうど半分くらいニャ」

 

 遠いですなぁ……

 焦らずのんびり行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたー!」

 

 遺跡平原ベースキャンプへ到着。

 元気だなぁ。

 

 来る途中は肉を焼きながら、彼女に色々と教えてもらった。クーラードリンクや元気ドリンコの味とか、そう言うことを。やっぱり味は大切なんだ。ドリンク系が全部携帯食料のような味だと流石に困る。

 

 そして、俺がそのことを聞くと、そんなことも知らないの? みたいな顔をされ、ドヤ顔で説明された。張り倒そうと思ったけれど、其処は我慢。そのせいで2つほど肉も焦がしたけれど、仕方無いことだと思う。

 んでドリンク系の味だけど、どうやらそれほど悪くはないらしい。元気ドリンコはなかなか美味しいとも言っていた。これで一安心。

 

「き、緊張するね」

 

 俺だって多少は緊張していたけれど、アレだ。自分よりも慌てている奴を見ると、緊張って無くなるんだな。

 

「身体を動かしゃ大丈夫だろ。んじゃ、行くか。支給品、半分くれ」

「全部持っていってもいいよ? 回復薬、持ってきてないんでしょ?」

 

 そんなにいらんわ。たぶん3つあれば充分だろう。

 全く準備をしていなかった俺と違い、彼女は薬草から回復薬グレートまでと、かなりの重装備をしてきているらしい。下位クエストなのに回復薬グレートっているのだろうか。

 回復を渋るハンターは下手なハンターの典型例だけど、だからと言ってがぶ飲みすれば良いと言うものでもない。

 

 支給品ボックスを開けると、其処には地図、松明、応急薬、携帯食料、携帯砥石、ペイントボールとガンナー用アイテム。そしてウチケシの実が入っていた。

 むぅ、閃光玉はないのか。これは面倒なことになりそうだ。

 

 支給品ボックスから地図と応急薬、ペイントボール、携帯砥石を取り出しアイテムポーチへ。携帯食料は飲みたくありません。

 

 

「っしゃ! 行くか!」

「おおー!」

 

 

 いつものように気合を入れるため声を一つ出す。

 アルセルタスの初期位置はエリア4。段差が多く戦い難い場所。まぁ、文句を言ったところで仕様が無いんだけどさ。

 

 

 

 

 途中で鉱石を採掘しながら、アルセルタスの居るエリアに向かった。たぶん、ウォーハンマーを一回強化するのに必要な鉱石は集まったと思う。あと必要なのはアルセルタスの素材のみ。

 そして、エリア4に到着。

 

「うわっ……でか」

 

 ぽそりと聞こえた彼女の声。

 その視線の先には、羽音を響かせながら宙へ浮いている徹甲虫。

 

 確かにアルセルタスは大きかった。けれども、なんだろうか……何故かそんなに怖いと感じない。

 

 飛んでいるアルセルタスに気づかれないよう、こっそりと後ろへ回り込んでから、担いでいたハンマーを手に持ち、右の腰へ構える。

 そして2回ハンマーが光ったところで、段差から飛びジャンプスタンプをアルセルタスへ叩き込み、空中から叩き落とした。んで、そのまま乗り。

 サクサクとアルセルタスの背中を斬りつけダウンを奪う。

 

 ペイントボールを当ててからダウンしたアルセルタスの頭へ縦1、縦2、そしてホームラン。これでスタン値を80蓄積。

 

 ヤバい! ハンマー超楽しい!!

 

「わ、私も戦う!」

 

 そんななんとも頼りなさそうな声を出しながら、彼女が此方に走ってくるのが視界の端に見えた。

 未だダウン中のアルセルタスへもう一度縦3攻撃。そしてホームランを当てたところで、アルセルタスがスタン。初期スタン耐性値は160以下っぽいね。上昇値はどんくらいだろうか。

 

 彼女の振り回す虫棒に当たらないよう、立ち回りながら縦3を当てていく。

 う~ん、虫棒と一緒は戦い難い。ハンマーにもSAさえあればなぁ……

 

 アルセルタスのスタンがとけ、怒りモーションへ以降。右腰へハンマーを構え後ろへ回り込む。アルセルタスの腹が上がるのが見えた。

 溜め3、間に合わない。羽を広げ、今にも飛ぼうとしているアルセルタスの腹へカチ上げを一発。そして横ロリで距離を取る。

 

「おい! 突進離陸来るぞ。よけろ!!」

 

 明らかに飛ぼうとしているアルセルタスの頭の前に何故かいる彼女。

 ……何やってんすか。

 

「へ?」

 

 そんな間の抜けた声を出しながら、彼女が吹っ飛んだ。

 うん、まぁ、そうなりますよね。

 

 

 

 その後も、彼女はサッカーボールみたく面白いくらいアルセルタスに転がされ、終に救助アイルー……つまりネコタクに運ばれていった。

 いや、うん。初めてはそんなもんだよな。わかるよ、俺だって最初はそんなもんだった。

 はぁ、せめて一度くらいは空中から落としてもらいたかったんだがなぁ……

 

 ベースキャンプへ運ばれて行った彼女を見送り、アルセルタスへ視線を移す。シャリシャリと空中で爪を鳴らしながら、此方に威嚇。

 現在スタンは2回、乗り1回。それぞれもう一度くらいはいけそうだ。此方の体力にはまだまだ余裕がある。てか、予想以上にアルセルタスの攻撃力が低い。

 

 そして何より、これでソロ。

 一番の得意分野だ。

 

 漸くわかった。どうしてコイツを怖いと思わなかったのかが。確かにコイツはでかい。けれども、一ヶ月以上闘技大会で戦い続けたアイツと違い――お前には絶望感が足りない。

 

 さて、反撃開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やった。勝ったんだよね?」

 

 仰向けにひっくり返り、もう動くことの……いや、脚がまだ動いてるわ。う~ん、いつ見ても気色悪いな。これだから虫系のモンスターは……

 

「そうらしいな。ギリギリだったけどね。まぁ、とにかくクリアできて良かったよ」

 

 詳しい時間はわからないけれど、20分針くらいだと思う。タイムにはまだまだ余裕があるけれど、あと1乙でクエスト失敗だった。

 けれども最後の一撃は彼女だったんだよね。なんだろうか、この遣る瀬無さは。いや、まぁ、別にトドメを刺したかったわけじゃないんだけどさ。

 正直、クックと比べアルセルタスは弱い。武器の切れ味が残念過ぎるせいで、砥石が面倒だったのと、すぐ飛んでしまい時間はかかったが、難しいクエストではなかった。

 

 俺はそう思うんだけど、2乙かぁ……

 

 まぁ、初めての狩猟クエストなんだ。これから慣れていけば良いのかな。

 

「剥ぎ取らないのー?」

「ああ、うん。剥ぎ取るよ」

 

 これから長い付き合いになりそうだし、お互い少しずつ成長していこうじゃないか。

 その前に、色々と言わなきゃいけないことがあるんだけどさ。

 

 とりあえず今ばかりは、クエストが成功したことを喜ぶべきなんだろう。

 先はまだまだ長いけれど、焦ったところで仕様が無い。自分のペースで進むのだ。

 

 アルセルタスから3回剥ぎ取ったところで、帰る時間が来た。ハンターと言うのは自然と人間のバランスを考えなければいけない。だからやたらめったら剥ぎ取ることは御法度らしい。

 

「ありがとう。いただきました」

 

 素材を剥ぎ取ったアルセルタスへ感謝の言葉を一つ落とす。

 言葉にする必要はないかもしれないが、何故か言葉に出さなければいけない気がした。

 

「いや~、最初はダメかと思ったけどクリアできて良かったね! 帰ったら打ち上げやろうよ。打ち上げ」

「おおー、それは良いな。俺もお酒を飲みたいし」

 

 クエスト中とは変わり滅茶苦茶元気な様子の彼女。

 報酬金ももらえるし、今日はパーっとやろう。あのキンキンに冷えたエールを浴びるように飲んでやる。

 

「でもその前に反省会な」

「あっ、はい。よろしくお願いします……」

 

 

 ゆっくりでも良い。

 

 前に進んで行こう。

 

 






爪護符無し、未強化ブレイブ一式、ウォーハンマー、ソロ……つまり主人公と同条件で“美味との遭遇?”を数回やってみましたが、8~12分台でした
時間はかかりますが、アルセルタスさんの攻撃力が残念過ぎるせいで、無茶をしない限り乙はしないと思います
砥石がとにかく面倒です


と、言うことで第6話でした
これでアクセルハンマーまで作れるのかな?
彼女の実力は残念ですが、きっとこれから強くなると信じています

次話は反省会らしいです
虫棒は強いですが、使い方次第では残念になりますしね……
では、次話お会いしましょう

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