朝起きるといきなり頭痛が俺を襲った。畜生、水を飲まずに寝たらこうなるのか。水、とりあえず水が欲しい……。
「うぐぐぐぐ……頭イテェ」
周りを見回すと見知らぬ少し古めの内装の建物……ってここ教会? みたいな所か。そこの一つの長椅子に俺は寝転んでいたようだ……いつの間に俺はこんなところに寝ていた?
「起きたか」
ん? 見知らぬ男の声がするな、誰だ? 振り返ると帽子とコートを着た紳士っぽい人が出てきた、誰?
「えっと……どちら様?」
「……ドーナシークだ」
「あ、若葉啓介です」
とりあえず自己紹介。しかしここはどこなんだろうか。
「すんません、ここは何処ですかね……?」
「昨日の事は覚えていないようだな、ここはお前が酒盛りをしていた教会だ」
「あぁ……」
そうか、俺ここで酒盛りをして……ん?
「俺は確か外で……」
「騒いでいたから何事かと思い外に出たらミッテルトとカラワーナが酒を飲んでいてそこにお前が居たんだ」
「はぁ」
「それでお前が絡んできてな、仕方ないから一緒になって飲んでいたら中で飲むかという話になった」
「なるほど……」
それで俺はここに居たわけか、それでそのままここで酔いつぶれて……と。なるほど、どうりて天窓から差す光が真上から――――!?
「今、何時ですか……?」
「正午だ」
なんてこった……無断欠席これで5回目……いや、今からでも遅くはない。せめて無断欠席を遅刻にするために急いで出よう。
「あぁ、とりあえず、夜分遅くまで騒いでてすいませんでした。それじゃ」
「待て」
昨日の今日ということで、いきなり呼び止められて思わずビクッとなってしまう。何だなんだ、俺なんかしたか?
「後片付けをしてから行け、よくもまぁここまで散らかしたものだ」
「あぁ、了解です」
どうやら俺の心配は杞憂に終わったらしい。さっさと後片付けをして帰ると
「あと何か作ってくれないか? お前の料理が美味いと聞いたが食べてないんでな」
したいのだがまぁ、昼食を作ってくれと言われて、断るというわけにはいかない。相手は堕天使、下手に逆らうよりは良いだろう。
「あー……材料は何処にありますかね」
「キッチンに適当にある。なんでもいいぞ」
こうなりゃ俺も腹減ったし、自分の分も作ってしまえ。最後の授業までに間に合えば一応遅刻扱いだし、タダで飯食えると思えばいいか。
そんなわけで適当に朝食を作り、味見。うん、中々うまい。出来たことをドーナシークさんに知らせるために一旦戻ろう。
「んん……朝は眠いわね……あら?」
「できましたよー……お?」
顔を出すと目の前には黒髪の長い髪をした女性……間違いない、テルミット反応とかカラワーナさんは分からなかったがこの人は間違いない……レ、レイナーレさんや!! ていうか穴埋め式に考えていけばレイナーレさんだって分かるんだけれども。
「……誰?」
何だろうか、この、目の前にいる人が実在するかどうかを疑いたくなるようなこのドキドキ感は。なるほど、確かに何度でも言うけれどレイナーレさんだ、自称至高の堕天使の。うん、それだけ聞くと中二病を発症した人みたいだな。
「聞いてるかしら?」
いやあ、間近で見るとやはり美人だ、あの酷い性格は置いておいて。
「ジロジロと私の顔を見て何かあるのかしら?」
「……あ、すんません」
いやぁ、流石にジロジロと見たら失礼だよな。そういや朝食は結構多めに作ったからレイナーレさんの分も多分足りてるはず……?
「あ、朝食できてますんで先に待っててください」
「そう……?」
不振な顔をしつつレイナーレさんは食卓へと歩を進めていった。いやぁ、後ろ姿でもわかり易いなあの人。さて、出来た朝食を持っていきますかね……
※
「はいはーい、朝食です」
「遅い!ウチ等が来るのと同時に出してよ」
「俺は万能な人間じゃごぜーません故にそこらへんは時を止めるメイドさんでも雇いなさい」
「そんな人間が居るわけがなかろう」
「居たら俺もビックリです」
……何? 朝起きたら人間が朝食を作っているのはどういう事? しかもミッテルトやカラワーナは知ってる顔らしいけど……どういう訳?
「……誰?」
そう言うと人間は慌てて私の方を振り返り、話しかけてくる。なんだかパッとしない顔つきだ。
「あ、若葉啓介です」
「そう」
とりあえずお腹も空いているので人間が出した料理を食べる。まぁ悪くはない味だ、及第点といったところ。
「で? 何でここに居て私達の朝食を作っているのかしら? しかも自分の分まで用意してるじゃない」
「あー……」
怪しいわね。何故ここに居る理由を説明できないのかしら?
「カラワーナやミッテルトに連れて来られたならそう話せばいい筈だけれど?」
「いやまぁ、自分で来たというか……いや、まぁはい」
人間は言いづらそうに目を泳がせたりキョロキョロとして忙しない。情けないわね、男ならしゃっきりとしなさいよ。
「……教会の前でワインを飲みながらくだを巻いていたんです」
ついに人間の行動に見かねたカラワーナがいきさつを話した。
「で? それがどうなれば私達の朝食を作っているわけ?」
それをカラワーナに聞くと今度はカラワーナまで目を背け始めた……この二人は昨夜、一体何をやってたのかしらねぇ……?
「……私が様子を見た時にはミッテルトとカラワーナが一緒になって飲んでいた」
「へぇ……?」
ドーナシークから状況を聞いてさり気なくミッテルト達の様子を見ると――――全員が全員一瞬ドーナシーク睨んだように見ていたが私の視線に気づくと全員目を逸らしながら朝食を食べ始めた。情けないほどこの上ない。
「それで? まだ続きがあるはずよね?」
「…………」
続きを聞こうとするとドーナシークまでもが目を逸らし始めた。……頭が痛い、この馬鹿共のアルコールが移ったかしら。
「そう……揃いも揃って誘われるがまま飲んでた訳ね?」
「「「「…………」」」」
全員揃って沈黙する。黙秘権でもあると思っているのかしら?
「……アイアンナックル何処にしまったかしら」
「「「「すいませんでした反省してます」」」」
ちょっと捜し物を探しに行こうとしたらいきなり謝ってきた。どうしたのかしら、私はただ捜し物を探しに行くだけなのに。
「あら、私はただ物を探しに行こうとしているだけよ?」
なぜだか知らないけれど怯えている馬鹿共に、にっこりと笑いかけると余計怯え始めた……どういうことかしら? 全員私を何だと思っているのだろうか。
「全く……初めから素直に話しなさいよ、情けない」
「「「「はい」」」」
まぁ、この馬鹿共が浮かれているのも仕方ない。仕事で田舎まで来て、そのやることがしばらく無いっていうのも退屈だし、ここは多少大目に見てあげるわ。
「あ、アイアンナックルここにあったのね」
ふと、棚に目をやると、少し埃をかぶったアイアンナックルがあった。
久しぶりに使ってなかったからどこにあるか覚えてなかったけれど、棚の中にあったのね……右手にはめ込むと特注品でもないのに綺麗にフィットする。うん、やっぱり安物にしては質がいいわね。
「さて……」
振り返ると、馬鹿共4人はそこには居なくなっており、消えていた。余程慌てていたのか羽根が幾つか床に落ちている。
「チッ……まぁいいわ、狩りの時間ね」
丁度暇だったし、軽く体を動かすことにしよう。時間はいくらでもある、いくらでも……ね。
※
っべぇ! マジっべぇ! レイナーレさんお怒りの巻ですよどうすんだこれ!?
今現在、俺達はダッシュで教会を出て町へと繋がる道を走っている。
「ちょちょちょ、ちょっとどうなるんですかこれから!?」
「……逃げるか、捕まって死ぬかのどちらかだ」
落ち着き払った様子のドーナシークさんですが、翼を出しながら走るという素っ頓狂な行為をしているために落ち着いていないことは確かだ。
え? 俺ここまで慌てた旦那を見たことないよ? いやアニメだと描写薄かったけどさ、それでも結構冷静沈着なイメージを彷彿とさせる旦那がここまで慌てるってことはよっぽどじゃないか!?
「と、とりあえずドーナシークさん、翼、翼出してるのに走ってちゃ上手く走れませんよ! それに今から人目のつく場所に逃げるんですよ!?」
「ぬ……これは、うっかりしていた」
うっかりでこれはかなり重症なんじゃないだろうか、いや確かにまぁ、死の危険と恐怖が迫りくる今、冷静でいられる自信がないのは誰だってそうだろう、俺だってそうだ。
「と、とりあえずこれからどうします?」
このまま走りながらどうするか逃走会議を開こう、亀の甲より年の功と言ったとおりドーナシークさん達なら何かいい案があるかもしれない。
「このまま町に出て人に紛れる。人の少ない所には逃げるなよ」
「私もそれに賛成だ、ともかくこのまま逃げてほとぼりが冷めるのを待とう」
「ウ、ウチは先に逃げるからね! こんな所一刻も早く離れる!」
そう言うとテルミット反応が一人で逃げようと、走るのをやめて飛び立とうとする。ま、待てそれは死亡フラ……
「捕まえた♥」
「……え?」
不意に草影から手が伸びたかと思うと今まさに離陸しようとしていたテルミット反応の足を掴み、草影に引きずり込もうとする。何あのネメシス!?
「あ……た、助けっ」
怯えた顔のテルミット反応がこちらに手を伸ばし、助けを求めた瞬間、黒い手がテルミット反応の口を塞ぎ、ゆっくりと、ゆっくりとテルミット反応の肩から上が草影へと沈んでいく。
「おい、止まるな、走れ! ミッテルトは見捨てろ!」
カラワーナさんからの声にはっとすると自分は足を止めていた。不味い、今奴は捉えた獲物に気を取られている。今のうちに走らないと!
焦って走ろうとした瞬間、足元からパキッ、という音がした。ふと見てみると足元の枯れた枝が踏んだ事で折れている。
恐る恐る草影を見ると……
「……ヒィッ!?」
草の影から真っ赤な赤い目がランランと光っており、その目はまるで赤い血だまり。それがこっちをじっと見ている……不味い、目が合った。次の獲物は俺に決まったらしい。
「……クソッ!」
元陸上部の力と最近鍛えたバイトの力と火事場の馬鹿力を発動させ、思いっきり走る。さながら今の俺はチーターから逃げるシマウマだ。
「畜生!」
必死に走って何とか二人が見える所まで追いついた、よしこのまま一気に街へ……!
「アハハッ♪」
不意に後ろからそんな声が聞こえた気がした。その声はとても冷たく、少なくとも生き物が放つような声ではない。
「……!!!」
後ろを振り向くな、振り向いたら死ぬ。そう俺は言い聞かせて走り続けると、二つの光が俺の両脇を過ぎる。あれが光の槍だと気づくのに長くはかからなかった。
槍は前にいる二人には命中しなかったが、代わりに両端の木に命中し、木が二人の目の前に倒れ、一時的に道が塞がれたことにより完全に足は止まってしまっていた。
「飛んでください! もうすぐ近くにいます、早く!」
そう前に居る二人に言うとカラワーナさん達はこっちを向き、慌てた表情で木を飛んで越えた。あの慌てぶりからすると、よほど近くに来ているのだろう、なんとか逃げねば!
「クソっ……どうする、どうする俺……!」
頭をフル回転させて後ろにいるハンターとの距離を稼がなければ、木を飛び越えようとした、または着地の時点で狩られる。どうする、どうすればいい?
思い出せ……これを飛び越えられそうな道具と今すぐ使えそうな物を、俺は持っている筈……! そうだ、アレ、アレなら行ける!
ピンチのピンチという状態で発動する、ご都合的な俺の脳みそに天啓が訪れた。これなら、うまくいけば距離を稼げるかも!
二つの木はうまい具合に積み重なって障害物のようになっており、もう目前だ。落ち着いてシュミレーションする。これは陸上部での経験を生かさないと成立しない、後は全てを信じるだけだ。
木の何mか前で思いっきり踏み込み、ジャンプする。火事場の馬鹿力と力と素早さと鍛えた体のなせる技か、軽く2mは飛んでいる……が、距離はこれだけじゃ稼げない。しかしこれも計算内!
「ケットシー! 事情は分かってるはずだ、俺に思いっきりザンを撃て!」
「了解ニャ!」
COMPを呼び出し、ケットシーを呼び出す。よし、俺の推測は当たっていたようだ。
COMPの中に居る悪魔達は俺と行動を共にしている為に、外部のある程度の情報はCOMPから取り入れているようだ。それが証拠に、昨日はピクシーとエンジェルが休日だと分かって飛び出してきた!
ケットシーはザンを思いっきり俺に向けて撃ち、そしてそれを俺は……足で思いっきり蹴る!
足に衝撃が走り、それと共に……ザンという足場が出来た!
「アイキャンフラァァァァァァァァイ!」
ザンを足場に、また思いっきり蹴るとまたグン!と自分の体が上昇していき、木を飛び越える。思わず叫んでしまった。
「戻れ、ケットシー!」
奴がケットシーに襲いかかる寸前にケットシーを戻す。さぁ、もう一回だ!
「エンジェル、お前も頼む!」
「はい!」
エンジェルも同じように俺に向けてザンを……ってマハザンかい! まぁいい、計画に狂いはない。同じようにエンジェルがマハザンを放ったのを確認するとエンジェルを戻す。そしてマハザンを足場にもう一歩……
「って、衝撃強すぎだろこれウゴブゥ!?」
予想外の衝撃が一瞬だけ俺の体全身を包み込み、ロケットのように俺が宙へ吹っ飛ばされる。まずい、このままじゃ落下した時死ぬ……!
「おっと、捕まえたぞ」
ここでカラワーナさんが俺を抱きかかえてくれた。なんてラッキーなんだ、うまい具合に吹っ飛ばされた!
「全く、お前はどういう原理で飛んできたんだ? 翼が生えている訳じゃあるまいし」
「あはは……色々とあったんですよ」
とりあえず下ろしてもらい、また走り始める。あの行動に向こうも驚いたようで、かなりの距離が稼げたようだ。しばらく走り続けると、街が見えてきた。
※
「よし、ここまで来ればなんとかなるだろう」
「……もう二度とあんな体験したくねぇ」
「ミッテルト……口は悪かったが正確はひねくれてはいなかった」
それぞれが逃げ切ったことに安堵し、儚くも散っていった一つの小さな命を語り、ともかく生きていることに喜びを噛み締める。生きているって素晴らしい事が何度も分からさせられる。何度も分からされたところで全然嬉しくはないが。
「よし、一時の安全を得たところで今後どうするか、だが……」
「ただ詫びた所でレイナーレ様が鎮まるとは私も思わない」
「じゃあどうしますかねぇ」
上から順にドーナシークさんとカラワーナさんと俺が意見する。やはり考える事は同じようだ。
どう考えてもレイナーレさんがこのまま時間を潰したままだと怒りを鎮まるまでの時間は長いだろうし、その間に見つかって捕まる可能性は大きい。よって詫びを入れたいのだがそれだけではほぼ確実に焼きを入れられるだろう。ならどうしようか、そこらへんが難しい。
「……何かプレゼントでもしますか?」
確かレイナーレ様は一応普通の女の子の感性ぐらいは持ってたような気がする。うん、確かだけど、今は亡きテルミット伍長よりはまともな今どきの感性をしている……はず。
「ふむ、ならカラワーナ、お前が貰って嬉しい物を幾つか上げてみろ」
「私でいいのか? それはまぁ、服とかアクセサリーは貰えば嬉しいが……これは恐らく女性全般に言えることだが、よく考えて時間を割いて選んだ物は嬉しいものだ」
「時間を割いて選んだ物ですか……」
とはいえ自分の感性が女性向けの物、レイナーレさんに合う、とか気に入りそうな物を見つけられる自信がない。ここはカラワーナさんに選んでもらうのも……と、考えていたところ、ちらりとドーナシークさんを見るとやはり向こうも同じように考えているようで、迷っているようだ。
「……ここはやはりカラワーナに頼むか」
「それは出来ない。自分好みな物を選んでしまいそうで私も自信がない。レイナーレ様の嗜好や趣味は全く知らないから尚更……な」
よほど自信がないのか、首を横に振って答えるカラワーナさん。なるほど、それでは仕方がない。
「じゃあ俺等男性陣で何とかしますか……時折カラワーナさんの意見を交えるとして」
「そうするか……では、所持金は各々いくらだ?」
ここでお互いの所持金を確認すると、それぞれ八千円程持っていた。
「……これで全員が2000円出して、6000円ありますから、それでアクセサリーを買えばそこそこいいのが買えるんじゃないですかね?」
「そうだな、それが互いの財布に負担がかからない」
と、言うわけでアクセサリーに決定。予算は6000円となった。これで如何にしてレイナーレさんの機嫌を良くさせる様な物を買うことに……どんなのが気に入るか分からないから、難しいな。
どうも、今回は楽しい楽しい堕天使ルート開拓です。かなり本編から脱線しているように思えるかもしれませんが、実はまだ始まってないのでセーフです、セーフ……おそらく。
今回も今回で、なんとも言えぬキャラ崩壊が起きているかもしれませんねー……どうなんでしょうか、これはギリギリ崩壊とは言えないレベルかどうか、怪しいラインだと私は思ってるのですけれども……コメディ風にやったらこんな感じになるんですかねぇ
さて、これから私は衝撃の告白をしなければならないのです。
実は、こんな風に一話を少しだけ手直し、少しだけ手直し……そんな風にし続けた結果!
ま っ た く 最 新 話 を 執 筆 し て な い ん で す ! !
……3日で更新のペースもあと一ヵ月ぐらいまでですかねぇ(・ω・`)