ただのゲーマー高校生のハイスクールD×D   作:unat

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第25話:和平大使若葉君

 状況を再確認だ。

 アザゼルさんと話し合った結果、なぜか俺が悪魔と堕天使の和平の仲介人になった――――駄目だ、内容は理解できても意味が理解できないから再確認も何もあったもんじゃない。

 

「大体、なんで俺なんですか?俺じゃなくてもアザゼルさんが行きゃいいじゃないですか!」

 そもそも、こういうのは堕天使達でやるからこそいいんじゃないのか?仲直りに人間の使いを送るとか、友好的に取ってくれるとは思えないんだけれども。

 俺がそう思っていると、アザゼルさんは舌打ちをしつつ、またしても指を振りはじめた……今こういう場面でやられると少し腹が立つなこれ。

 

「いいや、お前だ。お前には2つツテがある。1つは、この俺と。もう1つは……」

「リアス先輩っていう、魔王の妹とのですか?」

「その上、物解りが良いときた」

 どうやらアザゼルさんは、俺に親善大使だか平和大使だかをやらせるつもりらしい……いや、やっぱりおかしいと思うんだが。

 

「悪魔と堕天使の仲直りだか何だか知りませんけど、天使さん達とかをそういうのの仲間はずれにしていいんですか?」

 不振そうにアザゼルさんに質問すると、片手をヒラヒラとさせてめんどくさそうに返す。

「あー、あいつ等苦手だからパス」

「オイ待て色々とおかしいだろ」

「冗談だよ、冗談。お前に天使とのコネもあるんなら、そうさせてたがな」

 俺が思わず突っ込みを入れると、アザゼルさんは楽しそうに笑いながら返してきた……腹立つな、本当に。

 

「大丈夫ですか本当に……?」

「心配すんな、天使か悪魔のどっちかと和平を結べば後は簡単だからな」

 ……確かに、そう言われればそうなのかもしれない、もし断ったら、実質1対1対1から2対1になるようなもんなのか。

 

「言っとくが、俺はコネがあるなら誰でも良い訳じゃないぜ?」

「……ここまで来れた突破力と行動力と運の良さで選んだとか言わないでくださいね?」

 俺が念のために釘を刺しておくと、アザゼルさんは少し驚いた様子で

「よく分かったな」

 と一言。

 流石に、そろそろ冗談は止めてくださいませんかね……?

 

「だー……もう、どこからどこまで真面目な話なんだか分からなくなってきましたよ」

「さっきの俺は真面目に考えている。なーに、駄目で元々だ。成功したら報酬ぐらいくれてやる。お前も別にコイツに任せて構わねェだろ?」

 アザゼルさんはさっきまで空気と化していた生真面目さんに話を振る。すると、生真面目さんは首を横に振って

「アザゼル、早急すぎる。それに、この男を信頼できるのか?リアス・グレモリーの知り合いという証拠がない」

 と、さっきまでの話をぶち壊すかのような意見を出してきた……できれば空気を読んで欲しかった。

 

「んー……ここまで話してきて、信憑性もクソも無いと思うんですけど……んじゃ、証拠を出せばいいんですね?」

 そう俺が言うと、生真面目さんは当たり前だと言いたげに頷いた。

「ああ、それが出るまで信用するわけにはいかんな」

 アザゼルさんの無用心さをカバーするぐらいにこの生真面目さんは用心深いようだ……。この人に対して信頼できる証拠があるならいいんだけども。

 

「えーと、んじゃ。とりあえず駒王学園の生徒手帳兼身分証明書。顔写真付きです」

 俺は懐からいつも持っている……というより、使い道が無いからとりあえず放置していた生徒手帳を手渡す。キチンと顔写真も付いてるし、結構な証拠になるんじゃないだろうか。

 

「んーと、後他に俺の身分証明できるのは無いんで、これで全部ですかね―――しかし、喋り疲れてきた……ちょっと喉渇きません?」

 今まで緊張していて汗も気づけば結構かいていた。喉も喋り疲れて水分を欲しているのに気づいたので、休憩も兼ねる意味でアザゼルさんに飲み物を遠まわしに要求。

 

「茶でも飲むか?」

「いやいや、お茶といっても水汲んだり、お湯沸かしたり、お茶っ葉を用意したりと色々と手間を取ってしまうのでジュースで結――――いやすいませんお茶で良いです」

 ジュースで結構と言いたかったけれども、言い切る前に生真面目さんが睨んできたので止めておいた。 ついつい忘れてしまったが、俺とこの二人では戦闘力は天と地よりも酷い差がある。あんまりふざけて相手を怒らせないようにしないとな……。

 

「これでも飲め、冷えてねェが」

 そういうとアザゼルさんは、何処のメーカーよりも緑茶らしさが出ているお茶をペットボトルで出してきた……。冥界にペットボトルってあるのね。

 

「ああ、お茶なら冷えて無くても大丈夫です」

 封を切って飲むと、緑茶のあの匂いと味……懐かしの日本の味がする。

 ああ、我が故郷に早く帰りたい―――まだ冥界に数日も居ないと思うけれども。

 

「あー……久しぶりに水分補給した。ところで、緑茶もいいですけど紅茶も中々に美味いですよね。まあ紅茶に一服盛られたことあるんですけどね、リアス先輩に。あ、その時の話聞きます?身分証明になるか分かりませんけど」

「いきなり饒舌になったな……」

 生真面目さんは気の抜けた顔でそう言う。一方のアザゼルさんはというと、もう俺に慣れたらしく生徒手帳の校則をまじまじと見ている……何か面白い物でもあったのか?

 

「いやー、喉乾いてたんで。それと、こういうことを話せる相手も中々いないんですよねー……あ、友達居ないわけじゃないですからね?あ、あとまだ自己紹介してないですよね?俺の名前は若葉啓介っす」

「名乗られたからにはこちらも名乗らないとな……。バラキエルだ」

 ふむふむ、この生真面目さんの名前はバラキエルさんか。一見真面目そうに見えても堕天使なんだからドーナシークの旦那のようにアッチ♂系だったりするんだろうか……?

 そう思いつつも、あんまりそういうことを思いながら顔を見るのも失礼なので、例の紅茶に一服盛られた話でもすることにした。

 

「そう、確かあれは俺が駒王学園に入学してまだ一週間も経ってない頃でした―――。あの時は俺もまだ、堕天使とか悪魔とか天使の勢力事情やらをよく理解してなかった頃でしたね、今もあんまりよく理解してませんけど」

 この世界に入る前にアニメで知った知識として、リアス先輩は魔王の妹と分かる辺り―――何処ぞの種まき焼き鳥野郎が、リアス先輩に婚約を迫るという所までしか知識にない。

 だからアザゼルさんという、堕天使の頭の名前すらも知らなかったし、その本人が戦争に消極的だということもだ。

 

「その時は登校した校門の前だったんですけどね。運悪く悪魔や堕天使や天使の事についてタベってましてねー……それも、リアス先輩の目の前で堂々と。魔王とか居ない方がいい、なんてディスってるのが多分丸聞こえだったんでしょう」

 今思えば、そこからリアス先輩との出会いが始まったんだ。

 あの時のリアス先輩は俺にとって、物凄い力を持ってる悪魔で、仲間には優しいけれど怒らせたりうっかり変な事して敵対したらヤバイ存在だと思っていた。

 

 だけど、リアス先輩は思ってる以上に怖くは無かったし、むしろ姫島先輩の方が怖かった。今でもあのくすぐりプレイをしようと言われたら、俺は泣いて謝るか、それでも許されなかったら首を掻っ切るだろう。

 

「……で、リアス先輩が後ろに居るということに気づいた俺は当然慌てました。まぁ、その時に俺は焦りすいて、更に口を滑らせて先輩に変なこと言っちゃいましてね……で、リアス先輩の下僕がクラスメートだったんで昼休みに連れてかれて、部屋に連れてこられたんですよねー……。リアス先輩をその時うまく誤魔化したんですけど、またまたうっかりと口を滑らしちゃいまして。で、紅茶に一服盛られて拷問されたのが、リアス先輩との関わりを持つことになったきっかけでしたね」

 でも、こうしてリアス先輩と関わったおかげで、俺は今こうしてアザゼルさん達とこんな話している―――出会いの運命っていうのも随分と不思議なものだ。

 もしリアス先輩と知り合ってなかったら、レイナーレさん達助けても重犯罪者になってただろうし。

 

 俺が大体の経緯を話すと、アザゼルさんは生徒手帳を見つつも話は聞いていてくれたらしく、笑いながら返してきた。

「ハハハ!リアス・グレモリーに拷問されたのがきっかけか!随分と波乱万丈じゃねェか」

「いやー、おかげさまで。まぁ、姫島先輩の淹れた紅茶は美味しかったんですよこれが。毒が入ってる分美味しかったのかというと、それも違いましてね。その後もう一回紅茶を振舞って貰ったんですけど、寸分も違わぬ美味しさでした。あれとお茶菓子の組み合わせを考えるだけで、小腹が空いちゃいますよ」

 

「……なるほど、確かに。少なくともリアス・グレモリーと繋がりは確かなようだ。それに、信じ難いが――――此処まで来たということは、実力もそれなりにあるようだ」

 バラキエルさんは、俺の紅茶の話で何故か納得してくれたようだ。だけど、納得してくれた割にはまだ色々と不服そうな顔をしている。

 

「んー……本当に俺で大丈夫ですか?この先、バラキエルさんみたいに俺を疑う人が出たら、いやまあ、用心に越したことはないと思うんですけれども……一々事情を説明したりするのって大変ですよ?」

 もし、俺の話が通用しなかったなら……俺の身が危なくなること間違いなしだ。最悪、俺が死んだっておかしくないし、それをきっかけに更に仲が険悪になることだって起こりえる。

 

 そんな俺の意見に対してアザゼルさんは、一理あると思ってくれたのか、何か考えながら一言。

「……確かに、有り得なくはねェな。何か良い証拠が必要だな」

 そう言いながら、アザゼルさんはまたしても考え込み始めた―――そこまで考え込むなら、俺を選ばなくても良いと思うんだけどなぁ……それともそこまで考え込んでまで、俺には持っている物があるということなのか。

 

 ボンヤリと俺が思っていると、突然アザゼルさんは何か良い案を思いついたのか、ニヤリと笑い出した。とても悪い笑い方をしている……。何か嫌な予感がしてきたぞ。

「これだな、これしか有り得ねェ」

 そうアザゼルさんは言いながら、ニヤニヤと何かを見ている。

 俺はその視線を目で追っていくと―――俺の生徒手帳があった。正確に言うと、生徒手帳の俺の顔写真の部分をアザゼルさんは見ている。

 

 

 

 

                      ※

 

 

 

「―――で、アザゼルさん?これ、どういうことです?」

「なーに、直ぐ終わる。ほら、笑え笑え」

 俺は今、アザゼルさんのとった行動に対して、疑問と戸惑いを隠せないでいる。何故か?そりゃ――

 

「ほら、撮るぞ。少しは愛想良く笑ってみろよ」

 俺とアザゼルさんは今、写真を撮っているからだ。しかも、それを提案した当の本人は超ノリノリでバラキエルさんにカメラを構えさせて。

「いやいやいや、写真で俺がアザゼルさんの使いだって証明できるんですか?」

 その質問に対してアザゼルさんはあくまでカメラ目線を保ちつつ返してくる。

「堕天使の羽が6対12枚ありゃ俺だ。それで俺とお前が写っときゃ証拠になるだろ」

「そーゆーもんですかねぇ……?」

「そーゆーもんだ。ほら、そろそろ撮るぞ」

 言われるがままに俺はアザゼルさんと並んで椅子に座る。俺とアザゼルさんはバラキエルさんが立ってカメラを構えているのでそれに対して見上げているような形になった。

 

 しばらくの間の後、カシャリという気の抜けたカメラのシャッター音と同時に、カメラから写真が出てきた―――インスタントカメラという、今のご時勢じゃ絶滅寸前の物がどうしてこんな所にあるのかは聞かないでおこう。

「ほら、撮れたぞ」

「お、どれどれ……良い写り栄えしてるぜ、ほら」

 アザゼルさんが俺に写真を渡す。その写真には、見事に綺麗にくっきりと写っているアザゼルさんが。ちゃんと6対12枚の羽もフレームの中に納まっている―――が。

 

「なんで、俺だけ顔の部分が写っていないんでしょうねぇ……?」

 そう、アザゼルさんが羽を出したせいで辺りに羽根が飛び散り、それが綺麗にカメラのフレームに入って俺の顔の部分だけを見事に隠しているのだ―――これ絶対仕組んだろ、絶対。

「ハハハ!仕方ねェ、もう一枚なもう一枚」

 アザゼルさんは俺の肩を軽く叩きながら、バラキエルさんに”もう一枚”と指示して、俺の横に並ぶ。

 

「ほら、笑え笑え」

「はぁ……これで最後ですからね?」

 アザゼルさんのノリが軽すぎて少しイライラしてきた……が、ここでキレたとしてもアザゼルさん達は俺の数倍以上の力を持っているから、やるだけ何が出来るわけでもなく無駄なので大人しく、カメラに作り笑顔を向ける。

 

「おう、次は真面目にやるぜ?」

「最初のは真面目じゃなかったんですか……」

 そんなやりとりをしつつも写真を一枚撮った。もちろんさっきとは違って普通の出来栄えで、アザゼルさんも写真の出来栄えに納得したのか、写真をしばらく眺めてから満足そうに頷く。

「んじゃ、サーゼクスに向けて書くか……少し待ってろ」

 

 そう言ってアザゼルさんは何処かへ紙でも取りに行くためか出て行った。部屋に残された俺とバラキエルさんの間に、気まずい空気と沈黙が続く。この空気をどうにかしたいのだけれども、バラキエルさんは何か考え事をしているのか、どこかを見つめて少しも動かない。

 

「……君には、大切な人がいるか?」

 徐に、バラキエルさんがさっきとは少し違ったトーンで俺に質問をしてきた。視線はさっきとは全く変わらないものの、表情が少し違うように感じた。

 

「ええ、いますよ……たくさん。人間じゃない場合もありますけど」

 リアス先輩達にレイナーレさん達に、クラスの面々に、俺の仲魔達。それと、大切とは少し違った意味で、小松原。誰だって、俺が今ここに居られる要素でしかない。

 俺の答えに、バラキエルさんは黙って頷いた。

 

「そうか……なら、傍に居てやるといい。私が言いたいのはそれだけだ」

 ゆっくりと、俺を諭すようにそう言ったバラキエルさん。……いや、寧ろバラキエルさんは自分自身に言っているのかもしれない。

 そう受け取れるほど、バラキエルさんはどこか哀しそうな、寂しそうな表情をしていた。

 

「すまない。今のは忘れてくれ、どうやら疲れているらしい―――それにしてもアザゼルめ、どこに紙を取りに行っているんだ……?」

 バラキエルさんは、一つ大きくため息をついて少し憎らしそうにドアを見つめている。なんでさっきあんな質問をしたのか気になるけれど、あんな顔をされたら聞そうにないよなぁ……。

 

「おう、待たせたな。紙の調達に手間が掛かってな……今書くから待ってろ、すぐに終わる」

 ドアが開いて、アザゼルさんが戻ってきた。その手には紙と万年筆と封筒を持っている。てっきり、紙を取りに行ったついでに書いていたのかと思ったけど、違ったらしい。

 そのまま机に着いて、アザゼルさんは紙に走り書きをしている。何を書いているかは近づいてみれば分かりそうだけど、アザゼルさんは集中しているようなので、そっとしておこう……。

 

「ほら、出来たぞ。後はこいつを―――いや、火が無ェな……」

 アザゼルさんは片手に何やら赤い蝋燭のような物を持ちながら、もう片方の手でポケットを探って何かを探している―――あれは、ひょっとしたら映画とかでよく見る、手紙の封に使うシーリングワックスっていう奴か? ろうを溶かしてスタンプで型を取るアレだ。

 

「あー……火?火ですか。えっと、それの紐の部分に火が点けばいいんですね?なら―――」

 紐を人差し指と親指で掴んで、指先に火のイメージを頭に思い浮かべる。そして指と指を擦り合わせると……。

 

「―――ほら、点きました」

 小さな紅い火がちろちろと、綺麗な暖かい光を小さいながらも灯しだしている。

 こういう風に破壊魔法をある程度制御出来るのも強くなった証拠という奴だ。もしかしたら、完全に制御できたらこんな風にわざわざ動作をせずに物を燃やしたりとか、姫島先輩みたいに雷の篭手を作り出せるかもしれないな。

 

「おう、すまねェな。探す手間が省けたぜ、と」

 スタンプをアザゼルさんが押すと、何かの紋章のようなものが出来上がっていて、いかにも秘密の文書ですといった風体だ。

「こいつをサーゼクスに届けてくれ。誰かを通してで構わねェ、ただしサーゼクスに間違いなく届けることが出来て信頼できるヤツ……ま、一人しかいねェだろうがな」

「なるほど……それがリアス先輩だと」

 

 アザゼルさんから文書を貰い、懐にしまう。後はこれをリアス先輩に渡して届けてもらうだけか、確かに簡単なのだけど――――もし、リアス先輩が中身を見てしまったらどうしようか。まあ、誰に渡されたとか言われたら適当に話をでっちあげて誤魔化すしかないんだけどね。それに、リアス先輩ならわざわざ中身を見ないで届けてくれるだろうしね。

 

「あ、そうだ。確かレイ――例の俺の知り合いの堕天使をアザゼルさんの部下が回収するって話ですけども、合図か何か必要になると思うんですよ」

 万が一、間違えて戦闘中にアザゼルさんの部下が踏み込んできたら―――。目も当てられないほどの大参事になって、それこそ悪魔と堕天使の溝が深まること間違い無しだ。

 

 俺の提案に対してアザゼルさんは色々と考えているのか、顎に手を当てながら俺に返してきた。

「通信手段か。無線は……持ってる訳がねェな、なら―――」

「無線?無線は無いですけど……ワイヤレスっていう意味じゃ携帯なら」

 俺は携帯を懐から取り出す。ただ、冥界と人間界じゃ電波も届かないんじゃないか? それを考えると、やっぱり手軽な無線よりは多少嵩張っても有線の連絡手段が欲しいところだ。

 

「いいアイディアじゃねェか。ちょっと待ってろ、メールを送ってやる」

 アザゼルさんも携帯を懐から取り出した。黒くて武骨そうな携帯で、なんともアザゼルさんみたいな人が使っていそうな感じだ。

「―――よし、これでお前の携帯にメールを送ったしアドレスも登録した。これが俺のアドレスだ」

 アザゼルさんに俺の携帯を返してもらい、確認してみると確かにメールが一件届いている。

 件名は、”総督様より”と書いてある。しかも、アドレス帳には総督様という名前の見知らぬアドレスが。これがアザゼルさんのか……"Grigol-azazel"という分かりやすいものの、明らかに何処の携帯会社でもありえない形式だ。

 

「えっと、電波って冥界にまで届くんですかね……?」

「ん?ああ、俺が直接人間界に出張ってお前の合図が着たら部下共に支持を出すさ。日本は暇潰しの手段には困らないらしいしな」

「暇潰し……まあ、もう俺は何も言いませんよ……突っ込みは疲れますからね」

「そりゃ残念だ」

 アザゼルさんが意地悪そうに笑う。やっぱり、アザゼルさんは悪戯とかそういうのが好きらしい。出来ればそんな真面目な話をしているときは止めて欲しいもんだ。

 

「……とりあえず、これを届けてきますんで。そしたらアザゼルさんにメール送るってことでいいですかね」

「ああ、構わねェ。ただ――――どうやって人間界に戻る気だ?」

 そういえば、どうやって人間界に戻るのか……全く分からない。ただ、ペオルさんと合流すれば帰れるのは確かなので、また40kmぐらい歩いて帰ることになるわけだけど。

「うーんとですね、ここまで来た道を20kmぐらい戻ってなんやかんやします」

 そう俺が答えるとアザゼルさんは、此処まで運だけで来れたような俺が本当に戻れるのかどうか流石に心配になったらしく、腰を重そうに上げた。

 

「仕方ねェ、この間完成した”アレ”を使うか……元々は”アレ”の為にここに居た訳だしな」

 ”アレ”とは一体何なんだろうか……何となく、俺が何かの実験のモルモットにされそうな予感がしなくもない。

 俺がそんなことを考えていると、アザゼルさんは俺の肩をポンと叩いて手を置いた。

 

「ツいてるぞお前。冥界観光ツアーのシメにワープ体験できるからな」

「へ? ワープ? 何を? いや、俺を!?」

 ワープというと、リアス先輩達の魔方陣から飛ぶみたいな感じなんだろうか……ちょっと体験してみたい気がしなくも―――いや、待て待て。

 

 もしワープに失敗したら、どうなる? 最悪、”いし の なかに いる !!”とか地球のド真ん中にワープして骨すら残らず消えるとか、もしかしたらお猿さんが人間を支配する惑星に飛んだりするかもしれないじゃないか。それなら、確実性のある20km歩いてペオルさんと合流の方が遥かにマシだ。

 

「いやいや、いいですいいです結構です! ワープ怖いです! 石の中に入りたくないです! 」

「心配すんな、そういうのは今までの実験で起きたことはねェよ。実験体のネズミが俺の頭の上にワープしたことはあったがな」

「ネズミじゃない俺で同じことがおきたら、天井に首なしの体が生えた気持ち悪い新手の悪趣味なインテリアじゃないですか! そ、そんな危険なモノ体験できるか!俺は戻―――のわっ!?」

 俺の必死の抗議も空しくアザゼルさんはバラキエルさんと一緒に俺の腕を持ち、半ば引きずられるようにして俺は部屋を後にしていった――――

 

 

                      ※

 

 

「―――着いたぞ。ほら、死にゃしねェから泣くな」

「お、おしまいだぁ……残念!私の人生はここで終わってしまった!」

 俺はしゃがみこんだまま、今までの人生を振り返り懺悔している。

 まだ、俺はまだ死にたくねぇよぅ……。ああ、こんな事で死ぬならレイナーレさんかカラワーナさんか姫島先輩かリアス先輩達のDは下らない胸を揉んでそれが原因で殺された方が何億倍もマシだ……。

 

「ったく……ほら、立てよ。じゃねェとお前をさっさと人間界に飛ばすぞ?」

 俺に追い討ちをかけるようにアザゼルさんが言う。このまま飛ばされてはたまったもんじゃないのでしぶしぶ立ち上がる。すると――――

 

 目の前には映画に出てきそうな、ワープ装置みたいな機械が目の前に広がっていた。足元にはとても太いプラグみたいなものがあちこちを這っている。……すげぇ、近未来の世界に居るみたいだ。

 

「どうだ、これが俺の自信作だ。暇な時間を潰して作り上げたにしちゃ上出来だぜ?」

 アザゼルさんは誇らしげに、機械を見ながらニヤニヤと満面の笑みを浮かべている。この口ぶりからして、出来具合はかなり自信があるらしい……。

 うーん、そこまで自信があるなら少しは信頼してみるのも悪くはない……か? とりあえず、どんな風に使うのかを見せてもらおう。

 

「どういう風に使うんですか?これ」

「ああ、まずだな……このコンピューターに位置を指定する。地球のどこでも指定できるぜ。大まかな国とかを設定してから、細かい座標を指定する。後は、お前があの装置の中に入って作動させるだけだ」

 アザゼルさんは、外国のホテルのシャワー室みたいなカプセルもどきを指差す。どうやら、あれに入るだけで良いらしい。

 

「へぇ……それじゃ、日本の姫川市に座標指定をお願いします。そこに住んでいるんで」

「おう」

 コンピューターにカタカタと何かを打ち込んでいるアザゼルさん。座標指定に時間はそうかからないらしく、すぐにOKというサインを俺に出してきた。

 

「よし、それじゃもう入りますよ」

 ワープ装置の中は少し狭いものの、息苦しく思えるほどではない。透明なガラス越しにアザゼルさんがこっちを見ているのが見える。

「その中でじっとしていろよ。すぐに作動してお前を飛ばしてやる」

 アザゼルさんはそう言いながらコンピューターのエンターキーを押す。

 

「おお?」

 途端、俺の足元から白い光が俺の体を徐々に包み込む。あまりの眩しさに、俺は思わず目を瞑って顔を腕で隠してしまった。

 そして、急に足場がなくなるような感覚と不思議な感覚が俺の体に襲い掛かる。内臓がふわりと浮くような感覚とは違う、自分自身の体が軽くなったかのように感じる不思議な感覚。今まで感じたことのないような感覚に、俺の胸は不安と興奮で高鳴りっぱなしだ。

 

 しばらくするとそんな感覚も薄らぎ、完全に消えた。ちゃんと地に足が着いている感覚もあるし、周りから人が話しているであろう声も聞こえる。

 もうワープが終わったと思い、俺は目を開ける。そこには―――

 

 

 

                    ※

 

 

 

「なあ、アザゼル。何故あんな事を……まさか和平とは」

「嫌か?」

「いや、そうではないが……。なぜあの男に任せようと思った?」

「長年の勘だよ」

「アザゼル、いいか?」

「いや、俺は真面目だぜ? 考えてもみろ、バラキエル。リアス・グレモリーの知り合いで尚且つ俺達堕天使と宜しくやってるような奴……それも人間だ。そしてソイツが悪魔と俺達の小競り合いをやめてくれと、わざわざ冥界にまでやって来て俺に出会った―――偶然にしちゃ出来過ぎだとは思わねェか?」

 

「それは……」

「俺はな、偶然の一言で片付けられねェ”何か”を感じて、それを信じたくなったのさ。それに―――」

「他にも何かあるのか?」

 

「お前とお前の娘が”ああなっちまった”のは俺の責任だ。だが、俺の出る幕はねェし、やれることは何一つねェ―――そう思っていたさ」

「―――っ。アザゼルッ……! お前のその考えをよく思わん部下だっているはずだぞッ……なのにお前は……お前は……ッッ!」

「いい、別に構わねェさ。それよりも、だ。シェムハザのガキが遠からず生まれるんだ、お前が色々と教えてやれ」

「ああ……そう、だな……」

「アイツ……若葉啓介だったな、信じてみようじゃねェか――――あん? 誰だこんな時に……」

 

「どうした?アザゼル」

「いや、さっきのアイツからのメールだ。内容は……”アキバにワープしたぞ、どうしてくれる”だと」

「アキバ……何処だ?」

「さぁな」

 

 

 

                     ※

 

 

 

「メールを送信完了……っと」

 改めて、周囲を確認してみる。メイドさんに、と●のあなに、コトブ●ヤに、メロ●ブックスに、一目で分かる大量のA-boyと”秋葉原電気街前”という分かりやすい看板。

 どうやら、俺は今秋葉原に居るらしい……なんてこったい。

 




若葉君がワープしてアキバに到着しましたね、やっと冥界編からアキバ編に突入です。本当に、いつになったら原作1巻編を終わるんでしょうかね……あと5話ぐらいでしょうか。

これだけ1巻を遠回りしまくっている理由として、レイナーレさん達堕天使4人組を生存させる条件を作るのと原作ストーリーが開始する前から若葉君が入っている、ということが主な原因でしょうか。

まあ、わざわざ生存させる意味は”オカ研と少し仲良くなった時とか、若葉君のコメディルートの生贄……もといお供になったりして面白くなるんじゃないか。あとレイナーレさんとカラワーナさん可愛いです美人です。ミッテルトちゃんマジテルミット反応”だったりするんですけど。

なので、2巻はさっくりと10話~15話で終わるんじゃないかなーと思います。
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