ただのゲーマー高校生のハイスクールD×D   作:unat

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第26話:俺とアキバとコスプレ少女

とりあえず駅の券売機で駅の路線を見てみたものの、今持っている残金で姫川まで帰れるかどうか……これなら20km移動した方が何万倍もマシじゃないか。

 人間、どうしようもない事になると諦めがついて力が抜けるらしく、疲れたように俺は近くのベンチに腰掛けた。

 

「はぁ……ここまで頑張り過ぎたから一気に疲労感が……」

 そもそも、何をどう間違えたらアキバと姫川を間違えるんだ? 市と地区名で全然関連性がないじゃないか。

 憎憎しげにケータイを開くもアザゼルさんからの返信はない。どうしたものか……。

 

 ふと、アドレス帳を何気なしに見ていると、アザゼルさんのアドレスの下にイッセー先輩のアドレスが。

「あ、そうだ。イッセー先輩に電話してリアス先輩達にここまで来てもらってリアス先輩達からお金を借りることにしよう、そうしよう」

 お金の貸し借りは基本したくないが今回ばかりは仕方ない、背に腹は代えられないというやつだ。

 とりあえず今日中に家に帰れないという可能性は無くなったので、心に余裕は出来た。今の時間帯は真っ昼間。平日の昼に制服姿の高校生が居るのは違和感があるかもしれないけど、幸いここはアキバだ。コスプレか何かだと思ってくれるだろう。

 

「さて、それじゃあ……アキバ観光と行きますかね」

 腰を上げ、軽く背伸びをして深呼吸。気分を一新させるにはこれが一番だ。

 大通りに出てみると、色々な店がずらりと並んでいる。免税店にゲームセンターにラーメン屋……etc。どれもついつい寄って行ってしまいそうな場所ばかりで、特にラーメン屋のとんこつラーメンなんかが美味しそうで食指が伸びそうだ。

 

 ラーメン屋の前にあるメニューの看板を見ていると、近くで物凄いA-boy二人組が走っている。二人共ポロシャツをジーパンに入れてリュックサックを背負い、片方は痩せていてもう片方は脂汗が眩しいほどの太ましい体型だ。

 

「こっちだ、こっちの方でクオリティの高い魔法少女のコスプレした子がいるってよ!」

「真でござるかキバヤシ殿!ぜひ拙者の一〇八式カメラの被写体に!」

 そう言いながら二人は元陸上部の俺からしても有り得ないほど綺麗なフォームで、原付もかくやというスピードで走り去っていった……恐るべし、ヲタク。

 A-boyがあそこまでの走りをするのは夏や冬のそれぞれ3日間ぐらいだと思っていたけれども……もしやそれと同じくらいの出来事なんだろうか。

 

「そこまでクオリティ高いのか?ちょっと覘きに……いやでも、とんこつラーメン食いたいしなぁ」

 さっきから換気扇を通して匂う魅惑の香り。俺の小腹も体も癒しを求めている――――が。

 もしとんこつラーメンを頼んでお勘定を支払った時にはレイヤーさんの高度なコスプレを見れない可能性もあるわけだ、だがとんこつラーメンは見てからでも食える。

 

「よし、せっかくの初アキバなんだし見てみるか。とんこつラーメンは待ってくれるがレイヤーさんは待ってくれないし」

 結論が出た俺は、さっきのA-boy二人組が走っていった方向へと足を進める。多分ここから歩いて500mぐらい離れているんだろう、じゃなきゃ走る意味が

 

「うおおおお!俺等のミルキーちゃんが画面から光臨したぜ!」

「うはっ、等身大ミルキーちゃんマジ可愛いっす!」

 なかったらしい。ラーメン屋から20mも離れてないところ曲がったらそれらしき人ごみを発見した。

 何人ものカメラ小僧やさっきのA-boy二人組なんかが、一人の少女を必死でパシャパシャと撮っている。真ん中に居る女の子の顔はよく分からないが、確かあの服はイッセー先輩が大好きな『ミルキースパイラル7オルタナティブ』とかいうアニメのキャラの格好だった筈。

 

 更に近づいてみると確かに可愛い女の子で、よく言うアニメの中から出てきた女の子って感じだ。ステッキを片手に何回もポーズを変えたりしてとても楽しそうだ。

 そうだ、イッセー先輩とか元浜先輩とか松田先輩に撮った画像メールで送るのはどうだ? 最近イッセー先輩達と話すきっかけとか機会が少ないんで、全く話していない。これをきっかけに先輩達と話すのも悪くないかもな。

 

 俺はもっと近づいてレイヤーさんを撮っている野郎共と並んで何枚かケータイで写真をとろうと構える。良い写真を撮るのは以外に難しいらしく、ズームしすぎたり顔を強調しすぎたりでなかなか良い写真が撮れない。

「んー……今度はピンボケか……も一回」

 もう一回ケータイを構えると、偶然ケータイのカメラとレイヤーさんの視線がバッチリと合う。このチャンスを逃すまいとケータイのボタンを押すと、レイヤーさんの笑顔と衣装が輝いて見えるくらいの良い写り栄えをした写真が撮れた。このクオリティなら、先輩達に送って自慢できるレベルじゃないか。

 

「よしよし、我ながら良い腕前じゃないか」

 しばらく自分で撮った画像を満足そうに眺めた後、ケータイをしまい未だ写真撮影に夢中なA-boy達をよそ目に人ごみを離れる。目標は果たした、次はとんこつラーメンだ。

 

 ラーメンのトッピングを何にするか考えながら歩いていると、不意に誰かに肘辺りの服の袖を掴まれたような感覚がする。誰だろうか、俺の知り合いはアキバにいるはずがないだろうし。

 振り向いてみると、先ほどのレイヤーさんが目の前に立っていた。後ろには物凄い形相で、恨めしそうなA-boy達が俺のほうを睨んでいた。大方この人の知り合いか何かだと勘違いしてるんだろう、迷惑な話だ。

 ともかく、俺はラーメンを食べるんだ。俺に対して何か用があるならさっさと済ませてしまおう。

 

「えーと、俺になんか用でもあるかな?」

 俺の質問に対してレイヤーさんはにこやかにフレンドリーに返す。

「うん、ちょっとお茶でもいいかなって☆ キミ、さっき私を撮ってた人でしょ?」

 どうやら、俺とお茶がしたいらしい。まいったな、俺はお茶よりとんこつラーメンが―――いや、そうじゃない。問題はそっちじゃない。

 

 つまり、今俺は今逆ナンパと呼べるものに出会っているらしい。ナンパという文字とは無縁だと思っていたのだが、よりにもよってまさか逆ナンパとは。

「うーん……駄目かな?」

「いや、駄目じゃないけどさ。いきなり言われて驚いたから……」

「じゃっ、決まりね☆ こっちにお気に入りのお店があるの!」

 俺がはいと言うのを待たずに、レイヤーさんは俺の手を取って歩き出す。ここまで積極的な人も初めて見たぞ……まあ、悪い気はしないかな。

 

「着いたよ~☆ ね、入ろ入ろ」

 ボケっと俺が考えていると、レイヤーさんと俺は一つの店の前で足を止めていた。それは、アキバを代表するような場所。アキバと言えばあそこ、あそこと言えばアキバ。そんなくらいメジャーな場所、つまり。

 メイドカフェの真ん前に俺は今居る。

 確かに、お茶と言えばカフェだろうけど……よりによってメイドカフェですか。初めてアキバに来た一見さんなら絶対入るような場所だろう、メイドカフェって。

 

「二人で☆」

「かしこまりました、ご主人様」

 俺がもたもたとしているうちにレイヤーさんは、メイドさんに入店する旨を伝えちゃったので、もう入るしかない。

「ここね、すっごく美味しいスイーツがあるんだよ」

「へぇ……それは楽しみだ」

 こうなったら、とんこつラーメンはもう完全に諦めてそのスイーツで小腹を満たすことにしよう――――そう考えながら入ると、目にしたのは予想通りメイドさんがいっぱいで辺りで萌え萌え言っている光景……ではなかった。

 

 落ち着いた、ゆったりとした空間で、本当の意味で”メイド”カフェといったところだろうか。そう、例えるならぺオルさんの屋敷の中みたいな感じだ。

 豪華でもないのに、ほのかに感じる高貴な気品……そして暗すぎず明るすぎずの照明に、床は派手過ぎない色だ。

「おお……スゲェ」

 あまりのカフェとは思えない内装と雰囲気に思わず感心してしまう。なんとも上品な風格が漂うお店だ。

「どう? 本格的でしょ☆」

 レイヤーさんが少し自慢げに言う。確かに、こんな穴場スポットなら自慢できるし、それこそリアス先輩達に紹介したって恥ずかしくないんじゃないか、というくらいクオリティが高い。

 

「大変お待たせいたしました、ご主人様。こちらへどうぞ」

 色々と感心していると、席の用意が出来たのかメイドさんがやってきた。見た目は俺より一つ上か同じかほどの女の子だというのに、どことなく大人びて見えるような立ち振る舞いだ。

 俺とレイヤーさんはメイドさんの案内に続く。どうやら個室の部屋がそれぞれあるらしく、案内された部屋の席にお互いが向かい合うように着くと、レイヤーさんと俺の二人分のメニュー表が机の上に置かれた。

 

「御用がございましたらお呼びください。それではご主人様、失礼いたします」

 恭しげにメイドさんは一礼すると、部屋から音を立てずにドアを閉めて出て行った。

 メニューを覗いてみると、全体的にそこまで高いわけではないようだ。内容は、ご飯ものは少なめで、スイーツをメインにしているようだ。チーズケーキにモンブラン、普通のショートケーキもあるし勿論パフェもある。至れり尽くせりだ。

 とりあえず注文はチーズケーキと、飲み物は紅茶―――ミルクティーにすることにした。

 

「決めたっ☆」

 丁度俺が決め終えたところでレイヤーさんも何にするか決めたらしい。俺とレイヤーさんはパタンと同時にメニューを閉じてしまい、更に目が合った。

 整った目鼻に、綺麗な肌……改めてみると、本当に綺麗だしとても可愛らしい。今こうして話しているのが夢じゃないか、疑いたくなるくらいだ。

 

 気づけば俺はじっとレイヤーさんの顔を見つめていて、はっとなる。いかんいかん、何もいわずに顔を見つめるとは失礼だぞ俺。何か言わないと!

「えっと、頼みたいものは俺は決まったけど……どうかな?」

 俺の問いかけにレイヤーさんはニコッと笑う。畜生、なんていう可愛さだ。

「私はもう決まったよ☆ けど、もう少しだけ呼ぶのは待って欲しいかな」

「あ、好きなときに呼んでもらって構わないからさ」

 俺がそう言うと、僅かな沈黙が訪れる。さっきから話し続けていたから会話が途絶えるのは少し寂しい。

 何か、良い話題は――――そうだ、自己紹介とかまだしていない、しとくべきだろうしやろう。

 

「えっと、俺の名前は若葉啓介って言うんだけど……その、どうして俺なんかが……なんて言ったら良いかな、こういうのあんまないからさ」

 初めての事なので何といえば分からないものの、レイヤーさんはなんとなく俺の言いたいことを理解してくれたようだ。

 

「うーん……キミに興味があるから、じゃ駄目かな☆ キミのことを知りたくなっちゃった」

 可愛らしい口調でなんて大胆なナンパなんだ、そして可愛らしすぎる。

「えっと、じゃあ何か知りたいことあるかな?」

 俺がそう言うと、レイヤーさんはうーん、と少し考えると何か思いついたのか、可愛らしい笑顔で一言。

 

「じゃあ、キミのそこにある物は何かな?」

 そう言ってレイヤーさんが指を刺しているのは俺の懐。正確に言えば、アザゼルさんから貰ったサーゼクスさん――――リアス先輩のお兄さんに渡す文書だ。

 

 レイヤーさんの質問で、俺の顔から笑みが消えるのが手に取るように分かる。心拍数が上がっていき、少し冷や汗も出てきた。

 落ち着け、俺。落ち着かないとこの場で俺が今何をしでかすか自分でも分かったもんじゃない。

 さりげなく、相手に悟られないように状況を確認する。この部屋には俺と目の前にいるレイヤーさんだけ。そしてレイヤーさんのほうがドアに近く、この部屋に窓はない……と。これはやっかいだな……。

 

「ほら、そんな怖い顔しないで☆ 少し怖がらせちゃったかな?」

 俺が逃げる算段をしていると、レイヤーさんは無邪気に俺に笑いかける。今となってはこの無邪気な笑顔すら少し不気味にすら感じる。

 この目の前にいる人―――いや、悪魔か? 堕天使か? それとも天使か? いずれにせよ、警戒しなきゃいけない相手だ。

 

「なあ、アンタ―――いや、ごめん。俺の勘違いだったら悪いよね。えっと……君の名前は?」

 恐る恐る俺が質問する。それに対してレイヤーさんは立ち上がって答えた。

「私の名前はセラフォルー・レヴィアタン。気軽に”レヴィアたん”って呼んでね☆」

 そう言いながら横にピースをしながらウィンクをすると、星がピコンと飛んで消えた――――すげぇ、瞬きして本当に星を出せる人がいるなんて……じゃない。そうじゃない、一人でボケて一人で突っ込んでる場合じゃないんだ。

 

 確か、レヴィアタンといえば……リヴァイアサンの事だよな? 悪魔も悪魔、大悪魔だ。しかも、ファミリーネームがレヴィアタンということは、恐らくかなり高い地位の人ってことじゃないか?

 つまり、リアス先輩のお兄さんを知っている可能性が――――いや、落ち着け俺。どうもついさっき、アザゼルさんと運だけで出会ったからといってその考えはさすがに愚かだ。

 

 俺と見た目の変わらない女の子――――しかも、コスプレ趣味にしてアキバのこんな穴場を知っているような子が高い地位を持っているとか、そんな有り得ないことがあるわけがない。多分、この年で中二病を再発させた子なんだろう。うん、きっとそうだそういうことにしよう。

 

「あー、なるほど。”レヴィアたん”」

「うーん……本当にレヴィアタンなんだけど……」

 何かレイヤーさんが困り顔になっているが、よくある話だ。自分の決めた設定があまりにも素晴らしいから半分自分の名前として使っているんだろう、それで10年後にそれを同窓会で指摘されると顔真っ赤になって顔を手で隠して思わず叫びたくなるんだ。誰だって一度は通る道だ。

 

「うんうん、俺もよく分かるよ。こういう時期が俺にもあったからさ―――って、ちょちょちょ、ちょっと待った!」

 俺がしみじみと恥ずかしい過去を振り返っていると、レイヤーさんがいつの間にか俺の懐から例のアザゼルさんの文書を抜き取っているじゃないか!?

 文書を取り返そうとするも、時すでに遅し。レイヤーさんは文書を読み始めてしまった……いや、待て待て。よく見ると、この文書は日本語や英語じゃない何か別の言語で書かれている。これなら読めな

 

「ふむふむ、悪魔と堕天使で和平を結びたい。ゆくゆくは天使達とも和平を結びつけ、今後二度と戦争を繰り返すことのないよう……」

 

 さっきこれなら読めないといった奴、今すぐ俺の前に出てきやがれ。しっかりと読んでるじゃねーか。しかも俺にも分かるようにしっかりと音読して。

 

「……もしかして、悪魔?」

「もう、私の名前はセラフォルー・レヴィアタンだよ☆」

 今度こそ、この目の前に居る人が悪魔だと信じざるを得なくなった。なるほど、確かに悪魔だ。あの内容もアザゼルさんが言ってたように悪魔と和平を結びたいというものだったしな。

 なるほど、悪魔にもコスプレイヤーは居るのか。悪魔というと、リアス先輩や姫島先輩を基準に考えているからコスプレを趣味にしている悪魔がいるとは思わなかった。

 

「ホント、悪魔もまだまだ俺には謎な存在だ……」

 ため息と一緒にポロリとつぶやく。それを見たレイヤーさん―――レヴィアタンさんが不思議そうに返す。

「うーん……私としてはキミの方が十分不思議かな? キミみたいな子がこんな物持ってるんだもん☆ キミの制服、駒王学園の制服だよね? リアスちゃんかソーナちゃんの知り合いかな?」

 この口調からして、どうやらリアス先輩や生徒会長で悪魔のソーナ先輩とも知り合っている、またはそれなりの仲らしい……意外と世間は狭いもんだな。

 

「あー、知ってるけど……ひょっとして先輩達と知り合い?」

「ソーナちゃんはね、私の可愛い妹なの☆」

 まさかの、ソーナ先輩のお姉さんでした。ソーナ先輩といえば、結構厳しそうな人でレヴィアタンさんとは正反対の性格だ。まさかそれでお姉さんとは――――いや、待て。確かソーナ先輩の名前はソーナ・シトリーだったはず。ファミリーネームが違うのに姉妹なのか?

 

「いや、でもファミリーネームが確かソーナ先輩はシトリーだったような……」

「そうだよ☆ でも、魔王になるとレヴィアタンっていう風に変わっちゃうの☆」

「なるほど、魔王になるとファミリーネームが変わるのか――――って、魔王!?」

 さらっと納得して聞き流しそうになったが、魔王だ魔王。あの、lv20くらいで倒せるのに世界の半分をくれてやるとかいっちょ前にほざいていたあの魔王だ! いや、ニュアンスはちがうけれども。

 

「あれ、俺の知っているのはサーゼクスさんなんだけど……魔王ってそんないるんですか? それともあれですか、私を倒しても第二第三の魔王が―――みたいな感じですか?」

「うん、私を含めて4人いるよ! だから、私を倒してもまだ3人いるんだから☆」

 そう言ってピースならぬスリーピースで可愛く決めるレイヤーさん。

 なるほど、つまりこの人はいわば四天王の中の唯一の女性で、その四天王の上にいるボスと恋仲だったりするパターンが多いキャラ――――じゃない!

 

「へぇー……それじゃ、リアス先輩のお兄さんとレヴィアタンさんと後二人いるんですか……」

「そういうこと☆ あと、出来れば”レヴィアたん”って呼んでほしいな☆」

 レヴィアタンさんはそう言いながらもう一度パチンとウィンクをして星を出す。

 ”レヴィアたん”と呼んでほしいのは分かるが、相手は魔王だ。つまり、結構、というか物凄く偉い人だ。そんな人を”たん”付けするのは少し気が引けるな……。

 

「えっと、じゃあ代わりに”レヴィアさん”じゃ駄目ですか? または”レヴィさん”」

「もう、それじゃ魔法少女じゃなくて魔砲少女だよ。でも、キミが好きなように呼んで構わないよ☆」

 レヴィアさんからのお許しか出てとりあえずひと段落着いた。念のため、アザゼルさんに報告のメールを送ることにしよう。

 

「あ、それじゃちょっと待っててください。ちょっと連絡するんで」

 ケータイを開いてメールを作成する。うーん、どう説明すればいいものやら……そうだ! 報告ついでに少しアザゼルさんを驚かせてやろう。

 思い立ったが吉日、早速カチカチとケータイで文章を打つ。

 ”アキバに着いたらクオリティの高い魔法少女のコスプレした人がいたんで送ります。今、その人とお茶してます”――――と。このメールにさっき撮ったレヴィアさんの画像を添付して送る。

 後はアザゼルさんがぶったまけてどんなメールを返してくるか待つだけだ。

 

「よし、連絡も終わったんで注文頼みますか?」

「お願い☆」

 レヴィアさんも何か頼みたいということなので、机の上に置いてあるベルを軽く鳴らす。

「御待たせ致しましたご主人様。ご要望をお伺いします」

 ベルを鳴らして何秒もせずにメイドさんがやって来た。ここまでの徹底振りだと、プロの領域に等しいんじゃないか……?

 

「それじゃ、紅茶とチーズケーキを一つずつと―――」

「イチゴパフェ一つ☆」

「畏まりました」

 一礼すると、メイドさんは足早に部屋から出て行き、それと同時にケータイが震える。どうやらアザゼルさんからメールが返ってきたようだ。

 

 メールを開いてみると、”落ち着いて聞け、いや読め。信じられんかも知れねェがソイツは魔王だ。サーゼクスに送る手間が省けたな”と書いてある。

「ふふふ……ここで更に焦らせてやるか。”え? アザゼルさん冗談は程々にお願いしますよ”……と」

「? 随分楽しそうなことしてるね☆」

「ええ。その文書を渡してくれた人が、散々俺を弄んだ挙句和平大使に仕立て上げてくれたんで、ちょっとした仕返しを」

 そう話していると、早速アザゼルさんからの返信が来る。

「お、返ってきましたよメール。随分と早い。どれどれ―――”うそじゃないほんとうだおれをしんじろ”だそうです。随分焦ってますねぇ」

 全部ひらがなで書いてある辺り、余程焦っていると見える。よし、止めの返信だ。

 

「”はいはい、オオカミ少年ですねオオカミ少年。全部ひらがなで書いている辺り、生々しい迫真の演技ですね(笑)”……と」

 カチッとアザゼルさんにメールを送る。そろそろ、アザゼルさんがもどかしさと苛立ちでソワソワし始める頃だろう。次のメールが楽しみだ。

 

「いやー、アザゼルさんの焦る姿が目に浮かびますよ――――っと、そういえば。魔王って4人いるんですよね? 魔王っていうのはどんなお仕事をしているんですか?」

「私達魔王は外交とか軍事とか、そういったことを4人でそれぞれ取り仕切ってるの。ちなみに私は外交担当だよ☆」

 なるほど、日本で言うところの内閣みたいなものが悪魔の中にもあるわけだ。とすると、悪魔の中にも法律とか税金とかあるってことか……? 随分とファンタジーなイメージが崩れるけれども。

 

「なるほどー、それじゃあ悪魔にも社会とかがちゃんと形成されてるんですね―――と、アザゼルさんからだ」

 メールを開くと、”もういい、俺は知らん”という投げやりなメッセージ。どうやらもう折れたらしい。あとでドッキリ大成功とでも送っておこう。

 

 ケータイを閉じると、メイドさんがケーキと紅茶のセットとパフェを運んで来た。

「大変お待たせ致しましたご主人様。チーズケーキと紅茶、イチゴパフェでございます」

 チーズケーキとイチゴパフェを置かれて、熱々の紅茶が入れ過ぎず、かといって足りなさ過ぎずの絶妙な量注がれる。

 

「では、ごゆるりとお寛ぎくださいませご主人様」

 一礼するとメイドさんは部屋を出て行った。

「それじゃ早速いただきます、と」 

 フォークでチーズケーキを口に運ぶ。チーズのねっとりとした食感とチーズケーキ独特の甘みが俺の口の中でふんわりと広がり、とても美味い。流石はレヴィアさんがお気に入りの店だ、雰囲気から料理の一品までちゃんとこだわっている。

 続けて紅茶を飲む。姫島先輩の淹れる紅茶とはまた一味違って、とても美味しい。

 

「うーん、流石のおいしさですね」

「ここのパフェはいつ食べても美味しい☆」

 そう言いながらパフェを食べているレヴィアさんもご満悦のようなので、俺も堪能させてもらおう――――

 

 

                        ※

 

 

「――――ふう。美味しかったですね」

「うん☆」

 結局、あの後他愛もないおしゃべりをしつつ、スイーツを食べ終えた。

 ニコニコと満足した顔で店を出る俺とレヴィアさん。メイドさんが深々と頭を下げて俺等を見送ってくれているのがなおさら気分を良くする。

 そのまま少し駅の方へと歩いていくと、レヴィアさんが俺を思ってか心配そうに口を開く。

「でも、私の分まで払ってもらっちゃったけど、大丈夫かな?」

「大丈夫ですよ、いい店を紹介させてもらっちゃいましたし」

 そう笑いながら言うものの、やっぱりあれだけ美味しいと値段もそれなりにいくもので、俺とレヴィアさんの食べた分で財布の中身は0だ。見事に十円や一円すら残っていない、よってかなり不味い状態ではあるがリアス先輩から借りるから何とかなるだろう。

 

「それじゃ、俺はちょっと済ませる事も済んだのでここらで失礼します。あ、あとその手紙をサーゼクスさんにお願いします」

「分かったわ、任せて☆」

 レヴィアさんはピースしながらウィンクをする。すると、やっぱり星がキラリと落ちていった。

 

 そのまま俺とレヴィアさんは別れ、俺は駅前まで向かう。ワープして飛ばされてきた時とは違って夕日も少し傾いてきた。これ以上遅くなると家に帰れるのがとんでもなく遅くなるだろうしさっさと帰りたいもんだ。

 

「さーて、イッセー先輩に連絡――――?」

 ケータイを開いて電源をつけた瞬間、電源が落ちた。もう一度つけようとするも、電源がつかない。もう一度試してみるも、電源がつかない。つまり――――ケータイの電池が切れたらしい。

 

「おいおいおいおいおい……冗談キツいって」

 どうしてここまで俺の運はおかしなところで発揮されて、こういう時にとことん落ちるんだ?

 確かに、レヴィアさんと一緒に甘味を楽しんでたときに、アザゼルさんにイタズラのメールを送ったり、チーズケーキを食ってる途中でレヴィアさんのいきなりの提案で俺とのツーショットとか撮ったりしたさ。でも、あの時電池は3分の2だったじゃないか。それなのになんでバッテリーがへばるんだここで。グリコーゲンが足りてないのか? バッテリーだけど。

 

 とりあえず、ケータイが使えなくなったのでコンビニとかで充電するよりは安い公衆電話を探す為に、ついでにレヴィアさんも探すのを兼ねてアキバを歩き回る。ひっそりとした電気屋に本屋やゲームセンター、etc……くまなく探してみたものの、公衆電話が見当たらない。これが所謂ケータイの普及による弊害か……便利って不便だ。

 

 背に腹は代えられないので、渋々コンビニで充電をしようと財布を開く。

「……あ、俺無一文だったんだ」

 あんまりにもケータイの電池切れが重大な事件過ぎて忘れてしまっていたが、俺は今1銭も無いノーマネー状態だ。だから、そもそも公衆電話を使うことすら出来ないのだ……。

 

 今度ばかりはもうどうしようもない。レヴィアさんも見当たらないし、そろそろ辺りも本格的に暗くなってきた。俺は歩き疲れた足を無理やり働かせて、駅前のベンチに腰掛ける。

「チクショウ、どうすりゃいい……? 金も無ければ時間も無い俺に今何が出来るんだよ……?」

 そんな嘆きは誰に聞かれるわけでもなく周りの音にかき消されていく。

 ああ、家に帰りたい。俺の物であふれかえった小汚い部屋の布団で寝てしまいたい。

 

 しかし、そんな願いが叶うわけも無い。こういう時こそ、リアス先輩とかが魔方陣から現れて願いを叶えてくれればどれほど楽か。しかし、その例の先輩たちを呼び出すビラなんてのがここにあるわけでもないし、持っているわけでもない。

 

「こういう時にトラエストが使えたら――――?」

 トラエスト。それは簡単に言ってしまえば、つまりはワープできる魔法だ。そして俺は姫島先輩の電撃くすぐりプレイを受けて、マハジオ等の魔法を覚えたことがある。さらに、俺は一回アザゼルさんのわけの分からん機械でワープされた……ということは、だ。

 

「今の俺ってトラエスト……使える、か?」

 どうして疑問系なのかというと、今まで覚えた魔法は、使えるというのが体に染み付いているというのか、例えてみると”練習してなくても年を重ねたら自転車に乗れるようになった”みたいな感覚で”気づいたら当たり前に出来ている”といった感じが殆どだ。

 だが、トラエストだけはその感覚が無い。その間隔よりはもっと不安定な、言わば”自転車に乗れるだけ”みたいな感覚で、それこそ成功するかどうかも分からない。

 

「一か八か……やってみるか? いや、でもな……」

”ご主人様、何やらお困りのようですね”

 俺が悩んでいると、いきなりどこからともなくエンジェルの声がする。

 

「えっ? エンジェル、お前何処? ていうか、人前に出るなよ周りがパニック起こすだろ」

 辺りをパッと見てみたものの、エンジェルらしき人影が見当たらない。いや、見当たられても困るわけだけれども。

”私は今、COMPを通じてご主人様に話しかけています。これはなかなかに疲れるのですけれども、どうやらお悩みがあるようですし、何かアドバイスをと思いまして”

 そう健気にエンジェルは俺に話す。なんという良い奴なんだ、かなり長い間召喚すらしていなかったというのに、おとなしく俺のために文句も言わずに忍んでいてくれたとは。

 

「ああ、とりあえずトラエストを使いたいんだが……どうにも成功するとは思えないんだよ」

”なるほど……ご主人様。こういうものはイメージする力とそれを実現する力が大事なのです”

 つまり、イメージする力があってもそれを実現させないと意味が無いし、何かを実現させる力があってもその何かをイメージできないと意味が無い、ってことか……。

 

”後者はともかく、前者は自分の経験や体験を元にするのが一番なのです”

「なるほど……やってみる。ありがとな」

”いえ、ご主人様のお役立てが出来て嬉しいですわ”

 目を閉じてイメージすることに集中する。まず、俺の行きたい場所……つまり俺の家を頭の中に思い浮かべる。今は靴を履いているから家の玄関を特に強くイメージする。そしてワープしたときの感覚を頭の中に思い浮かべる。

 足場が無くなって不安定な、それでいて何処となく体が軽くなったような……そう、自分自身が浮いているような――――

 

「お……?」

 突如、またしてもあの感覚が俺の体を襲う。まるで自分自身が浮いているような、足場は無くなっているのにしっかりとそこに立てているような感覚。しばらくするとそんな感覚も消え去り、代わりに温かみのある空気と俺の良く知っている匂い。

 目を開けて確認してみると、間違いなく俺は自分の家の玄関に立っていた。すっかり薄暗くなってしまった廊下の電気をつけ、靴を脱いでリビングへ行くとやっぱり俺の知っている光景が目の前には広がっている。

 

「おお、やっぱりウチだ……家だ……帰ってこれた……! トラエストも習得できたーっ!」

 家に帰れた喜びと安心とトラエストを習得したという喜びと達成感。自分の肩から力が抜けていくのが分かる。カーテンを閉め、玄関の鍵を閉め、テレビを点けてケータイを充電する。

 そのまま座椅子に腰掛けると、うとうとし始めて眠気が襲ってきた。どうやら、トラエストを使ったり色々あったりしたので体が疲れているらしい。

 

 眠気に身を任せ、座椅子に腰掛けながら目を閉じる。できれば、良い夢を見れることを期待しよう。




どうもお久しぶりです。

今回も今回でやたらと長くなってしまいました。仕方ないですね。

なんとか広げた風呂敷を畳もうと絶賛奮闘中です。それにしても、まだまだ描写も文法テクも拙いですね……もう少し頑張りたいものです。

相変わらず今回もレヴィアタンさんの口調がおかしくなっていないかとか物凄く不安です。多分、新しいキャラが出てくるごとに、この不安は消えないでしょう……。

レヴィアタンさんと一緒に写真をとったりお茶をしたことによって、魔王少女ルートを新たに作った若葉君。果たしてここまでルートを作りまくった若葉君はどうなるのか……乞うご期待ください。
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