ただのゲーマー高校生のハイスクールD×D   作:unat

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第27話:着火する導火線

 朝―――カーテンの隙間から差す光で目が覚めた。テレビも電気もつけたままだというのに、外から見える日差しは中よりも明るいようだ。

「んー、今何時だ……?」

 テレビを見てみると、朝のニュース番組が映っている。どうやら寝過ごすことはなかったようだ。安心して日付を確認すると、ラッキーなことに学校が休みの休日だ。しかも今週は特売をスーパーでやっている筈……買いそびれないうちに、さっさと朝食を食べて特売に備えるとしよう。

 

 目が覚めたばかりの体を起こして伸びをすると、体のあちこちでパキパキと骨の鳴る音が聞こえる。今日も体の調子は悪くないようだ。

 台所へと足を向けようとすると、留守電が何件かあることに気づく。いやな予感しかしないぞ……?

 恐る恐る用件が何件あるか確認してみると、2件あるようだ。

 

「んー……どうせまた小松原からなんだろうな……嫌だなぁ……でも、小猫さんからの可能性もナキニシモアラズなんだよな」

 小松原が電話している確立はどう考えても高いが、どうせ用件は全部確認しなければいけないので、嫌々1件目を再生すると、案の定小松原からだ。

”若葉、無断欠席とはいい度胸だ。さっさと来い、お前を心配する奴は多いんだぞ?”

 開口一番に不登校を促進するような脅し文句を止めて欲しいもんだ。さっさと消去して次の用件を再生しよう。

 

 2件目は、どうやら小猫さんからのようだ。

”ケースケさん。携帯が繋がらないのでお家に電話しました。大丈夫ですか?早く連絡を下さい、皆が心配しています”

 どことなく焦っているような小猫さんの声。電話のかかった時間帯を確認してみると、どうやら昨日の深夜に電話をしてきたらしい。そりゃケータイも繋がらないし家の電話も出れないわけだわ、寝てるんだもん。

 

「……待てよ? この時間に俺の状態を確認するってことは、何か起きたのか?」

 普通俺がぐっすりと寝ている時間に俺の安否を確認するってことは、少なくとも何か俺に関係あることで事故なりトラブルが起きたってことじゃないか? とりあえず、確認することに越したことはないな。

 ケータイの電源をつけて小猫さんに電話をかける。とりあえず、何事もないと良いんだけどな……。

 

『――――はい、小猫です』

 呼び出しコール3回きっちりで小猫さんが出た。とりあえず、今小猫さんが無事なようで一安心だ。

「あー、小猫さん? 俺俺、若葉だけどさ。小猫さん、大丈夫かな?」

『ケースケさん、連絡をするって約束したはずです』

 俺の質問を無視するほど不機嫌なようだ。若干怒り気味の声がケータイを通じて聞こえてくる。不味いな、機嫌を損ねてそのまま切られたりしたら次会う時が気まずすぎる。なんとか事情を説明して理解してもらおう。

 

「いやさ、ちょっとケータイが使えなくなるところまで行っちゃってたみたいでさ……その、電波が圏外の所に行ったていうのかな、それとも飛んだって言えばのかな……俺にもこないだ起きたことがいまいち説明できなくてさ」

 なんとか上手く納得できるような嘘をつこうと考えるものの、いざという時になると頭がてんで回転しない。かといって本当のことを説明しようも、信じてもらえないだろうしどう説明すればいいのか分かったもんじゃない。

 

『ケースケさん、本当のことを言ってください。怒りませんから』

「いやいやいや、本当なんだって! 昨日なぜか知らないけど、なりゆきで秋葉原に―――」

 全部言い終わる前に、通話が切れてしまった。どうやら、本当に怒らせてしまったらしい……次会った時、気まずいなぁ……トホホ。只でさえ皆に連絡してないから、心配かけてるっていうのにこれじゃ駄目だぞ俺!

 

「へこんでても仕方ないよな……とりあえず、朝食食ったらスーパーで買い物に行くか」

 材料を冷蔵庫から適当に見繕って作って食べる。さて、今日の昼と夕飯は何にしようか――――?

 

 

                        ※

 

 

「ふう、豊作豊作!」

 スーパーから帰る途中、ビニール袋の中にある戦利品を見て思わず顔がほころぶ。

 大ぶりな鯖の切り身や豚のバラ肉、他にもピーマンや玉ねぎなどが格安の値段だったので思わず買ってしまった。しかしこれでも500円で買えるというのだからお得じゃないか。今日の昼は肉野菜炒めに、夜は肉野菜炒めの残りと鯖の塩焼き―――なんて素晴らしいメニューなんだ。洋食も良いがやっぱり和食だな。

 

「随分と楽しそうだな?」

「そりゃもう、最高―――って、ん?」

 ふと振り返ってみると、懐かしのカラワーナさんが。懐かしいなあという思いに浸っていたいが、そんなことをしている場合はなさそうだ。

 何故かって? 物凄く不機嫌そうな顔をしているからだ。……なんかデジャヴを感じるぞ?

 

「ケースケ。質問に答えてもらおうか」

「え? そりゃなんでまた――――いやはい、真面目に答えます。ハイ」

 何か冗談を言おうかと考えていると、カラワーナさんはその考えを見透かしたのか、物凄い怖い顔をしながら睨んできたので真面目に答えることにしよう。

 

「そう、それでいい。まず一つ――――今まで、事前に連絡も無しに1ヶ月程、何をしていた?」

 なんとなく気づいていたけれども、やっぱり怒っている理由はそれか。確かに、アメリカに行く前に何も連絡してないし、帰った後も何も連絡してないんだもんな……。

「あー、はい。アメリカへ行ってました。学校で留学するチャンスがあるっていうんで、試しに志願してみたら……運が良くて当たっちゃったんですよ。で、なにぶん当たるとは思ってなかったんで大慌てで準備してたんで連絡できませんでした。すいません」

 いくつか嘘が混じっているが、アメリカに行ったのは本当のことだし、信じてくれるはず。

 

 カラワーナさんは、嘘か本当か吟味する為なのか俺を試すようにじっと目を見つめている。しばらく俺の目を見続けたが、どうやら信じたらしく大きくため息をつく。

「そうか、ならいい。いや、良くはない。お前がいない間の夕食が質素でな……。まぁ、過ぎた事だ。何処かへ長期間出かけるのなら教えてくれ。そうでないと――――」

「……?」

 カラワーナさんが何か言う前に、少し躊躇うようなそぶりを見せる。何かあったんだろうか?

 

「カラワーナさん? どうしたんです?」

「………」

 俺の問いかけに返事をせずに、そのまま何か考え込むカラワーナさん。一体何を考えているんだろうか。俺が不審に思っていると、カラワーナさんは俺の手首を掴んで引っ張る。

「少し、場所を変えるぞ」

「えっ? あ、はい」

 言われるままに、手を引かれるままに体をそのまま素直に動かす。強く握っていないものの、しっかりと確かに握っているカラワーナさんの手。

 

 俺は、何かとても深刻な話があるとしか思えなかった。

 

 連れて来られたのは、静かな朝の人気の少ない公園のベンチ。カラワーナさんはそのまま腰掛ける。これは俺にも座れということか。

 ベンチに腰掛けると、カラワーナさんは何かを思い出すように、何処かを見ているのか分からないまま口を開いた。

 

                         ※

 

 ―――昔、それは途方も無い程ではないが昔の話だ。お前達の言う所の第一次世界大戦……だったか? その頃だ。私は今のように人間界に居た。その頃も、今とそう大して変わっているとは感じなかった。ただ、人間達が殺し合いをしているだけだからな。

 

 その頃はまだ、私はレイナーレ様やドーナシークやミッテルトとは出会っていなくてな、適当な廃教会を根城にしていてな、特に変わらぬ日々を過ごしていたさ。

 

 ―――ある日、おかしな男が私の所を訪れてきた……単なる偶然でな。その男は、私が堕天使ということを恐れずに普通に話しかけてきた、珍しい男だったよ。その日から毎日、その男は私の元を訪れるようになってきた。私も最初は暇つぶしには丁度いいと思っていたんだが――――会う度に、その男を気に入り始めたんだよ。

 

 その男は、自分は軍人だと言っていた。わざわざ同族を殺す仕事をしていて楽しいか、とからかったこともあったが……何処か自虐的な笑い方をして、そのまま口を閉じていた。今になって我ながら愚かだったと分かったよ。軍人というのは、殺す為ではなく何かを守るために居ると知った今ではな。

 

 日が暮れれば、私の元にその男がいつも訪れる―――それが当たり前、いつまでも続く事だと思っていた。そんな筈があるわけ無いのにだ。滑稽な話だな、私達堕天使と人間では生きる時間が違うというのに……。

 

 いつも通り、男が私の元に訪れてきたある日……男が、戦争をしに遠出をすると言ってきた。すぐに終わる、クリスマスまでには帰れる、と言って笑顔で去って行き――――クリスマスどころか、何年経とうと帰ってこなかった。

 

 予想は出来ていた。男がどうなったのかも。何も悲しいことは無い、また一人で過ごすだけ……そう強がっていたがな、きっぱりと諦めがつくまでの夜はいつも、寂しさに襲われていたよ。

 それから時が流れ、レイナーレ様達と出会い――――川でお前を拾うまで、さっぱりとその事は忘れていたんだがな……。お前と出会ってから、その男のことを思い出し始めた。

 

 ――――以前、お前が悪魔の臭いを漂わせながら来た時、どうして殺さなかったか。そうお前は質問しただろう?

 

 それはな、似ているんだよ。お前とその男が何もかもがな。

 

                         ※

 

「……まあ、そういう事だ。だから、長い間何処かへ行くなら、せめて何か言え。何も言わずに何処かへ行くな。そのまま、二度と戻って来ない奴を待つ時の気持ちは―――もう、味わいたくないからな」

 カラワーナさんは、何処かを見つめると俺の目を見てそう話す。

「分かりました」

 ただ、俺はカラワーナさんの話を聞いてうなずくしかなかった。その反応を見て一応は安心したのか、微笑みながらカラワーナさんはベンチから立つ。

 

「あまり真剣に返事をするな、調子が狂う。ただ、心配する者の気持ちを汲み取れということだけだ」

 何という酷い言いようだ。でも、さっきの表情を見て反論する気も起きない。ずるいもんだぜ、ホント。

「真面目に返事するだけでこれですか……まあ、それはともかく。まず一つ、って事はもう一つぐらい質問があるんですか?」

 そのまま立ち去ろうとするカラワーナさんだが、それを聞いて何かを思い出したかのように立ち止まる。おいおい、もしかして俺が言わなかったらそのままどっか行く気だったのか。

 そんな俺の心配を他所に、カラワーナさんはただ一言だけ告げる。

 

「ああ、別に大したことじゃない。ただ、お前と同じぐらいの年のシスターを見たら教えてくれ。それだけだ」

 そう言ってカラワーナさんは何処かへ行ってしまった――――。シスター……つまりアーシアさんが逃げ出したって事は、そろそろレイナーレさんの行う儀式が近いってことか。どうやら俺も、うかうかと夕飯の準備だけをしている暇は無いようだ。

「やれやれ、どうして俺の知り合い同士が殺し合いを始めるんだか。確かに、戦争なんざ糞食らえだね……」

 ベンチから立って荷物を持つ。さっさと家に帰ろうか……色々と準備が必要になるだろうしな。

 

 買い物から帰る途中、別の公園でイッセー先輩がうんていで懸垂しているのが見えた。どうも、あんまり鍛えてないのか5回程やったところで力尽きて尻餅をついてしまっている。おいおい、悪魔になってそれは流石に情けないぜ先輩……。

 流石にあれを見てしまった以上は通り過ぎるのもアレだからせめて声の一つでもかけておこう。

 

「先輩、大丈夫ですか?」

 俺が声をかけると、イッセー先輩は慌てて立ち上がって尻についた土埃をパンパンと払う。

「ケースケ!? お、お前もしかしてさっきの……」

「ああ、見てましたよ。懸垂5回くらいやって力尽きてるところまで全部」

 俺が正直に言うと、イッセー先輩は情けなくへなへなと座り込んでしまった。あーあ、これじゃさっき土埃を払った意味が無いですよ先輩。

「イッセー先輩、ほら汚いですから立ってくださいよ」

 手を差し出すと、イッセー先輩はヨロヨロと立ち上がる。まるで生まれたてのヤギか羊の赤ん坊じゃないか。よほど疲れたのか、それとも何か悩みがあるのか……。

 

「俺さ、悪魔になったんだよな……。でも、全然強くないんだよ」

 ボソッと、イッセー先輩が呟く。

「だから、強くなろうと今こうして懸垂やってたんだけど、見ての通りこんなんで……。これじゃ、強くなんかなれる訳ないよな」

 そのままイッセー先輩は自虐的に笑う。まるで、少し前の俺みたいだ。守りたいものがあるのに、自分の力が足りないせいで、守れなかった。そういう後悔と自虐の感情。なんとなく他人行儀に、はいそうですかで済ませたくなくなってきた。

 

「先輩、いいですか? 強くなるつったってね、lv1のキャラが強いけど経験値ウハウハなモンスターを狩れるわけないじゃないですか。少しずつ、地味にやっときゃ強くなりますよ。それは自分だけが感じれるものじゃなくて、他人も感じれるものなんです。いいですか? つまりは一に鍛錬二に鍛錬、三、四は飛ばして五百まで鍛錬です」

 そんな俺の言葉を受けて、イッセー先輩は少しだけ元気を取り戻し

 

「そうか……そうだよな! ケースケ、ありがとうな。おかげで元気が出てきたぜ! とりあえず、懸垂30回!」

 少しどころか全快して元気が有り余ってもう一回懸垂にチャレンジするようだ。これなら、やりすぎて空回りして大怪我するか、翌日筋肉痛になること意外はもう心配は無いだろう。筋肉痛になったとしても先輩にはいい薬になるだろうしな。

 

「1、2、3……!」

「ほーら、あとそれを9セットやるんですよ」

「分かってらぁ!」

 俺の煽りに元気よく答えるイッセー先輩。しかし勢いはいいものの、やっぱりどうやっても5回近くが限界らしい。こればっかりは、時間の問題だ。毎日毎日地道に鍛えて頑張るしかないな……。

 

『イッセーさん?』

「ほーら、先輩。先輩の知っている人が見てますから恥ずかしいところを――――ん? 英語……?」

 誰かのイッセー先輩を呼ぶ声に振り返ってみると、そこには金髪のシスターの格好をした女の子が。シスターの姿といい、このいかにも運動神経が0に近そうな感じ――――間違いない、この人がアーシアさんだろう。

 

「アーシア――――っ!?」

 器用に懸垂をしながら驚くイッセー先輩。だが、驚いた拍子に肩の筋肉の筋でも思い切り伸ばしたのか、僅かなうめき声と共にイッセー先輩はさっきよりも酷い転げ落ち方をしてしまった。これは下手すりゃ骨折する転び方だぞ……大丈夫か?

 

「ちょ、先輩大丈夫っすか!」

 先輩に近づくと、どうもそこまで酷くは無いようだが擦り傷が酷い。傷口を綺麗にしないとすぐに膿んで酷いことになりそうだ。

『イッセーさん、じっとしていてください……』

 俺が先輩を立たせようとする前にアーシアさんが駆け寄って傷口に手をかざす。すると、傷口を緑の光が包み、見る見ると傷口がふさがっていく。その様はまるで傷が出来るまでの映像を逆再生したようだ。

 

『―――おお、コイツはたまげた』

 思わず感心してしまうほどの回復だ。ディアの何倍も強い、ディアラハンもここまでいくかどうか、という程の回復量だ。流石はシスターさん、人を癒したい、助けたいという気持ちの強さが伝わってくる。

『これで、大丈夫だと思います。次は肩を……』

 同じように肩も治療していく。生傷にも対応しているなんて便利だな、ディアとかも確か対応できるはずだったけど。

『はい、これで終わりました』

 アーシアさんが治療を止めると、イッセー先輩が恐る恐る肩や腕を上げたり、グルグルと回したり、膝を延ばしたり曲げたり、腿上げをしてみたりすると、さっきの怪我が嘘のように軽やかに動いている。

 

「おお、全部治ってる! 膝も肩も!」

 怪我の治ったことが主な理由なのか、さっきよりも更にテンションが上がってきているイッセー先輩。このまま更に怪我をしたりしないか非常に心配だ。

「先輩? そのまま怪我をしたら恥ずかしいことになりますからね――――と、あんまり話し込んでると、買った魚とか肉が痛むんでそろそろ俺は行きます」

「おう、じゃあなケースケ!」

 イッセー先輩に軽く手を降ると、先輩も振って返す。先輩はこのまま筋トレか、アーシアさんと話すのかは知らないが、さっさと家に帰って冷蔵庫に素材を放り込まないとな。

 

『あ、あの―――』

 そのまま家へ帰ろうとすると、アーシアさんが俺を呼び止める。なんだ? 俺に何か用だろうか。

『えっと、自己紹介をするのを忘れてました。私、アーシア・アルジェントです』

『ああ、俺も自己紹介してなかったね。俺は若葉啓介。イッセー先輩と同じ学校に通ってるんだ。あ、そうだ。イッセー先輩は気をつけないと怖い目に遭うからね、気をつけたほうが良いよ』

 どうやら自己紹介をするだけだったらしいので、適当に挨拶をしてイッセー先輩の危険さを忠告しておく。一応先輩がアーシアさんを襲うことはないだろうけれども、心配に越したことは無いしな。

 

「おいケースケ!聞こえてるっての!」

「冗談ですよ冗談。でも、金髪ブロンド娘とか俄然OKでしょ?」

 事実を言われて憤慨するイッセー先輩だが、俺の質問にニヤリと笑って親指を立てる。どうやら、その通りということらしい。相変わらずの変態っぷりで何よりだ。

 

『それじゃ俺は買い物の帰りでさ、早めに帰らないと傷んじゃうからこれで』

 これ以上鯖の切り身や豚のバラ肉を日光に晒すわけにはいかないので、足早に立ち去ろうとするものの、もう一回アーシアさんが呼び止める。

『あ、あの……!』

『ん? 何か他にあった?』

『いえ……』

 何か言いたげだが、そのまま口を塞いでしまった。なんだったんだろうか?

『あー……用が無いなら俺は行くよ。それじゃ』

『はい、またお会いできるかもしれませんね』

 アーシアさんにも別れの挨拶をしつつ、足早にそのまま家に直行して冷蔵庫にそれぞれ野菜や肉や魚を入れる。なんとか痛まずにもって帰れたようで嬉しい限りだ。

 

「さて、お昼の準備もいいけど色々と準備しないとな……。おーいドワーフ、また仕事だ」

 ドワーフを呼び出すと、相も変わらぬ目に悪い紫色の光とともにドワーフが召喚される。その様子からして随分と張り切っているようだ。

「やれやれ、最近は暇で退屈しておったところじゃ。次は何を作るんじゃ?」

「ああ、次は色々と作ってもらうぜ? まず――――」

 ドワーフに、今回無事にレイナーレさんをとっちめた後に何の面倒を起こさせることも無く済ませるためのアイテムを色々と注文する。仕組みから強度まで、事細かに指示する。

 

「―――ふむ、まあからくり物を作るのは悪くないんじゃが、儂等ドワーフは武器を作って何ぼじゃて……まあ、愚痴は良い。代償はいつもどおりでいいな?」

「ああ、分かってるよ。いつも通りのあれだな? こっちもそうそう手に入れにくい物だってのに」

 ドワーフは一度受けた注文はしっかりとやってくれるのだが、いかんせん代わりの報酬がなかなかに難しいものなんだよな……。

「それでも結局手に入れられるのがお主じゃろうに」

「ああ、分かってるよ。報酬は――――」

 そう、その報酬というのが。

 

「―――”どっきゅん☆ポロリどころじゃ済まされない! ドキドキ真夏の夜の女性達~美しき百合の世界~”だったろ? あれ、本当に手に入れるの大変なんだからな……?」

 そう、報酬というのが超レア物のエロ本なんだ。流石は神の武器の報酬に女神を要求したエロジジイだ、いい趣味してやがるよホント。

「うむ、あれでなければ”知られざる女性刑務所の実態! 女性囚人同士の熱帯夜”でも構わんぞ」

「ホント、いい趣味してるよ……おれが読んだ後でいいか?」

「汚したらもう一冊じゃぞ?」

「誰が汚すか!」

 なんという事を言うのだろうかこのエロジジイは。そんなことをするはずがないだろうに、超レアなエロ本を汚すなんてとんでもない。いや、普通の本でも汚すのはとんでもないことだけれども。

 

「とりあえず、きちんとやってくれよ。夕暮れまでに、手早に確実に頼むぜ」

 俺のこの発言に自分のプライドを傷つけられたのか、ドワーフは少しふんぞり返りながら偉そうに返す。

「当たり前じゃ。儂等のドワーフのモットーは”早い、確実、高い報酬”じゃからの」

「見返りが高いってのは自覚してんのな……」

 尚更タチが悪いな、このエロジジイ。

 

「それでは、さっそく仕事に取り掛かるとするかの。さっさと堪能したいからな」

 そういう言うとドワーフはCOMPの中に戻っていった。ドワーフが物を作っているところを見たことはないが、神の武器すら作る職人さんだ、なんだかんだですぐに作ってくれるだろうしな。

 

 今は昼前、一応夕暮れまで時間はたっぷりとある。今のうちにやれることをやっておこう。




どうも、なんとかここまで来れました。いよいよ1巻クライマックスへ秒読みが入りましたね。

今回は前回より少し控えめの文量にしてみました。まあ、前回が異常に多かったっていうのと丁度区切りが出来たんで切っただけなんですけれども。

今回も今回で相変わらずカラワーナさんの方が他の堕天使3人とは格段に出番が多いのはお約束です。私のモチベーションがあがるんですよ、カラワーナさんとの絡みを書いていると(笑)他にも小猫さんとか姫島先輩とかもそうですかね。

もう少しで1巻編も終了です。なのでなるべく早めに仕上げようと思います。目指せGW中。それでは次回を乞うご期待ください。
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