ただのゲーマー高校生のハイスクールD×D   作:unat

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※WARNING! 今回は下品極まりない下ネタが多々発生します。


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重々ご注意ください。


second story
第1話:恐怖! 局部を狙われる不死鳥―――忍び寄るおっさんの魔の手!


 どうも皆さんこんにちは。若葉、若葉啓介、若葉啓介でございます。

 

 ――――最近、唐突に頭の中で自己紹介をしたくなる病気に苛まれてうんざりしている。イッセー先輩もたまにそういう事がおきるらしい……心因性の精神病かな?

 原因に心当たりがないわけじゃない。最近日夜勉強漬けの上に放課後は1,2時間程小松原の特別指導という名の講習を受け、テストを受け、バイトをしてぐっすり眠る。これを繰り返しまくれば嫌でも疲労と心労は溜まっていくに決まってる。

 

 幸い今のところ疲労は溜まってないけど、気分的にガーゴイルのHPを削ってる途中でもう一体おかわりが来たとか、マンイーターがヘビの尻尾を切る前にもう一体おかわりが来た気分だ。分かる人だけ分かってくれればいい例えだけどそんな感じだ。そのせいで大事なもの―――人間性とかそういうのが色々ロストしかけてる。切実に。

 

 しかし小松原も講習の休みをたまに入れてくれる。そんな日はオカルト研究部へ行って勉強する。姫島先輩が出してくれる紅茶とかおいしくて心が安らぐ上に、分からないところは先輩たちが教えてくれるので本当に助かっている。何か恩返しがしたいと毎度毎度思っていた。

 

 そこで今回、俺は奮発してチーズケーキを買って献上することにした。小松原が与えてくれた休みの日に、あらかじめチーズケーキを予約しておいて買いに行き、部室へ直行するという寸法だ。

 で、俺は今チーズケーキを買って部室へゆっくりと向かっている。いやー、先輩たちの喜ぶ顔が目に浮かぶね。ちゃんとメンバー分ケーキもカットしてもらったし、値段は高いものの味は評判だし。

 

 部室の前まで来ると、少し何か物々しい雰囲気がするような気もするが、まあどうせ何もないだろうということで部室のドアに手をかける。

「こんにちはー、また教えてもらいにきま……」

 のんきにドアを開けた瞬間、瞬時に俺は固まった。

 

 なぜかって? そりゃー見知らぬ団体さん十数名――しかも全員女の子と、男一名―――がいっせいにこっち向けばそうなるわな。今の状況を表すとすればヤーさんの出入りに出くわした蕎麦屋の配達のアンちゃんだ。すっごい場違い感がする。

 どうしよう、このままドアを閉じるのもアレだけどこのまま立ってるのも凄い気まずい。このまま話なりなんなり再開してくれればいいんだけど、俺の行動を伺っているから再開もクソもない。

 

「あらあら、若葉君。どうしたんですか?」

 ここで姫島先輩がフリーズした俺に声をかけてくれる。おかげで我に帰ることができた。

「あ、先輩。えっと、今日はお取り込み中みたいなんで……あ、これ手土産です。」

 姫島先輩に渡すと、先輩はビニールの中を見て微笑む。

「まあまあ、こんなものを頂けるなんて」

「喜んでいただいて何よりです。それじゃ、これで……」

 用が済んだらすぐ帰れ、触らぬ神に祟りなしの精神で俺がそう言って回れ右をして帰ろうとすると、リアス先輩が口を開いた。

 

「あら、すぐに済む話だから気を使わなくても大丈夫よ」

 ものすごい棘のある声に振り向いてみると、笑顔でリアス先輩がそう言っていた。その笑顔と言葉のギャップ差がメチャクチャ怖いんで帰らせてくれませんかね……。

 しかし、俺にそんなことを言える勇気はない。ない。マジでない。リアス先輩の発言で空気が一段階悪くなったとしても俺が出来ることはただ一つ。

 

「あ、そうですか……」

 そう言ってイッセー先輩とアーシアさん……こないだイッセー先輩のクラスに入ったらしいからアーシア先輩と小猫さんの近くに申し訳程度に隠れるように隠れるようにと待機する。

 

 そして、本当は滅茶苦茶話しかけたくないが、部屋に入ったときからずっと号泣してるイッセー先輩に小声で話しかける。どうして話しかけたくないかって? 大体こういう時のイッセー先輩はロクなことで泣いてないからだ。

「先輩、ちょっとどうして泣いてるんですか?」

「ケースケ……見ろよ! う、羨ましすぎるッ……これが、俺の夢にまで見たハーレムッ!」

 殺してやりたい。マジで。ハーレム見て悔しくて泣いてるの? バカなの? 死ぬの? 嫉妬でジェラ死ーってか―――今のは見逃して欲しい。滑った。

 

 イッセー先輩の奇行を見て、見慣れぬ男……おそらく団体様の頭っぽい、ホストみたいな奴がドン引きしている。すいませんねこんな先輩で。直そうとしても直らないんですよ。

「なあ、君の下僕君が俺を見て泣いているんだが……」

 その男がリアス先輩にそう言うと、先輩は少し困った顔で答える。

「その子の夢が……何と言えばいいのかしらね。そう、ハーレムを目指してるのよ。貴方の下僕を見て感動したみたいね」

 と言った。なんというか、身内の恥を語らされるなんてリアス先輩も気の毒ですね……。そしてイッセー先輩、うんうん頷いてないで主に恥をかかせたんだから侘びに切腹しないと。介錯は俺がするんでさっさと腹切ってくたばってくれませんかね。

 

 そんなイッセー先輩の様子はむこうはどんな目で見ているかって? 決まってる。

「ライザーさま、あの人気持ち悪いです」

「きもい……」

 

 よかったですね先輩、本気で気持ち悪がられてますよ。変質者への道を一歩一歩順調に進んでますね。ほら、気持ち悪がらずに可哀想な目や哀れみの表情を向けている人も何人か居ますよ。生ゴミを見るような目で見られるよりはマシじゃないですか先輩。

 

 こんなことをイッセー先輩に言ってやりたいと思っていると、ライザーと呼ばれた男が口を開いた。

「いつでも羨望のまなざしを受けるのが上流階級というものさ、そう言ってやるなお前たち」

 コイツもコイツで上流階級というのが驚きだ。このホストが上流階級? ペオルさんの方がよっぽど上流階級だって。どう見ても七光りにしか見えないぞ。

 

 ―――気づくと、だんだん俺の毒を吐くのが激しくなってきた。ストレスが自分の知らないうちに溜まってきてるのか? 自分でもよく分からない。ただ色々と些細なことにイラつき始めてるのはいけないことだ、自分でも気をつけないと。

 

 ……と、こんな風に自分を戒めているとライザーが何か言ったあとに一人の下僕を呼び出した。そしてその下僕の顔とライザーの顔がお互いに近づいていき―――オイオイオイマジかよ。

 

 慌てて俺は小猫さん……とアーシア先輩の目を手でふさぐ。危ない、少なくとも元シスターの人がみたら不愉快極まりない行為で、小猫さんが見るには3年早いようなディープキッスを見せずに済んだ。

 この人たち無垢で純真だし、ただでさえイッセー先輩っていう不穏分子がいるんだから変な刺激をしないで欲しい。リアス先輩や姫島先輩は裸で男の隣で寝たりSMプレイをする人達なので別に耐性はあるんだろうけど、このお二人だけはせめて変な色に染められないようにしないと。

 

「ケースケさん、見えません」

「あー……ごめんよ小猫さん。変なの見せて変なのに染まったら責任を問われるのって真っ先に俺だからさ」

「何が一体起こってるんでしょうか……」

「誰かさんと誰かさんが麦畑で戯れてるだけですよ」

 俺が必死に誤魔化していると、ホスト野郎ライザーはまだまだイチャコラと長いキスを楽しんでいる。

 早く終わらせろよホスト野郎。こういう言い訳って言っても大体5秒も持たないんだよスケコマシめ……。

 

 しかもタチの悪いようにイッセー先輩の方を見てバカにしてるような視線を送っている。まずいな、イッセー先輩はこういう煽りに耐性ないから、まず間違いなくキレる。ここでイッセー先輩にキレられたら俺は両手が空いていないので止める人がいない。さっきのライザーの行動で、小猫さんとアーシア先輩を除いて、俺を含めた全員が不愉快に思っているのをヒシヒシと感じるからだ。

 

 一応ライザーは上流階級らしいし、そんな奴相手にキレて手を挙げるとロクなことにならないのは世の常。よって殴るとかバイオレンスな行為はなるべくしないで欲しいのだけれど―――

 

 そう思いながらイッセー先輩の方を見ると、なんとか怒りを堪えているようだ。偉いですよ先輩、もう少しだけ辛抱してください。キスが終わったらいつキレてもいいですよ、俺が止めますから。

 

 と、ここでやっとライザーはキスを終了。二回戦まで始めたせいで、いつイッセー先輩がキレるかどうかヒヤヒヤしたが、安心した。イッセー先輩も前よりも煽り耐性も付いて見直したぜ。

 

 しかし、俺の安堵を吹き飛ばすかのようにここでライザーがトンでもない爆弾発言を投下した。

「お前じゃこんなことは出来まい、下級悪魔くん?」

 下級悪魔―――つまりこれはイッセー先輩に向けての発言だ。明確なことだ。……だとしても、彼女いない暦=年齢の俺にも結果的に宣戦布告をしてるんだよな、これ。そうだよな、きっとそうだよな!?

 

 しかし相手は上流階級。腹の立つ話だが社会的地位の高い奴を攻撃すると、さっきも言ったがロクなことにならない。俺は怒りを必死の思いで飲み込んだ。

 だが、イッセー先輩は違った。なんせ俺と違い名指しされたんだからな、俺の時とはわけが違う。

 

「この野郎言いたい放題言いやがって! ブーステット・ギア!」

 怒りに怒るイッセー先輩は持ち前のセイクリットギアを発動させた。そして殴りかかるのはさすがに控えてライザーに指をさして一言。

 

「お前みたいな”たらし”が部長の許婚なんて不似合いだ!」

 そうだ、もっと言ってやれ先輩! 彼女無し勢の叫びと、このクソ野郎の行動がどれだけ唾棄すべきものか指摘してやるんだ――――って、え?

 

 部長の許婚? これが? 目の前で堂々とほかの女とイチャつく節操無しのヤリ●ン野郎が? 世の中マジでどうなってんの?

 

 俺が衝撃の事実に混乱していると、ライザーが余裕たっぷりに返す。

「は? お前はそんな俺にあこがれているんだろ?」

 なんという的確なブーメラン。自ら放ったボディブローを自ら喰らうことになるとは……。自業自得ってこういうことも指すんだろうな、きっと。

 

 しかしイッセー先輩はそれでもめげずに喰らい付く。頑張れ先輩!

「う、うるせぇ! ともかく部長の目の前で堂々とイチャつくような奴が結婚後もイチャつかないわけがねぇ!」

 おお、これはなかなか的確な指摘だ。さすがにこのアッパーカットはライザーにも少しは効く―――

 

「下僕とのスキンシップをして何が悪いんだ?」

 ―――全く効いていない。先輩のパンチ力が足りないのか! こうなったらカウンターを狙いに……じゃない。今そういう事言ってる場合じゃない。

 

 大胆不敵に開き直ったライザーにイッセー先輩もさすがに堪忍袋の緒がプチプチと切れ始めたのか、叫ぶ。

「やっぱりイチャつくんじゃねぇかローストチキン! それが嫌なら種まき焼き鳥野郎だ!」

「なっ……言わせておけばこのガキがっ!」

 イッセー先輩の罵倒に、ライザーなぜかキレだした。過去にケンタッキーフライドチキンで胸焼け起こしたとかそういう過去でもあるんだろうか? いやいやまさか、俺じゃあるまいし。

 

 ただイッセー先輩の発言であの野郎がキレるのは見ていてとてもすっきりする。よし、ここはさらに奴を煽ってやろう、どうせもうイッセー先輩が煽ってしまったんだから行けるところまで行ってしまえ。毒喰らわば皿までだ。

「イッセー先輩、落ち着いて!」

 そう言いながら俺はもっともらしい動きでイッセー先輩を羽交い絞めにする。

「うるせぇ、これが黙っていられるか!」

 イッセー先輩はジタバタと暴れるが、俺も俺でしっかりと動きを取れないようにしている。そして俺はイッセー先輩の耳元で聞こえないように囁く。

『おとなしく俺の言うことを奴に言ってください。まずは”金髪のトサカ立てやがってニワトリ野郎”と』

 

 俺がそう囁くと、イッセー先輩はおとなしく俺の事をそのまま叫ぶ。

「金髪のトサカ立てやがってニワトリ野郎!」

「この野郎ッ……!」

 むこうもむこうでこっちの煽りの内容を鳥ネタにしたらどんどんいらだち始めた。面白い、まだまだいけそうだ、とことん煽ってやるぜ。

 

『次は”鳥がいやならお前はほーでんだ! 焼いて調理されて再起不能になっちまえ”で』

「鳥がいやならお前はほーでんだ! 焼いて調理されて再起不能になっちまえ! ――――ところで、ほーでんって何だ?」

「そりゃーキ●タマですよ。雄ニワトリの。焼き鳥で使われますよ」

 俺がそう言うと、顔を見合わせた俺とイッセー先輩はしばらくの沈黙の後、堪えきれなくなったイッセー先輩がプッ、と吹きだす。

 

「キン●マ? 鳥の? 焼き鳥? くっ……焼き鳥野郎の……キ●タマ……ッ!」

 完全にツボに入ったらしく、声を押し堪えて必死になっている。い、いかん俺もつられてきた。

「ちょっと、先輩、やめ、俺もおかしく……種まき……再起不能……! ぷっはははははは!」

「ヒッ……ヒーッ! 腹痛い! ストップ、こりゃむしろ可哀想だぜ、キン●マを焼き鳥にして食うとか報われねぇよ!」

「ウマいんすけど大抵中年辺りのオヤジしか食わないのが玉に瑕! ははは! スケコマシの大事な部分がオヤジに食われて再起不能! タマだけに玉に瑕! たまんねぇ!」

「哀れな最後だぜ! ”たまたま”アイツのキン●マになったのが運の尽き、いや精の尽きってな!」

「駄目! もうこれ以上は可哀想……俺たちが! 笑い死んじゃう! 笑い死んじゃう! 女好きのキン●マが食われて腹中死! 中で逝けただけよかったね! ヒャハハハ!」

 

 こんな風に俺とイッセー先輩は床を転がりながらもトンでもない下ネタと寒いギャグを大声で、文字通り抱腹絶倒しながら叫んでいる。ごめんよ小猫さん、白い目で俺を見るかもしれないが、これは抵抗不可能なんだ。

 思いつきで言った事がたまにツボに入るってよくあるよね、うん。仕方ない仕方ない。こんなにくだらない下ネタで笑えるのも思春期ならではだ。あー、面白い。

 

 床を転げまわらんばかりの勢いでまだまだ爆笑している俺たちを見たライザーが、当然ながら肩をわななくわななく震わせながら激昂している。

「こ、の……ッッ! 下僕の躾がなっちゃいないぜリアス!」

 そんな貴方は愚息の躾がなっちゃいない……っと、さすがに下ネタはこれ以上は止めておこう。これ以上は腹筋耐久値のレッドラインを超えるからな。

 

 話を戻そう。リアス先輩はリアス先輩で、ライザーから分かりやすくそっぽを向いて”知らないわね”と言わんばかりにスルー。散々笑いの種にしたから中身がないように聞こえるかもしれないけど、この仕打ちには多少は同情するね、ドンマイ…………ざまぁみやがれ! よし、これで馬鹿にするのはもうおしまい。ホントにホントにおしまい……多分。

 

 大笑いし飽きたイッセー先輩が起き上がり、とどめの一撃と言わんばかりにこう言い放つ。

「お前なんて俺のブーステット・ギアで十分だ! 木場や小猫ちゃんが出るまでもねぇ、ゲームを始めるまでもねぇ! お前等全員俺一人で十分だ! お前なんか怖くねぇ!」

 そう言ってかっこよくセイクリットギアといっしょに決めるイッセー先輩。

 ―――まあ、ここまでの流れだったらもう誰でも分かるね、100%負けたね、これ。

 

 さすがのライザーもこれに対してはアホらしくて怒る気にもなれないのか、イッセー先輩を哀れむような視線とため息を上げつつ、こっちもこっちでかっこよく手を上げて合図する。

「ミラ。相手をしてやれ」

「はい」

 

 ライザーの合図に応じて前に出てきたのは棍棒を片手にしたミラと呼ばれた女の子。少し狭い室内とはいえ、素手相手に対してどれだけリーチの面で優れているかなんて言うまでもない。ましてやそれが棒術に優れているとしたら、相手が生身の人間だろうとイッセー先輩に勝ち目はない。それぐらい、素人と武芸の達人には格差がある。

 

 まあ、イッセー先輩も流石に調子に乗りすぎたのでいい薬―――と思っていたら。

 

「ふべっ!?」

 いきなり俺の頭に衝撃が走った。一瞬何が起きたのかと思ったが、すぐに理解できた。俺を踏み台にして例の女の子が飛びやがった。中国雑技団みたいな真似しやがって。

 そして俺も驚くくらい速いスピードでイッセー先輩との距離をつめるとその棍でイッセー先輩を突き上げ―――

 

「かはっ……」

 ―――ついでに俺にも軽く一発入れてきやがった。俺が人間と分かっているからか露骨に”人間ならこれで倒れるだろ”と言いたげな手加減のし具合だ。

「ぐふぇっ!? ちょ、待ったなんで俺にあぎゃっ」

 俺が何か言う前にまた振り返ることもなくジャンプすると俺の頭を踏み台にしやがった。おかげ軽く舌噛んだ。

 流石に女の子相手とはいえ、俺もここまでバカにされて黙っていられない。

 

「てめっ……人の話を聞けやオラ!」

 振り向きざまにまだ空中にいる女の子目掛けて割と本気で横蹴りを放つ。これは空中にいるので流石によけれまいよ! 

 ところがどっこい、女の子は体を捻らせて突きを放つ。俺の蹴りは女の子のわき腹に、棍も同じように俺のわき腹に突き立てられ、相打ちという結果となった。

 振り向きざまのあまり力の入っていない攻撃だというのに、重い衝撃がわき腹を襲う。倒れこみたくなるのを必死で我慢して立っているが、歩くのもままならないという情けない姿を晒すことになった。

 

 ただ、相手も相手で大丈夫と言うわけではないようだ。着地に失敗して苦しそうに手でわき腹を押さえながら立ち上がる。

「してやったぜ、へへ……」

 そろそろ俺も限界になり、ふらりと情けなく俺は尻餅をつきかけたところを誰かが支えてくれた。

「大丈夫ですか」

 

 支えてくれたのは小さいけれど力持ちの小猫さんだった。相変わらず小猫さんには迷惑をかけっぱなしだ。

「ん……ごめんよ小猫さん」

 小猫さんにそのまま近くの椅子に座らせてもらう。俺も俺で少しあの子を見くびりすぎていたかもしれない。情けない話だ、まだまだ俺にも鍛錬と言うものが足りないらしい……。

 

 ライザーは、俺とイッセー先輩の姿を見下しながら嘲るように言い放った。

「お前たち、弱いな。ミラは俺の下僕の中ではもっとも弱い。だが、この有り様だと確かにそうだ。ゲームをするまでもなく俺の勝ちは見えている」

 そしてライザーはイッセー先輩の下へと近寄ると、先輩の顔とセイクリットギアとを見ながら続ける。

「お前のセイクリットギアはそうだ、確かに恐ろしい。俺どころか神も滅ぼせる。だがお前のような使い手では宝の持ち腐れ―――そうだ、日本では豚に真珠というんだろう? まさしくお前に似合いの言葉だよ」

 ライザーはそのままイッセー先輩の頭をペチペチ叩いている。見ているだけでムカつく野郎だが、言う事がごもっともなので言い返せないのが悔しい。

 

 そしてライザーは俺の方にも向かってきた。何を一言言ってくれるんだか期待で吐き気を催しそうだ。

「俺を散々コケにしておいてこれじゃあな。確かに実力は人間の割にはあるようだが、上には上がいるんだよ。そう、こういうのを井の中の蛙大海を知らずって言うんだろ? 身の程を知るんだな」

 そう言うと俺の方から振り返ってリアス先輩の方に向かう。

 

「リアス、十日だ。十日もあれば君ならコイツ等を十分鍛えられるはずだ。そのあとにレーティングゲームといこうじゃないか。そこの人間も鍛えれば特別に参加させてやってもいい。そのくらいが面白いゲームになりそうだ」

 明らかに嘗められているのが悔しい。俺やイッセー先輩がこの面子で一番弱いという事実、そのせいでリアス先輩が低く見られることがなによりもだ。

 

 リアス先輩もライザーの言葉にはプライドが傷つけられたのか、イラッとしている様子を隠そうともせずにライザーに返す。

「強者の余裕かしら?」

 その言葉を聞いたライザーは、ため息混じりに子供をあやすようにリアス先輩に話しかける。

「戦いの基盤であるポーンがこの有り様で勝てるとでも? 君だってよく分かってるだろう。君一人の感情で勝てるほど甘くはない。経験もない初心者と経験者の違いは目に見える程に鮮明な上に、君は数も劣っている。そもそもこの程度じゃハンデにもならない。これが分からないのか?」

 あまりの正論にリアス先輩も言い返すことは出来ずに、ただその話を悔しそうに聞くのみだった。

 

 この沈黙を承諾とみなしたのか、ライザーはこれで終わりと言わんばかりに魔法陣の上に立つと、魔方陣が光を帯びだした。

「それじゃ、決まりだな。十日後にレーティングゲームを始めよう。君ならその時間でいい試合が出来るまでに鍛え上げられるだろう、リアス」

 そう言うと、イッセー先輩を見てライザーは最後に一言。

 

「結局はお前がどこまでやれるかだな、リアスのポーン君」

 そしてライザーと下僕は魔法陣の中に消えていった――――。

 

 

 

                      ※

 

 

 

「―――部長、すいませんでした!」

「すいません、リアス先輩。俺らのせいで先輩に恥かかせて……」

 ライザーが去った部室でイッセー先輩と俺はリアス先輩に頭を下げていた。先輩の顔に泥を塗るような行為をして恥ずかしいの一言だ。

 

 しかしリアス先輩はそれでも心配そうに俺とイッセー先輩のやられた痕を見ている。

「私はいいの。それより、二人とも傷は大丈夫? イッセーも若葉君もだいぶ痛めつけられたようだけれど……」

「俺は大丈夫ッス。アーシアのおかげでピンピンしてますから! ケースケ、お前は大丈夫か?」

「やられた時は痛かったんですけど、アーシア先輩のおかげでなんともありませんよ」

 俺とイッセー先輩はせめてこれ以上心配をかけないようにと元気アピールをする。もちろん空元気なわけじゃなくて本当に元気だ。体もどこも異常はない。

 

「そう……ならよかったわ。じゃあ今日はこれで解散。私は朱乃と一緒にこれからの事を考えなきゃいけないわ。朱乃」

「承知いたしましたわ、部長」

 そう言うと先輩達は奥の部屋へと入っていった。それを見た木場先輩や小猫さんもリアス先輩に言われたとおり大人しく帰っていく。イッセー先輩もそれに続いて帰ろうとしている。

 

 そして俺は、部室で立ち尽くしていた。俺の中ではただ悔しさと、リベンジしたいという思いが一杯だった。このまま素直に帰るという気すら起こらない。せめて、俺も何か先輩達の役に立ちたい。そこで俺の中の脳裏にひとつの言葉が浮かび上がった。

 

 ――――レーティングゲーム。これにどうやらリアス先輩達は勝たないといけない。どういう物かは知っている。負けるとどうなるのかも簡単に想像がつく。俺が知っているこの世界のシナリオはここまでだ。ここからは俺が全く知らないことが起きる。俺という存在がこの世界にいることで、どういう変化をもたらしたのかは全く分からない。

 だから、俺は俺がやれることをやるしかない。今俺が先輩達のために、せめてもの恩返しとしてやれることは――――ひとつだけだ。

 

 やるべきことを見出した俺は奥の扉を勢いよく開ける。勢いが強すぎてリアス先輩と姫島先輩は少し驚いていたが、まあちょっと気合いが入りすぎたってことで見逃して欲しい。

「若葉君、どうしたのかしら?」

 不思議そうに聞いてくるリアス先輩を前に俺は覚悟を決めて口を開いた。

「リアス先輩、質問があります。先輩、俺はオカルト研究部の一部員ですよね?」

「ええ、貴方は―――――駄目よ。私のワガママに貴方は巻き込めないわ。」

 俺が言わんとすることを理解したのか、先手を打つようにそうリアス先輩が言うが、こっちもこっちでもう辛い修行の覚悟は出来ているんだ。

 

「そうは行きませんよ、俺だって意地ってもんがあります。何があっても譲りません」

 俺の言葉を聞いたリアス先輩は、ただじっと俺の方を見ていた。まるで俺の覚悟を見定めているかのように。

「……本気なのね?」

「本気です」

 いつも以上に真面目な俺の返答に、少し困ったように苦笑しながらリアス先輩は口を開いた。

 

「分かったわ。そういえば貴方も頑固だったわね……。もう、言い出したら聞かないんだから」

 俺はその言葉を聞くと喜んで頭を下げる。

「ありがとうございます! 俺もせめて先輩の役に立ちたいんです。普段いろいろとお世話になってるもんで……」

「気持ちだけでも十分にありがたいわ。明日に備えてゆっくり休んで頂戴」

「失礼します」

 そう言うと俺は部屋をあとにする。気持ちだけでも修行に備え、今日だけはトラエストは唱えずに走って帰った。

 

 

 

                      ※

 

 

 

 バイトを終えて家に帰り、夕食も風呂も済ませた俺は、寝る前にCOMPからドワーフを召喚する。ドワーフは俺の顔を見るなり、ふさふさの顎鬚を撫でながら何か納得したようすで頷いた。

「ふむ、どうやら儂に入用のようじゃな」

「ああ。ドワーフ、作ってくれ。今から俺が言うもの全部を10日以内で」

 俺が造って欲しいものの内容を事細やかにドワーフに耳打ちをすると、ドワーフは多少難しそうな顔をしながら腕組をして唸る。

「……できないことはないが、高くつくぞ? そのようなカラクリはワシでもだいぶ難しい」

「やってくれ。頼む、報酬は色を付ける」

 俺は頭を下げてドワーフに頼み込むとドワーフは、うーむと唸りながら悩んでいたが、しばらくするとにっこりと微笑みながら俺の要望に応えてくれた。

 

「そこまで言われて仕事を引き受けないのは、ドワーフの名が廃る。よろしい、やってみせよう」

「毎度毎度助かるよ、本当に」

「それじゃ、さっそく取り掛かろうかの。ほほほ」

 そう言い残してドワーフはCOMPへと戻っていった。とりあえず装備面の問題はひとまず解決したので、俺も安心して布団の中へと入り込む。

 

「―――もっと強くならないとな」

 あの夢を見たあの時の夜とまったく変わらない想いを胸に、そう呟きながら俺は眠りについた。

 




ごめんなさい。後書き早々謝罪ですがごめんなさい、下ネタが下品でどうもすいませんでした。例によって今回も深夜テンションで書かせていただきました。毎度毎度深夜テンションで書くとロクなことが起こりませんね、どうにかしたいものです。

さて、今回から第二巻のストーリーが始まります。なるべくグダグダとならないようにしたいと思います。修行中の十日間、クマと戦ったり必殺技を編み出すための修行で話を嵩増しなんてしません! ……しませんよ? いや、しないかもしれません。……多分するかもしれません。


次回から修行パートです。最近空気気味な仲魔達もそろそろ登場させたいですね、次回を乞うご期待ください。
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