ただのゲーマー高校生のハイスクールD×D   作:unat

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第5話:開始の合図にチャイムを4回

 ―――厳しい特訓をこなして、やってきた最終日。俺はイッセー先輩と一緒に自分達の実力を披露することになった。

 イッセー先輩は最終日までアーシア先輩と一緒に訓練を終えた後も夜遅くまで何かを必死に練習していたらしい。毎朝毎朝、少し眠そうな顔をしながら先輩達は朝食を食べていた。

 

 勿論俺だって何もやらなかったわけじゃない。必死に厳しい先輩たちのテニスボールを避けたり木場先輩と剣を交えたり、小猫さんと格闘をしていた。こっそりと先輩達に内緒で魔法をうまく使いこなせるように練習もした。

 

 まずは俺が先に先輩達に実力を見せる番だ。へへへ、先輩達のド肝を抜かせてやるぜ!

 先輩達の前に立つと俺は精神を統一させる。手には訓練用の木刀を持ちながら、イメージを強くしながらジオを唱えると―――

 

「―――おおっ」

 イッセー先輩が思わず声を漏らして驚いたような声を出すが、それもそのはずだ。俺の持つ木刀は雷をまとわりつかせている。

「なるほど、魔法で雷を剣に宿らせているわけね……」

 リアス先輩が関心したように頷いていた。ふふふ、リアス先輩にこういうことで感心されると少しうれしい。だけど、俺が会得したのはこれだけじゃない。

 

「まーだまだ、これからです」

 一旦解除させると、俺は次にブフを唱える。すると木刀を芯にするかのように氷はギザギザと返しのついた刃となって、木刀はあっという間に凶悪な剣へと変身した。

 切れ味を見せるために俺は近くにあった平均的な人の腕位はあるであろう木に無造作に剣を振るうと、木はたちまちと切られた場所から凍りつきながら二つに分かれる。

 

「まだまだありますよっ!」

 今度はザンを唱える。すると木刀の周りに風がまとわりつく。しかし、当たり前だがこれだってただの風じゃない。

 俺は倒れた木にそっと木刀を当てると、風が木の幹に触れるたびにクマが思い切りツメで裂いたかのような跡ができた。これが人間に触れた時、どうなるかなんていうのは言うまでもない。

 

 これが俺の今回の修行で身に着けた力だ。格闘能力も魔法を扱う力も大幅にアップ、さらに小猫さんに股割りされて柔軟性も倍以上アップだ!

 

「これが俺の修行の成果です」

 どうですかリアス先輩、姫島先輩、木場先輩、小猫さん? 俺だって少しはやればできるんですよ、ふっふっふ。

「ええ、上出来よ。今までよく貴方は頑張ってきた……私も鼻が高いわ」

 リアス先輩がニッコリと笑いながらそう言ってくれた。へへっ、少し照れるなあ。俺もこれで少しは先輩の役に立てる!

 

 次はイッセー先輩の番だ。イッセー先輩の場合は木場先輩と手合せをすることになっている。イッセー先輩はリアス先輩の指示でまずセイクリットギアで先輩自身の力を倍増させてからだそうだ。

 

≪boost!≫(ブースト!)

 

 イッセー先輩のセイクリットギア―――ブーステッド・ギアは力を何回でも倍増させる効果を持つ。それすなわち、先輩の基礎能力が高ければ高いほど強くなるということだ。

 

≪boost!≫(ブースト!)

 

≪boost!≫(ブースト!)

 

≪boost!≫(ブースト!)

 

 イッセー先輩のブーステッド・ギアはどんどんと力を倍増させていく。なんというか、某特撮ライダーの変身ベルトとかが声を出してるのとそっくりだな、今こうして見てみると。 

 

「もう結構よ、イッセー」

 リアス先輩がそう言うと、木場先輩は木刀を構える。どうやら始まったらしい。先に動いたのは木場先輩だった。素早く間合いを詰めるとイッセー先輩を八文字に切らんとばかりに木刀を振り下ろすが、イッセー先輩はこれをブーステッド・ギアで受け止める。やっぱりあれはきちんと籠手としても機能してるらしい。

 

「イッセー、魔力を開放してみなさい」

 リアス先輩がそう指示すると、イッセー先輩は魔力を片手に集中し始める。一瞬のうちに光の粒子の塊がイッセー先輩の手のなかに集まったかと思うと―――

 

 ―――光が辺りを包んだ。そしてその後に押し寄せる轟音、爆風。

 

「はあっ!?」

 俺は咄嗟に頭を抱えて屈む。なんだなんだ、何が起きた!? まさかイッセー先輩が魔力の開放に失敗して暴発たのか!

風が止んだのを確認した俺はまだ残る耳鳴りでうるさい頭を持ち上げて周囲を確認してみると、イッセー先輩も対峙していた木場先輩も傷一つ無いようで、呆然と二人とも何かを見つめている。

 

「先輩? 無事でしたか……って、えっ?」

 先輩達の視線の方向へと目をやると、山が綺麗に削れていた。それはもう見事なもんで、某電子系会社の林檎のかじられた部分のようにきれいさっぱりと消し飛んでいる。こんな威力だったら木場先輩にあたった瞬間俺らもヤバかったんじゃ……?

 

 イッセー先輩の方を見てみると、口を大きくあんぐりと開けて呆然としていた。なんというか、まさしく自分のしたことが理解しきれていないというのが見て取れるな。

「先輩。イッセー先輩? おーい、聞こえてますかー?」

「はっ……はああああああああっ!?」

 うわっ、うるせえっ! 俺が顔を近づけた瞬間イッセー先輩が叫び出した。いくらなんでもびっくりしたぞ。

 

「それが貴方の今の力よ、イッセー」

 リアス先輩がそう言いながら微笑む。やっぱり自分の眷属の成長は嬉しいモノなんだろうな。

「これが……俺の力」

 イッセー先輩はまじまじと自分のセイクリットギア見つめながら、リアス先輩に言われたことを反復するように呟いた。

 

「これが貴方達が今回身に付けた力よ。何倍にも増した力……そしてお互いにお互いを補うように連携すれば更に強力なものになるの。この力でライザーを見返してやりましょう!」

『はいっ!』

 俺たちは力強くリアス先輩にそう応える。士気は最高潮、どんな奴が来たって怖くはないぜ!

 

 

 

                   ※

 

 

 

 修行を終え、家に帰ってきた俺はとりあえず一息といった具合にのんびりとくつろいでいる。試合の時間は夜の12時。夕方の今からだとかなりの時間があるので仮眠を取っておきたいところだが、そうはいかない。

 というのも、ドワーフに頼んでおいたブツが完成したかどうかが気がかりで仕方ないのだ。ぶっつけ本番で使うよりも、ある程度触れてみてどういう感じかを知る必要があるしな。

「ドワーフまだかー? 」

 COMPにそう話しかけてみるが、うんともすんとも言わない。

 

 そろそろ無理矢理にでも召喚してやろうかと思い始めたちょうどその時、目の前に例の目に悪い光がしたかと思うと、ドワーフが出てきた。

「そう急かすでない。ワシは約束の時間までにはキチンと終わらせるわい」

「で、どんな感じにできた?」

 俺の急かしにドワーフはやれやれ、といった様子で頼んでいた品を取りだした。

 

ギラリと光り、重い刃を持つ刃渡り50センチはあるククリナイフや、鈍い色をした矢じりとそれを飛ばすためのボウガンが複数。そして俺が特に念入りに説明をして注文した品がーーー

「そうそう、これだよこれこれ!」

 見た目はそのまんまM1911、コルト・ガバメントという拳銃がドンと俺の目の前に置かれていた。

「さて、これを作るのに一等苦労したんじゃが……その分傑作といってもよいな。使い方はーーーまあ、多少特殊じゃがお主ら人間が使っているそれとほとんど変わらんじゃろ。試しに、何か魔法を唱えてみるといい」

 そう言われて俺は、とりあえずザンを唱えようとすると……なんだ?銃に力が吸われたような感覚がするぞ。

「詠唱したか。さあ、このスイカを撃ってみるのじゃ」

 そう言うとドワーフはどこからともなく人の頭くらいの大きさのスイカを取り出すと部屋の端に置いた。まあ、この程度の距離ならちょっとアメリカで鳴らした程度の俺でも当てるのは簡単だ。

 

  狙いを定めて引き鉄を絞る。するとバスンッ! という音がしたかと思うと、スイカが爆発して破片が部屋中に飛び散らかった。

「ああああっ! ドワーフテメェ、こうなると分かってて俺にやらせたな!?」

「ほっほっほ。スイカが良い具合に割れておる。……うむ、美味い」

 美味いじゃねーよ、色ボケジジイめ。これの後始末がどれだけ大変だと思ってるんだ。

 そう思いながら俺は割れたスイカでも手ごろな大きさに割れたのを掴んで頬張る。うん、みずみずしいうえに甘みがしっかりとしてて水っぽくなくて美味しい。

 

「んぐっ……うん。美味かった。で、つまりこれザン一回唱えると一発撃てるってことか」

「うむ……んんん。いや、どうしてなかなか美味いのう。魔法は8回ストックすることができるぞい」

 なるほど、8回まで魔法をストックできるのか。魔法を一々唱えずに撃てるし、見たところ普通にザンを唱えた場合よりもずっと速い。

 

「いやしかしのう……わざわざ魔法を銃で撃つなぞ面倒なだけの気がするがのう。儂としてはただの銃の方が作るのが楽じゃったが」

 シャクシャクとドワーフがスイカを頬張りながら言うが、そりゃ銃作ってもらった方がイイんだけどな?

 

「何言ってんだ、銃弾なんて作ってもらうのも買うのも面倒だし、何より魔法を操りながら動き回るのなんて難しいったらありゃしないわ」

 姫島先輩の時に見せた発火とかならともかく、氷のつぶてを衝撃波に載せて飛ばすことなんて魔法を操作することに全部の注意を注ぐから走ることもままならないんだぞ?

 俺が必死に魔法の練習をして刀にザンとかジオとかを纏わせるようにしたのだって少しでも魔法を飛んだり走ったりしながら使えるようにするためだったんだし。

 

「それで、こっちの刀とボウガンは特に細かい注文はしてないわけだが……どうなんだ?」

 ふむ、とドワーフはボウガンを手に取るとエヘンと胸を張ってドヤ顔をしながら説明し出す。

「うむ……このボウガンはな。なんと!」

「なんと?」

「水筒になるんじゃ」

「水筒」

「矢も特別性で水筒代わりになる」

「矢も」

 

 ほうほう、ライフラインに関わる重要な水をわざわざ水筒に入れて携帯することもせずに済んで無駄な荷物を省けるとは、それはなんて―――

 

「―――なんて無駄な機能の付いたボウガンなんだよこれ」

「儂の傑作に文句を付けるか青二才」

 ドワーフがブチ切れて啖呵を切ってきやがったが、むしろ何でこんな機能を付けたのか問い詰めてやりたい。

 

「うるせえ、こんなもん付けるくらいだったら狙ったら絶対外れないボウガンとか作ってみろよオラァ!」

「あんな機能ミョルニールでもう飽きたわ!」

 飽きたとかお前、クライアントのニーズに合ってそうなモノよりもクリエーターとしてのあくなき探究を重視するなんて信じらんねえよこのエロジジイ! 

 

「だったらせめてマシな連射機能とか付けてみやがれ! 実用性を考えろ!」

「そんな考えでは凡作しか生まれんわい!」

「トンデモビックリ無能兵器よりはそれでも何ぼかマシだっての!」

 そんなことを言い合いながら無駄に時間を俺たちは費やしていくのであった……

 

 

 

                    ※

 

 

 

「―――つまり、奇抜な見た目で威圧をしつつも使い捨てで、回収されて対策される心配の少ない、パンジャンドラムが一番実用性があるってことでいいか?」

「うむ、まあ妥当なチョイスじゃろ」

 白熱した議論の結果、なんとかお互いの融通の利く所まで持っていくことができた。いやあ、久しぶりに中身のある良い討論だった。

 まあ、夢中になりすぎてて何でこんなことになったのかを全然覚えてないんだけれど、終わり良ければなんとやらだ。

 

 気が付けば、夜もどっぷりと暮れて来ている。俺は適当にささっと胃袋に軽く詰め込み、必要な装備を持てるだけ持って学校に行くと、先輩たちは既にスタンバイしていた。

 リアス先輩は自分が一番リラックスできる恰好でと言っていたが、俺は身動きがしやすいようにとアメリカで使った軍服に着替えておいた。なので制服姿の先輩達と違って、結構浮足立ってるような気がしてならないな……。

 

「ケースケ、お前気合入ってるなあ」

 イッセー先輩が俺の姿を見て、少し感心したようにそう話しかけてきた。

「いやー……リラックスできる恰好でと言われましてもねえ? 制服だと動きづらいんで一番動きやすい服を選んだらこうなりました」

 むしろ先輩達が制服で戦えるあたり身体能力が違うなあ、と思う。特に一番上の制服なんて邪魔くさくて俺ならすぐに脱ぐ自信があるもんな……。

 

 ちなみに他の先輩達の様子―――木場先輩は小脇に剣を携えてたり、アーシア先輩はシスターの恰好をしている。小猫さんは指開きのグローブを手に嵌め、準備は割と万全の模様。

 リアス先輩や姫島先輩はいつも通りの恰好でくつろいでいる。随分どっしりと構えているようだ。流石は部長と副部長といった感じの貫録だなあ。

 

 刻々と時間は過ぎて行き、もうそろそろ12時だ。試合も12時からのはずなんだが……何の知らせもないぞ?

 俺がそう思っていると、魔方陣が光り輝いた。そしてそこにはメイド姿で銀色の髪をした女の人が立っている。

「皆さん、準備は済みましたか? 時間になりましたら魔方陣から戦闘用のフィールドへと転送します」

 そう言いながらメイドさんが全員を見回していると、俺と目が合った。そしてそのままメイドさんがつかつかと俺の方に歩み寄ってくる。

 

 なんだなんだ……? もしかして、俺は部外者だから参加できませんとかそういう事言われるんじゃないよな?

 そんなことを考えながら少しドキドキしていると、メイドさんが恭しく頭を下げる。

「お初にお目にかかります。私の名はグレイフィア、グレモリー家に仕える者です。以後、お見知り置きを」

「ご丁寧にどうも……。若葉啓介です」

 グレイフィアさんの丁寧な自己紹介につられて俺も頭を下げて返した。自己紹介が済むと、グレイフィアさんが何やらお札のような―――というか魔方陣が描かれた紙を差し出してきた。

「これを身に着けて魔方陣の中に入ると転送されます。なお、ダメージを受けリタイヤした場合の転送の際にも使用しますので、処分なさらぬようお願いします」

「はあ……」

 テキパキと説明するグレイフィアの話を聞き、とりあえず紙を懐に入れておく。裏の胸ポケットに入れておいたら間違っても落としたり処分したりはしないだろう。

 

「なお、今回の戦闘フィールドは使い捨ての空間を使用しておりますので、存分に力を開放してくださって構いません」

 うん? というと、確かええと……レーティング・ゲームだったっけか―――には、何らかの力の制限が課される場合があるのか? だとすれば奥が随分と深そうだ。

 

「部長、そういや前々から気になってたんですけど……。部長には『僧侶』が一人いるって聞いたんですけど、その人は参加は……?」

 イッセー先輩がそう口にすると、リアス先輩達の表情が一変した。先輩達の表情は曇っていて、何やらのっぴきならない事情があるようだ。

 

「彼は……参加できないわ。いつか、彼の事は話さないといけないわね」

 リアス先輩がそう重々しく呟いた。うーむ……過去に重傷を負って動くのすら難しいとか、そういうことなんだろうか。いずれにせよ、参加はできないという事は、ただでさえ頭数の少ない俺達にとっては手痛いな。

 

 そんな少し曇りがちな雰囲気の中、グレイフィアさんが口を開いた。

「今回のゲームは、両家の方のみならず、魔王様もご覧になります。それをお忘れのないよう」

 へえ、ていうことは外部からも観戦できるようになっているのかー。それに魔王様って……ああ、えーとリアス先輩のお兄さんが魔王やってるんだっけ? アザゼルさんから聞いてたけどすっかり忘れてた。

 

「ま、魔王様が!? 」

 イッセー先輩が驚いてるけれど、それもそうだよな。リアス先輩のお兄さんが魔王やってるって知らなかったらこういう反応にもなるんだろうな……。

「イッセー君、部長のお兄様は魔王様だよ」

 木場先輩がそうイッセー先輩に教えたが、部長のお兄様は魔王様ってなんかライトノベルのタイトルでありそうだよな。なんかゴロも悪くないし。

 

「ええええっ!? 部長のお兄さんって魔王様!?」

 おお、驚いてる驚いてる。アーシア先輩も一緒に驚いてるなあ、イッセー先輩の声の大きさに驚いただけかもしれないけど。

「先の大戦の結果、魔王様がお亡くなりになったから部長のお兄様がなられたんだよ。悪魔は三大勢力の中じゃ一番劣勢だけれど、それを今の魔王様達のおかげでなんとか保っていられるんだ」

 ほおー、アザゼルさんも同じようなことを薄ぼんやりとぼやいてた気がするなあ。まあ、自分が一番ヤバいと自覚してるなら安心できるね。

 

「まあともかく、そういった事情があったから部長のお兄様はグレモリーから代々魔王に受け継がれる名前に変えてサーゼクス・ルシファーと名乗っているんだよ」

「ん? ああ、だからリアス先輩が家を継ぐ云々という話になってくるんですか」

 事情がやっと呑み込めたぞ。先輩のお兄さんが魔王やってる限り家を継ぐことはできなくて、結果妹であるリアス先輩が家を継ぐわけだ。

 

「皆様、そろそろお時間です。こちらへ」

 グレイフィアさんの誘導に従って魔方陣へと移る。何気に魔方陣での異動は初めてなので、少しワクワクするぞ。今まで転送されたのはアザゼルさんの怪しいマシンと自分の魔法くらいなもんだしな。

 

 魔方陣が光ると、何やら不思議な紋章のようなもの―――多分、紙に描かれたれたのと同じだと思う―――が

足元に描かれている。おお、なんかいかにもそれっぽくていいな。

 そのまま視界が白い光で埋め尽くされていく。思わず目をつぶってしまいそうになるが、すぐにその光は消えた。

 

 光が消えた後に広がっている光景は、はたまた関ヶ原や大草原のような場所―――ではなかった。オカ研の部室だ。さっきまでの光景とミリ単位も変わってないが……失敗したのか?

 不思議に思い先輩達の様子を見てみると、イッセー先輩とアーシア先輩も同じように不思議そうにあたりを見回している。他の先輩達や小猫さんは平然としていた。

 

 そして気づけばグレイフィアさんはいつの間にかいなくなっている。ええと、これはどういうことだろう? グレイフィアさんだけが転送した? いやいや、一人だけ転送とかどうやったらそんな器用なことができるんだよ。そうそう、こういう時は発想の逆転をしよう。グレイフィアさんだけが転送されたのではないなら、その逆……ってことは、まさか?

 

『皆様、この度グレモリー家とフェニックス家のレーティング・ゲームの審判役を担う事となりました、グレモリー家メイドのグレイフィアです』

 あ、グレイフィアさんだ。校内放送を使っているという事は放送室に今いるのか……。んで、ここでゲームの審判が宣言を行うってことはつまり?

 

『我が主、サーゼクス・ルシファーの名の元に御両家の戦いを見守らせていただきます。なお、今回のフィールドにつきましては双方の意見を参考に駒王学園を模倣したフィールドをご用意いたしました。』

 ほうほう、やっぱりうちの学校がモデル、というかそのまんま作り出したのか……いやはや、驚きだ。もしかしていつも飲んでる紅茶の茶葉とか、俺の置き勉してる教科書とかもあるのか? まあ、そんなわけはないか。

 イッセー先輩もアーシア先輩も驚いている。部室を見たり外の風景を見たり―――うん? 空が白いぞ。異空間だから空が白いのか。

 

『リアス様がいらっしゃられる、旧校舎オカルト研究部部室がリアス様の本陣になります。ライザー様は現在ライザー様がいらっしゃられる、新校舎生徒会室がライザー様の本陣となられますので、ご留意くださいませ。なお、プロモーションを行うには本陣周辺まで移動が必要となりますので、宜しくお願いいたします』

 えーと、チェスのルールだと一旦女王とかに成ると、そのまま成りっぱなしだから本陣周辺は絶対死守ということか。そう考えるとますます俺達の数の少なさが痛いなあ……。

 少なくとも、最優先の目標はポーンでいいのかな? そういう所もリアス先輩から後で聞いておかないとな。

 

『それでは、ゲームを開始いたします。制限時間は現時刻から人間界で朝日が昇るまでとなります』

 グレイフィアさんがそう言うと、学校のチャイムが鳴りだした。キーンコーンカーンコーン、という音が開始の合図といったところだな。

 

「さて、それじゃあ朱乃。あれを」

 リアス先輩が姫島先輩にバーとかで”いつものを”と注文するみたいに言うと、姫島先輩は何かを出してきた。

「はい。皆さんこれを」

 見たところ、小型のイヤホンマイクだ。これで連絡を取るってことか……。まあ、学校内くらいだったらどこでも会話はできるだろうな、これなら。

 

「これを使って味方同士でやりとりをするのよ」

 リアス先輩がそう言いながら耳に装着する。俺も先輩達も同じように耳につけた。

「あ、あ、あー……ケースケ、聞こえてるか?」

「ああ、聞こえます聞こえます。先輩のデカい声が目の前から」

 いくらなんだってそんな大きな声出さなくてもちゃんと音は拾ってくれるだろうに。

 

 そんなやりとりをイッセー先輩としていると、リアス先輩達が地図を広げて何やら戦略会議をしているようだ。

「私達の本陣近くに森があるけれど、これは私たちの領土―――安全地帯と言ってもいいわね。そして新校舎全体は相手の領土。イッセーにはこの新校舎に行ってもらうわ。ついては新校舎までのルートなんだけれど……」

 リアス先輩がそう言いながら難しい顔をしている。

 それもそうだ、何せウチは数が少ない。俺達は絶対本陣を死守しなければいけないから、ただでさえ少ない人数が更に割り当てられると、とんでもない少数精鋭になってしまう。

 

「んー……校庭は見晴らしが良すぎますねえ。だから相手も逆に攻めてこないとは思いませんけど、どうしましょう。新校舎に行く道って校庭以外だと結構限られますよね……」

 運動場に体育館、色々と新校舎に行くルートはあるけれど、どうすればいいんだろうな……。この場合の最善の手段が分からない。

 

 うーん、と先輩達と一緒に俺も悩んでいると、ここでイッセー先輩が手を挙げた。

「裏の運動場を使うってのは駄目ですか?」

「ええ、恐らく運動場に来ることは相手も当然予想してくるでしょうね。それに中々広いから……機動性のある、ナイトが待ち受けている可能性があるわ」

ならやっぱり、もしも運動場を攻めるなら同じナイトである木場先輩をぶつけるのかな? もし行くとしたら俺も運動場の頭数に入ってそうだな……。一応練習では、ある程度木場先輩の動きにも対応できたし、ナイトにある程度太刀打ちができる自信はあるぞ。

 

「部長、体育館を先に占領するのはどうでしょうか。ここは旧校舎の方が近いですし、新校舎への道にもうってつけですし、けん制にもなります」

「ええ、ここならうってつけね。恐らくナイトよりもルークが来そうだから……その対策もしておく必要があるわね」

 木場先輩の意見にリアス先輩も頷く。どうやら主戦場は体育館ということになりそうだな……体育館を守りながら、運動場の隙を伺うという感じかな?

 

「それじゃ……祐斗と小猫は、森にトラップを仕掛けてきて頂戴。地図を持って行って、仕掛けた場所を記すようにね。後でコピーを皆に渡すから」

「あっ、それじゃ俺も少し仕掛けたいものがあるんでいいですか?」

 俺はそう言いながらボウガンをぶら下げてみせる。5つあるうち一つは俺が使うとして、後の4つを罠に使うことになるな。

 

「ええ、いいわよ。貴方の分もきちんとマークしておいて頂戴」

 リアス先輩のお許しが出たので、俺は姫島先輩から地図を貰って小猫さんや木場先輩と一緒に部室を出る。

 森に入ると、簡単な空き缶と釣り糸を使った警報器なんかを仕掛ける。これは新校舎側の方向に重点的に置いておくことにしよう。

 あとはボウガンの罠なんだけれども……やっぱり4つじゃ数が少なすぎるよな……どう設置したものか。

 

「ケースケさん、こっちの設置は終わりました」

 そう言いながら小猫さんがこっちにやってきた。

「ん、ええと……とりあえず俺もこことこことここ……あとここに仕掛けておいたから」

 小猫さんに罠の場所を教えながら、俺はどうするか考えていた。どこに置けば効果的に使えるんだろうか……。先輩達の罠の近くで連鎖的に引っかかるのを期待するとか?

 ふと小猫さんを見てみると、いつもの黒猫の髪飾りが魚を咥えた黒猫とちょっと変わった感じになっているのに気付いた。

 

「ん、小猫さんいつもと違う髪飾り? 魚を咥えてるね」

「はい。今日は試合の日なのでいつもとは違うものにしてみました」

 そうかー、髪飾り変えたのか。魚を咥えた―――魚?

 

「あっ、魚か。魚捕りだな」

「…………?」

 不思議そうな顔をしている横目に、俺はウキウキと罠を仕掛けた。そうそう、これならいけるぞ!

 

 

 

                     ※

 

 

 

 罠を仕掛け終えた俺達が部室に戻ると、イッセー先輩がなんかリアス先輩に膝枕をしてもらっていた。なんというか、自分から望んで行っておいてあれだけど、後輩二人と同級生が頑張って罠仕掛けてる間に何やってるんだろうねホント。

 まあ、そんなことをイッセー先輩に言っても仕方ない。割とリアス先輩が甘やかしてる節があるっていうのは俺も重々承知してるしな。

 

「さあ、全員そろったわね。地図は持ったかしら? イッセーと小猫は体育館を。祐斗と若葉君は私の指示通りにお願い。アーシアは私と一緒に待機。朱乃は頃合いを見計らって動いてもらうわ」

 リアス先輩の言う事を俺は先輩達と頷きながら聞き入る。俺と木場先輩は遊撃隊ってところか……。期待に応えるように頑張らないとな!

 

「フェニックス家の才児と言われるライザー・フェニックス。相手にとって不足はないわ、消し飛ばしてやりましょう!」

『はいっ!』

 声をそろえ、気持ちを一つにしてリアス先輩の呼びかけに答える。

 目指すはただ一つ、勝利のみ。やってやるさ!

 

 

 

 




さあて、いよいよ始まりますよ、ライザー戦。
しかしどうも話の数が1巻の時よりも圧倒的に少なく終わってしまいそうですね……。
それだけ1巻の時は話が進まなかったということなんでしょうかね。


次回はなるたけ早く完成させたいですね。2か月以内に投稿したいです。
それでは皆さん、また会う日まで。
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