眠すぎて自分でもやばいとわかってますが、夏の間にいっぱい書いていきますのでよろしくです!
フォレス・ガロとのギフトゲームが決まり、キキョウの予想通り黒ウサギ関連で一悶着あった。
そして、キキョウ御一行はサウザンドアイズの支店へと向かって歩いていた。
「あら?これって桜…?でも今は確か夏だったはずじゃあ…」
「いや、今はまだ初夏だし気合の入った桜なら咲いていてもおかしくないはずだが…」
「今は秋だったと思うけど」
「………」
「季節が違うのも無理はありません。御四人方は、それぞれ違う世界から召喚されているのですから」
「パラレルワールドってやつか?」
「半分正解半分不正解ですね。正確には立体交差並行世界理論というのですが、これをすべて説明するには一日二日では足りないので気になった方は個人で調べて見てください」
「…キキョウの住んでいたところは?」
何を思ったか、耀はキキョウに質問した。
「…まあ、いいか。俺は手紙をもらうまで地獄にいた」
「…えっ?」
「なっ!?」
「…へえっ、やっぱり面白いなお前」
それ以上話すつもりもないキキョウは、ゆっくりと歩き出す。
漸く見えたサウザンドアイズ支店は、店じまいを始めていた。
「まっ――」
「待った無しですお客様。当店は時間外営業はいたしておりません」
マニュアル通りの対応に黒ウサギは何か色々と喚くが、それも軽くかわされてしまう。
「閉店の五分前に客を締め出すなんて!」
「不満があるのでしたら他所へどうぞ。今後一切当店への出入りを禁じます、出禁です」
「この程度で出禁だなんて、お客様を舐めすぎなのですよ!」
「そうですね。箱庭の貴族に対して少々無下にし過ぎたかもしれません。では、店内で入店許可をいたしますのでコミュニティの名を教えていただけますか?」
店員は言いづらいことを聞き、黒ウサギは口ごもる。だが、問題児である十六夜には関係なかった。
「ノーネームだ」
「では、何処のノーネームでしょうか?」
つまりは名の代わりに旗を提示しろ、という事らしい。
「わ、私たちに旗はありませ――」
「いやっほぉぉぉ! ひっさしぶりじゃのぉぉぉおお黒ウサギぃぃぃ‼」
シリアスな雰囲気を吹き飛ばすように、少女が黒ウサギに飛びつく。が、勢いはまだ残っており、黒ウサギ共々川へと落ちていった。
「おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺バージョンで是非」
「ありません」
「なんなら有料でも」
「やりません」
十六夜を除く他の二人は呆気にとられ、十六夜はマイペースに店員に話し掛けていた。
「し、白夜叉様!? どうして貴女がこんな下層に!?」
「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろに! フフ、フホホフホホ! やっぱりウサギは触り心地が違うのう! ほれ、ここが良いかここが良いか!」
どうやらこの白夜叉という少女は偉い人らしいが、中身は正直おっさんだった。
「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」
黒ウサギは白夜叉を無理やり引き剥がし店へ向かって投げつけた。それを十六夜は足で受け止めた。
「てい」
「ゴバァ!おんし、飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとは何様だ!」
「逆廻十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」
どこまでも問題児な十六夜は、此処に来てもその姿勢を崩さなかった。
(だが、所詮は粋がっているだけのガキ。其れが何時までもつか)
「貴女はこの店の人?」
「おお、そうだとも。この"サウザンドアイズ"の幹部様で白夜叉さまだよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」
「オーナー。それでは売り上げが伸びません。ボスが怒ります」
白夜叉はキキョウたちをじっくり見て、何かを考えるような素振りをし、言った。
「ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たと言うことは……ついに黒ウサギが私のペットに」
「なりません!どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」
「まあいい。話なら店内で聞こう」
「よろしいのですか?”ノーネーム”は規則では」
「”ノーネーム”と分かっていながら名を尋ねた店員に対する侘びだ。いいから入れてやれ。生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」
これには店員もムッとした様子だ、彼女も、店の決まりを守った上での対応だったのだから仕方ない。
「……どうぞ、お入りください」
******
通された部屋は香のようなものが焚いてあり、和を好みながらも地獄では無縁だったため、壁に飾ってある刀や掛け軸などがより一層、キキョウは気に入った。
「ほう…とてもいい部屋だ」
思わず呟かれたその言葉に、白夜叉は目を見開く。
「おんしには分かるのか!」
「きゅ、急にどうされましたか!?」
「す、すまぬ。コホン、ではもう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の外門、三三四五外門に本拠を構える"サウザンドアイズ"幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」
「はいはい、お世話になっております本当に」
投げやりな黒ウサギを気にもせず、白夜叉はキキョウの方をじっと見続けている。
その隣で耀が小首を傾げて問う。
「その外門、って何?」
「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心に近く、同時に強力な力を持つ者達が住んでいるのです。箱庭の都市は上層から下層まで七つの支配層に分かれており、それに伴ってそれぞれを区切る門には数字が与えられています。ちなみに、白夜叉様がおっしゃった三三四五外門などの四桁の外門ともなれば、名のある修羅神仏が割拠する人外魔境と言っても過言ではありません」
「おんしも、恩人に対して言うな」
「…まるで玉ねぎみたい」
「俺はバウムクーヘンだと思うな」
「そうね、バウムクーヘンね」
「………」
「ふふ、うまいこと例えるが、私はバームクーヘンに一票だ。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番皮の薄い部分にあたるな。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は“世界の果て”と向かい合う場所になる。あそこはコミュニティに属してはいないものの、強力なギフトを持ったもの達が住んでおるぞ―――その水樹の持ち主などな」
白夜叉は薄く笑って黒ウサギの持つ水樹の苗に視線を向ける。白夜叉が指すのはトリトニスの滝を棲みかにしていた、十六夜が素手で叩きのめした蛇神のことだろう。
「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」
「知り合いも何も、あれに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」
小さな胸を張り、カカと豪快に笑う白夜叉。
「あの蛇に神格を与えたってことは、オマエはあの蛇より強いのか?」
「ふふん、当然だ。私は東側の"階層支配者"フロアマスターだぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者だからの」
最強の主催者、というセリフに反応する問題児たち。
「そう……それなら貴方を倒せば私達が東側最強となるのかしら?」
「そういうことになるのぉ」
「へぇ、そりゃいいな。手っ取り早くて助かるぜ」
目をギラリと光らせる十六夜。
「いやぁ、抜け目のない童達じゃ。依頼しにきたにもかかわらず、私を倒すとはな」
「な、何を言っているのですか⁉ 白夜叉様もやめてください!」
「よいよい黒ウサギ、私は常に挑戦者に飢えておる」
止めにはいる黒ウサギを手をあげて制する白夜叉。
「よし、それじゃあ初めようぜ最強の主催者様」
「慌てるでない。やる前にお前達に一つ聞かねばならんからのぉ」
そこで白夜叉は言葉を切り、ゾッとするほど凄絶な笑みを浮かべながら言った。
「お前達が望むのは試練への『挑戦』か? ――それとも対等な『決闘』か?」
その瞬間、一同の世界は暗転した。
*******
太陽が水平に回る世界。周りを山脈に囲まれたこの世界は、さながら北の国であった。
「今一度名乗りなおし、問おうかの。私は"白き夜の魔王"――――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への挑戦か? それとも対等な決闘か?」
――試されてやると、十六夜のその口調からは全く屈服した態度が見受けられない。今はその時ではないということだろう。他二人も苦虫を噛み潰した顔で悔しげに降参した。
「そうか。して、おんしはどうする?」
自然とみんなの視線はキキョウに集まる。キキョウの答えは――
「――悪いが、俺は負けず嫌いなんでな。俺は決闘を選ぶぞ」
「キ、キキョウさん!?」
「良いじゃろう。じゃが、先に試練を済ましてしまうので待っててくれ」
「もう! みなさんいい加減にしてください! 階層支配者に喧嘩を売る新人に、新人の売った喧嘩を買う階層支配者なんてありえないのですよ! それに白夜叉様が魔王だったのは何千年も前ではありませんか!」
「つまり、元魔王様ってこと?」
「どうかのぉ? ……よし、それでは試練を始めようかの。お主達にはあれの相手をしてもらう!」
白夜叉が指した方に視線を向けると、何かが近づいてくるのが見えた。
「「なにあれ……?」」
「グリフォン⁉」
「箱庭にはグリフォンもいるのか」
四人が反応を示すと、グリフォンは白夜叉の元へ舞い降り深く頭を下げ礼を示した。
「こやつこそ鳥の王にして獣の王。『力』『知恵』『勇気』のすべてを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」
ここで白夜叉は一度四人を見回し、少し考えて話しだした。
「肝心の試練なのじゃが。グリフォンの背にまたがり湖畔を一周するということにしようかの」
すると虚空から
「では、だれが挑む?」
「私、私がやる」
そう言ったのは耀。おとなしい彼女にしては積極的な発言だ。
「大丈夫ですか耀さん」
「大丈夫、問題ない」
心配そうな黒ウサギにそう答え、前を向く。他の三人も今回は譲るようだ。三者三様の言葉をかけて送り出す。
「決まりじゃな」
プレイヤーは耀に決まった。耀はグリフォンの元へ歩いていく。
そして、翼から鋭い爪まで観察し終えた耀は慎重にグリフォンと言葉を交わし始めた。
*******
結果だけを言えば春日部耀は見事グリフォンに認められ、湖畔を舞うことに成功した。一度グリフォンに振り落とされたのを見て冷や汗をかいたが、彼女はそのまま下に落下せず、風を纏って空に浮くことでゲームを続行。そしてその勇気をグリフォンは認めたのだ。
「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの。………ところで、おんしの持つギフトだが。それは先天性か?」
「違う。父さんに貰った木彫りのおかげで話せるようになった」
「木彫り?」
耀は頷きながら丸い木彫りのペンダントを取り出し、白夜叉に渡す。白夜叉は渡された手の平大の木彫りを見つめて、急に顔を顰めた。
興味無さげにペンダントを覗き込む。形状は中心の空白を目指して幾何学線が延びるというもの。
「材質は楠の神木……? 神格は残っていないようですが……この中心を目指す幾何学線……そして中心に円状の空白……もしかしてお父様の知り合いには生物学者がおられるのでは?」
「うん。私の母さんがそうだった」
「生物学者ってことは、やっぱりこの図形は系統樹を表しているのか白夜叉?」
「おそらくの……ならこの図形はこうで……この円形が収束するのは……いや、これは……これは、凄い! 本当に凄いぞ娘!! 本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ! まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは! これは正真正銘"生命の目録"ゲノム・ツリーと称して過言ない名品だ!」
「……いい加減に始めないか?」
「…そうじゃの。ほれ」
再度
『――ギフトゲーム名“魔王への挑戦”――
・プレイヤー一覧
白夜叉
うちはキキョウ
・ホストマスター側 勝利条件
全プレイヤーを打倒
・参加者側 勝利条件
ホストマスターを打倒
「し、白夜叉様!?これは……」
「言っておくが、手加減はできんぞ?」
キキョウは目を閉じ、黒ウサギ達から離れる。
「…俺も一つ言っておこう。手加減などしたら……死ぬぞ? 火遁、豪火球の術」
キキョウは即座に印を結び、口から等身大以上の火の玉を吐く。
「ぬうっ!」
左手に持った扇子で豪火球と拮抗する。
「まだまだいくぞ…火遁、豪龍火の術」
キキョウの口から豪火球サイズの龍の形をした火の玉が幾つも放たれる。
「…風遁、大突破」
火と風。それをほぼ同時に放ち、大きな火の竜巻を作るが、一瞬の内に消えてしまう。
「危ないのう。じゃが、この私に火で挑むとはのう」
「お喋りしている暇はないぞ。火遁、火龍炎弾」
口から再度火を吹き、それはまるで意志を持っているかのように白夜叉の小さな体を飲み込む。
「私に火は無駄だと言うておろうが」
火龍炎弾を消し飛ばしニヤリと笑う白夜叉。
(やはりまったく効いていないか。だが……あいつは今油断している)
(…む?なんだあやつの目は…)
白夜叉はキキョウの紅くなった眼をまじまじと見た。サウザンドアイズの幹部だからか、不思議な眼には興味があるようだ。
キキョウは動くのをやめ、もう終わりとばかりに黒ウサギ達の方へと歩いて行った。