…今回もか
朝になり、見張りとして感知能力をフルにして一晩過ごしたキキョウに、少し疲れが見えていた。
「……お父さん?」
寝惚けていたのか、キキョウを父親と勘違いしたのか、ヒナはキキョウをそう呼んだ。
「ふっ…お父さんか」
満更でもなさそうな感じでヒナを抱き寄せる。
「……起きたか、ユイ」
「はい。俺なりの結論を用意しました」
「じゃあ…その答えを聞かせてもらおうか」
「はい…」
ユイは勢いよく土下座をする。
「俺を弟子にしてくださいっ!!」
「ああ」
「ってええっ!?軽すぎでしょう!」
「当り前だろう、元々俺から誘ったんだ。それにちょうどヒナも起きたようだしな」
「…お父さん?」
「ってヒナ、お父さんじゃあ無いっての。キキョウさんは俺の師匠だよ」
「いやっ、お父さんがいいですっ!」
昨日の冷めた態度が嘘のように、駄々っ子だった。もしかするとこれが本音なのかもしれない。
「お父さんでいいぞ。此れからは一緒に暮らすからな、楽な呼び方でいい」
ヒナを抱えて立ち上がる。ずっと座っていたからか身体が重く感じる。
「じゃあいくか……歩けるか、ヒナ?」
「はいっ!」
長い黒髪を揺らせて元気良く頷くヒナ。
(まったく……結婚もしていないのに二児の父になってしまった。だがまぁ……悪い気はしないな)
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結局、キキョウたちがノーネームの拠点に戻ってきたのは正午を過ぎたころになってしまった。
「よし、手土産を持ったことだし問題ないだろう。それより……」
キキョウは、右手に持ったギフトゲームの商品である大量の食材を見て一安心するが、背中に負ぶっているヒナに声をかける。
「ヒナー? そろそろ下りないか? お父さんは疲れたぞ」
「ええー、お父さんいいでしょ?」
「……仕方ない。ユイ、これを持っててくれ」
キキョウはヒナを下ろすことを断念して、せめてもと右手の食材をユイへと渡す。
「……師匠、ヒナに甘すぎでしょ。まあ持つけど」
「お、見えてきたぞ。あれがノーネームの拠点だ」
徐々に見えてきた巨大な建造物に、ユイとヒナは思わず口をポカーンと開く。
「「…お父さん(師匠)、ノーネームじゃないの(じゃなかったっけ)?」」
「そうだぞ? れっきとした名無しだ。ただ昔はここら一帯を仕切っていたそうだが」
少し速足で進む三人は、あっという間に本拠の広間までやってきた。
「あら? キキョウさん、戻ってきてたのね? その子たちはどうしたの?」
「久遠、ジンはどうした?こいつらを紹介したいんだが…」
「ジン君なら怪我をした春日部さんの治療をしているわ」
「……貴様らはあの程度の猫ごときに負傷したのか……まさか負けたわけじゃあるまいな?」
少しばかり殺気を出して問う。キキョウは殺気すらもコントロールし、後ろにいる二人には絶対に届かないようにして、飛鳥だけを狙い打った。
「も…もちろんよ」
「そうか…ああ飛鳥、もう一つだけ。……その服、お前に似合っているぞ」
それだけ言って二人を連れて自分の割り当てられた部屋へ行くキキョウ。
後には、顔をドレスと同じように真っ赤にして呆然とする飛鳥だけが残った。
「なによもうっ……格好良すぎよ」
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