拙い文ではございますが、何卒お願いいたします。
プロローグ
深淵歩きアルトリウス
『ダークソウル』というゲームの、ラスボスに仕える四騎士の一人。本編では名前しかでない彼だが、DLCにてその姿を拝んだとき、身震いした。あの剣の使い方、狂戦士を思わせる雄叫び。
なんてかっこよさなんだ。
それからアルトリウスにどはまり。彼の装備一式でゲームをプレイし、対人でも彼の剣と大盾で戦った。ああ、あのジャンピング回転切りを当てたときは思わず歓喜していた。俺のゲーム人生に一辺の悔いなし……。
そしてとある日、友人にたまたま誘われてプレイすることになったオンラインゲーム……DMMO-RPG『ユグドラシル』。ファンタジー系であり、その自由度から注目を浴びたゲーム。個人的にはダークソウル一筋だったためあんまり乗り気ではなかったが、友人の誘いということでやることに。やはり影響されてか作ったキャラも、異形種を選び大剣メインの剣士キャラ、名前も『アルトリウス』としプレイすることに。
ながら作業で遊んでいた俺に、このゲームに熱が入る出来事が訪れた。なんと、ユグドラシルとダークソウルがコラボ、アルトリウスを完全再現できる装備データが課金アイテムとして現れたのだ。これは手にいれるしかない。注ぎ込み注ぎ込み、幾ら使ったであろう、最早覚えていない。ようやく手にいれたアルトリウスの防具……喜びに染まっていたがまだ終わりではない、次は武器だ。
所謂コラボダンジョンというものがあり、俺はそこへ潜り込んだ。しかし俺を待っていたのは地獄であった。始めたばかりということもあり、武器の素材が手にはいる階層は到底たどり着けるはずもない。そしてなによりも恐ろしいのは……
PK《プレイヤーキラー》だ。
ダークソウルにも対人はあったが、それとはまた別物で十人に囲まれてリンチを受けるなんてザラだし、ユグドラシルでは異形種はPKしてもPKとして見なさないというし、異形種狩りをメインにプレイしているという話も聞く。友人が人間種にしとけよと言われたのをその時ふと思い出した。
だが、ダークソウルで鍛えられた折れない心、そう簡単には諦めやしない。この程度、七周目を迎えた四人の公王に比べれば屁でもない。
それから何度も何度もダンジョンへ、PKへと挑戦した。そんなある日だ。初めて……初めてユグドラシルで仲間が出来たのだ。
※
『ナザリック大地下墳墓』というダンジョンがある。そこ史上最悪と比喩されるほどの難解ダンジョンであり、同時にユグドラシルトップクラスのギルド……『アインズ・ウール・ゴウン』の根城だ。
そんなナザリック第9階層にて、巨大な円卓に41人分の豪華な椅子。そこにポツンと座っている黒の豪華なフードを羽織った骸骨が居る。
彼こそがこのナザリック大地下墳墓の主、アインズ・ウール・ゴウンの長である『モモンガ』だ。眼窟の奥に揺らめく赤い揺らめきは、先程まで誰かが居たであろう席へと向けられる。
「今日がユグドラシルのサービス終了日ですし、せっかくですから最後まで残っていかれ……ませんか……」
掠れそうな声が室内に響き、消えていく。そう、本日は絶大な人気を誇ったユグドラシルのサービス終了日だ。モモンガはギルドメンバーを呼び掛け、最後を共に過ごさないかと、この皆で作り上げたナザリックにて最後を……と。モモンガからは軽いため息が零れた。
楽しかったあの日々、忘れられる筈もないあの日々、目尻が熱くなる思いだろう。モモンガはそれを思い出すと
「ふざけるな!!」
机を思い切り叩きつけ、血が昇った頭は直ぐに冷め我に帰る。分かっていた筈だった。アインズ・ウール・ゴウンにメンバーは全員社会人であった。それが加入条件でもあったし、皆それぞれの生活がある。仕事から帰って、疲れた身体を押してまで来てくれた人も少なくはない。寧ろ感謝しなければならないのだ。
「分かってる……けど……」
そんなとき思いもよらぬ声が
「荒れてますね、モモンガさん」
「!?」
下げていた顔を勢いよく上げると、此処に居る筈もない人物が居たのだ。
「ア、アル……さん?」
何かの動物を模しているのだろう独特な形状の兜に、灰色を基調とした鎧に群青のマント。特徴的なその防具を身に纏っており、この場所へと入ってこれるのは一人しかいない。モモンガは何度も目を疑った。だが目の前にいるのは紛れもなく……
「はい、正真正銘アルトリウスですよ」
まるで放たれた弾丸の如く、モモンガはアルさんと呼んだ彼のもとへと駆け寄る。
「本当にアルさんなんですよね!?」
「本当にアルトリウスですよ、見ての通り……それと」
突然アルトリウスが頭を下げたのだ。
「え……?えっ!?ちょっ!?」
「長らく連絡出来ずに、本当に申し訳ありませんでした。本当にどの面下げてって感じですよね」
「そんなことありません!!アルさんが連絡出来なかったのは仕方なかった……ことです……し」
手を何度も振るモモンガは止め、静かに彼の顔を見る。
「お身体の方は大丈夫なんですか?」
「ええ、無事完治。ご覧の通り、此処に来れるだけの元気はありますよ」
アルトリウスこと、洞上翔。実は三年前から音信不通になりユグドラシルにログインしていなかった。理由は一つ、病魔に犯されて入院していたからだ。モモンガもこの事はギルドメンバーの一人から教えてもらっており、彼の無事の帰還を望んだ。だが三年も連絡が来なかったため、どうなったか心配で眠れない日もあったという。今回のユグドラシル終了に従い、来るかどうかわからない彼にもモモンガはメールを送っていた。結果、こうして再会することが出来たのだ。
「そうですか……良かった……本当に良かった」
「ご心配お掛けしたようですね。それとメールを見たときは驚きましたよ、実は退院したの、今日だったんで気づくのに遅れてしまいました」
「えぇっ!?いいんですか!?此処に居て!?」
「勿論です」
すっとモモンガの横を通りすぎ、その一室に鎮座されている金のケーリュケイオンをモチーフにした杖『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』の前にたつ。ギルドに一つしか認められない、ギルド武器と呼ばれる物。それと同時に、ナザリックと同じく、皆の汗と涙の結晶とも言える物であろう。アルトリウスもこれを作るために奮闘していた。
「楽しかったですよねぇ……」
「……はい」
モモンガもアルトリウスの横に並び、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを見る。
「初めて会ったときの事覚えてますか?」
「忘れられる筈もありませんよ、アルさんがPKされかかっているときに俺とたっち・みーさんとぶくぶく茶釜さんと助けに来て」
「モモンガさんにギルドに入りませんかって誘われて、あんまりにもはっきりしないもんだから、茶釜さんに怒られて、加入することになって」
「怒られて加入ってなかなかありませんよねぇ……」
「確かに、でも……あそこで入ることを決意しなければ、俺は此処には居られませんでしたから。ほんと、感謝してるんですよ」
感謝しているのはこちらもだ。モモンガはそう言おうとしたが、アルトリウスが人差し指を立て
「もう残された時間も少ないですし、せっかくです。最後は玉座の間で終わるの待ちませんか?」
「……ですね、それじゃ」
骨ばかりの手でそのギルドの象徴を手にすると、黒いオーラが立ち込め、それはまるで苦悶する表情にも見える。まさに禍々しいの一言に尽きるだろう。するとアルトリウスはモモンガの前に膝まづく。その光景はまるで魔王と騎士のようだ。
「我が王よ……ご命令を……」
「アルさん……」
ここは彼に合わせようと
「我が忠義の騎士、アルトリウスよ付き従え」
「はっ……最後の時まで何処までも……こういうの憧れてたんですよ」
「良いですね……それじゃ行きましょうか」
先程の堅苦しい気配は消え、モモンガはアルトリウスに背を向けアルトリウスもそれに合わせて立ち上がる。二人が向かう今宵最後の時を迎える玉座の間へ……
作者はデモンズの嵐1で侵入出待ちしていたで御座る。