深淵歩きとなりて   作:深淵騎士

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今回から二巻のストーリーが始まる。それに伴い、今回は二章プロローグで少し短くなっております。ご了承ください。


第二章 つらぬく銀閃
第十六話


城壁都市エ・ランテル。そこでは一人の冒険者が少しづつ名を広めており、その冒険者は二つの通り名が付けられている。一つは『銀閃』、武器を振るっている姿から付けられたという。もう一つが身の丈程はある刀身を持つ直剣、それから繰り出される刺突は何者であろうと逃れることは出来ない。モンスターを容赦なくつらぬき殺す事から

 

『つらぬきの騎士』

 

と。そしてそのつらぬきの騎士……名はメタスという。彼の詳細はよく解っておらず、全身を銀の鎧と兜で頭から足の先まで覆い、寡黙で多くを語らない男で美女を一人引き連れているという。謎の騎士として怪しまれると共に、どんな依頼でもこなす優秀な冒険者として知られていっている。

 

そんな彼の正体は……

 

 

 

 

 

少し時は遡り───

 

 

「エ・ランテルで冒険者になる?」

 

 

執務室で腕を組んだ騎士、アルトリウスはこのナザリックの主、モモンガ改めアインズ・ウール・ゴウンを見る。

 

 

「はい、目的としてはこの世界の情報網を構築する為です。そこで冒険者として実績を積んで、クラスを上げていけば得られる情報は多いと考えたんです」

 

「成る程……確かにこの世界のついては解らない事だらけですからね」

 

 

アインズの提案は現状最適な方法かもしれない。エ・ランテルは情報を集める場所として良いとペトルス村長が言っていた事をアルトリウスは思い出す。ただ問題は一つ、誰がその冒険者になるかだ。

 

 

「んで、アインズさんは誰をその役につかせる予定で?」

 

「それ何ですよね……ナザリックの者は人間を嫌ってるのが多い傾向ですから。下手にボロが出てトラブルとかになったら計画に支障が出てしまいます。正直悩んでまして……」

 

 

ふむとアルトリウスは下を向く。すると何か思いついたように

 

 

「その役私が引き受けましょう」

 

「アルさんが?」

 

「ええ、先日の竜狩りと天使を覚えていますか?」

 

 

アインズは以前、法国の魔法詠唱者が、ニグンが召喚した天使と誇り高き槍騎士を思い出す。縦に首を振るとアルトリウスは言葉を続ける。

 

 

「恐らくこの世界にはユグドラシルのアイテム等が流れ込んできている、私達がこうして此処に居るように。もしかしたらプレイヤーも来ている可能性があります。そいつらが私達に好意的に接してくれるかはわからない……仮に戦闘になればまずナザリックNPCでは少し荷が重いかもしれません」

 

 

最早これはゲームではない、現実だ。死んでしまったら元も子も無い、NPC達はギルドメンバーの残した子供のようなものだ、死なせたくは無いという思いが彼にとって強い。

 

 

「なら俺も一緒に……」

 

「アインズさんはこのナザリックの支えであり、最後の砦みたいな存在ですよ、そんな最前線に出るような事は不味いです。それに───」

 

 

兜の奥にゆらりと紅い光が灯る。

 

 

「対人は得意ですから」

 

「……解りました、でも一人は流石にあれですからサポートとして誰か連れて行ったほうが良いですよ。そちらのほうが効率も上がるかと」

 

「まあ、確かに……連れていくなら比較的人間の姿をした者が……」

 

 

数名アルトリウスの頭の中で思い浮かべる。先にキアランが浮かんだ、だが彼女は暗殺者としての能力が非常に高く、あまり他の者に姿を見られたくないという面があり冒険者という表立った行動をするのはあまり向かない。

 

 

「オーンスタインは真面目すぎるから融通効かないし、ゴーは巨人だからアウト。モフ──じゃなくてシフは狼だし」

 

「守護者達は守るべき場所がありますからね……あ」

 

「……アインズさん、もしかして同じこと考えてます?」

 

「ええ、アルさんのサポートをある程度できて人間に近い姿をしている者……」

 

 

二人は同時に

 

 

「「プレアデス」」

 

 

第9階層に存在するメイドチーム『プレアデス』。彼女らは異形種であるがそれぞれ人間に近くデザインされた者、人間に擬態出来る者が居る。しかも戦闘もこなせるので冒険者役として適している。

 

 

「それじゃプレアデスの誰かを連れて行くということでいいですね」

 

「はい、誰を連れて行くかは直ぐに決まりましたよ」

 

「え?誰です?」

 

「そいつは───」

 

 

 

 

 

 

エ・ランテルの住居エリア、そこの大きな広場で二人の男女が歩いていた。片方は全身甲冑で、幾箇所に芸術的な彫刻が刻まれていて、兜は一本の角のような装飾、目に当たる所は横にスリットが入っている。手には長く布に巻かれた何かを持っていて異様さを引き立たせる。片方の女性はローブを着け、首を完全に覆うほどの黒いマフラーのようなもの。艶やかな黒い髪を夜会巻きにし、眼鏡をかけ知的で美しい容姿をしている。広場の人間はその二人に目を惹かれていた。

 

 

「……あの、アルトリウス様」

 

「今はメタスと呼んでほしい、様付けもしなくてもいいぞ。それでどうしたユーリ」

 

 

ユーリと呼ばれた女性は不安そうな表情で彼へと問う。

 

 

「申し訳ありません、メタスさん……本当に同伴がボク……じゃなくて私で宜しかったんでしょうか?プレアデスならば他にも……」

 

「まあ他にも居るかもしれない、だが私はプレアデスの誰か一人と言った時、真っ先にお前を連れて行きたいと思ったんだ。それが理由では駄目か?」

 

「えっと……その……選んで頂きありがとうございます」

 

 

照れからかまともにメタスと視線を合わせれない、プレアデスの副リーダー『ユリ・アルファ』こと『ユーリ』であった。

 

 

「礼をするなら此方のほうだ、お前は立場的にもこういう行動をするのは大変だろう。私の要望に答えてくれて感謝しているよ」

 

「いえ!感謝なんてボクには勿体ないです!」

 

「ボクに戻っているぞ」

 

「あ」

 

 

彼女はアインズ・ウール・ゴウンに三人しかいない女性メンバーの一人やまいこのNPCだ。やまいこはリアルで実際にボクっ娘である。その為、彼女のNPCでもあるユリにも似通った設定が込められているのだろう。

 

 

「別にボクでも構わない、寧ろそちらの方がギャップがあって可愛くて私は好印象だ」

 

「か、かわっ!?」

 

 

頭から湯気が出るのではという程ユーリは顔を赤くし、メタスの背中に隠れるように追従する。二人はとある建物の前に立つと

 

 

「確かこの建物が『冒険者組合』で合ってるな」

 

「はい、位置的にここで間違いありません」

 

「ふむ、では行くか」

 

 

直ぐに冷静さを取り戻して、キリッとした表情をしているユーリに「流石」とメタスは感服する。先にメタスが建物へと入り、それにユーリが着いて行く。

 

そして生まれるのだ、後に語られる高名な二人の冒険者が……

 

 

 




この作品のオリジナルとして、冒険者はアルトリウス、そして付き人はユリ・アルファにしました。ストーリーも原作とは違う展開になっていきますのでお楽しみに!

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