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モモンガとアルトリウス、そして広間で待機をしていたNPC『セバス・チャン』とメイドを引き連れ玉座の間へと来た二人。モモンガは玉座へ、アルトリウスは傍らに、セバスとメイドは玉座の前に膝まづく。
「結局ここまで来た人、一人もいませんでしたね」
「確かに、あの大軍で来た時は少しやばいかなとは思ったのですが」
懐かしむように、玉座の入り口を見て次に視線を違うものに移す。視線の先はナザリック地下大墳墓、守護者統括のNPC『アルベド』だ。
「アルベド……か」
「セバスはたっち・みーさんが作ったキャラで、どんなのかは大体わかりますが……アルベドは……」
「見てみます?」
コンソールを開き、設定欄を開く。アルトリウスもそれを見ようと、モモンガの隣に立つ。どれどれと覗き込むとそこは文字の海であった。思わず二人は凝視する。
「ながっ!なんだこれ!」
「……思い出した、アルベド作ったのタブラさんだ」
「そういえばあの人、設定魔だったなぁ」
コンソールをスクロールしていき、ふとアルトリウスに
「そういえばアルさんの作ったNPCって……」
「ん?ああ、俺のNPCは第6階層の森林エリアに居ますよ。あれには俺の領域の守護をさせてますから」
「そういえばそうでしたね……げっ」
「どうしました……えぇ……」
アルベドの長々しい設定が終わりを迎えると、最後の一文で二人は絶句する。アルベド、こうしてみるとかなりの美人なキャラに仕上がっている。考案したタブラの本気を伺えるであろう。だが肝心な最後の文は……
「ちなみにビッチである……って」
「タブラさんらしい……」
するとモモンガはスタッフを用いて設定変更画面を出した。
「モモンガさん?」
「いえ、最後ですし変えちゃおうかなと。流石にこれはな~と思いまして」
アルトリウスはガチャリと音を立たせながら腕を組む、確かにこの設定は如何様なものかと。とりあえずとモモンガはその問題の一文を消す。あいたその空間、せっかくなので何か新たな文字を入れようかとモモンガは悩む。すると何かを思いついたようにアルトリウスはモモンガの手を取り
「アルさん?」
彼の手を取ったままのアルトリウスは文字を打ち込んでいく。
「モ、モ、ン、ガ、を、愛、し、て、い、る。……って何打ち込んでって、ああ!」
そのまま決定ボタンを押し、設定変更は完了した。抗議しようとしたモモンガであるが、まあまあと宥められる。
「最後ですし、きっとタブラさんも許してくれますって」
「そ、そうですかねぇ……」
思い出すモモンガ。アルトリウスは中々に茶目っ気のある性格で、その外見からはそぐわない発言でギルドを和ませたり、笑いを生んでいたりした。度々モモンガや他のギルドメンバーも彼のネタにされることも少なくはなかった。
そして迫る終わりの時。玉座の間にそれぞれ配置された41種類の旗。どれ一つとして同じサインは入っていない。モモンガ、たっち・みー、死獣天朱雀、餡ころもっちもち、ヘロヘロ、アルトリウス。それぞれのギルドメンバーのサインだ。それを見て懐かしさで込み上げて来る思いが二人にはある。
「あと……一分」
「終わりますか、俺達の……このナザリックが……あ」
アルトリウスはモモンガの方を向き
「このナザリックを……アインズ・ウール・ゴウンを今迄守ってくれて本当にありがとうございます。最後にあなたに会えてよかった……おかげで俺はこうして晴れやかな気持ちで終わりを迎えることができます。」
「俺も……アルさんが元気になってこうして会いに来てくれた……それだけで胸がいっぱいですよ。欲を言えば、アルさんがこうして居る事を他のメンバーに伝えられないのが悔やまれますよ」
「まあそれは仕方ないということで……」
静かに灰色の篭手に包まれた右腕をモモンガに差し出す。
「えっと……あんまり気が利いた言葉見つからないんですが……お疲れ様でした、モモンガさん」
「はい、お疲れ様でした……アルさん」
二人は固く握手を交わす。最早時間はない、これが彼等にとって最後の言葉になるであろう。
そして、ユグドラシルは終わりを迎える。様々な物語、様々な思いを乗せて。
──だが、彼等の物語は……まだ終わらない。これから『始まり』を迎えるのだ……
※
荒れ果てた神殿のような場所。そこには30人にも及ぶ武装をした一団が何かを囲んでいるように位置している。中心には背後の翼を生やした異形を守るように立つ二人、
方や深紅のマントはためかせる、剣と盾を装備した純銀の騎士。方や群青のマントを風に揺らす、身の丈程はある両刃の大剣を持つ灰色の騎士。
「アルトリウスさん、ここは俺が囮になります。その人を連れて逃げてください」
「断ります、どう考えても蹴散らして堂々と歩いた方が手っ取り早いですよ、たっち・みーさん」
アルトリウスと呼ばれた騎士は大剣を肩に置き目の前にいる雑兵共を見やる。
たっち・みーと呼ばれた騎士はギシッと鎧を鳴らし、背を預ける騎士を見やる。
「そうですね……では行きますか!」
「了解!!」
二人の騎士は駆けて行く、互いに勝利を信じて……
※
「……」
アルトリウスはサーバーが終了したと思いゆっくりと瞼を開けた。しかし目の前に広がる光景は、自分の部屋のディスプレイではなかった。一面広がる森林、自分は夢でも見ているのだろうか。いや違う、確かに自分は目が覚めている。
「どういうことだ……」
本来なら混乱するであろう、ユグドラシルは終了し本来なら自分は自室に、このような光景が目に映ることはありえないだろうと。だが彼は気味が悪いほどに冷静であった。何故かは皆目見当もつかないが。
立ち上がり周囲を確認しても木、木、木、そればかりだ。ふと彼は違和感を覚える、やけに目線が高いと。彼の実際の身長はそこまで高くない。最後に行った健康診断では167cmであった。自分の体を見ると
「これは……アバターの……まま?」
彼の姿はユグドラシルのキャラのまま、アルトリウスの姿のままであった。彼は一つの可能性を考える、もしかしたらサーバーダウンが延期になったのでは?そして自分は他のエリアに強制ジャンプされたのではないかと。
「全く、最後は綺麗に終わりたいと思ったのにこれか……モモンガさんもまだ残っているのだろうか」
フレンドリストを見て表記がオンラインとなっていればビンゴだ。早速コンソールを開こうと腕を振るが、コンソールは出ることがなかった。それどころか
「強制終了もGMコールも何一つできないだと……」
声は焦りの色が伺えるが、頭の中は変わらず冷静。しかしこの状況は明らかに異常事態、何か……何かこの状況を打破できる手はないかと。すると背後から物音が聞こえる。自分と同じ状況にあるプレイヤーではないかと振り向くと
「グオオォオオ……」
低い唸り声を上げる猿とも人間とも判別がつかない醜悪な顔、3mに及ぶ巨大な体躯。大の大人ほどあるその腕には木で作られた棍棒を持つ。まさに人食い大鬼《オーガ》という名が相応しい外見の化け物だ。しかも一体ではない、5体もの化け物が現れたのだ。
アルトリウスは身構える、今あれこれ考えている暇はない。目の前の化け物が今まさに自分にへと迫り来ようとしている。おぞましいと思えるその姿だが、別段恐怖を感じない、寧ろこいつ等は自分より格下であろうと、ならば──
「打ち倒すのみ」
右手を肩よりも後ろへと持っていくとその空間だけが歪み、剣の柄がゆっくりと出現しそれを掴み荒々しく引き抜くと全様が露になる。
深淵の大剣
アルトリウスの大剣を元に様々な希少なデータを厳選し組み込み、二つの能力を併せ持つことに成功した神器級《ゴッズ》には遠く及ばずとも非常に強力な武器として彼の最高の相棒として存在する。その青い光を灯す身の丈ほどある刀身は、見るものに美しいという思わせる他に、冷たい煌きは戦慄も覚えるだろう。
「久々の戦闘だ……」
アルトリウスは盾など不要と考え
「深淵歩きの業を見よ──」
眼前の敵へと詰め寄る、奴等をこの剣の錆にしてくれようと……
この作品の主人公、中々の厨二でございます。
最下層で初めてバジリスクを見たときの鳥肌が立ちまくるあの感覚、そして同時に思った事……フロムやらかしてくれたなと。