深淵歩きとなりて   作:深淵騎士

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ひさしぶりの更新となります、ども黄金騎士です。間違えました、深淵騎士です。

この度は皆様に謝罪をしたいと思います。勝手に更新を止め楽しみにしていただいた方々へ、本当に申し訳ありません。頃合いを見て、今後もしっかり更新をしていきますので是非読んでくださればと思います。


第二十一話

最初の火の神殿を出、アルトリウスはやや速足で通路を歩いていく。ふと気づくと、通路の端に白い人影が一つ。

 

 

「む、アルベドか」

 

 

アルトリウスは足を止めると美しい容姿の守護者統括、アルベドと視線が交わると彼女は笑みを浮かべて歩み寄ってくる。

 

 

「私に何か用か?ならば早急に頼む、今からエ・ランテルに行かねばならぬのでな」

 

「……」

 

 

アルベドは辺りを見渡し、他の誰かに見られていないかを確認すると更にアルトリウスへと迫り

 

 

「ああっ……アルトリウス様ぁ!」

 

「!?」

 

 

突然彼の身体に身を寄せてきた。頬は赤く染まり、吐息もやや荒い。アルトリウスは今の状況に混乱するが何故このようなことになったのか、当のアルベドに問うことにする。

 

 

「ど、どうした、アルベド……何かあったのか?」

 

「ようやく、ようやく二人きりに……アルトリウス様がお戻りになられたときから直ぐにでもこうしたいと思っておりました……しかし私は守護者統括を任された身、感情に流されて行動する訳には……ですがもう我慢出来ません……私の愛する御方……」

 

 

彼女の眼を見てこれはふざけている様子でも、演技をしている様子でもない。愛おしい者に対する表情と感情だと。

 

しかしアルトリウスは冷静に考える、ナザリックのNPCは基本、設定に準じたものとなっている。それはデミウルゴスや自身のNPC達を見れば解ること、ならばアルベドは本来の設定であれば最後の文『モモンガを愛している』にそって自分ではなくアインズに対して愛情を向けている筈と。

 

 

「……アルベド、もういいか?」

 

「はっ!……申し訳ありません、私ごときがアルトリウス様の時間を奪ってしまうなど……如何様なる罰でもお受けいたします」

 

 

我に帰ったアルベドは離れ彼の前に頭を下げる。

 

 

「いい、お前は生きている。一時の感情に流されるのも生きているが故だ。何故お前が私に愛情を向けているかはわからんが……二人きりになりたいのなら後に時間を作ろう」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ、では私は行く。それではな」

 

「はい、行ってらっしゃいませ、アルトリウス様」

 

 

横を通りすぎるアルトリウスにアルベドは深々と腰を曲げる。

 

 

「……アインズさんに聞いてみるか」

 

 

今は部屋にいるであろうアインズと伝言で会話を試みるアルトリウス。

 

 

『アインズさん、聞こえますか』

 

『聞こえますよ、何です?』

 

『ついさっきアルベドにめちゃ愛してる宣言されたんですけど、何かご存じで?』

 

『へ?……』

 

 

黙ってしまうアインズ。数秒沈黙が続くと

 

 

『もしかしたら……最後に設定変えたのが影響したのかも』

 

『ん?あの時はモモンガを愛しているにした筈ですよね』

 

『実は……』

 

 

 

「アルトリウス様……」

 

 

視界から遠ざかっていくアルトリウスの背中を見つめるアルベド。その表情は何処か儚げだ。

 

 

「……私のために時間を作ってくださる……くふふ」

 

 

うってかわって含みのある笑みになる。

 

 

「ご機嫌だな、アルベド」

 

 

背後より声を掛けられ、そちらに身体を向ける。声の主はキアランのようだ。

 

 

「ええ、アルトリウス様が私と二人きりになる時間を作ってくださるのよ。嬉しくないはずが無いわ」

 

「そうか、何よりだ」

 

「貴女が羨ましいわ、キアラン。あの方の手で産み出された存在の一人……」

 

「そう怖い顔をするな、別に彼に作られたからといって特別な感情はない、あくまでも私とアルトリウスは友人さ……」

 

 

 

『……なるほど、そういうことでしたか。何時の間に変えたのやら』

 

 

アルトリウスは歩きつつ納得した声をあげる。

 

 

『アルさんが旗を眺めてる時に、ですね……まさか最後の所を『アルさんを愛している』に変えた事が影響するなんて思いもしませんでした……』

 

 

そう、ユグドラシルが終わりを迎えるあの時に、アインズはアルトリウスが此方を見ていない隙に、猛スピードで仕返しとばかりに名前の所を変えていたのだ。流石にアルトリウスでは文字数が足らないため、愛称のアルさんで書いたとのこと。

 

 

『そういえば守護者集めたときとかも俺に対する反応が淡白だった気が……逆にアルさんを見ているときはなんか表情とか違っていましたし……すいません、余計なことをして』

 

『いえ、元はと言えば私が変えたのが始まりです。まーあの時は最後ということで舞い上がってましたし……お互い悪かったと言うことで一つ。此方としても対して迷惑はしてないので』

 

『そう……ですね』

 

『それでは私はこのままエ・ランテルへ行きますので』

 

『はい、それでは』

 

 

伝言を終え急いでエ・ランテルへと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

「待たせてすまない」

 

「メタスさん!いえいえ、とんでもありません!」

 

 

組合の一室へと来たメタスは漆黒の剣のメンバーに謝罪しつつ机を挟み、彼らの向かいに、ユーリの隣へと行く。ユーリはメタスに軽く会釈をしペテルの方を向く。

 

 

「それで、私に用があると聞いたが」

 

「はい、明後日エ・ランテルから離れた平原地帯でモンスター狩りをしようと思いまして……そのですね」

 

「……」

 

 

彼が何を言いたいか、メタス直ぐに把握した。つまりは協力してほしいのだろう、断る理由もないしメタスは彼等と更に親交を深める良い機会だと判断する。

 

 

「ペテル殿、回りくどい事はする必要はない。貴公が私に何を言いたいかはわかっている。引き受けよう、ペテル殿」

 

「ホントですか!?」

 

「よろしくお願いしますね!」

 

「旦那がいりゃ百人力だな」

 

「うむ、心強いのである」

 

 

ペテル達は一同に喜ぶ。ではとペテルは立ち上がると

 

 

「私達は準備に取り掛かりますのでこれで」

 

「ああ」

 

 

漆黒の剣の皆は一斉に席を立ち

 

 

「それじゃな、旦那、ユーリちゃん」

 

「失礼するのである」

 

「では明日」

 

 

皆と挨拶を交わし部屋にはメタスとユーリだけが残る。

 

 

「事は順調……でしょうか」

 

「ふむ、今のところはな。ランクも一気にゴールドに、そして一定の信頼を持てる友人が出来た。さて、ここからどう転ぶかはわからん」

 

 

ふとメタスは窓を見る。

 

 

「……少しだが、嫌な予感がするのは何故だろうな」

 

 

 

 

 

 

「やっほーカジッちゃん」

 

 

何処かの地下にて飄々とした口調で若い女性が老人へと声を掛けている。

 

 

「その呼び方は止さんか……とお前に言っても無駄だろうな、クレマンティーヌ」

 

 

眉間に皺を寄せ、半ば諦めたような声を出す。

 

 

「で、何をしに来た」

 

「んー?ちょーっとの間エ・ランテルから離れるから声かけとこうと思って」

 

「別にお主が何処に行こうが、ワシはどうでも良い」

 

「ひっどいなー……ってなんだ、テメーもそこに居たのかよ」

 

 

薄暗い物陰からゆらりと金色の鎧を纏った騎士が現れる。

 

 

「あいっかわらず悪趣味な鎧着てるわよねー」

 

 

クレマンティーヌという名の女性は対する騎士の風貌を見る。両肩から自らを抱きしめるような腕状の装飾が施されており異質な気配を放っている。

 

 

「悪趣味か……貴様のような輩に言われるとは思いもしなかったな」

 

「……んだと」

 

 

目元をひくりと動かし、短刀の取り出す。

 

 

「ほう、やるか?またやられたいと見える……」

 

 

騎士も両手に湾曲した刃の剣を持つとガシッちゃん……ではなくカジットは仲裁に入ろうとする。

 

 

「止めんか……忘れたか、クレマンティーヌ。お主は前にこやつに半殺しにされただろうに」

 

「……ちっ」

 

 

聞こえるように舌を打ち、背を向けてそのまま歩き去っていった。騎士はショーテルをしまい

 

 

「カジット、私も少し此処を離れる。理由は聞くな」

 

「わかった……」

 

 

騎士も何処かへと姿を消してしまった。

 

 

「……英雄級の実力を持ったクレマンティーヌが一切敵わん男……『ロートレク』か。油断ならぬ奴だ」

 

 

一人で誰にも聞かれることなくその声は消えていく。カジットのいる場を照らしていた松明の炎が激しく燃えていた、まるでいずれ起こる出来事の激しさを表すように……




はい、まさかのアルベドの設定が変わっていると言うことが今になって明らかに。しかも対象はアルトリウス!?

そして表れた金色の鎧騎士……奴はまさか……

この変化が物語りをどう変えて行くのかお楽しみに!!

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