青く澄み渡る空。ひどく心地よい風が石畳とレンガ建ての建築物の傍を通り抜けて行く。
水路に通う水は透き通り太陽の光を反射しキラキラと輝いている。
様々なものに彩られこの街は美しくあり続けているのだろう。かつてはこの地に憧れる者の
一人であったが今となってはこの街の住人として、風景に溶け込めていることだろう。
それだけこの街の雰囲気に染められてしまったということだろう。だがそれを嫌に思うことは無い。
俺もまたこの街に魅了されてしまっているのだろう。
◇◇◇
「「いらっしゃいませ!」」
扉を開くと三人の少女達が出迎えてくれる。中からは珈琲の香りが漏れ出し、相変わらずおしゃれな内装は変わらず、その空間は訪れた人々に穏やかな時間を与えることだろう。
懐かしきこの場所に帰ってきた昼下がりの時間。自分を出迎えた少女達の中には見知った顔も見られる。
店の中を見回していた首の動きを止め、記憶の中にある少女と思われる子の方を向くと、驚きからか目を見開いている。だが、すぐさま再会の挨拶をかけるのもおもしろくない。とりあえず出迎えてもらったのだし接客でもしてもらおうと席へと案内を受ける。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
三人の少女のうち一番快活そうな栗色の髪をもつ少女が接客をしてくれる。注文するものに関しては特に考えていなかったがどうしようか。・・・せっかくだしあの子の淹れた珈琲を飲ませてもらおう。
「じゃあ・・・ブレンドで。」
「かしこまりました!少しお待ちください!」
元気に注文をとり終えるとトタトタと小走りにカウンターのほうへ向かっていく。
「チノちゃん!ブレンド一つだよっ!」
「わかりました。わたしがお持ちしますのでココアさんは他のお客さんに。」
「でも、今他にお客さんいないよ?」
「・・・わたしが行きます。」
「え、うん?」
なにやら面白い会話が聞こえてくるがとりあえずただの客として注文が届くのを待つ。
カウンターの奥にいる小さな女の子は年齢の割に落ち着いた声音で注文の品を作る。
少しレトロな手動式のミルをその子には少し高いカウンターに置き、胸より高い位置で豆を挽く姿は
とても微笑ましく映る。
少しして淹れ終わるとカップをお盆に載せこちらへ歩いてくる。
「お待たせしました。オリジナルブレンドです。」
「ああ。ありがとう。頂きます。」
テーブルに置かれたカップにすぐさま手を伸ばし、息を吹きかけ冷ました後それを飲む。
女の子はテーブルの傍に立ったままでこちらの様子を伺っているようだ。
「ふふっ。」
小さな笑い声が聞こえた。その笑い声の主は当然そこにいる女の子。そちらへと目を向けると
その子は小さな微笑を浮かべながらこちらを見ていた。
「相変わらず猫舌なんですね。」
「あぁ。こればかりは治しようがなくてな。」
ただの客と店員が作る雰囲気としては親密すぎる二人の距離。
「でもお変わり無いようで私はうれしいです。」
「そうか?」
「そうです。」
まるで長年一緒にいた家族のように、暖かな空間で二人は語り合う。
「君は大きくなったね。たった一年しかたってないのに随分大人っぽくなって。」
「一年たってもろくに身長が伸びなかった私への嫌味ですか?」
頬を膨らませ怒っていることを主張する少女の姿は、兄に甘える妹のようで。
「見た目はあんまり変わってないかもしれないけど、雰囲気はとても大人らしくなってるよ。もっと子供ぽくてもいいくらいだ。」
「子供らしい私のほうがいいんですか?」
「その言い方だと俺が幼女好きみたいに聞こえるからやめてください。」
そんな少女をやさしく受け入れるように頭の上へ手を乗せ、髪を軽くなでる青年。
とても穏やかな微笑を浮かべ、語りかける。
「ただいま智乃。」
「おかえりなさいっ和哉さんっ!」
とある街にある喫茶店ラビットハウス。そこは、憩いの場であり出会いの場。
人と人との繋がりを作る。そんな場所であった。