「じゃあチノちゃん。そろそろ部屋に戻るね。」
名残惜しくもチノちゃんに別れを告げ部屋へ戻ろうとする。部屋を出る前にちょっとだけ振り返って別れを惜しんでしまうのも仕方ないよね。
「やっぱり一緒に寝ようよ~~~」
「ココアさんと寝ると抱きしめられて暑いので嫌です。」
「そんなぁーーー!?」
相変わらずチノちゃんはそっけない。
「おかしなこと言ってないで早く部屋に戻って寝ないと明日寝坊しますよ?」
「わかったよぅ……じゃあおやすみね……」
とぼとぼと肩を落としながら部屋を出て戸を閉める。
「今日も駄目だった……」
とても残念だ。
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それから色々と支度を済ませていると眠気が襲ってきた。手早く済ませ布団に入り横になるとすぐに意識は
闇へと吸い込まれていった。完全に意識が落ちる前にふと思い出した。
(そういえば、あの男の人は誰だったんだろ……)
ふと、日中チノちゃんと親しげにしていた男の人の事が気になったが、思考はまとまることなく意識は消えた。
◇◇◇
階段を上り、自室へと向かう。そういえば部屋はどうなっているのだろう。智乃ちゃんなら一年間掃除し続けてくれていそうだなどと、考えながら少し上機嫌に部屋へと向かう。
そして部屋の前に着いた。深く深呼吸をして、ノブに手をかけ開く。
中へと入ると懐かしい雰囲気と香りが……
「ん?なんかこれは……女の子の香り?」
やっぱり智乃ちゃんが毎日掃除を……
「んんぅ……チノちゃあん……?やっぱり一緒に寝たくなったのぉ……?」
「っ!?」
唐突に部屋の奥から声が聞こえた。聞き覚えは・・・・ある。おそらく智乃ちゃんと一緒に働いていた女の子だろう。下宿していたのか。
(しかし……どこかで嗅いだことのあるような柔らかい香り……なんだ?)
つい好奇心の赴くままに近づいてしまう。
それがいけなかった。
「ふふふ……チノちゃんつかまえたぁ~……」
「うぉっ!?」
突然布団の中から伸びてきた手に腕を掴まれベッドへ引きずり込まれた。鼻腔をくすぐる甘い匂いと微かに香る柔らかな残り香。
「うふふ~……ちのちゃぁん……」
(この娘寝ぼけてるのか!?智乃ちゃんとか言ってるしっ!?)
どうにか拘束を振りほどき脱出を試みる。
結果的にそれは成功に終わったが、呼吸は乱れ心臓は早鐘を打っている。万が一起こしてしまうことのないように足音を忍ばせて部屋から出てそっと戸を閉じる。
「はぁぁ……とりあえずタカヒロさんに話を聞いてこよう……なんか変な汗かいてしまったな。」
帰郷した初日はなんとも衝撃的に締めくくることになってしまった。
(そういえばあれは……パンの香りだったか……?)
今回は少し短めになってしまいました。