目が覚める。まだ日は昇っておらず、窓を開けると清涼な風が部屋に吹き込み爽やかな空気で満たされる。一人暮らしの影響か昔こっちに住んでいた頃と比べると非常に生活習慣はよくなっている事だろうと思う。
「ふぁぁああ……うん?」
身体を起こそうとするが何かが乗っているのかうまく起こせない。首だけを曲げ自分の上に載るものを確認する。
「んんぅ……ちゃんとはたらいてくださぃココアさん……」
「って智乃ちゃんか。なんかこれも懐かしいな。」
そう。俺が向こうに行く前も何日かに一回くらいこうやって俺を起こしに来てくれた智乃ちゃんがそのまま寝てしまっていることがあったのだ。本人曰く、『和哉さんの能天気な寝顔がいけないんですよ。』とのことだ。とりあえず、このままにしておくわけにもいかないので智乃ちゃんの肩を軽く揺さぶり声をかける。
「智乃ちゃん。申し訳ないけど起きてくれる?このままじゃ俺も動けなくて。」
「んぅ……和也さん……?」
「ああ。和哉さんだ。」
「……っ!?すみませんっ。私またっ」
どうやら目を覚ましてくれたようだ。寝ぼけたような表情が一瞬で驚愕に染まり、その頬には少し赤みが差している。やはり無防備な寝顔を見られるのは恥ずかしいらしい。このあたりの反応も懐かしいものだ。
「おはよう。智乃ちゃん。別に俺も今起きたとこだし気にしなくていいよ」
「は、はい。すみません。朝食が出来たので降りてきてください」
「わかった。ありがとう」
「で、では私はココアさんを起こしてきますのでっ。失礼しましたっ」
すこしあせった様子で智乃ちゃんは部屋を出て行った。
普段の大人びた雰囲気とは打って変わって年相応の姿を見せてくれることは、心を開いてくれているようでとてもうれしく感じる。
「さて。俺も行くか」
考え事をしてるうちに着替えを済ませ部屋を出て階下へ降りる。
◇◇◇
「こちらは土岐和哉さん。ココアさんがここに来る少し前までうちで働いていた方です」
「土岐和哉です。これからしばらくここで生活させて頂きます。よろしくお願いします心愛さん」
朝食の席には昨晩の少女『保登 心愛』さんが向かいに座っている智乃ちゃんの隣に座っている。
俺達二人に互いについてを智乃ちゃんから紹介してくれるという話になりこうなった。
「そして、こちらは保登心愛さんです。先程も言ったとおり和哉さんと入れ違いでここで働くようになった方です」
「ココアですっ。えっと、去年の春からここで住み込みバイトをしています。よっ、よろしくお願いします」
「あぁ。よろしく」
テーブル越しに腕を伸ばし握手を求める。なんだか仰々しいというかあまり日本人には無い習慣だがこの町の住人にはふさわしいだろう。
と、思ったのだが。
「えっ、あっ。えっと……」
どう反応すればよいのかわからない様子でオロオロとしだす心愛さん。
「ココアさん?どうしましたか?」
智乃ちゃんが不思議に思ったのか顔を覗き込み様子を伺う。
「あの……わたし……先に学校行ってくるよーーーーっ!!」
そう言い突然立ち上がりそのまま走り去ってしまった。唖然としていると智乃ちゃんからの視線が厳しいことに気付く。
「和哉さん……あのココアさんにあそこまで警戒されるなんていったい何したんですか?」
ジト目でそう尋ねてくる智乃ちゃんになんと答えればよいのかわからず、
「解せん……」
肩を落としてそう答えた。
話が・・・・進まないだと・・・!?