ー卒業試験当日
午前の筆記試験を合格したアカデミーの生徒達はイメージトレーニングをしていたり、友人と励ましあったりと実技試験に向けての準備をしていた。
「……」ブルブル
「どうしたのよ。もうすぐ木ノ葉丸ちゃんの番でしょ? まさか緊張してる?」
「木ノ葉丸君なら大丈夫だよー」
「ち、ちげーよ! ちっとも緊張なんかしてねぇぞコレ!」ブルブル
「…足、震えてるよ」
「……」ブルブル
試験は名簿順。
自分の番が近づくに連れて膝が震えてきた。腹痛も酷くなってきたし、顔も火照ってる…モエギ達に極度のあがり症がバレたら木ノ葉丸軍団 団長としての立場が……
それ以前にあがり症なんて忍としてマズイだろ。
「次、猿飛 木ノ葉丸」
「は、はい!」
「頑張ってね、木ノ葉丸ちゃん」
「ボクでも大丈夫だったんだから木ノ葉丸君もきっと受かるよ!」
ウドンの奴、余計なプレッシャー掛けやがって…
「…へっ! 余裕で合格してやる。 見てろコレ!」
せっかく転生させて貰ったのに忍にすらなれないなんて死神に申し訳ない。それにこの世界での目標も決まったんだ! 絶対に合格してやる。
「木ノ葉丸君、少し急いでくれませんか?」
「あ、すみませーん」
ドクン…ドクン…ドクン……
教室に入った途端鋭い視線が突き刺さった。
「(!? 何だよ あの試験官ッ…オレのことめっちゃ睨んでるぞコレ!!)」
一人はイルカ先生でもう片方は見たことのない若い人。新任の先生なのだろうか……というより、
「(アイツの目がヤバイ!? 俺なんかやらかしたか?)」
緊張と不安で冷や汗が止まらない。ウドンは怖い試験官がいるだなんて言ってなかった。他の奴等からもそんな情報は聞いてない。
「(なら俺だけが?……まさかアイツ『根』の奴だったりするのか?)」
警戒心の強いダンゾウなら監視役に一人や二人送ってきてもおかしくはない。流石にガキ相手にそこまでするとは思わないが……
「よし、木ノ葉丸始めていいぞ」
「は、はい………よ~し、影分身の術!」
まず三体の分身をつくる。分身の術よりも影分身の方が得点が高い…はず!
「からの…変化!」
「おっ、これは凄いな」
「……」
俺が化けたのは伝説の三忍、自来也、綱手、大蛇丸だ。
実際に目にしただけでなく漫画やオフィシャルデータBOOKのお陰もあって本物そっくりに仕上げられたと思う。
「ボフン……イルカ先生、これでどうだ?」
「難易度の高い影分身を三体…その上情報の少ない三忍をしっかりイメージできている…合格だ!」
「……」
「やったぁー!」
ピカピカの額宛を貰い俺はその場で大はしゃぎしていたのだが…
「……」
…気に入らねぇ。あいつの視線が。試験の結果に口出すこともなく、嫌味も言わない。イライラする。せっかく合格したってのに。
「…なんなんだコレ!」
「こ、木ノ葉丸? どうした」
「イルカ先生じゃねぇよ! 隣の先生だコレ。何か文句あるなら言葉にしろよ」
それでも口を開こうとしない。
「そもそも何で新任の先生が試験官なんだよ?」
「おい、木ノ葉丸! この先生は特別上忍で火影様からの信頼も厚いんだ」
「だから何だコレ!? 審査してるのはイルカ先生だけでコイツ何もしてねぇだろ」
「あのなぁ、木ノ葉丸」
そろそろイルカ先生が切れる頃に奴が口を開いた。
「すみませんねぇ。アカデミーに派遣されたばかりで知らない生徒も多く表情が硬くなっていました」
そう言って頭を下げる。
「先生が謝ることありませんよ。コイツが悪いんです。ホラ頭下げろ」
謝る気などこれっぽっちもなかったがイルカ先生に無理矢理頭を下げられる。
「もう気が済んだろ。教室に戻れ」
と言われて強制的に追い出された………。
「ふざけんじゃねぇよ」
絶対嘘だろ。表情が硬くなりましただぁ? あの見下したような目でよく言えたものだ。まだ試験を受け終わってない生徒もいるのでおとなしく引き下がったものの。
「あぁ! 胸くそわりぃぞコレ」
試験に合格したのに気分は最悪だった。
「木ノ葉丸ちゃん! どうだった?」
「ん」
ポケットに突っ込んでいた額宛を見せる。
「流石木ノ葉丸君だね。よゆーだったでしょ?」
「あーうん、そうだな、よゆーだったぞコレ」
三人揃って合格したのに嬉しい気分になれない。全てあの試験官のせいだ。
「どうしたの木ノ葉丸ちゃん?」
「なぁ? 変な試験官いただろ?新任で表情が硬いやつ」
「イルカ先生の隣にいた先生よね? 言う程でもなかったと思うけど」
俺にだけかよ!
「それがどうかした?」
「いや、なんでもねぇよ。ちょっと気になっただけだコレ」
数分話していると全員の試験が終わり班発表についての説明が始まった。
「明日は君たちが忍になる大切な日だ。忍者登録書をしっかり提出するように。以上!」
「木ノ葉丸ちゃん一緒に帰ろ」
「悪ぃ、オレちょっと寄りたい所があるから先に帰っててくれねぇか?」
「えー、つまんないの。行こっかウドン」
「うん、じゃあね木ノ葉丸君」
「また明日ー」
二人が帰ったのを確認してから全速で火影邸に向かう。
火影邸はアカデミーのすぐ側にあるので二分もかからない。
[バタン!]
「五代目ェ!」
「何が言いたいかは分かっている。今は忙しいんだ。後にしろ」
五代目火影はこちらを見ずに筆を動かす。
「あの教師何なんだコレェ!?」
「うるさい、後にしろと言っただろう」
「ちゃんと話してくれるまで帰らねぇぞ!」
「[ベキッ]黙れ…」
「ッ!?…」コクコク
「ハッ!…マズイっ」
何らかの気配を感知した五代目は机のヒビを書類で慌てて隠す。正面から丸見えです。
[ガチャ]
「失礼します。あ、木ノ葉丸君? 卒業おめでとうございます」
「アリガトウゴザイマス」
「?…綱手様?その机のヒビはー」
「すまない。つい……」
「まったく、今日だけで3回目ですよ?…お気持ちは察しますが」
「3回も? なにがあったんだコレ?」
「実はですね…」
ーAM6:30ー
火影邸
「試験官に根の忍を入れたいだと?」
「そうだ。お前も知っているだろうが暗部は毎年人手不足。優秀な人材は早い内に育てた方がよい」
「ハッ、活動報告すらろくに出さない怪しい組織に大切な『玉』を預けられるかってんだ」
この時点で綱手はこめかみに青い筋が浮かんだ。早朝から話を持ちかけてきたのは、木ノ葉隠れの里を裏から支える『根』のトップ、志村 ダンゾウ。
「そう言うな綱手よ。今期生は数が多いと聞く。根は木ノ葉を裏から支える大切な柱じゃ」
「火影直属の暗部だけでは木の葉は中心部から崩れていまう」
次に入ってきたのは木ノ葉の相談役、うたたね コハルと水戸門 ホムラ。綱手が最も苦手とする人物達だ。
これで1対3、綱手の後ろにはシズネもいるが側近である彼女は発言力を持たない。
「チッ、分かった。アカデミーには私から言っておく。だが、もし強引な勧誘や余計な口を挟んだ時は…」
「分かっておる」
ダンゾウはそう言い残し出ていく。
「綱手よ。お前がダンゾウの考えを良く思っていないことは知っとるが、いつの時代にも汚れ仕事を任せられる者が必要なのじゃ。だから穏健派であった三代目もそうせざるおえなかった」
「ダンゾウは木ノ葉の未来を第一に思っておる。長い間里を留守にしておったお前と違い、ワシ等は木ノ葉の仕組みを古くから知っておる。お主ももう若くないのじゃからよく考えて行動するようにな」
[ガチャ…]
三人が出ていき深く溜め息をつく。
相談役はダンゾウの方についている。相手が自来也のような同期の者なら少しは反論できたのだが、今まで放浪の旅をしていてついこの間火影に着任したばかりの綱手が何を言っても無駄だろう。
「[バキッ]老いぼれ共が…!」
「…という訳なんです。今日はずっと機嫌が悪くて」
あー、原作でも仲すごく悪かったですものね。
「なるへそ……って! 口は出してねぇけどあの舐め回すような目は反則だコレ!」
「それはすまなかったな」
「なっ、 ダンゾウ…様!?」
「おいジジイ、入る時はノックしろと言わなかったか?」
「つい癖でな……その者にはワシから厳しく言っておいた」
厳しくって…流石に殺してはいねぇだろうな?
「案ずるな。お前はワシをどういう風に見てるかは知らんが自ら部活に手を下すようなことはせん」
この人のレベルになると読心術なんて使えるのか…
「ところで何の用だ」
「なに、用があるのは…そこのヒルゼンの孫じゃ」
「お、オレっすか?」
「お前の実力は今期生の中でも飛び抜けていると聞いた。どうだ、『根』に入る気はないか?」
「えっ?ね、根っこ?…根……『根』ェェェェェ!?」
オレが暗部ぅ! 一体どういうことだコレェ!?