刻まれたHAPPY END   作:金森光琳

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最初の2話は連続投稿です。それからは週1で投稿していこうかな。書き溜めが尽きたら月1になりそう。失踪は絶対にしません(投稿がいつになるとは言っていない)


予報に無い雨の日

『明日、雨が降るよ。午後には土砂降りだよ』

 

 昨日の夜、3年前に体に宿した別の人格が話しかけてきた。午後から急にふるならまだしも、朝から降るという。そんなこと明日になれば分かるし、わざわざ教えてくれる必要性を感じない。しかも昨日の時点では雨が降る気配を感じなかったからね。ただ。

 

『お前はこの俺の言葉をどこまで信じているんだ。俺が嘘をついている可能性を考えないのか。』

 

 なんて、聞いてきた。今まで向こうから予言以外で話しかけてくれることは少なからずあった。しかしこの言葉には、絆の確認という雰囲気ではない、どこか不安げで、おどおどしていた。こんな声を聞いたのは3年前、初めて話しかけられた時以来だったか。その時の内容は確か。

 

『我は神の声を聞く者也。汝に未来を知る能力を与える。』

 

 厨二病全開の非常に痛々しい自己紹介な上に、弱弱しく震えた自分の声で言われても信じる気にはなれなかったが、おかげであまり恐怖を感じなかった。それに当時はマンガの読みすぎで能力に憧れていた為に厨二病の素質があり、多重人格をすんなり受け入れてしまった。それからは忘れていた宿題の忠告だとか、痛々しい口上の伝授とか。あれ、どうでもいいことばっかりだな。そして俺はというとこの別人格に能力について聞いたことは3年前に少し聞いたきりだった。俺は、あいつについてまだ何も分かってはいない。

 唯一つ言えることは、あいつの言葉には心がこもっている。全ての予言が真剣味を帯びていて、どこか必死なのが伝わってくるということだ。だから俺は信じることができる。少し間違えるのはご愛嬌だ。これが、俺の気持だ。

 やっぱり雨は降っていた。さすがの未来予知だ。誰も予想のできない、どうでもいいことは絶対に外さない。どうでもいいけど。

 窓の外に見える雨降りが、屋根や道路に当たってザーッっという音を立てる。こんな雨なのにどこかで小火騒ぎがあったらしい、聞こえづらくて音量を上げたテレビのニュースがそんなことを言っている。憂鬱な気分をこの騒がしさがかき回してくれる。

 

(今日は、昼休みに生徒会室にでもお邪魔しようかな。昨日の話で、昼休みの生徒会室には多くても勇斗達二人しかいない、って聞いたし。お弁当を屋上で食べることもあるらしいけど、今日はその選択肢はない、よね。あ、でも勇斗なら、あるいは・・・)

 

 楽しみだった。この胸の内から湧き上がってくる焦燥感は、このわくわくと騒々しいノイズから来るものだと思っていた。昨晩の別人格の謎な言動を、忘れていた。思えば最初から今日のために。俺は一人ではあまりにも無力だということを、後にいやというほど思い知らされた。

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 目が覚めた。いつものように。深い睡眠から覚醒したようだ。ベッドから降りて部屋から出ようとする。いつも通りの眩しい朝。しかし体に違和感。何が違うのか、意識を失う前のことを思考範囲に含める。そうだ、確か私は死んだはず、致命傷を負ったはずだった。そして。

 

(殺した。殺してしまった。)

 

 ナイフを奪った後はもう、あらゆる力が残っていなかった。それ故、刺す相手を間違えることもあり得ない話ではない。信じたくはないが最後に映ったモノを見ればどうしても納得せざるを得ない。気づく前の達成感に浸っていた自分への嫌悪感、殺してしまっことへの罪悪感、後悔、怒り、悲しみが、濁流のように頭の中を駆け巡る。もう一度、意識を失いたくなる。自己嫌悪感につぶされてしまう前に、逃避するように、冷静に現在の状況の分析を始める。

 まず、意識がはっきりしているのは何故。生き残ったの。いや、もしも体を刺された私が生き残っていたのなら、最初に見る場所は、きっと病室。ここは死後の世界なのか。

 天国とか、地獄とか、私は真剣に考えたことはなかったが、おとぎ話に出てくるようなものは存在せず、どこからどう見ても、ここは自分の部屋である。捨ててしまったものが存在し、あるはずのものが見当たらない、自分の部屋。母親の声がして、私はそれに答える。ここで気付いた。

 

(そうか、私は、傍観者なんだ。)

 

 私の体は、私の意識を介さずに勝手に動いている。そうじゃない、確かに体を動かしているのは私だ。でも自分ではない。これは、昔の私。自分の思い出を追体験しているだけ、記憶という映画を見ているだけなのだ。BAD ENDへつながる、展開や結末をあまりにも知りすぎた映画。その理由は、きっと贖罪の為。助けられたはずの友達を見捨てた腑抜けた自分にはお似合いの罰だ。

 私の体はすでに起きている母親と会話し、朝食をとり始めようとしている。この時はまだ幸せだった。もう見ているのがつらく感じる。だが、自発的に目を瞑ることができない。それもそうか、見えなければ懲罰にならない。私の体は学校へ行くようだ。もう他人事に思える、自分のことなのに。

 

「おーい、やっほー。」

 

 私は驚いて声がする方に振り向く。通りの向こうから友達の○○ちゃんがやってくる。分かっていたはずなのに、思わず動揺してしまう。確か彼女は、そう、私の記憶では彼女は、交通事故にあって死んだはずである。最後に見たのはいつだったか、もう一度会えたことが嬉しくて、数年後に彼女は無残な死を遂げることを忘れて涙が出そうになる。しかしながら、痛切な思いもむなしく私の体は笑顔で、彼女のあいさつに対して定型化された言葉を発する。

 

「あ、おはよう。今日もいい天気だね。」

 

 学校に入った。高校ではなく、私が通っていた中学校に。

 

(ところで、今はいつなのだろう。)

 

 私はまだ、これが数年前の記憶だということしか理解してない。どこかにヒントがないか、固定された視界の中で周囲の細かいところまで注意を配っている。しかしついつい昔の友人を目撃して懐かしさを感じ、その先に待つ絶望を思い出して現実に戻るということを繰り返している。

 教室に入るとき、視界の隅にとらえたカレンダーを、見た。

 

 “2012年 カレンダー 1月”

 

 そして私が死亡したあの事件が発生したのは2015年1月。つまり。

 

(あと3年で、もう一度、あの地獄を見なくちゃいけないのか。)

 

 その時はまだ正気だった。いや既に狂っていたのかもしれない。もしもこの過去が変えられたら、そんなことを頭の片隅でずっと考えていた。




厨二病だからって痛々しくもかっこいい文章が書けるわけじゃない。
厨二病辞典というものがあるらしいですね。今度買ってみましょうか。
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