願いは時を巻き戻し、絶望を振りまく。
絶望はやがて希望の種となり、少年の心に宿る。
種は心から養分を吸い取って、確かなものに成長していく。
疲れた。ああ、疲れた。死んでからこれで3年、目を背けることもできない記憶という名の映画もこれでおわりだ。
贖罪になっただろうか。いや、なるはずが無い。僕が犯した罪はこんなものじゃ足りない。ただ、少し楽になったかな。自己満足かもしれないが、自分の人生を見つめなおして覚悟ができた。これから何があっても罪を償うために全てを耐えてみせると。このまま死んだら僕はどこに行くのだろう。今度こそ地獄に落ちるのだろうか。
最初に友達が死んだ日を思い出した。学校の帰り道、僕は彼女の後ろをおどおどしながら歩いていた。本当ならば隣を歩きたかったが、その勇気が僕には無かった。
遠くからゆらゆらとした危なっかしいトラックがこちらに向かってきているのが見えた。先に気付いた僕は、無言で後ろに下がってしまった。これが唯一にして最大の間違いだった。
彼女は気付かない。暴走したトラックが自分の体に突進してくることに。気づくわけがない。車道と反対側の店のショーケースを眺め、危険を教えてくれるのであろう人物が何も言ってくれなかったのだから。
少し、ほんの少しでよかった。もしもあの時に彼女を引っ張っていれば、それでなくとも何か声を発していれば。彼女は助かったかもしれない。ちょっとのリスクの為にもっと大きなものを失ってしまったんだ。
おかしなことに涙は出てこなかった。目前で、自分のせいで人が服を着た赤い液体になるその瞬間を見てしまった。どうして正気を保っていられるだろうか。僕は一瞬で現実を理解してしまった。だって僕は「誰かが車につぶされる」という未来を予想し、身を引いたのだ。現実逃避することができたらどんなによかっただろう。この日から僕は日々の生活に身が入らなくなっていった。
天気がいい。今日で僕は、刺殺されて死ぬ。ついでに友達を殺して。この日のことは、今までの三年間で何回も思い浮かべた。だから全部はっきりと覚えているのだ。この人並みも、風景も、声も、全て。その記憶を僕は歩いている。
悲鳴が聞こえた。死へのカウントダウンが始まった。振り向いて走り出した。からだが誰かにぶつかる。そしてその状態のまま決断を怖がってしまった結果、標的にされてしまった。この時に彼女一人だけでも助けられなかったのか。そうだよ、自分で殺したのに何を言っているんだ。
表情の見えない黒いフードをかぶった殺人鬼が迫ってくる。僕はまだ迷っている。ああ、もうっ!―――
「『立って!今すぐ逃げて!』」
声がした。これが自分のものだと気付くのに少しばかり時間を要した。彼女は走り出し、自分はナイフで刺される。
鋭い痛みの中で僕は考えた。何が記憶との差異を生んだのか。その可能性になりうるものなんて、一つしかないじゃないか。
(僕が、いたから)
とどのつまり、これは映画でも幻想でもなんでもなくて、
(全て現実だった。)
と、いうことは。もし、次があるとするならば、
(その時は、必ず、皆を助け出す!)
こうして、新たな希望に膨らませた胸から大量に出血し、僕は二度目の失血性ショック死を迎えた。
前書きのポエム、ただ寒いだけだけどあらすじのところにでも入れようかしら。