仮面ライバー 守れ!女神たちの夢!   作:シママシタ

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にこ

「矢澤先輩、大丈夫ですか?」

 

女王アントを倒した、仮面ライダーフォースである俺は、颯爽とその場から去り、誰にも見られていない所で変身を解いた。そして、あたかも真姫に連絡を受けたと装い、2人のもとに戻った。

 

「ちょっと、足を擦りむいただけよ。」

 

少し不機嫌そうな表情を浮かべているが、目頭は赤くなっていた。余程、弱い所見せたくないんだな。

 

「で、何があったんだ?真姫に急に呼ばれてから急いで来たよ。」

 

俺は何も知らない。そう演じた。

 

「矢澤先輩が化け物に襲われていたの。私たちを襲ったあれよ。」

 

「またか⁉︎もしかして、またあいつが現れたのか?」

 

「そう、仮面ライダー。私たちの前に現れてまた助けてくれたの。」

 

「そうか。とりあえず無事なら安心だ。」

 

真姫が上手く合わせてくれたおかげで何も矛盾なく話が進んだ。

 

「あれも、仮面ライダーなの?」

 

「あれも?」

 

「でも、あの仮面ライダーは…」

 

矢澤先輩は何かを考え込み、下を見つめる。ちょっと待て、仮面ライダーは俺だけじゃないのか?

ふと、真姫がこちらに視線を送っているのに気づいた。あの目は何か知らないの?という感じだった。俺が聞きたいよ。

 

「黒かった。」

 

「黒?」

 

矢澤先輩はもう1人の仮面ライダーを見たことがあるらしい。その特徴は黒い仮面ライダー。少なくもフォースには黒いフォームはなかったはずだ。頭が混乱する。

 

「待ってください。さっきの仮面ライダーも色が変わっていたんですから、もしかしたら同一人物かもしれません。」

 

「それはないわ。明らかに見た目が違ったわ。それにさっきのより何と言うか…化け物に近い感じ。」

 

ますます頭が混乱する。何が何だかわからない。オーガに近い仮面ライダーって。

 

「それはそうで、そのもう1人の仮面ライダーは一体いつ目撃したんですか?」

 

頭を整理するため一応質問をする。時期さえわかればどうにかなるかもしれない。ほんの少し期待してみる。

 

「そうね、私が1年生のころだから…2年前ね。」

 

「2年前ですか…」

 

2年前…ダメだ。ライダーシステムの実用化にすら至っていない。矢澤先輩はまだ話を続ける。

 

「あの時も私もびっくりしたんだから。まさか都市伝説が本当だったなんて。」

 

「都市伝説?」

 

「そう。風のように現れ、鬼のように暴れ、幻のように消える。その姿はバイクに乗った仮面の戦士。仮面のバイク乗り。人呼んで仮面ライダー。だからさっきのも仮面ライダーって言われて私も戸惑ったわ。」

 

それはこっちのセリフだって言いたい気持ちを何とか押し留める。

2年前、都市伝説、そして黒。…ダメだ。心当たりはない。まず、データベースにすらなかったはずだ。それこそ本当に幻なんじゃないかって思い始める。

 

「まっ、どちらも助けてくれたんだし、疑うのはあまり芳しくないわね。」

 

「そ、そうですね。」

 

適当に相槌を打つ。黒い仮面ライダー。一体何者なのか?謎こそ多いが、少なくとも話を聞く限りは悪いやつではないらしい。おそらく敵対することはないはずだと、とりあえず結論付けた。

 

______________________________________

 

 

薄暗い廊下を独り歩く。昨日はとんだ災難だった。化け物に襲われ、そのせいで病院に行かされて、夕飯が遅くなってしまい、家族に迷惑をかけてしっまた。それにμ`sに部室に入られ…冷たく突き放してしまった。今思えば、あれはチャンスだったのだろう。スクールアイドルの活動の復活、そしてあの輪の中にはいるのも。

みんな仲良く、本気で活動している彼女たちを見て、私は妬んだ。なんでみんな仲がいいの?なんでみんな本気なの?なんで私が活動していた時はこうならなかったの?

私が持っていなかったものを最初から持っていたμ`sが憎くかった。でも羨ましくもあった。

 

「ねぇ、この後ファミレス行かない?」

 

「いいね!行こうよ。じゃあ、部活のメンバー誘おうよ。」

 

部室の扉を開けようとドアノブに手をかけたとき、後ろから声が聞こえた。

…胸がキュッと痛くなる。独りの私には関係のない話。そして夢のような話。そういうふうに割り切り、部室へと入る。明かりがなく、暗い部室が視界に入る。

 

 

 

 

「「「「「「お疲れ様です‼」」」」」」

 

「えっ?」

 

μ’sの全員が私のほうを向き、満面の笑みを浮かべる。唐突の出来事に私は戸惑いを隠せない。

 

「お茶です、部長!」

 

「今年の予算表になります、部長。」

 

「なっ!?」

 

「部長、ここにあったグッズ、邪魔だったんで棚に移動しておきました。」

 

「ちょっと!勝手に…」

 

「さ、参考にちょっと貸して。部長のおすすめの曲。」

 

「なら、迷わずこれを!」

 

「だから、それは!」

 

「ところで次の曲の相談をしたいのですが、部長。」

 

「次はさらにアイドルを意識したほうがいいと思いまして。

 

「それと振り付けも何かいいのがあれば。」

 

「歌のパート分けもよろしくお願いします、部長。」

 

リアクションを取る暇なく、怒涛の相談攻め。まるで、私がμ’sの一員かのように振舞っている。もしやこうやって、親近感を抱かせ、μ’sとアイドル研究部を合併する作戦なのかと半分だけ思った。

 

「こんなことで押し切れると思っているの?」

 

「押し切る?私たちはただ相談しているだけです。音の期坂アイドル研究部所属のμ`sの7人が歌う次の曲を。」

 

「7人…?」

 

辺りを見渡す。みんなが私を見ている。なんて強引なやり方なのかしら。…でも、嬉しかった。あんなに嫌がらせをしたのに、今ではこうやって私を招き入れてくれて。一歩踏み出すのを手伝ってくれて…。

 

「にこ先輩。」

 

「厳しいわよ。」

 

「わかってます!アイドルへの道が厳しいくらい!」

 

「わかってない!」

 

言葉をはっきりと強め、みんなに言い聞かせる。

 

「あんたたちも!」

 

ビシッと先輩らしく決める。アイドルがなんたるか全部教えてあげる。

 

「アイドルっていうのは、笑顔を見せる仕事じゃない!笑顔にさせる仕事なの‼」

 

私の言葉を聞いたみんなは嬉しそうにこちらを見つめる。

 

「まずは、にこがアイドルの基本を教えてあげるわ。着替えて屋上に行くわよ!」

 

「「「「「「はいっ!」」」」」」

 

元気のいい返事が心地よく聞こえる。今までなら考えられないことだ。部室に私以外の声がするのも、明るいのも。部活を始めたころの初々しさを思い出す。昔の部室が目に浮かぶ。

 

(また、ここから始まるんだ。)

 

ちょっぴり照れくささを抱き、ロッカーから運動着を取りに行くため、一度部室を出る。

 

「どうです?μ`sは?」

 

「あんたは。」

 

右を向くと、μ`sのコーチである本間拓人がいた。

 

「本当、強引なやり方ですよね。俺も聞いた時はうまくいくかなって思いましたけど…上手くいったようですね。」

 

外でも聞こえる笑い声に本間はうっすら笑みを浮かべる。

 

「そうね、本当に強引だったわよ。…でも、嬉しかったわ。」

 

「そう思っていただけたら、幸いです。」

 

私は照れながら答える。それを本間は紳士に笑う。

 

「ともあれこれからは同じμ’sの一員としてよろしくお願いします。矢澤先輩。」

 

「……にこでいいわよ。まっ、こちらこそよろしくね、拓人。」

 

「はい、よろしくお願いします。にこ先輩!」

 

----------

「「にっこにっこにー!」」

 

「ほらまだまだよ!もう一回!」

 

雲の間から日の光が差し込む空の中、屋上で矢澤先輩のアイドルのための特訓をしていた。

 

「つり目のあんた!気合いいれなさい!」

 

「真姫よ!」

 

恥ずかしがりやの真姫にとって、これは相当恥ずかしいこもらしい。

 

「というか、何で俺まで…」

 

「コーチがアイドルを知らないなんて言語道断よ。」

 

「それもそうですけど。」

 

俺、音ですけどと言いそうになったが寸前で止める。言ったところで言い訳にしかならないだろう。

 

「ほら、ラスト一回!」

 

「「にっこにっこにー!」」

 

「…全然ダメ!後30回!」

 

にこ先輩は後ろを振り向いた。そして袖で顔を拭っているのが後ろからでも確認できた。

 

(にこ先輩…)

 

「はぁー。」

 

凛がめんどくさそうにため息を吐く。だけど、穂乃果と俺はこう言った。

 

「何言ってんの。まだまだこれからだよ!」

 

「そうだな。俺たちはまだ始まったたばかりだろ。」

 

「「にこ先輩!お願いします!」」

 

穂乃果と俺の声が重なる。また、にこ先輩は顔を拭い、こちらを向いた。その顔はこれ以上にないくらいいい顔だった。

 

「よ〜し、頭から行くわよ!」

 

にこ先輩の元気のいい掛け声が屋上に、俺たちの心に響き続けた。

 

-----------

私は手元にある資料をじっと見る。

 

アイドル研究部、矢澤にこと書かれた用紙

そうして、もう一つの用紙にアイドル研究部、μ’sのメンバーの名前が書かれていた。

 

「にっこにっこにー!」

 

生徒会室でも聞こえる掛け声。とても複雑な気持ちになる。

 

「よかったな〜にこっち。」

 

希はまるで自分のことのように喜んでいた。

 

「にこがどうしたって?」

 

ドアの方に顔を向けると、そこには爽馬がいた。

 

「こっちに来ればわかるよ。」

 

「ふむ、どれどれ。」

 

爽馬は希のいる窓際に向かい、屋上を見た。

 

「…おいおい、マジかよ。」

 

爽馬は驚きと嬉しさの混じった声を漏らす。それもそう、爽馬はにこのファン第一号。活動を再開したとわかれば嬉しいに決まってる。

 

「そうな……」

 

希の言葉が途切れる。

 

「そ、そうか…ヒグッ!よかった…よかった…もう…あいづは….1人じゃグズッ…ないのか。」

 

気持ちが高ぶったのか、爽馬はおもむろに涙を流し始めた。

 

「よしよし、爽馬君。落ち着いてな。」

 

希は爽馬を胸に抱き寄せ、子供のようにあやす。人の為に泣いたりと喜んだりするのは爽馬のいいところなのだが、少し幼すぎるのが玉に瑕。

 

「…サンキュー、希。落ち着いた。」

 

爽馬は希から離れて、笑みを浮かべる。

 

「そういえば、爽馬は何で学校に?」

 

「そりゃぁ、暇だったから。」

 

「あのね、爽馬…」

 

「それに、2人と一緒に過ごせるのももしかしたら…」

 

爽馬は寂しそうな顔をした。

 

「爽馬君…戦うの?」

 

「ああ、決めた。本格的にUTXとぶつかってみる。」

 

希は心配そうな面持ちで爽馬を凝視する。希の気持ちはわかる。これ以上、危険な道を歩んで欲しくない。でも、そんなこと言ったところで聞く耳を持たないだろう。だってそのために生きてきたのだから。ずっと一緒にいたからわかる。もう…爽馬は後戻りは出来ない。

 

「爽馬。」

 

「絵里?」

 

「約束して。死なないって。それと私も今までと同じようにあなたと一緒に戦わせて。」

 

「………」

 

爽馬は難しそうな顔をする。これは爽馬だけの問題だから関わらせたくないと思っているのだろうか。でも、私は爽馬の力になりたい。そう願い続けた。

 

「わかった。ただし、あくまでもサポートだけ。それもUTXには手を出さないこと。あいつらは俺がやる。」

 

「……わかった。」

 

爽馬は渋々了解する。よかったと私は安堵する。その反面、親友2人が戦うと言ってのを聞いてか、希は今も心配そうにしていた。

 

「希。希にも約束するよ。必ず生きて帰ってくるから。それに絵里も守るからさ。」

 

爽馬は安心させるよう問いかけるが、依然表情は変わらない。

 

「………がぅ…」

 

「希?」

 

私が名前を呼んだ時、ダッと生徒会室から走り去ってしまった。

 

「希…あいつ…何か抱えているのか?」

 

「どういうこと?」

 

「………いや、それはわからねぇ。勘ってやつだ。とにかく希を追いかけるぞ。」

 

そして、私たちは希の後を追った。この時何故、希が逃げたのか?私は何か不穏なもの感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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