「一体、誰がリーダーにふさわしいか?」
明かりのない、暗い部屋でにこ先輩が問いかける。発端は希先輩の一言。
『何で高坂さんがリーダーなのか?』
確かに聞くあたり、穂乃果はリーダーらしいことは一つもしていない。μ’sの立役者というところを瞑れば、リーダーらしい理由は見当たらない。
「というより、私が部長として着いた時点で一度考え直すべきだったのよ。」
その言葉に強く反応したのがにこ先輩。穂乃果ではリーダーは務まらないと、部長として判断した。と言ってるが実のところはただリーダーがやりたいだけなんじゃないかと俺は思ってる。
「私は穂乃果ちゃんでいいと思うけど。」
「だめよ。今回の取材でわかったでしょ?この子はリーダーには向いていないって。」
確かに、ちょっとは思うが。
「それなら早く決めた方がいいわね。次のPVだってあるし。」
「センターか。」
俺は小さく一言だけ呟く。センターという言葉。ダンスの世界でもこの言葉には重さをもつ。センターになるということは、誰よりも注目される主役の立ち位置。当然、センターになることはすごいことである。アイドルだって同じだろう。
「リーダーも変われば、当然センターも変わる。次のPVのセンターは新リーダーってことよ。」
「でも、誰が?」
花陽は率直に疑問をぶつけるとにこは立ち上がり、側にあったホワイトボードを回転させる。
「リーダーとは!第一に誰よりも情熱を持ってみんなを引っ張っていけること!次に、精神的支柱になれるだけの懐さを持った人間であること!そして何よりメンバーから尊敬される存在であること!」
にこ先輩の熱烈なスピーチに圧巻する。
「この条件を全て備えたメンバーとなると!」
「海未先輩かにゃ?」
「何でやねーん!」
「私が⁉︎」
「そうだよ、海未ちゃん。向いてるかもリーダー。」
穂乃果も凛の意見に賛同する。しかし、海未は複雑そうな表情を浮かべる。
「あなたはそれでいいのですか!」
「えっ?何で?」
「リーダーの座を奪われようとしているのですよ!」
「それが?」
「……あなたは何も感じないのですか?」
「だってみんなμ’sやっていくのは変わらないでしょ?」
「でも、センターじゃなくなるってことですよ。」
穂乃果と海未の話に前のめりになって割って入る花陽。アイドルを知ってる花陽だからこそセンターにこだわらない穂乃果は不思議に映るだろう。
「あぁ。」
穂乃果は腕を組み、悩む。
「まぁいいか。」
「「えー⁉︎」」
「穂乃果!何考えてんだ!」
普通なら喉から手が出るほどのものを簡単に手放すなんて……。俺も声を大きくしてしまう。
「まぁまぁ、そういうわけで海未ちゃんがリーダーってことで!」
「わ、私には無理です。」
みんなの反応を無視して勝手に海未をリーダーに決めるが海未は何処か自信がなさそうだった。
「面倒な人。」
真姫も呆れて物も言えない感じ。
「じゃあ、ことり先輩?」
「でも、ことり先輩は副リーダーって感じだね。」
確かに花陽と凛の言うことはわかるような気がする。ことりはあまり前には出ず、後ろでみんなを支えているイメージが強い。
「一年生がリーダーってのもね。」
「しかたないわね。」
「それならさ!」
花陽の言葉をきっかけに穂乃果がある案を出す。
「たっくんがリーダーって言うのは!」
「却下。」
「どうして?」
「コーチがリーダーっておかしくない?それにアイドルでもないのにセンターってダメだよ。」
俺は速攻で否定する。しかし、口ではこうは言ってるが俺自身も海未と同じようみんなを引っ張る自信がない。
「そうだよね。」
「結局、誰がいいのかにゃ?」
「しかたないわね。」
「私はやっぱり穂乃果ちゃんがいいと思う。」
ことりは穂乃果を推し。
「しかたないわね!」
「私は海未先輩を説得するほうがいいと思うわ。」
真姫は海未を推し。
「しーかーたーなーいーわーねー‼︎」
「やっぱり、本間さんにやってもらうのも……」
「まぁ、最終手段にね。」
海未は俺を推す。
「しかた……ないわね‼︎」
結局、話は平行線のまま、持ち越されることになった。
♢♢♢
「なら、歌とダンスで決着をつけるわよ!」
「ケッチャコォ…ん"ん"決着?」
というわけで俺たちはセンターを決めるためとして、カラオケに来ている。ちなみに初めてのカラオケに緊張している。
「一番歌とダンスが上手いものがセンター。どう?それなら文句ないでしょ?」
「まぁ、単純でいいんじゃないかな?」
確かにあーだこーだ話し合うよりかはスムース決まるかなと考える。にしてもやけにはりきってるな、にこ先輩。
「でも、私カラオケは……」
「私も特に歌う気はしないわ。」
「なら結構。リーダーになる権利が消失するだけだから。」
煽るかのように表情で海未と真姫に言い放つにこ先輩。
「ふふ、こういう時のために高得点の取れるものは既にチェックしてるわ。これでリーダーの座は確実に!」
裏で何やら企んでるにこ先輩の他所に、みんなは自分たちの歌いたい歌を端末で探している。
「って、あんたたち!少しは緊張感を持ちなさい!」
にこ先輩の怒号がカラオケボックスに響き渡るが誰一人として届くことはなかった。
♢♢♢
「き、緊張しました。」
海未が歌い終わり、採点中の画面が現れる。
「おお、海未ちゃんも93点。」
「これでみんな同じ点数だね。」
「毎日、練習してるものね。」
いやいや、毎日練習してるからって簡単に90点以上とか出るわけないでしょとにこは思う。
「ば、化け物か。」
思わず、本音を呟いてしまう。あまりにも予想以上の出来事により、私は驚きを隠せない。これではにこのセンターの夢が閉ざされてしまうと焦燥感に駆られる。
「真姫ちゃんが苦手なところとか、教えてくれてるしね。」
「べ、別に、大したことじゃ。」
「真姫、照れんなくていいよ。それに比べて……」
拓人が点数表と私をチラチラと交互に見る。
「な、何よ!」
「いや、25点って……流石に……ね。」
私は小馬鹿にされて、少々頭に血がのぼる。そしてこう言ってしまった。
「なら、拓人!あんたも歌ってみなさいよ!」
「ヴェェェェェ⁉︎」
拓人に歌えと言うと、何故か真姫が驚いた。いや、幾ら何でも真姫が驚く要素はないでしょ。」
「別にいいけど。」
「ならきま「ちょ、ちょっと時間とか大丈夫なの?」
「ねぇ、真姫ちゃん?さっきから様子が変だよ?」
ことりが不思議そうに問いかけるも、真姫は何も言おうとはせず。
「と、とにかく、もう出たほうがいいじゃない?」
ただただ、カラオケから出たがろうとしている。……一体何があるのかしら。深く疑ってる。
「真姫ちゃん。そんなにたっくんの歌が聞きたくないのかにゃ?いくらたっくんのことが好きでも「そんなんじゃないわよ!」
普段、クールな真姫がこんなにも慌てふためく姿を見て、相当重要なことだと確信した。照れとか恥ずかしさとは違う、もっと重要なこと。
「たくにぃには絶対にやらせてはいけないのが2つあるの!1つは人前で何かをさせること!2つ目は……」
すると、ある曲のイントロが流れ、聞こえてくる。
「お、終わったわ。」
ガックリと膝をつき、地面に座る真姫。
「真姫ちゃん?拓人さんってまさか⁉︎」
花陽が上の空の真姫に話を聞くために問いかける。すると、ある答えが返ってきた。
「そうよ、たくにぃは超がつくほどの。」
『真夜中の加賀美に〜自分をうっつしーたら』
「音痴よ。」
みんなが拓人の何とも言えない歌声を聴き、何とも言えない気持ちになる。
「へ、下手ではないような……」
「そ、そうですね。これも本間さんらしいと言うか……」
「ここまで微妙だと、逆にすごいにゃ。」
ま、まあ、音痴ではないと私も思うわ。ただ……
『病院 in my heart』
ねっとりとした歌声で若干棒読みって……
『つっよくなっれる♪』
「評価しづらいわー‼︎」
『辛☆味☆噌』
因みに拓人の点数は7.53点だったわ。
♢♢♢
「次はダンス対決よ!」
次はゲームセンターに来た。いや、久しぶりに歌うと気分がすっきりする。なんか皆のテンションが低くなってたけど。
「使用するのはこのアポカリプスモードエキストラ!」
にこ先輩がそのダンスゲームの機体を指差す。こんな所でも踊れるのかと少しだけ感心する。
「じゃあ、やってみようかな。」
「そういえば、拓人さんのダンスって見たことないかも。」
花陽がポツリと呟く。確かに、みんなの前で指導するためにちょっとくらいしか踊ってなかったなと思った。まっ、いいか。
サイフから200円を入れる。
これから魅せるしね。
「プレイ経験のない素人がまともな点数は出ないわ。いくらUTXの生徒でもこれは……」
にこ先輩が傍で何かを言ってるのが気になったが、とりあえず画面を見つめる。
そして、音楽が流れ、画面にどう踊るか指示が出る。
右と左とか色々な指示が出る。それもとてつもないくらい速さで。それでも、余裕だ。ただ音に身を任せて体を動かす。そうすればどうやればいいかは直感的にわかる。
「す、すごい……」
「こ、これがたくにぃのダンス……」
俺の踊りにみんなが徐々に魅入られていく。そうだ、ドンドン魅てくれ。俺のダンスはまだこんなもんじゃない!
さらに動きを激しく、キレをつけていく。人前で何かをするのは昔からあまり好きじゃなかった。ただ、ダンスだけは違った。踊ってる間はとても心地よくて、楽しい。
「ターンして終わりだ!」
最後に華麗ねターンを決め、ダンスを終える。
「す、すごい!」
「これは!」
気がつくと、みんなから感嘆の声が挙がる。それだけでなく、いつの間にかに道行く人たちが集まっていて、拍手が上がっていた。
「たっくん!すごくかっこよかったよ!」
「ありがとう、穂乃果!」
この達成感とみんなから褒められる爽快感。これがあるからダンスは止められない。
しかし、この出来事が後に厄介な問題になることを俺は知るよしもなかった。
♢♢♢
「スクールアイドルのμ’sです!よろしくお願いします!」
ゲームセンターから出て、俺たちはビラ配りをしていた。カラオケ、ダンスとやって来たがイマイチ差が開かず、リーダーを決めるのが難しかった。そんな状況で一番リーダーへの道が遠いにこ先輩があることを提案した。
『なら最後はオーラで決めるわ!』
先輩曰く、歌が下手、ダンスも下手でも人を惹きつけるアイドルがいる。だから最後にみんなのオーラを見極め、リーダー決定の材料にする。というわけのが現在までの経緯。そして、みんな順調にチラシを配っていく…にこ先輩を覗いて。そんななか、俺は…
「何が?どうして?こうなった?」
周りにはたくさんの女性に囲まれて身動きが取れずにいた。チラシ配る場合ではなかった。
「あのサインください!」
「メアドください!」
「写真撮ってもいいですか?」
俺はアイドルじゃないのに、みんなより目立ってどうするんだよ。心の中で悲痛の叫びをあげる。だが、そんな叫びは誰にも届かず…
「おお!たっくんすごい!」
「確かにあれはすごいですね。」
「類い稀なるオーラの持ち主!すごいです!」
「見てないで、ダレカタステー!」
「チョットマッテテー!」
それから数分後、みんなのおかげで人混み中から救出された。服は少ししわが出来て、髪の毛はボサボサ。どれほどものだったかと改めて伺える。
「し、死ぬかと思った。」
「大袈裟すぎよ。」
髪の毛をくるくると巻き、愛想をつかす真姫。といってもぴったりと隣についているあたり、よほど心配だったのか。
「そういえば、チラシ配りはどうなってる。」
「はい、大体は順調に進んでいます。」
「大体……あっ。」
にこ先輩を一瞥する。そこには生気がなくただ佇んでいるにこ先輩。
「……ま、まぁそういうこともあるよ。」
苦笑いを浮かべる。
「ちょっと離してください!」
「いいじゃんかよ〜」
突然、ことりの可愛らしい声に恐怖が混じったものが聞こえた。その方向をみると、いかにもガラの悪い3人組の男がことりの引っ張っていた。
「おい!」
「あぁん?」
「そんな汚い手でうちのアイドルに触れるな。」
殺意を込め、キッと睨みつける。ガラの悪い男達は一瞬だけひるむが、御構い無しにと襲いかかってきた。
「なんだとぉ!生意気な!」
俺の顔に目掛けて拳が向かってくるが、かわしてその手を掴み、背負い投げ。もう1人の相手は回し蹴りで地面に叩きつけ、最後の相手は足を引っ掛け、寝技で関節を外す。
「たくにぃ!後ろ!」
真姫の注意が聞こえ、振り向くひまないままその場から離れる。すると、硬いもの叩きつける音が鳴り響く。
「よお、よくも俺の子分を可愛がってくれたなあ。」
横も縦もゆうに2倍もある大男が鉄のパイプを持ちながらこちらを睨みつける。さらに後ろには4人の男。その中の1人はにこ先輩を人質にとっていた。
「にこ先輩!」
「くそっ!」
みんながにこ先輩の名前を心配そうに言う。俺がもっとしっかりしていれば。
「このチビもてめぇらの仲間だろ?」
「先輩を離せ!」
「てめぇが死んでくれるならな。」
「拓人!こんな奴らの話なんて聞かなくていいわ。」
「黙ってろ!」
にこ先輩を拘束していた男が頬を引っ叩く。それを見た瞬間、俺の中で繋ぎとめていた何かがプツリと切れた。
♢♢♢
にこ先輩が打たれた瞬間、本間さんは突然、男達の方へゆっくりと歩き出しました。
「おい、てめえ!止まれ!こいつがどうなってもいいのか!」
普通なら興奮させないために相手の言うことを聞くのですが、本間さんは歩みを止める気配がありません。
「だから止まれって!」
1人の男が本間さんの前に立ちはだかります。この瞬間、私は異様な雰囲気を感じ取りました。言うなれば殺気。それも尋常じゃないほどの強さ。武道を嗜んでる身として、試合などでらわずかながら殺気を感じることがあります。ですが、あくまでも相手を倒す。そんな程度のものです。しかし、今の本間さんには……明確な殺意を感じます。
「この野郎!いい加減に!」
次の瞬間、その男は本間さんに足を引っ掛けられたことにより、地面に仰向けに倒れてしまいます。そのあまりにも突然のことで理解が追いつきません。まして、その男は本間さんよりも体格も大きい。そんなのを簡単に倒れさせる本間さんは……。
そして本間さんは倒れた男の顔を力強く踏みました。
「田中!貴様!」
仲間の様子を見て、リーダー格の男を含む3人が本間さんに襲いかかります。そしてリーダー格の男は鉄のパイプを振り下ろしますが、簡単に避けられます。攻撃し終わった隙を見て、本間さんはリーダー格の男の左手を掴み関節を力づくで外し、離した鉄のパイプを手に入れ、そのまま、リーダー格の男の左の側頭部を殴りました。
「た、くとさん……」
花陽が口に手を当て、唖然とその光景を見ていました。他のメンバーもただ見守ることしかできませんでした。
「ま、待て!話を聞いてくれ!話を‼︎」
先程までの強気な態度は微塵も感じないくらい、怖気づいたリーダー格の男。ですが、命乞いを聞き入れもしない本間さんは無言のまま、鉄のパイプを振り上げます。
「本間さん!それはいけません!」
「たっくん!」
全員、慌てて本間さんを止めようと詰め寄ろうとしましたが間に合うような距離ではありません。そして、本間さんは鉄パイプを振り下ろそうとするのを見て、私は思わず目を閉じてしまう。
3秒程たった後に目を開くとリーダー格の男はズボンをビショビショに濡らす姿と振り下ろそうとしたパイプを誰かに止められている本間さんがいました。
「おいおい、いくら何でもやり過ぎだろ。」
鉄パイプを止めている男の人は本間さんに静かに語りかけます。その男の人は何だか不思議な雰囲気を醸し出して、かつ季節外れの黒いコートを身にまとっていました。
「て、てめえは!」
「あん?って、お前らか。まーた、女の子に手ェだしてんのか。懲りない奴だな。」
不良の方とはどうやら知り合いらしく、呆れたように言います。
「悪いことは言わん。早くどっか行きな。」
「わ、わかった。」
男は素直に言うことを聞き、倒れた他の仲間を担ぎ、どっかに逃げていってしまいました。
「おい、終わったぞ。もうこんなもんいらねぇだろ。」
コートの男は本間さんから鉄パイプを取り上げ、適当に投げ捨てる。
「……すまない。気が狂った。」
いつもの本間さんに戻り私たちはとりあえず安心する。あのまま止められていなかったら……。最悪の状況が思い浮かぶ。
「あ、あのみんなごめんね。私のせいで。」
「ことりのせいじゃないよ。悪いのはあいつら。……ただ、俺もやり過ぎた。」
全体が気まずい雰囲気になる。そんな空気を破るようににこ先輩が喋り始めました。
「それならにこだって、あんな奴らに捕まったことにも責任があるわ。でもね、拓人の言うとうり、悪いのはあいつら。だから私たちが責任を感じる必要はないわ。幸い、誰も傷ついたわけでもないしね。あなたもそう思う?爽馬。」
「そうだな。にこの言ったとうりだと思う。まぁ、終わりよければ全て良しってか。」
2人の一言で何とか全体の雰囲気が柔らかくなりました。……って
「お二人共、お知り合いなのですか?」
「まぁ、腐れ縁みたいなものよ。」
「そりゃあねぇだろ。せっかくのお前の初めて何だからな。」
「「「初めて⁉︎」」」
みんなの驚き声が重なり、爽馬と呼ばれる男はびっくりします。はて、初めてって何のことでしょうか?
「初めてって……2人は!」
「違うわよ!初めてのファンだってことよ。」
「何だ。よかった〜。」
ことりは安心したように胸を撫で下ろす。どうしてそんな安心するのでしょうか?
「そ、そうですよね。アイドル意識の高いにこ先輩がスキャンダルをおこすはずないですよね。」
「まぁ、俺自身もこんなロリボディに興味ないしな。どちらかと言うと君みたいなロリ巨乳がいい。」
と花陽を見ながら話します。いい人だと思っていましたが女性に対してこんなハレンチなこと言う人なんて。失望しました。
「また、あんたはそういうこと言って。あいつがいるでしょ。」
「いやいや、絵里は全ッ然可愛くないし、無愛想だし怖いからなぁ。」
「へぇー、私のことそう思ってたのね。」
「う……え、絵里⁉︎」
後ろには眉をピクピクと動かす生徒会長、絢瀬絵里先輩がいました。
「ち、違うだ……こ、言葉のあやだよ。絢瀬だけにって……」
「はぁー。まぁいいわ。その代わり、クレープ2つね。それより……」
絵里先輩は冷ややかな目でこちらを睨みつける。
「勝手に校外で活動されると困るのだけども。」
「す、すみませんでした……」
絵里先輩の高圧的な態度に思わず穂乃果も後ろに退いてしまう。
「まったく。今回は運が良かったのだけど、あのままだったらどうするの?」
絵里先輩は本間さん。汚物を見るかのように一瞥する。その目線に気づいた本間さんは、バツの悪そうに目線を逸らす。
「廃校の阻止どころではないのよ。あなたたちのそのくだらないアイドル活動のせいで人生を棒に振るところだったのよ。」
「ちょっと待て。アイドル活動って言ったな。」
「爽馬!今は私が話してるの!」
「説教なんてお互い得がねぇんだから終わり。それよりにこ。これはお前のアイドルグループなのか?」
重苦しい雰囲気の中に無理矢理割って入る爽馬さん。何というか……あの絵里先輩の話を中断するなんて、ただならぬ人ですね。
「え、えぇ、そうだけど。」
突然、180度方向転換した話を振られ困惑するにこ先輩。そして、返事を聞いた爽馬さんはにこ先輩をぎゅっと抱きしめる。
「え⁉︎」
予測不可能な行動に全員が驚きを隠せない。
「ちょっと、爽馬!離しなさいよ!」
「良かったな、にこ!本当なアイドル活動復活なのか!」
端から見れば不審者に見えないのですが……。この人は何というか、分け隔てない人のなのですかね。そして、爽馬さんはにこ先輩をパッと離す。
「ほんとっ!本当に良かった!また、にこの華やかな姿が見れるなんて……」
にこ先輩を離したかと思えば、急に泣き始める。
「まったく、あんたは忙しい人ね。」
にこ先輩は呆れたように言っていますが、表情はどこかほころんでいるようでした。
「だってよ、本当に嬉しいだからしょうがねぇだろ!いやー、またグッズとか買い集めないとなぁ〜。給料日が待ち遠し……」
すると、爽馬さんは何かに気づいたかのようにフリーズする。そして、急に大きな声で喋り始める。
「おい!絵里!早くしねぇとクレープ売れ切れちまう!」
「何でこの状況で気づくのよ……」
頭を押さえて、呆れるように呟く絵里。なんかすごい振り回されていますね。
「と、言うわけでにこ……そこにみんなも頑張れよ!後、そこの男子、これからは気をつけろよ!んじゃな!」
「ちょっと、待ちなさいよ、爽馬!」
2人は颯爽とその場を後にして何処かに行ってしまいました。その2人がいなくって、この場所はまるで嵐が過ぎ去ったように静かになる。
「な、何かすごい人だったね。」
「まぁ、爽馬はそういう人だから。」
穂乃果の感想ににこ先輩は抽象的に答える。確かに第一印象はすごい人だと私も思いましたが。
「それじゃあ、この後どうしましょうか?」
「まぁ、解散でいいんじゃないかしら?たくにぃもあんな状態だし……」
みなさんが一斉に本間さんのほうを見る。本間さんはずっと、暗い顔佇んでいました。
「あんたねぇ、いい加減に引きずるのはやめなさいよ。」
「いえ、違うんです。にこ先輩。もう、あのことは大丈夫ですから……」
そう言って、本間さんは考え事をしている表情に変わる。
「拓人君?どうしたの?」
「いや、やっぱ何でもない。それより……うっ!」
本間さんが突然、足元をふらつかせる。どうしたのかと、私は歩み寄ろうとした時、視界がボヤけてしまい、よろめいてしまう。
「み、みんな!」
朦朧とする意識の中で聞こえてきたのは本間さんが私たちを呼びかける声でした。
♢♢♢
周りの人々が次々に倒れていく。
「真姫!みんな!」
μ’sの面々も気を失い、その場に倒れてしまう。
「ッつ!クソオーガ…」
空を見上げると、バットオーガが浮遊していた。大きな羽と一緒になった爪。大きな耳、豚鼻に鋭い目。その姿はまるで悪魔のよう。
「ビリュウウウウウ!」
そして、最大の特徴はこの超音波。これを受けたものは余程、耐性がない限り、数秒の内に気絶してしまう代物。
《Disk On》
ポケットからドライバーを取り出し、腰に巻く。そしてディスクをセットする。一刻も早く、こいつを止めなければ。
《Install》
「変身‼︎」
《Lord Rider Force》
白銀の鎧をまとい、仮面ライダーフォースとなる。
《Lord Weapon》
フォースセイバーを取り出し、銃形態にする。そして、浮遊するバットに銃口を向け、銃弾を浴びせる。しかし、俺自身の銃の腕前、何よりバットの回避能力の高さにより、なかなか攻撃を与えることが出来なかった。
「ギャワガ」
バットが体当たりするように攻撃を仕掛けてきた。これをチャンスと思い、接近するバットに引き金を引く。だが、いとも簡単に避けられる。
「チッ!」
バットの体当たりを左からに避ける。そして、片膝をついてバットの背後に狙いを定める。しかし、バットは急旋回。引き金を引く間もなく、体当たりを食らわせられた。
「あっ、ぐっ!」
衝撃で地面に倒れると、バットは馬乗りになって、爪で切り裂いていく。鎧に火花が散る。そして、大きく口を開ける。まさか!この至近距離で!
咄嗟にフォースセイバーを変形させ斬りつける。しかし、紙一重で避けられる。
「ビリュウウウウウ」
そして、バットは至近距離で超音波は発生させた。いくら、耐性があるといったって、至近距離でくらえばただではすまない。案の定は三半規管がやられ、平衡感覚がつかめなくなっていた。
「くそっ!」
フラフラとしながらも立ち上がり、バットに立ち向かうも、猛攻により、身動きが取れない。空からの体当たりは数え切れないくらい受ける。
「はっ…ぐっ…」
《Lord Metal》
朦朧とする意識の中で、メタルディスクをセットし、バットの攻撃を防御する。しかし、これが何時までもつか。攻撃を堪えながら、対応策を練る。どうバットに攻撃を与えられるか…あの動きをどうすればいいか。…待てよ、今の状態を考える。…なんだ簡単なことじゃないか。
バットが旋回し、またしても体当たりをしてくる。段々と迫ってくる悪魔。俺はそれを受け止めた。
「グギャア⁉︎」
動きを止められたバットは脱出しようともがく。だが、こんなチャンスを逃すことはしない。左手で首を掴み、右手で顔面に思い一撃を与える。バットは吹っ飛ばさるも空中で、体勢を立て直し、高く飛び立つ。
「アグググァァォ‼︎」
怒りを露わにするバット。
《Lord form Splash》
俺は新たなディスクをセット。鎧から水蒸気に包まれる。 水蒸気が消えるとフォースの姿は水色に変化していった。
仮面ライダーフォース スプラッシュフォー
遠距離を得意とする、トリッキーなフォーム。
「さぁ、狙い撃つ‼︎」
両手に握られた二丁の拳銃、スプラッシュリボルバーを構え、バットにひたすら引き金を引く。バットは避けるも、多数の銃弾を全て避けられず、2、3発当たり、地面に落ちる。引き続き、引き金を引き続け、砂塵が舞う。その砂塵からおぼつかない足取りではあるが、バットはこちらに向かってきた。遠距離向きのスプラッシュフォームでの近接戦は不利だ。なら距離を取ろうと後退するべき。だか、あえて俺はバットに向かっていく。
《Lord Gel》
バットと接触する寸前、俺の体はゲル状に変化し、バットを通りすぎる。スプラッシュフォームでしか使えない変化形のディスク、ゲルディスクの力だ。
そして、元の体に戻り、バットの後ろを取る。そして、手元にある2つのスプラッシュリボルバーを連結させ、後ろに繋がっているほうのリボルバーにスプラッシュディスクをセットする。
《Reload Splash FFForce》
バットが振り向いた瞬間に引き金を引く。銃口から大きな水の銃弾が発射される。バットはその銃弾を避けるため、右に避ける。しかし、そう簡単には逃げられない。銃弾はバットを追尾。そして、バットに当たる瞬間、銃弾は弾け、水飛沫を撒き散らす。バットはその無数の水飛沫が貫ぬかれ、体に無数の穴が開く。
そして、爆発四散。
「なんとか、終わった。」
ずっしりと覆い被さってくる疲労を感じながら安堵の息を漏らす。そして、変身を解除しようとした!
「はぁつ‼︎」
その時、後ろから何者かに斬られ、地面にうつ伏せになる。
「今度はなん…だ。」
起き上がって、斬った相手がいるだろう後ろを振り向く。俺はその姿に目を丸くする。
「お…お前が⁉︎」
黒い姿にマント。鬼のようなツノの姿。
「さぁ、因縁に決着をつけようぜ‼︎UTXのライダー‼︎」
都市伝説の黒い仮面ライダーが殺気を露わにこちらを睨みつけていた。
やっと爽馬が本編に絡んできました。個人的に拓人よりお気に入りのキャラなので書いてて楽しいです。
にこたちの関係を見る限り、本編開始以前に何かしらの関わりが?暇があったら爽馬も3年生組が1年生の時の話を書きたいと思ってます。