仮面ライバー 守れ!女神たちの夢!   作:シママシタ

16 / 48
交錯

時間は少し遡る

 

「マジで2つも買わされるとは………」

 

「しょうがないでしょ。むしろクレープ2つで許すんだから感謝してほしいわ。」

 

薄くなった財布をピラピラと振り、意気消沈の爽馬。対照的に絵里は上機嫌にクレープを頬張る。μ’sのメンバーと別れた後、予定どうり2人はクレープ屋に向かった。そこで、絵里は爽馬が自分の悪口を言ったということをダシにクレープを2つとねだった。そのため、断ろうとも出来ず、渋々爽馬は了承するはめとなった。」

 

「はぁー、まぁいい。今回は俺が悪かったと反省するさ。それよりさ。」

 

「何?」

 

「にこ達へのあたりが強すぎないか?」

 

絵里の上機嫌な表情が一瞬でキツイ表情へと変わる。爽馬はそれに気づきながらも納豆味のクレープを頬張りながら続ける。

 

「希から聞いたぜ。にこ達のこと、あまりよく思ってないんだってな。」

 

「だから何?」

 

「あいつらも廃校阻止するために行動してるんだっけ?絵里とは同じ目的なんだから何も目の敵にする必要はないんじゃないか?」

 

「それは爽馬も同じでしょ?」

 

「俺はUTXに恨みがあるから違う。絵里は何もされてないだろう。」

 

「そ、そうだけど……」

 

「なぁ、本当はあいつらと一緒に……ん?」

 

爽馬は突然、道端に止まり、何かを感じ取る。

 

「どうしたの?爽馬?」

 

「絵里、耳を塞げ。」

 

「えっ?」

 

「いいから!早く!」

 

その強い口調に反応し、絵里は咄嗟に耳を塞ぐ。その瞬間、周りにいた人々がバタバタと倒れていく。

 

「何……これ……」

 

そして、絵里の頭上に1つの黒い影が通りすぎる。

 

「バットオーガの超音波だ。」

 

地面に膝をつき、頭を押さえながら爽馬は告げる。その姿を見て、絵里は一目散に爽馬のもとに駆け寄る。

 

「大丈夫⁉︎爽馬⁉︎」

 

「ちくしょう。耳、塞いだってのにこのザマか。まったく、耳が鋭すぎるのもあれだな。あー、耳がキーンとする。」

 

爽馬も耳を塞ぎ、超音波に備えてた。しかし、人の何倍もの鋭い五感を持っているため、耳を塞いでも超音波が聞こえしまったらしい。

 

「とりあえず、バットを追わなきゃな。」

 

「そんな体じゃ無茶よ!」

 

「んなことわかってるけど、俺が行かねぇでだれが行く?俺は仮面ライダーなんだ。自分を犠牲にしてでも戦わなちゃいけねぇんだ。」

 

口調はいつも通りにくだけた、軽い調子。しかし、その目は覚悟と決意に満ちていた。

 

「……わかった。でも、もう少し休んでからならいいわ。」

 

こうなってしまっては爽馬は言うことを聞かない。いつものことと絵里は割り切る。しかし、この後、珍しく言ったことを取り下げることになる。

 

「……そうだな、少し休もう。」

 

突然、周りが空気が一気に凍てつくような感覚に囚われ絵里は身震いをする。それと同時に爽馬の様子も何か、殺気めいた空気を漂わせていた。

 

「どうやら、もう1人の仮面ライダーが現れたらしいからな。」

 

顔を見られないように押さえながら、爽馬は静かに呟いた。

 

♢♢♢

そして時は戻る

 

「お前が……都市伝説の仮面ライダー⁉︎」

 

フォースとなっている拓人は変身したまま、同じように仮面ライダーファントムとなっている爽馬に問いかける。しかし、爽馬は無言のまま、尻餅をついた拓人を見下す。

 

「何で俺を攻撃した!お前も仮面ライダーじゃないのかよ!」

 

「そうだ!一応俺もオーガと戦う仮面ライダーだ。だがなぁ、同じ方向を向いてるからって味方というわけではないぜ!」

 

そう言って、ファントムはファントムセイバーの刃を向ける。その刃を向けられたフォースは咄嗟に立ち上がり、右手に握られた銃も同様に向ける。

 

「それに俺にとっちゃ、オーガもUTXも同じ敵。なら、急にふっかけてきてもおかしくないだろ?」

 

「どういうことだ⁉︎UTXが敵って……何があった!」

 

「ふん、やっぱり俺のことを知らないんだな。だからこそお前らが許せないんだよ!」

 

殺気を放ちながら、ファントムはフォースに刃を振う。フォースはかわそうと試みるもその速い斬撃から逃れるとは出来なかった。

 

「グッ!」

 

後ろに吹っ飛ばされ、運良くファントムとの距離を開けたフォースは両手に握られた銃を乱射する。しかし、ファントムは銃弾を軽い身のこなしで避け、さらに刃で銃弾を斬り、攻撃を無力化しながらフォースに迫る。

 

「銃でダメなら!」

 

《Lord Form Fire》

 

スプラッシュディスクからファイアディスクへと変え、接近戦へと戦い方を変える。そして、迫り来るファントムを迎え打つため、一気に攻め込む。

 

「ハアッ!」

 

「ラァァ!」

 

両者が同時に刃を重ね、鉄が交わる音が街中に響き渡り、つばぜり合いが始まる。

 

「ハァァァァァ!」

 

フォースが徐々に押し出していき、それをファントムは踏ん張って耐えようとしている。

 

「チッ!流石、最新型だな。スペック上では勝てそうにないな。だが!」

 

次の瞬間、ファントムはフォースの刃を受け流す。そして、支えるものがなくなった。フォースは前のめりになり、バランスを崩してしまう。

 

「お前より長く戦ってる分!経験が違うんだよ!」

 

フォースの背中に向け、ファントムは回し蹴りを決める。

 

「グハッ!」

 

渾身の蹴りが直撃したフォースは地面に叩きつけられ地面に伏せる。直様起き上がろうと試みるも、予想以上のダメージとバットからの連戦による疲労が蓄積されていたため、上手く起き上がることは出来なかった。

 

「自分の不幸を呪え、UTXのライダー。」

 

刃を立て、今にも止めを刺そうするファントムを上目遣いに見る。肌に突き刺さるくらいに感じる殺気と歴戦の戦士の風格を漂わせるその姿を見て、死を覚悟する。

 

「遺言くらいは聞いてやる。まぁ、命乞いでもいいけどな。」

 

「そうか、じゃあ、見逃して欲しい。俺にはやるべきことがまだたくさん残ってるから。」

 

「はは、本当に聞いてやると思ってるのか⁉︎」

 

「だよな。それならお前を倒して生き延びるだけだ!とにかく俺はまだ死ねない。この手でオーガを全て殺し尽くすまで。ここで死んだら俺があの日犠牲になったあの人達の行為が全部無駄になる!」

 

「あの日?」

 

「あの人達の為に俺は戦う!そして、これからも誰も悲しませないためにも俺は!」

 

《Over lord Rider FFForce》

 

満身創痍になりながらもフォースは立ち上がり、マスク越しにファントムを睨みつける。そして、ディスクを回し、最後の賭けに出る。

 

「ニャロォ。まだ、こんなに力を残してるとはな。」

 

ボロボロの状態でも鬼のような気迫を漂わせるその姿を見て、ファントムは危険を感じ、同様に賭けに出る。

 

「こっちも必殺技で対抗できるならしたいが、スペック的に無理だからな。……行くぜ!」

 

《Lord Speed》

 

「先手必勝!」

 

スピードディスクで高速に移動できるようになったファントムは一気に力を溜めているフォースの懐に潜る。

 

「何⁉︎」

 

フォースが気づいたときには遅く、鎧をもひびを入れるファントムの拳が直撃していた。そして、後方に吹っ飛ばされる。

 

「グ………アッ……」

 

「これで、本当に終わりだ。散れ!」

 

刃がフォースの喉元にめがけて

 

「止めて!」

 

2人の間に天使の声が発せられる。

 

「なっ⁉︎」

 

「き、君は!」

 

2人の間にはことりか体を大の字にして、フォースを庇っていた。

 

「お前!何をしているんだ!これは撮影なんかじゃないだ!本当に戦ってるんだぞ!」

 

「……よかった。私のこと、覚えててくれてたんですね。」

 

死んでいたかもしれないという恐怖を感じ、足を震わせながらも、できる限りの笑顔をことりはファントムに振りまく。

 

「そ、そりゃあ……って今は関係ない!そこを退け!俺はそいつを殺さなきゃいけないんだ!」

 

「どうして?2人とも、あの怪物からみんなを守るヒーローなんですよ!私はヒーロー同士が戦う姿なんか見たくない!」

 

「こ、ことり。」

 

いつもははっきりと主張することは少ないことりがこうやって戦いを止めようとしている姿を見て、フォースは驚きを隠せずにいた。

 

「俺が……ヒーロー……」

 

「うん。だって、ことりを助けてくれたじゃないですか。」

 

ことりの一言によりファントムの動きが止まる。

 

「……助けてくれたからヒーロー。ヒーローだから、ヒーローを殺せないか。なら、今、ここで君を殺せば俺はヒーローじゃなくなるよな。」

 

「お、お前‼︎」

 

ファントムは冷ややかに一言を告げ、立ちはだかる壁を切り裂くため、刃を振り下ろす。

 

「クソッ!間に合え!」

 

フォースは先程溜めを力を敵に向けては使わず、地面を蹴るために使う。その力強い踏み込みは爆発的に瞬発力を生み、一瞬でファントムへと迫った。

 

「こいつ!」

 

そして、フォースの一矢報いのタックルを与えられ、ファントムは吹っ飛ばされる。強い衝撃に目眩を覚えながらもファントムは直様、立ち上がり、地面に伏せるフォースを睨みつける。

そのフォースはoverlordの負荷によって動けない状態であり、止めを刺すには絶好の機会だった。

 

「……く……やら………せ……わ……」

 

「白いライダーさん……」

 

ゴキブリのように粘り強い、生命力と精神力でことりを守ろう刃向かう姿を見て、ファントムは姿を見て、雲がかかるような気分になり、その不快さから舌打ちを打つ。

 

「………今回だけだ……」

 

「え?」

 

「その女の子の勇気に免じて今回は見逃してやる。だがなぁ……次はないぞ。」

 

そう言うと、ファントムは近くに止めてあったバイクに乗り、あっさりとその場を去ってしまった。

 

「……山場は超えたか。」

 

「あ、あの白いライダーさん……大丈夫ですか?」

 

フォースの元に引きつった顔をしたことりが詰め寄る。相当無理をしたのだろうとフォースは思い、できれば慰めてやりたいと思ったが、ことりの行動は一歩間違えれば危険な目に遭っていた。また、同じことをしないようにと叱責する。

 

「大丈夫。それより君。もう二度とこんな危険なことをするんじゃない。」

 

「だって私……」

 

「君には助けられた。それには感謝する。だけど、君が傷ついてしまったら、俺が戦う意味がなくなっちゃうから。」

 

《Lord Invisible》

 

フォースはインビジブルで透明になり、その場から立ち去った。

♢♢♢

重症の状態で何とか人のいない小さな路地に逃げ込んだフォースは、人がいないことを確認し、変身を解除し拓人へと戻った。その瞬間、その場に倒れこむ。

左右を壁に囲まれた、空間に激しい息づかいが響く。拓人の体には無数の傷、さらにそこから出血もしていた。

 

「は、はやく……処置しないと……」

 

しかし、ライダーシステムと責任という支えがなくなった拓人は指一本動かす力はない。自分はここで死ぬのかと不安にかられるがそれはすぐに掻き消される。

 

「たくにぃ‼︎」

 

「ま……き…」

 

足音を響かせながら、急いで拓人の元へと駆け寄る真姫。とりあえず真姫が来てくれたことで拓人はホッと一安心する。

 

「すごい傷……。待っててとりあえず応急処置はするから。」

 

真姫はバックからハンカチと消毒液を取り出し、染み込ませる。そして、傷口に当てて殺菌する。

 

「いつっ!」

 

「ちょっとは我慢して。」

 

そして、包帯を取り出し、拓人の体に巻きつける。必死になる真姫を

見て、拓人は何処か浮ついた気分になる。

 

「これでいいわ。とりあえず応急処置は施したわ。でも、激しく動いてはダメよ。傷口が開いちゃうから。」

 

「悪いな真姫。というか何でそんな道具持っていたんだ。」

 

「そ、それは……医者の娘だからよ!どう?これなら辻褄が合うでしょう!」

 

顔は真っ赤で、髪を巻きながらそっぽを向く真姫を見て、素直になれよと思いつつ、その優しさに嬉しさがこみ上げる。

 

「そういえば、あの黒い仮面ライダー。敵だったのね。」

 

「ことりから聞いたのか。」

 

「えぇ、それにことりにも手をかけようとしたんでしょ?」

 

「あぁ、でも……」

 

あのライダーには何かがある。ことりもまき込んだことには流石に許せない。だが、ファントムはこのUTXに因果関係があり、そしてひどく恨んでいる様子だった。だからあの行動に何か大事な思惑が隠されてるいるのではないかと考えている。だから、次会った時にはもう一度を話をしたいと拓人は思っていた。しかし、真姫の大切な友達を危険な目に遭わされたことによる、怒りの表情を見て、一度その考えは片隅に置いておくことにした。

 

「いいや、何でもない。とにかく、次会った時は。」

 

「絶対に倒す。」

 

♢♢♢

「クソッ!俺は何をしてるんだ!」

 

誰にも廃工場で怒号と打撃音が響き渡る。

 

「UTXのライダーも殺せず、挙句に関係のない人を手にかけようとして!俺は狂ったのか!こんなんじゃあ、奴らと変わりはしないクズだ!」

 

気を晴らすために殴り続けた壁は凹み、血もついていた。

 

「爽馬……」

 

そんな爽馬の後ろ姿を絵里はずっと心配そうに見守っていた。最初、ことりに手をかけようとしたところを影から見た時は、愕然とし、バックに入っていた銃を取り出し、銃口を爽馬に向けた。あの時はどんな手を使っても止めようという思いでいっぱいだった。幸い、フォースの捨て身の一撃で、無駄な犠牲を出さず、戦闘は終わった。

その後、どうして無駄な人を殺そうとしたのか問い詰めようと、爽馬の元へ向かうとこの有様だった。

あれは復讐からの衝動的な行動をだったのだろう。どんな手を使っても殺そうと思いから生まれた哀れな行動。だから、爽馬はこうやって悔やみ、苦しんでいるのだと絵里は考えた。同時に爽馬の2年も蓄積された復讐心は生温いものではない。例え、自分を犠牲にしても成し遂げようとするのだろうと不安な気持ちになる。

 

だからこそ、絵里は思うのだ、

 

私が側で支えないといけないと。

 

「絵里……?」

 

「もう…….やめて。これ以上、自分を傷つけるのは……」

 

爽馬は背中に温かなものを感じ、自傷行為をピタリと止め、確認した。温かさの正体は絵里。後ろから抱きつかれ、体温が伝わっていることが原因だった。

 

「……だってさ、俺、人としてやっちゃいけねぇして……最低でさ……」

 

傷つけことしか知らないその手を止め、爽馬はうつむきながら、弱々しく本心をさらけ出す。

 

「大丈夫。私が側で支えるから。あなたが道を踏み外さないように側にいるから。」

 

爽馬の背中に顔を埋めながら、自分の決心を絵里は伝えた。

 

「ありがとな、絵里。」

 

爽馬は袖で顔を拭い、顔をパンと叩き、気持ちを入れ替えた。そして、先程の暗さが嘘だったかのように家に帰ろうとする。

 

「うしっ!元気でたー!んじゃ、帰るか。」

 

「うん!」

 

爽馬は一人歩き出し、その後ろを絵里は追うようについていった。だが、絵里は爽馬の背中を見て、不安を抱く。こんな元気に振舞っているが、それが無理をしているように思えたからだ。

♢♢♢

「おい、てめえどういうことだよ。」

 

次の日、傷が癒えていないにもかからわず、拓人は何事もなくUTXへと登校した。しかし、そこで頭を抱えるように事件が起きた。

 

「自主練しないで、遊んでるなんていいご身分だな。」

 

拓人の目の前には、昨日のダンスゲームで踊っている拓人自身が写ったスマホの画面がかざされていた。どうして、こんなものがあるのだと思ったが、あれだけの観客がいたのだ。1人くらい見られていてもおかしくないと、1人で結論付けた。

 

「それに、こんな可愛い女の子達とね。うらやm……調子に乗ってんな。」

 

「そうよ、本間君と遊べるこの子達が羨ましi……何でもないわ。」

 

別に遊んでたわけじゃないんだけどと心の中で坂路する。ただ、リーダーの決めの一環と言うにしても信じられるのか。確かにこの写真だけ見れば、遊んでるようにしか見えない。少なくとも拓人自身もそう思っていた。

 

「拓人……本当なのか?」

 

「三原……」

 

一番知られたくない相手2人がが現れ、拓人は少しだけ動揺する。おそらく、この2人は自分を軽蔑するのだろうと考え、それが嫌に感じる。

 

「本当!どういうこと⁉︎私を差し置いて浮気だなんて!」

 

「むしろその考えにいたることについて、どういうことか聞き返したいんだけど。」

 

深くため息を吐く。まったく、情報が広まるのが速いと現代社会を呪う。そして、もう言い逃れできないと考え、本当のことを言おうと覚悟する。

 

「実は……この写真の女の子達はスクールアイドルで、μ’sと言うグループなんだ。それで、俺は幼馴染にお願いでダンスのコーチをしていて、それはその活動の一環……なんだ。」

 

「へぇーコーチね。」

 

拓人はこの事についてはあまり言いたくはなかった。周りが本気で練習している中、一人だけ練習せず、さらにこういう難しい立場だ。一度バレれば、周りから何かしらの反感は買うのだろうと察していたためである。現にこう問い詰められているのが事実であった。

 

「みゅーず?なんじゃそりゃ?石鹸かよ。」

 

丸刈りの男子が煽るかのような口調と表情で拓人を責める。その態度に拓人はイラつくが、石鹸については自身も同様の思っていたため、あえて不問にした。

 

「いーじゃん、石鹸アイドル。」

 

「うわっ、なんかエロいわ。いいね、ソープ系アイドルかww」

 

「ちょ、ちょっと男子。それは言い過ぎだよ。」

 

「おい、それ以上、あいつらを罵倒するな!」

 

いいように言われて、拓人の怒りが積もりに積もる。だが、そんなのを他所に男達は続ける。

 

「はあ?名前も広まってねぇアイドルなんだろ?だから俺たちが売れるように方向性を決めてやってんだが?」

 

「そうだよ。どうせARISEなんかの足元にも及ばねぇんだからさ。」

 

下品に嘲笑うクラスの男子生徒達。そして、散々に馬鹿にされ、怒りの沸点を超えた拓人は丸刈りの男子の胸ぐらを掴み、持ち上げる。

 

「拓人!」

 

三原を含め、クラス中が驚きで声を上げる。拓人のその行動とその殺気に驚いて。

 

「おい、放せよ!」

 

丸刈りの助けにも耳に入れず、拓人は拳を振り上げる。

 

「ぼ、暴力は……よ、良くないよ!だから、ごめん!謝るから!」

 

拳が丸刈りの顔を向けて振るわれる時、後ろからのその手を掴まれ、動きが止まった。

 

「ん?……って!」

 

「ちょっと、一緒に来て。」

 

「ちょ、待てよ。」

 

ツバサに手を引かれるがまま、拓人は居心地の悪い教室を後にした。

 

♢♢♢

初夏の陽だまりが屋上にいる拓人とツバサを照りつける。

 

「まさか、あなたが。」

 

「自主練サボってたってことか?それについては心から謝る。」

 

頭を掻きながら、バツの悪そうに拓人は答える。しかし、ツバサが驚いていたことはそのことではなかった。

 

「違うわよね。あなたが、あのμ’sも関わりがあったってことよ。」

 

「μ’sを知ってるのか⁉︎」

 

「えぇ、ARISEが一番注目しているアイドルグループだからね。」

 

まだ、名前の知られていないμ’sが日本のトップスクールアイドルに目をつけられていると聞き、拓人は驚く。

 

「はっきり言うけど、ダンスも歌も未熟で素人レベル。だけども人を惹きつける何かを持ってる。あなたもそんな感じがしない?」

 

「まぁ……薄々は。」

 

「それに、素人だからこそ、これからの伸びしろにも期待できる。おそらく、私たちの大きな脅威になると思う。」

 

μ’sのことについて評価してるにも関わらず、腕を組み、自信ありげに語るツバサ。

 

「まして、拓人君がダンスのコーチならなおさらね。」

 

少し笑みを浮かべながら、横目で拓人を見る。

 

「待ってくれ。俺をそんなに買いかぶらないでくれないか。俺だってそこまで上手でもないと思ってるし。」

 

「それはあなたが勝手に思ってるだけ。周りから見れば嫉妬するほどよ。」

 

「でも、私たちは負けない。」

 

途端にツバサの目付きが鋭くなり、拓人は一瞬、背筋が凍った。同時にこれがツバサの凄味なのかと肌で感じた。

 

「どんな相手だろうと私たちARISEは頂点にい続ける。例え、それが友達のいるグループであっても、私達は手加減しないわ。」

 

「……そうだよな。どんな相手だろうと手加減なんかしちゃいけない。あぁ、なんか燃えてきた。超えるべき壁が出てきて、やる気が湧いてくる。」

 

拓人は空を仰ぎ、独り言を呟く。だが、覚悟とやる気に満ちたその言葉をツバサは漏らすことなく聞いた。

 

「まぁ、あいつらならやってくれる。まぁ、俺は俺の出来ることをするまでだ。」

 

「やっぱり、あなた達はおもしろいわね。」

 

まさしく、頂点に居座る王のような貫禄を漂わせながら笑みを浮かべるツバサ。それが拓人のやる気をさらにあげた。

 

「そういうわけで、サボってたわけじゃないらしいわよ。三原君、和泉君。」

 

「ば、バレてたか。」

 

突然、ツバサが後ろを振り向き、花壇に向かって話しかけた。すると、その陰から三原と和泉が申し訳なさそうに現れた。拓人は何故、ここにいるのかと驚いた。

 

「2人とも⁉︎なんでここに?」

 

「いや……拓人が心配でさ……流石にあれはひどすぎるからさ。」

 

「三原……」

 

「というか、あなた。コーチが出来るなんてすごいじゃない!流石、私の見込んだお・と・こ♡」

 

「そうだよ!人にダンスを教えるなんて、すごいよ!」

 

「お前ら……」

 

2人に励まされ、拓人の沈んだ心が徐々に浮かんでいく。この学校では自分はひとりぼっちなんだと思っていた。入学してきた経緯も特殊で、周りから忌み嫌われる。そんな中でやっとの思いで出来た友達に認められ、正直嬉しいと拓人は思った。

 

「ありがとう。元気が出た。よし、そんじゃあ、戻るか。」

 

「その前に、暴力で解決するのは良くないと最後に言いたいのだけど、いいかしら?」

 

3人のお陰で、心が軽くなった拓人は自ら教室へ戻ることを提案した。それに3人は了承したが、ツバサが拓人を引き止め、先程の拓人の行動を注意した。

 

「……そうだな。確かに何でも、暴力で解決するのは良くなよな。」

 

ツバサの言い分は正論であった。だが、拓人にとっては全てが正しいとは思わなかった。かと言って、わざわざ反論することはせず、小声で呟いた。

 

「だけども、暴力じゃないと解決出来ないことだってあるんだよ。」

 

♢♢♢

「よしっ!こっちの準備はOKだよ!」

 

「カメラもいいよ!」

 

「飾り付け終了!いつでもいけるよ!」

 

音乃木坂学院の殺風景な廊下が見違えるほど、色鮮やかに装飾された。これからこの場所でμ’sのPVを取るため、雰囲気に合わせ、飾り付けしたのだ。

 

「ありがとう。ヒデコ、フミコ、ミカ。」

 

拓人は手伝ってくれた3人の女子生徒に心から感謝の意を述べる。この3人はμ’sの発足当初から手伝ってくれていると穂乃果から聞いた。仕事中にチラチラと見ていたが真面目にやっているうえ、テキパキとつまずくことなく事が進めることが出来ていて、関心した。

 

「いいの、私たちが好きでやってるんだし。それに……」

 

「すごい!みんな、来て!すごく綺麗だよ!」

 

廊下の角から可愛らしい衣装をまとった穂乃果がはしゃぎながら現れた。

 

「穂乃果がセンターなんだしね。私たちもはりきっちゃうよ。」

 

「そうだな。」

 

結局、全員で話し合った結果、リーダーは穂乃果となった。決め手は穂乃果の一言。

 

みんながセンター

 

単純で簡単な答え。それを気づけるあたりが穂乃果らしいというか。そうみんなが思い、納得したのだった。

そんな経緯を思い返しながら、拓人は穂乃果たちが集まる場所に駆け寄った。

 

「よし!みんな始めるか。」

 

勢いよく声をかけるが、全員が緊張した面持ちで、雰囲気が硬くなっていた。特に一年生は初めてパフォーマンスということ周りよりも緊張しているように見えた。

 

「うぅ、緊張します……」

 

「ま、まぁ、にこならこの程度くらい、だいじょうぶだけど。」

 

「にこ先輩、足が震えてるけどだいじょうかにゃー?」

 

「みんな……。だいじょうぶだよ。いつもどうりやればいいんだから。」

 

励ますように拓人は優しい物腰で声をかける。しかし、あまり効果がないように思えた。とそこに、穂乃果がいつも変わらずにみんなに伝えた。

 

「そうだよ。たっくんの言うとおり、いつもどうりやればだいじょうぶだよ!今までずっと練習してきたんだから。」

 

「穂乃果……。」

 

穂乃果の言葉がみんなの硬い表情を溶かす。そんな姿を見て、拓人は不思議な感覚を感じた。これがツバサの言っていた、何かなのかと実感する。

 

「よ〜し!みんな行こう!」

 

「うん!」

 

穂乃果の掛け声とともに、μ’sのパフォーマンスが始まるのだった。

 

♢♢♢

真夜中のUTX。その理事長室で立木が難しそうな面持ちで考えごとをしていた。

 

「爽馬君。いよいよ本格的に私たちにやりあう気なのかい?」

 

誰もいない部屋で、独り言が反響する。そして、手元にある資料を嫌々ながら確認する。そこに書いてあったのは……

 

『早急に型式000、市原爽馬を早急に処分せよ。』

 

立木は資料をグシャリと丸め、ゴミ箱へと投げ捨てる。

 

「君の言うとうり、大人とは身勝手で最低な存在だったね。」

 

冷ややかに呟き、拳を握り締める。

 

「……なら、君にチャンスをあげよう。それが償いのなるのなら。」

 

不穏な言葉を呟き、パソコンへと目を移す。そこには赤、青、緑、茶色のディスク。そして、最後に黄色のディスクの画像が並んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回!仮面ライバー

 

いよいよ始まる.ラブライブ

 

「ラブライブって?なんだそれ?」

 

そして立ちはだかる壁

 

「赤点を取ったら…….出場できない?」

 

立ちはだかる絵里

 

「私にとってARISEだって素人にしかみえないわ。」

 

そして、海未はある考えを提案する。

 

「正気か?海未。」

 

「だからこそ、あなたに聞いたのです。本間さん。」

 

果たして、μ’sの運命やいかに⁉︎

 

次回 試験!

 

「お前は、……お前は何がしたいんだよ!絵里!」




アニメの第6話が終了し、次はいよいよ第7話!本格的に3年生組みが参入します!
こうご期待!
あと、「永遠の絆」という短編も投稿したのでそちらもよろしくお願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。