そこでサブタイトルの形式を変えてみたいと思います!
迫る恐怖
「1、2、穂乃果!少し速い!1テンポ遅く!」
「はい!」
「ことり!腕の振り大きく!」
「はい!」
屋上でμ‘sのダンスによる激しい息遣いと拓人の威勢のいい声が響き渡る。緊迫した、だが真剣な空気を作り出していた。オープンキャンパスを一週間に控え、成功して見せるという自信と時間がないという焦りが全員を襲い、自然と練習にも指導にも熱がはいる。
「よし!一旦休憩。」
拓人の休憩の合図とともに全員がその場にへたり込む。無理もない。今まで30分近く踊り続けていたのだ。全身は汗でぐっしょりと濡れ、練習着は体に張り付いて不快であった。
「お疲れさん!はい、これ。」
すると、今まで傍観していただけで退屈そうにしていた爽馬が待っていましたと言わんばかりの勢いで、順番に全員へと配り始める。
特製のスポーツドリンクを渡した。はちみつ、レモン汁、塩と砂糖を絶妙に配合したこのドリンクは甘すぎず、しょっぱすぎず、程よくおいしく評判だった。因みに爽馬曰く、このドリンクの旨さの秘密は愛情と某所の湧き水のおかげらしい。
「ぷはー、生き返るにゃー!」
そして、ドリンク受け取るや否、すぐさま口をつける。失っていたものが喉を通って、体全体に澄み渡っていく。
「はい、ことりちゃん。」
順番に回っていき、次にことりに渡そうと声をかける。すると、ことりはぎこちない動きでドリンクを受け取り、顔を真っ赤にしまう。
「ことりちゃん?顔赤いけど大丈夫?」
「ふぇ!?こ、ことりはへ、平気だから!」
「いや、平気って言ってる時点で平気じゃないのはお決まりだよ。」
すると、爽馬は自分のおでことことりのおでこを合わせて、熱がないか確かめる。ことりは恥ずかしさでオーバーヒートしそうになって、あたふたと焦って、訳が分からなくなってしまう。
「全く、あいつは。何でああいうことを平気でやってのけるのかしら。」
ことりに対する爽馬の対応に、にこは呆れてため息をついてしまう。あれでは、ことりが大きな勘違いをしてしまうと不安を抱いたが、ことりの反応を見る限り、既に手遅れなのは明白だった。
「仕方へんよ。あれが爽馬君のいいところでもあるし。」
「……そうね。一時期、爽馬にゾッコンだったあんたが言うなら納得できるわ。」
「ちょっと、にこっち!?それは昔の話やん!」
いつもにこが変なことを言ったりすれば、希は「わしわし」をするのだが、今回に限ってはあまりにも恥ずかしさで慌てふためいてしまい、それどころではなかった。
「お前ら、何仲良くわーぎゃーしてんだ?」
二人が騒いでいるとさっきまでことりといた爽馬がいつのまにかにいて、不思議そうに二人を見ていた。
「爽馬君!?ことりちゃんはどうしたん!?」
「ことりちゃんなら、穂乃果ちゃんと海未ちゃんに介抱されているけど。いや……我ながら何も出来ずに不甲斐ない。
「それがいいわ。これ以上、被害を拡大させないためにもね。」
「たまににこは的を得たことを言うな。はい、ドリンク。」
「たまには余計よ。」
互いにとりあえず二人にドリンクを渡す。
「そんじゃあな。希……頑張れよ。」
ドリンクを渡し終えると、爽馬は
「拓人、お前も飲んどけ。」
「悪いな爽馬。」
手渡されたドリンクを一気に半分まで飲む。ドリンクから口を外し、口の中に甘さを感じながら、爽馬にあるお願いをした。
「爽馬、悪いけど綾瀬さんに何か問題はなかった聞いてきてくれないか?」
「ああ、お安い御用だ。」
そして、爽馬は意気揚々と絵里の下へ向かった。
「絵里。拓人から伝言だ。なんか問題とかなかったかって。」
「そうね……あそこのステップがあまりあっていなかったわ。爽馬、これを……。」
「あいよ。」
絵里は詳しいことを話そうとしたが爽馬はそれを聞く前に拓人の方に向かっていってしまう。
「拓人、ステップがあってなかったって。」
「どこの?どんな感じに?」
「えっと……。」
拓人に的確な説明を求められ、前者は忘れて、後者は聞きそびれてしまったせいでうまく答えられず、どもってしまう。
「そこがわからないとどうしようもないんだけど。」
「わりぃ……って一応、先輩だよな、俺。」
年上にもかかわらず、年下から不憫な扱いを受け、爽馬は首をかしげるが、取りあえずもう一度絵里に聞きに行くことにした。
「絵里、どこらへんのステップがどんな感じでダメだったんだ。」
「それは……こういう感じで。」
「なるほどね。拓人、こういう感じだって。」
「そうか……それなら、こう変化させるのも悪くないかも。」
「絵里……拓人がステップを変更したいって……。」
「別に変える必要とないと思うわ。」
「……だあーもう!いい加減にせい!」
拓人と絵里の間を何回も往復させられ、いよいよ爽馬の堪忍袋の尾が切れる。
「つーか、何で俺を通じて話すんだよ!二人で話せやいいだろ!」
「それは……。」
「俺たち……。」
拓人と絵里は互いに一瞥して、気まずそう目を合わせる。ご存知の通り、以前は拓人と絵里はよく衝突していた。そのため、その名残として、今でも拓人と絵里は距離が出来ていた。そんな二人のもどかしさに爽馬は苛立ちが募る。
「てめぇーらは付き合いたての恋人かよ!あー、もう、こうすればいいだろ!」
もどかしい二人にイラついた爽馬はとある行動に出る。爽馬は二人の手を引いて、無理矢理対面させる。そして、そのまま拓人と絵里を無理矢理握手させる。
「これで今までのことは洗い流す。お前らはもう仲間なんだからな。」
度重なる、爽馬の無理矢理に振り回される拓人と希。だが、爽馬のおかげで今までのことが馬鹿らしく思えて、二人はクスリと笑う。
「……そうね。仲間、ですものね。」
「あぁ……改めてよろしく……綾瀬さん。」
まだどこか、ぎこちなさが残るもとりあえず二人は仲直りすることが出来た。
♢♢♢
「よし、とりあえず今日はここまで。」
「「お疲れ様でした!」」
太陽が沈む頃には練習が終わり、各々、帰宅の準備をする。
「かよちん、帰りにラーメン食べに行こ?」
「うん!」
凛は花陽に好物のラーメンを食べに行こうと誘うが、ライブ前というこで拓人が止めるように注意する。
「二人とも、ライブ前だから止めときな。」
「そうね、あまり寄り道せずに真っ直ぐ帰った方がいいわ。」
これにはいつも明るい表情の凛ですら不満そうな表情になる。しかし、絵里の助言もあり、凛は渋々理解した。
「そういえば、最近、秋葉原付近で失踪事件がたくさん起こってるらしいわね。」
「にこちゃん、それ本当?」
「本当らしいわね。」
穂乃果が不安そうに言う。
「それなら、今日は寄り道せずに帰ったほうがいいですね。」
「ちょっと待て。女の子達だけで帰るのは危険だ。こんなに可愛い娘たちだ。誘拐される可能性が高い。むしろ、俺が誘拐犯なら攫いたいと思うから間違いない。」
爽馬が言うと妙に説得力があり、他のメンバーはすんなりと納得する。
「そこでだ。二手に分かれて、各組に俺か拓人が途中まで送っていったほうがいいと思う。」
「そうやね。男の子がいれば、誘拐犯も近づきづらいかもね。」
爽馬の賢明な判断に希を筆頭にメンバー全員が納得する。
「よし、決まりだな。いいか、拓人。」
「当たり前だよ。」
当然、断る理由もない拓人はすぐに了承する。
「それじゃあ、みんな着替えて、帰る準備をしましょ。」
絵里の号令とともに、全員が屋上を後にした。
♢♢♢
希とにこと花陽と凛を送った爽馬は、絵里と並んで歩き、絵里の家へと向かっていた。
「ねぇ、爽馬。今回の事件って……。」
「おそらくオーガ絡みだろ。人間にしてはペースが早い。」
「それじゃあ!」
絵里の予想どおり、オーガ絡みの事件。そうとなると、失踪した人達は今頃どうなっているのか。絵里の頭の中に最悪の状況がよぎる。
「だけどオーガにしては早すぎる。単細胞のあいつらにしては、効率が良すぎる。……おそらく、進化したオーガが関わってる。」
オーガ自体はあまり知能は高くなく、食欲も何もかも全て本能的に動く生命体である。巣に連れて行き、そこでゆっくりと捕食することはあってとわざわざ獲物を連れ去って行くことなどあまりない。
そのため、これは人間を喰って知能を得たオーガの犯行、進化体オーガによるものの可能性が高かった。
「ご名答。流石ですな、仮面ライダー。」
「誰!」
後ろから怪しげな声とともに、細身の不健康そうな男が夜の闇から現れた。目は蛇のように鋭く、舌をチロチロと出すその怪しげな挙動と知るはずもない仮面ライダーの正体を言い当てたことにより、爽馬と絵里は警戒心を剥き出しにする。
「おおっと、仮面ライダーだともう一人と被ってしまいますな。ファントムと呼ばれたほうがわかりやすいですかな?」
蛇目の男は煽るようにほくそ笑みながら、挑発するように言い、二人を苛立たせる。
「てめぇ……何者だ。」
「だから、さっきご名答と言ったではないですか。」
自らを進化したオーガとバラした直後、爽馬はファントムセイバーを、絵里は銃を取り出し、蛇目の男へと向ける。
「おお、怖い怖い。血気盛んなこと。」
蛇目の男は手を横に出し、怖そうなふりをする。
「失踪した人達はどこ?」
「さぁ、それは知りませんな。」
蛇目の男は絵里の質問にも答えるどころか、さらに知らないふりをして、絵里を苛立たせる。
「ふざけないで!あなたが全部やったんでしょ!」
「全部はやっていませんよ?」
「何!」
「私はあくまでもこうやれと指示してるだけですから。」
この一連の失踪事件は自分が指示していると、ニヤニヤと笑いながら言う蛇目の男。その様子はまるで、カードゲームで勝ちを確信して、わざと手の内を晒しているよう。
「何の目的で人を攫った!」
「暇潰しですかね。」
蛇目の男にとってこの事件はただのゲームでしかないようだった。
こんな下衆な男によるただの暇潰しによって、無関心な人の命が危険に脅かされてることが絵里にとって許せないことだった。
「絵里、落ち着け。あいつはまだ本性を現してない。手を出すのは本性を現した時か、逃げる時だ。」
「ほぉ、どうやらファントムさんは私の本性を暴きたいらしいですね。しかし、そうはさせません。」
爽馬の考えを読み取ると蛇目の男はパチンと指を鳴らす。すると、蛇目の男の後ろからカンガルーオーガが現れる。
茶色の体色に、異常な発達した脚を持つオーガ。その脚で蹴られれば常人なら即死、鎧をまとっている仮面ライダーだろうと一たまりもない。
「ところで、あなた達のお友達は無事に帰ることが出来たのでしょうかね?」
「てめぇ……何言ってんだ……。」
「それと今回のゲームは参加者は一体だけではないですよ。もしかすると、ちょうど今、だれかが被害になってるかもしれませんね。おっと、これは余計な事を。失礼しました。それではご検討をお祈り申し上げます。」
最後に蛇目の男は二人を嘲笑うかのように言葉を残し、闇の中へ消えていった。
「待て!」
爽馬は蛇目の男を後を追おうとするが、カンガルーに行く手を阻まれ、見失ってしまう。
「クソ野郎!」
行き場のない苛立ちをぶつけるかのように爽馬はカンガルーに剣を思いっきり振り下ろす。しかし、冷静さがかけたその攻撃は簡単に避けられる、逆に反撃の隙を与えてしまう。
万事休すと思いきや、絵里の銃弾が見事カンガルーに直撃し、動きを止めることに成功。爽馬はその隙に、カンガルーから距離を取る。
「さんきゅっ!」
爽馬は絵里の横まで後退し、引きつった笑みで礼を言う。
「爽馬、落ち着いて。」
「わかってるって。だけど、時間がねぇ!さっさと決めるぞ!」
絵里に心配されたことでいつも通りの軽い調子に戻った爽馬は、コートからドライバー取り出し、腰に巻く。
「変身!」
《Lord Rider Zero》
ゼロディスクをドライバーにセットし、仮面ライダーファントムへと変身する。
「さぁ、闇へと葬ってやる!」
お決まりの台詞を言い放つとファントムは剣を構え、すぐさまカンガルーへと斬りかかる。
「ガガガッ!」
だが、カンガルーは悠々と高く跳び、その斬撃を回避する。一対一のサシの勝負なら、この避け方は最善の手だろう。しかし、これは二対一でカンガルーに部の悪い状況。一瞬でも隙を見せれば、片方に狙われ、戦況は一気に傾く。
「そこよ!」
カンガルーが跳んだことによる、着地までのその隙を絵里を見逃すことはなかった。銃にスタンディスクをセットし、電撃を帯びた銃弾をこれでもかと言うほどカンガルーに撃ち続ける。
「ガギュギュ……ガ!」
銃弾が体にめり込み、その度にカンガルーの体に電流が走る。そして、銃弾によるダメージと、スタンディスクの効果で上手く動けなくなったカンガルーはその場で痙攣したように震え、完全に動きが止まる。
「流石だな。やっぱり俺の相棒だわ!」
絵里の完璧な支援に仮面の奥で満足そうに笑みを浮かべるファントム。そして、カンガルーに後ろに立ち、頭の頂点から真下に剣を下ろし、真っ二つにし、爆発する。
「怪我はない?」
「ご覧の通り、ピンピンさ。それよりも!」
二人は目を合わせる。どうやら、互いに考えていることは同じらしい。
「穂乃果達が危ない!」
二人は急いで穂乃果達の元へと走って向かった。
次回 仮面ライバー
拓人と真姫と穂乃果と海未とことりの前に蛇目の男が放った刺客、ホッパーオーガが襲いかかる。
しかし、事情を知らない真姫以外の人間の前で変身できない拓人はただ、4人を逃がすことしか出来ず、ピンチに陥ってしまう。
その状況の中、真姫はある行動を起こす!
次回、挽回の一手
たった一回の勇気が全てを救う