仮面ライバー 守れ!女神たちの夢!   作:シママシタ

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運命の出会い

独房に放り込まれて、2年。髪はボサボサで歯も黄ばんでみっともない姿に俺は変わり果てていた。

そんな俺の元に久しぶりに職員が現れ、そして、独房の鍵を開ける。

 

「おい、外へ出ろ。」

 

何故、2年も出さなかった俺を独房から出したのか理由は分からなかったが、取り敢えず職員に誘導されるがまま、俺は久しぶりの外に出る。

久しぶりの陽の光は俺には眩しすぎ、目眩を起こしてしまいそうになる。しかし、何とか踏み止まり、再び歩き始める。

そこからは何というか、俺にとって異様な光景だった。温泉に連れてかれ、体を隅々まで洗われ、その後は歯医者に行き、歯を真っ白にされ、さらに美容室にまで連れてかれ、徹底的に身だしなみを整わされた。

大きな違和感を抱きつつもいつもの施設に戻ると、今度は応接間に連れてかれた。そこで俺はやっと違和感の正体に気づく。部屋には中肉中背のこの施設の理事長が、白衣を纏った白髪の外国人にペコペコと頭を下げていた。

一見、変な景色だが、外国人の後ろにはいわゆるSPらしき人間がおり、その外国人がとにかくお偉い方というのは確かであった。

 

「やぁ、君が本間拓人君だね。私はプール・フランだ。」

 

すると、外国人、フランが俺に気がつくと、理事長などそっちのけで俺へとハグをする。外国人はスキンシップが大きいと聞いていたが正にその通りだった。

 

「あの、フラン博士。拓人君にどういったご用件で?」

 

理事長はあまり面白くないと言った表情で話を始める。

 

「まぁ、それはだな……彼をこんな腐った施設から助けようと思ってね。」

 

「はっ?」

 

「わしの目は誤魔化せんよ。長い間、まともに食事を与えられなかった上、さらに衛生的に悪い場所にいたようじゃな。」

 

すると、優しげな様子から一転、ヤクザのように厳しい態度に変わり、理事長の表情が一気に引きつる。

 

「は、博士!」

 

「なぁ、君は惨めに生きたいのか?」

 

すると、フラン博士はおもむろに立ち上がりの俺の元まで歩き、俺の視線と同じ高さまでしやがみ、肩に手を置き、真っ直ぐな瞳で俺に問いかける。

この時、俺は人との関わり方を忘れていて、上手く反応することが出来ない。

 

「わしについてくれば、まぁ……ここより多少マシな生活を送れるだろう。ただし、条件がある。君の人生をわしに預けて欲しい。」

 

ここより多少はマシな場所。それなら、付いていってもそれこそ多少はマシになるのだろう。しかし、その後の博士の真剣な表情を見て、半端な覚悟で着いていってはいけないと勘付いた。

 

「これは君にしか頼めない。あの惨劇を生き延びた君にしか出来ないことだ。」

 

あの惨劇を生き延びた俺にしか出来ないこと。……あの時、両親も彩香も何も守れなかった俺が出来ることなど何もない。

再び、あの惨劇が頭の中でフラッシュバックする。発狂しそうになるも、直前のとこでグッと抑える。

 

「君にあの怪物を倒す力を与えようと言っているのだがな。」

 

「倒す……力……。」

 

この時、俺は心の中で何かが目覚めた。その何かは全身を駆け巡り、俺を熱くする。

 

「ほう、やっと興味を示したか。」

 

そうだ。俺は無力だ。何も出来ない。ただ、目の前で大切な物を奪われるだけの存在。

しかし、もし俺があの時、怪物を倒せる力があったら……。

こんな辛い思いをしなくてすんだのだろう。

わかってる。この人生の中でもしものことなどない。だからこそ、俺はこう考えた。

今、力を手に入れたならきっとたくさんの人を救える。

そして、あの怪物に復讐できると。

 

「いい目をしている。そうだ、その目だ。」

 

計画通りといった様子で博士は腹黒い笑みを浮かべると、周りのSPに耳打ちすると、spは直ぐさま、部屋から出て、慌ただしく動く。

 

「それでは早速、私達と一緒に行こう。」

 

そして、博士はゆっくりと手を差し出し、俺を未知なる世界へと連れて行こうとする。あの時の博士は悪魔に見えた。確かに博士は俺を救ってくれた人だ。だけど、博士が連れて来た道ははっきり言って修羅の道だ。だが、そんなことは最初からわかっていた。それでも俺はその手を掴んだんだ。

 

もう……無力なままで終わりたくなかったから

 

♦︎♦︎♦︎

博士に引き取られ、俺はとある研究所に住むことになった。当時、まだ小学生だった俺は力を得るにはまだ早かったらしく、とりあえず学校に行き、とにかく人としての生き方を身につけた。

さらに、小学校を卒業するまでの間、力を得るためにひたすら基礎トレーニングを行なってきた。毎朝5時に起き、10kmを走り、その後ひたすら筋力トレーニング。

放課後は、博士の元で勉学に励み、それが終わればまたトレーニング。

友達と遊ぶなどという時間は俺にはなかった。だが、その時はそんなものは必要ないと思っていた。力を得るためならそんな些細な幸せなら捨てるの容易い。

 

そんな、苦しくもやりがいのある日々を過ごし、そして、中学生に上がったころ、ある程度肉体が出来上がったころ、俺はある儀式を受けることになった。あの日のことは、あの時の博士の悲しい表情は今でもこの目に焼き付いている。

 

「いいのか。……拓人……今ならまだ……間に合う……。」

 

「いいんだ、博士。俺が決めたことだから。」

 

手術台に貼り付けられている俺を悲しそうにそして何とも言えない表情で博士は俺を見下ろす。例えるなら、人を殺しまった時の絶望した表情。

だが、それはあながち間違いでもないのだろう。これから、博士は非人道的なある手術を行うのだから。

 

「オーガを倒すためなら、こんな体も人生なんか捨ててもかなわないさ。」

 

これから行う手術。それは改造手術。オーガと戦う為には、ライダーシステムを扱わなければならない。しかし、その為にシステムに適合し、なおかつオーガの細胞を移植する改造手術を受け、システムの負担に耐えられる肉体を持たなければならない。

あのオーガの細胞が自分の体の一部になると思うと吐き気を催すが、その力でオーガに復讐出来るなら、耐えるのは簡単だ。

聞こえよく言うなら超人に、悪く言うなら化け物に成り下がらなければならない。

 

「……こんなに若いのに……。」

 

まだ中学生の俺が未来を軽視していることに博士は悔しそうだった。しかし、こんなことを言ってるが、この道に引きずり込んだのは博士自身だ。ある意味自業自得である。しかし、博士も心を殺して、罪を背負わなければ、たくさんの人達がオーガによって殺される。

そんなものに比べたら俺も人生も博士の罪も軽いに決まっている。

 

「さぁ、博士。覚悟を決めて。俺は……どんな運命も受け入れるから。」

 

俺はゆっくりと目を閉じ、全てを受け入れる。そして、博士も覚悟を決め、手を震わせながら俺の体にメスを入れた。

 

♦︎♦︎♦︎

 

そして、改造手術から一週間後、俺は久しぶりに学校に行った。この時に、俺は置かれている状況に初めて気づいた。

教室に入った瞬間に感じる異様な感覚。まるで世界に取り残されたよう。

そして、みんなが話しかけてくると、より一層、孤独を感じる。

当たり前だ。みんなは普通の人間で俺は化け物。存在からして全く違う。

周りとの違和感。人では無い事実。全て、覚悟していたつもりだったが、実際には想像以上に精神的に堪えるものだった。

しかし……後戻りは出来ない。俺は化け物としてこれから先も生きて行き、そして戦い続けなければならない。

 

♦︎♦︎♦︎

俺はあるターニングポイントに出会った。一週間に一度、日曜日だけ、俺は外に出かけることが出来、そしてたまたま、散歩に出ていた時、俺はふと行きつけの公園に寄った時のことだ。

木々に囲まれ、少し薄暗いを公園をゆったりと歩いていると、俺はあるものに遭遇した。

 

「なぁ、お姉ちゃんよぉ、今夜暇?」

 

ガラの悪そうな男3人組が、茶髪のショートボブの女性を取り囲み、所謂ナンパということをしていた。しかし、女性は不快らしくその場から離れようとしていた。

 

「あの、私用事があるので。」

 

「いいじゃんかよ!おれ!早くヤらせろ!」

 

しかし、男共は女性の意見など聞かず、自分達の都合を押し付け、引っ張っても連れて行こうとする。女性はその手から逃げようと手を振りほどこうとするが、男共の力は強く、逃げることはできない。

 

「誰か!助けて!」

 

「へへ、こんな所に人なんてきやしねぇよ!」

 

女性が助けを呼んだ瞬間、俺の頭の中にあの日の記憶が蘇る。彩香の助けを呼んだあの姿が自然と目に浮かぶ。

 

「あ……!」

 

俺の体の何かがプツリと切れた。そこからは俺の行動は速かった。

 

「何だクソガキ!?」

 

直様、女性から男共を引き剥がし、徹底的になぶった。腕を折り、脚を折り、顔面の骨も砕いた。普通の人間ならここまで出来ないだろう。しかし、化け物である俺なら面白いほど簡単に出来た。

 

「クソっ!ば、化け物があ!」

 

血だらけになった男共は酷く怯えた表情で、そして俺を化け物を扱いし、逃げて行った。

確かに化け物であるのは間違いない。しかし、面と向かって言われると、少々、堪えるものがあった。

 

「あ、あの……助けてくれてありがとね。」

 

すると、後ろから助けた女性が俺にお礼を言ってきた。しかし、俺は化け物だ。下手に人と関わってしまうと相手を不幸にさせてしまうと思い込み、無言で立ち去ろとする。しかし、女性は先ほどの男共と同じように俺の手を掴んで静止する。

 

「せめて、お礼くらいさせてよ!」

 

「いや……別に……。」

 

「いいから!」

 

「わ、わかりました。なら、きっちり貰いますよ。」

 

なかなか引き下がらない女性に俺は根負けして、仕方がなく、お礼を受け取ることにした。

すると、女性は満面の笑みを浮かべ、大きく深呼吸をする。

 

「えっ!?」

 

「うん?」

 

「いや……お礼と言ったら……その……物とか……。」

 

てっきり俺はお礼としてジュースや飲み物を貰うものだと思っていたが、違ったようで困惑する。

 

「あのね。お礼は物じゃないんだよ。心が大事なんだよ!べ、別にお、お金がないとかそういうわけじゃないんだよ!」

 

綺麗事を言っているが残念なことに最後の方に本音が漏れてしまっている。一体、この女性は何なんだ。俺はとんでもない人を助けてしまったのかと後悔した。

だけど……この後、この先に人生を変える程の物を目の当たりにする。

 

「それじゃあ、行くよ!」

 

女性は側にあるベンチに音楽プレーヤーを置き、再生ボタンを押す。そして、プレーヤーから明るく、かっこいい音楽が流れ始めると同時に、体を動かし始めた。

 

「それ!」

 

クルリと綺麗に回り、女性は小さくガッツポーズを決める。しなやかに軽やかに踊るその姿。一つ一つ、キレのある動作。額から流れる汗。余計なものを感じない真っ直ぐな笑顔。

彼女の全てに俺は目を奪われていた。

 

「最後に!よっと!」

 

そして、彼女は最後にポーズを決め、やりきった表情を浮かべた。その表情は例えるなら雲のない空。

 

「どうだっ……て!どうしたの!」

 

しかし、一方で俺は気づかないうちに大雨のようにたくさんの涙を流していた。2年間も監禁され、屈辱的な生活を強いられていたあの時や肉体的にも精神的にも辛い今でも涙を流すどころか弱音すら吐いたこともない俺が高々ダンス如きに涙を流したことに俺自身も驚いていた。

 

「あ……いやっ!な……にも!」

 

弱い所を見せたくないと俺は顔を逸らすが、彼女は逆に顔を覗き込んでくる。

 

「もしかして、感動したの?」

 

感動。そんなものを化け物の俺がするのかと高を括った。すると、彼女はニンマリと笑いに俺にこう言った。

 

「ねぇ、君もダンスやってみない?」

 

「……すみません……俺にはやるべきことが……。」

 

「えー!私のダンスに魅入られたんだよ!見る目があるのに勿体無い!せめて先っちょだけ!先っちょだけでいいから!」

 

彼女は全く俺の意見を聞いてくれず、強引にも程があった。……だけど、それが俺には新鮮に感じた。あの事件から、俺は周りの人間からゴミクズのように扱われ、また道具として扱われ続けていた。監禁され、怪物を倒すために自らを犠牲にされ……俺の心は死にかけていた。

 

「君は絶対にダンスが好きになる!だから……一緒に踊ろ?」

 

でも、彼女からはそんな心は全く感じなかった。ただ、純粋にダンスを知って欲しい。楽しんで欲しいという願いしか感じられなかった。

 

「……わかりました……。でも……飽きたら直ぐ辞めますからね。」

 

そして、俺はその願いを受け止め、少し逃げ場を作りながらもその日から毎週、彼女のレッスンを受けるようになった。

 

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