「おやまぁ、食料が全くないってか」
日は傾き、海か茜色に染まる。
散々遊び尽くしたμ'sメンバー達は心地よい疲労感の中、真姫の別荘に戻った。
拓人を除くメンバーは昼からずっと遊んでいたこともあって、とてつもなく腹を空かせていた。
調理担当の爽馬とにこはこれから夕飯の支度を始めようとキッチンに備えつけらた冷蔵庫を開けた時に問題は発生した。
冷蔵庫に僅かの保存食しか入っていなかった。
到底、少女の胃を満たす程の量はない。ましてや、拓人と爽馬の二人にとってはおやつ程度でしかなかった
「これだと何も作れないわね」
「そうだな。仕方ねぇ。買い出しに行くか」
疲れているにも関わらず、これから買い出しに行くのは爽馬でも少しだけ気が引けた。
だが、怠けても何も意味がない。爽馬は別荘の持ち主として、ここの土地に詳しい真姫に声をかける。
「真姫ちゃん。ここら辺にスーパーあるか?」
「えぇ。ここから十分くらいのところに」
「なら、真姫ちゃん。一緒に来て、道案内してくれないか?」
「いいけど……」
真姫は歯切れの悪いを返事をしながら、拓人の方を向く。
いつも冷静沈着で仮面を被ったように表情を変えない拓人だが、今に関しては珍しく顔色が変わっていた。
心なしか青ざめていて、気を抜けたその瞬間に倒れてしまうかと思ってしまうほど。
「本間さん……大丈夫ですか?」
「あぁ。すまんが、ソファで横になってもいいか?」
「構いません。冷たい物をもってきましょうか?」
「いや……大丈夫」
海未に介抱されている拓人。
きっと、海未は拓人が熱中症にかかったのかと思っているだろう。
違う。体調が悪いのはそんな簡単な理由ではない。
亡き妹との思い出がつまったこの場所にいることで過去の思い出がフラッシュバックし、これから二度と思い出を紡げない事実に苦しんでいるのだ。
「……拓人なら大丈夫だ。みんないるからさ」
「……そうね」
「お二人とも楽しそうに何してるん?」
「おいおい。今のが楽しそうに聞こえるか?」
ぐったりとベッドに横になる拓人に気を取られていると傍らから希がひょっこりと二人の間に割って入ってくる。
「そうなん? 爽馬君のことやから、もしかして、真姫ちゃんを口説いているんかなって」
「俺はそんな軽い男じゃねぇって。ただ、これから買い出しに行きたいから真姫に道案内をして欲しいって頼んだだけだ」
すると、希は「そうなんやね」とわざとらしく言葉を呟く。
「それならウチもついていっていい? 荷物持ちはそれなりにいたほうがいいやん」
「まぁな」
「それに爽馬君が真姫ちゃんに手を出さないように見ておかないと」
「……あんまりからかうと俺ちゃん、泣いちゃうよ?」
からかい続ける希とそれに乗り続ける爽馬のくだらないいちゃつきを見せられる真姫は溜息を吐く。
まるで、付き合いたてのカップルのような二人の絡みを見せつけられるのが拷問のように思えた。