夕暮れの海岸沿いの道を歩く真姫と希。そして、その前には両手にたくさんの食材の入ったビニール袋をぶら下げていた。
「あははは! いいもんが手に入ったぜ!」
重い荷物を持っていながらもまるで何も持っていないかのように軽い足取りで歩く爽馬。
やっぱり普通ではないと真姫は後ろから見ていて思った。
体力や筋力も他の男子高校生なんかよりも高い。
買い物している時の食材を見る目は職人のそれだった。その様子に違わぬ目利きの良さ。
その軽い性格や変態的な行動は正直、目に余る。
だが、時々核心を突いた言葉や老人のように達観したアドバイスを聞いているとふざけた態度はもしかした偽りの姿なのか疑ってしまう。
その二面性を持つ雰囲気がどことなく拓人に似ていると思った。
「なぁ、真姫ちゃん!」
「な、何よ!?」
真姫が爽馬を凝視していると、爽馬が突然、振り返る。
「拓人なら大丈夫だ。俺とにこの滅茶苦茶美味い飯を食えば治るって。ある料理人が言っていたんだ。『食』って字は人を良くするって書く。どんな病も体の中から治すってさ」
「そう……ね」
いや、拓人とは一つだけ違う点があった。
余裕だ。拓人には爽馬のような余裕がない。
今回に限っては亡くなった家族の事を思い出してしまったこともあるが。
「そんなに拓人君が心配なの?」
「……当然でしょ」
「二人って本当に仲がいいんやね」
「……俺から見れば拓人と真姫って仲がいいというより、本当の兄妹みたいに見えるなぁ」
「……」
「否定はしないんやね。なんか、妬いちゃうなぁ。ウチらも真姫ちゃんと仲良くなりたいなぁ」
「それが本音?」
散々、拓人との関係を突いた後に希は目的を切り出す。
真姫は積極的に人と関わろうとしない。プライドが高く、素直になれないこともあって、自然と距離を取ってしまうのだ。
拓人とは幼馴染みということもあって自然に関われているが逆に拓人にしか自然に接せられないこともあって、ほぼ依存に近い状態にある。
全員で呼吸を合わせてパフォーマンスを行う為、無駄な距離はグループ全体に関わる上、加えて真姫自身に将来を考えてもどうにかしないといけないと希は考えていた。
しかし、それだけではない、至極個人的な不安もあった。
「放っておけないの。ウチは真姫ちゃんと拓人みたいな関係の二人を知ってるから」
「それって……誰なの?」
「放っておいてもいいんじゃないの?」
真姫の問いを遮るかのように爽馬が口を開く。
「確かにμ'sのみんなとの関係はどうにかしないとは思う。でも、拓人とのことは俺達が首を突っ込むのは野暮だ」
「だって、ウチが寂しいし……勝手にどこかに行っちゃいそうだし」
「大丈夫だよ。希が心配していた二人は今、どこにいる?」
そう言いながら、爽馬は希の頭を優しく撫でる。
そして、爽馬は真姫の方を向く。
「なぁ、真姫ちゃん。もうちょいでいいから俺達を信用してくれてもいいんだぜ。希だって、滅茶苦茶いいやつだし、穂乃果ちゃんだってそうだ。絵里はまぁ、面倒くさい奴だがあいつなりの優しさだってあるんだ」
「爽馬君はまたそんなこと言って。エリチが怒るよ」
余計な一言に対し、希が苦言を呈すと爽馬は「悪い悪い」と軽い調子で謝る。
「……そうね。考えておくわ」
そう一言、呟きながら真姫はそそくさと先を急ぐのであった。
真姫は僅かに笑みを浮かべていた。