仮面ライバー 守れ!女神たちの夢!   作:シママシタ

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煮えない心

「ねぇ、たっくんは真姫ちゃんのこと好きなの?」

 

 穂乃果の純粋な疑問が拓人に投げかけられる。

 恋の疑問など思春期の高校生にとっては何の変哲もない話題だ。

 

「ほ、穂乃果は何を言っているんですかぁ!?」

 

「そうよ! 真姫はスクールアイドルなのよ! いくら幼馴染みとは言え、拓人と恋愛関係になるのはご法度よ!」

 

 しかし、過剰なほど大きくなる要因が三つあった。

 一つ目は恋愛ごとに一切の耐性のない海未がいることだ。 

 そういう話題が上がっただけでも海未は顔を真っ赤にして、過剰に反応してしまう。

 二つ目はにこがいたことだ。アイドルに対して圧倒的な理解とプライドを持つことにとってアイドルの恋愛など以ての外。

 

「何だ? 藪から棒に」

 

「だって、たっくんと真姫ちゃんって凄く仲がいいから」

 

「そりゃあ、穂乃果と海未とことり達と同じ幼馴染みだからな。そう言えばわかるだろう」

 

「でも、あの真姫ちゃんだよ?」

 

「穂乃果は真姫のことを何だと思ってんだ……」

 

 そして、三つ目は噂される組合せが拓人と真姫ということだ。クールで何を考えているかわからない拓人と不器用な真姫は確かに恋人同士に見えるほど親密な関係なのだ。

 特に真姫が拓人に甘える姿を見ていると実際に恋人同士に見えるため、満更でもなさそうなのが現実味を帯びさせるのだ。

 

「確かに拓人君と話している時の真姫ちゃんってイキイキしていて可愛いよね!」

 

 ことりはニコニコ笑いながらそう語る。

 

「凛の時とは対応が大違いだよ!」

 

「それは凛ちゃんがからかっているからじゃないかな……」

 

 拓人をそっちのけで話が盛り上がっていく。

 あまり友達がいなかった拓人にとってこういう黄色の話題に乗るのは得意ではなかった。

 認めるも何も真姫とは恋人関係ではない。ならば、否定するべきなのだが、しつこく否定すると逆に疑われる。それに拓人は真姫を特別な存在として大切に思っているのは確かであり、それを否定することができない。

 はぁと大きな溜息を吐く。

 

「別に好きとかそういうのじゃない」

 

「それじゃあどうなの?」

 

「……妹みたいな存在だよ」

 

 真姫は妹。それ以上でもそれ以外でもない。

 嘘のように聞こえるが本当にそう思っているのだ。

 クールな拓人がふざけたようなことを大真面目に言い放ったのだ。

 穂乃果達は少し引きつった表情を浮かべる。

 

「たっくんってシスコン?」

 

「シスコンも何も……妹はいたよ」

 

「あら。それは初耳だわ」

 

 絵里は驚く。

 

「まぁ、誰にも言ってないから。知っているのは真姫だけだ」

 

「拓人の妹ね。どんな感じか想像できないわね」

 

「俺もだ」

 

「俺もってあんたは兄なんでしょ。どんな人かってわかっているんじゃないの?」

 

「……暫く会っていないんだ。まぁ、今頃は雪穂と亜里沙と同じ年頃。それは確かなんだ」

 

「そうなんだ! それじゃあ、たっくん! 妹ちゃんを今度こっちに誘ってきてよ!」

 

「あぁ……誘えたらな」

 

 拓人の胸がズキズキと痛む。

 全てがもしもであったであろう未来の話。

 彩香はもうこの世界にはいない。

 成長した姿がどんな感じなのか、どんな性格なのは全くわからない。

 成長し、変化していく姿が見れなかった悲しみ。何より二度と会えない事実が心を抉る。

 

「うっし、ただいま」

 

「三人共、おかえりなさい」

 

 話が丁度良く終わった頃。

 タイミングよく爽馬、真姫、希の三人が大量の食材の入ったビニール袋を持って帰ってきた。

 

「ねぇねぇ! 今日のご飯何するの?」

 

「凛はラーメンがいい!」

 

 お腹が減り、空腹に喘ぐ穂乃果と凛は爽馬に詰め寄る

 すると、爽馬はキッチンにビニール袋を置き、中からカレーと書かれた箱を見せる。

 

「すまんな。凛ちゃん。今日はカレーライスにする予定なんだ。ラーメンは……明日のお昼にするよ」

 

「カレーライス!」

 

「ううん! 大丈夫にゃ! カレーライスも好きだから!」

 

「ですが、誰が料理を作るのですか」

 

「海未ちゃん。適任がいるから任せとき」

 

「そうか。なら良かった。それじゃあ、みんな腹空かせてるみたいだし」

 

 爽馬は黒いコートを脱ぎ、代わりに予め用意していた黒いエプロンを身につける。

 

「早速、料理開始だ!」

 

「爽馬さんが料理するんですか?」

 

「爽馬はあぁ見えて料理ができるのよ。いえ、できるというより……得意というか」

 

「料理できる男の人って……かっこいいなぁ」

 

 まるで自分の城であるかのようにキッチンを占領する爽馬を見て花陽は驚いた。花陽だけではない。三年生を除くメンバー全員もだ。

 中でもことりは尊敬の眼差しを向けていた。

 

「あっ。にこ。手伝ってくれ」

 

「手伝ってって、カレーライスだけでしょ?」

 

「なぁ、俺がメイン一つで満足すると思うか?」

 

「全く……しょうがないわねぇ〜」

 

 顔の目の前で人差し指を左右に振る爽馬。

 すると、溜息を吐きつつ、満更でもない様子でにこはキッチンの横にあったエプロンを身に纏い、キッチンに入る。

 口を開けばまだまだ少年とも言える爽馬だがその見た目は同年代の男子達とは比べてかなり大人びており、未就学児の子供の父親と言われても特に違和感がない。

 対して、にこは同年代の女子達に比べてあまりに幼い見た目をしている。中学生、否、小学生にも見える。

 エプロン姿で料理をする様子はまるでお手伝いをする子供であり、特に爽馬と並ぶとより一層見えるのだ。

 

「何だか、手伝いをする子供みたいだ」

 

「拓人。晩ごはん、抜くわよ」

 

「悪い」

 

 つい本音が漏れた拓人は間髪入れずに謝る。

 

「拓人。にこは馬鹿にしちゃいかんぜ」

 

「馬鹿にしてはいないけど……」

 

 爽馬の言う通り、にこの料理の手捌きは眼を見張る。

 とんでもない速さで野菜を切る。それだけでなく、効率もいい。鍋に切った食材を入れ、煮込み始めるとすぐに米を炊く準備をする。無駄のない動きで米をとぎ、炊飯器にセット。

 それが終わると丁度良く鍋の中が沸騰し、灰汁が出る。灰汁を捨てるとすぐにカレーのルーを3種類程ブレンドしていれる。

 明らかに初心者やたまに行うなんてレベルではなかった。日常的に行っていないと到達できないレベルであった。

 

「にこちゃん凄い!」

 

 あまりのギャップに一年生と二年生メンバーはただ驚くしかなかった。

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