ナザリックの核弾頭   作:プライベートX

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共闘

 『ち、ちーす……』

 

 『こ、こんちわー』

 

 

 

 …………………… 

 

 

 

 『『何故、此処に!?』』

 

 

 

 がっちり握手をしながらも、内心二人はとても焦っていた。

 いずれカチ会う事はあるだろうと思ってはいたが、まさかこんなに早くも合流してしまうとは本人達も予想だにしていなかったからだ。

 しかし、そこはガチフルフェイス装備の強みが遺憾無く発揮され、恐らく顔に出ているであろう驚愕の表情は絶対にバレてはいない。

 もっとも、死体顔としゃれこうべでは表情も何もないのだが、この際細かい事は投げておこうか。

 

 

 『団長、兎に角今は話を合わせて欲しい』

 

 『ですね、任せます』

 

 今、二人の異形は密かに腹を括る。

 

 『『何とかアドリブで切り抜けるしかない!』』

 

  ……と。

 

 握手した手を離し、少し離れるとタイラントは肩に担いだトロールの首を入れた麻袋を乱雑に地面に置いた。

 グチャッと麻に染み込んだ血が不快な音を立てる。中身こそ見えないが、それが【何かの首】だと言うことは誰が見ても明らかな物だった。

 

『漆黒の剣』リーダー、ペテル・モークは突然現れた謎の男を前に背筋が凍る様な冷たい何かを感じた。

 見るからに怪しい真っ黒な装いの男と不自然なまでに整った美女の二人組。

 真紅の大きな眼が特長的なマスクで顔色を伺う事は出来ないが、その身から放たれる猛者の風格はモモンと同等かそれ以上、いや禍々しさだけなら間違いなくこの男の方が圧倒的に上だ。

 一応、冒険者のようではあるがどちらかと言えば非合法の依頼を専門で請け負うワーカーと言った方がしっくりくる。

 一体この男は何者なのかと言う疑問と関わってはいけない事に関わってしまったのではないかと言う不安が思考を支配する。

 だが今は、モモンさんの知人だと言う事を信じる以外に選択はなかった。

 

  

 「……さて、鈍足の息子達が追い付きそうだ」

 

 「成る程、面白い」

 

 二人は顔を合わせ静かに呟くと、己の得物を構え戦闘態勢を取る。

 モモンはその背に担いだ二本の上等なグレートソードを、タイラントは鋼鉄すら砕く自慢の拳を握り締め、モモンと背中合わせに構える。

 

 「私達もやるわよシズ」

 

 「合点、承知」

 

 シズは背中から取り出したボウガンを構え、ナーベは詠唱の準備をしつつ自然体に構える。

 それぞれが主をしっかり援護出来る位置に立ち、迎撃態勢を整えた。

 隙なく構える四人の姿は、正に歴戦の猛者と呼ぶに相応しい貫禄であり、それは実力に裏付けされた物である事は誰の目にも明らかな事だった。

 そんな中、同僚の言葉使いが主の影響を受け変化しているとナーベは強く感じていた……

 

 

 

 生物兵器を生産するに当り、タイラントは"支配種"と言う特殊スキルを持っている。

 このスキルを行使する事により、範囲内にいる全ての生物兵器を自他問わず、自身の支配下に置く事が可能だ。

 

 まぁ、別にそんなスキルを使わなくても基本的に自身が召喚したモンスターは自身の支配下になるし、数が必要なら他人から奪わなくても自分で新たに召喚すれば良い話しなので……

 

 ほぼ、無駄なスキルである。

 

 実際、種族"生物兵器"は不遇職と言われ、既存の種族の劣化版の烙印を押された哀れな種族だ。

 極めて高い防御力と遠近問わない近代戦闘スタイルが売りだが、器用貧乏さを払拭出来ずに数多のアップデートの波に飲まれた悲しい過去を持っている。

 だが、生物兵器を極めた暇人達は少なからず存在した。

 時に所属ギルドの盾として、時に圧倒的なバイオテロで敵対勢力を恐怖の底へ落とす使者として。

 タイラントもその数少ないその一人である。

 

 話を戻そう。

 

 通常ゲーム内では時間経過と敵を倒す事によって貯まる生産ポイントを消費して"生物兵器"を生み出す事が出来た。

 現状、生産ポイントなるものは確認してはおらず、一体どのような条件や何を消費して兵器が生産されているのかは本人もわかっていない。

 個人的に有力だと思うのは時間経過でポイント上昇、現状これを信じてやりくりしていく他に選択の余地はなかった。

 

 タイラントはPLANT-42に密かに指示を出し、大量の分身PLANT-43を準備をさせていたのだ。

 見た目は蔦の束と核である蕾で出来た植物人間。

 それが大量に蠢きながらゆっくりとタイラント達の方へ向かっている様は、不気味以外に何物でもない。

 まぁこの際イビーの見た目が悪いのは好都合と言えるだろう。

 正体不明の化け物を正義の味方が倒すのは非常にロマンがある、その心理を突いた【マッチポンプ】が本作戦の骨子だ。

 

 最も手頃で印象的な演出が出来るが所詮は茶番。

 

 しかし、茶番とは本気で演じてこそ面白いのだ。

 

 

 

 

 『これで下準備は完了。団長、後は状況見て退却でよろしくです』

 

 『タイラントさん?これどんな状況?』

 

 『まぁ、所謂マッチポンプってとこですな』

 

 『成る程、では囲んでいる敵は……』

 

 『俺の眷族の分身だから壊しても問題無し』

 

 『なら、適当に戦って一旦撤収しましょうか』

 

 『了解』

 

 

 

 

 

 【森が蠢いた】【帰らず森】【人食い花】

 

 後に森から命からがら生き延びた者達は口を揃えてそう言った。

 その【帰らずの森】真相は言うまでもなく、タイラントが破壊した森の緑化の為に放ったPLANT-42だ。

 この食人植物は豊富な獲物と良い気候環境のお蔭でモリモリ成長し、増えに増えた触手地獄から逃れられた者は少ない。

 近い将来、冒険者達の一種の都市伝説になるのだが、それはまたいずれの機会に話す事にしよう。

 

 その気味の悪い蠢きはまるで巨大な魔物の腹の中に居るか様な錯覚すらする程不気味で、漆黒の剣のメンバーはまとめて震え上がる。

 森の深部が恐ろしく、おぞましい場所だと言うのは理解していたつもりだった。

 だが、改めてその認識の甘さを実感し、モモンと言う稀代の英雄とも呼べる者の力に頼り過ぎていた自分達の浅はかさを後悔した。

 

 キチキチキチキチ……

 

 何かの鳴き声とも言えなくもない音が暗い森の奥から聞こえてくる。

 それも、ゆっくりとだが確実にこの場所に迫ってきている。

 段々と不気味な音は大きくなり、やがて音は森の四方八方から聞こえてくる様になった。

 

 「か、囲まれた!」

 

 「おい、冗談じゃねぇぞ!何だコイツら!」

 

 野伏(レンジャー)であるルクルットは咄嗟に木々の間から見えた影に向かって矢を放った。

 チームの目であるルクルットには薄暗い森の奥で動く【何か】をいち早く捉えていた。それと同時にその【何か】は明らかに敵だと言う確信、ほぼ反射的に矢を放っていた。

 放たれた矢は頭部とおぼしき蕾の部分に直撃をしたが特に効いている様子はなく、刺さった矢を蔓で出来た腕で引き抜く。

 続けて矢を放つが結果は同じで効果は無く、何の足止めにもならなかった。

 暗がりから姿を表した殺人植物郡は触手をうねらせながら、獲物である人間達を取り囲むように布陣し、嘲笑うかの様に一段と活発に蔓を動かす。

 

 「……これを使え、普通の矢では効果は薄い」

 

 タイラントは呆然としているルクルットへ炸裂鏃の着いた矢束をぶっきらぼうに投げ渡す。

 ルクルットは渡されたを矢を見て、上等とは言えない自分の矢と比べると妙な鏃が着いてはいるが、矢として使うには勿体ない出来だと思った。

 しかし、化け物の気味の悪い鳴き声が現在自分達が生きるか死ぬかの状況だと言う事を再認識させ、自身の悠長な躊躇いを一蹴させた。

 

 「ありがてぇ!赤目の旦那!」 

 

 ルクルットは受け取った炸裂鏃の矢をつがえると鏃の重さを改めて感じ、斜め上気味を狙って渾身の力で引ききった矢を放った。

 曲射弾道を描いた炸裂弾頭は吸い込まれる様に蕾に直撃、破裂した。

 命中したイビーは蕾の大半を欠損させ、体液を撒き散らしながら倒れ、その活動を停止させた。

 

 「おらぁ!見たか化け物!俺って格好いいだろナーベちゃん!」

 

 相手にされてないのに健気にナーベにアピールするチャラ男。

 人間嫌い同盟会員のナーベ相手に諦めないその鋼のメンタルだけは称賛に値するよ。

 

(だが、使い馴れない重たい矢を初弾で命中させるとは、そこそこ腕は立つな、このチャラ男の認識を少し改める必要があるか?)

 

 まぁ、イビーに行動不能のダメージを与える事が出来たのは単純に炸裂鏃の威力であってチャラ男個人の力によるものではない。

 タイラントは気軽にこの炸裂鏃を渡したが、一本単価は中々高価な部類に入る弾薬だと言う事を伝えておきたい。

 鏃の威力は40mmグレネードとほぼ同等程度で、これがあれば大抵の魔物は爆殺可能なのだ。

 しかし所詮は矢なので銃と比べれば射程も使い勝手も劣る。

 火矢の上位互換と考えれば多少サービスした所で俺としては痛くも痒くないし、気にもならない。

 

 「な、何故下等生物(ゲジゲジ)などに……」

 

 心底悔しげな、いや悲しげな表情で此方を見るナーベ。

 いや、折角だから役者に小道具を与えたつもりだったのだけど不味かったか?

 シズにも大量に渡してるし、無限弾倉の効果で取り出し放題なのよ、ホラこんな感じに。

 腰に着いた弾嚢から明らかにサイズが違う弓矢を引き抜く。

 まるで、かつて存在したと言われる珍獣【青狸】の四次元ポケッ●の様な光景だ。

 もう言うまでもないが、気にしないで欲しい。

 

 「では、我々も始めようか」

 

 「……合点承知」

 

 そう言った瞬間、二人は一斉に動きだす。

 目の前のイビーに向かって一息で間合いを詰めると、タイラントは挨拶がわりのアッパーカットを蕾に炸裂させる。

 腰の入った渾身の一撃、電光石火の身のこなしから放たれたアッパーは無駄にデカイ蕾にめり込み、破裂させた。

 バンと言う音と砕け散った草の破片、緑色の体液が宙を舞い、その衝撃と威力の大きさを物語る。

 自身を構成する核である蕾に深刻なダメージを負ったイビー。

 いくら物理攻撃に高い耐性を持つとは言え、規格外な攻撃に対してはその耐性も無力、当然ダメージを負う。

 体液を撒き散らし、触手を弱々しく動かす瀕死のイビーをタイラントは乱雑に掴むと強引にポイッと投げ捨てる。

 そして、トドメと言わんばかりに手に持っていた炸裂鏃の矢を野球選手顔負けのフォームから投げた。

 怪力&強肩から射出された矢……と言うか最早槍と言った方が良いかもしれない矢は頑丈な蕾の外殻を易々と貫き、背後の木に串刺しにした。

 深々と鏃が刺さった半壊した蕾は遅延信管の効果で時間差で爆破炎上、イビーは一気に燃え尽きた。

 

 ピギィィィィィ

 

 耳障りな断末魔を上げて燃える息子。少し可哀想だと思ってしまう自分が居た。

 だが周りを見ればモモンが無双シリーズが如く、バッサバッサと豪快な草刈りをしていた。

 高い物理耐性(笑)、哀れな息子達よ、我等ナザリックの栄光の礎となってくれ……

 次々と伐採されていくイビーを見て、駐車場の草刈りを思い出すタイラントだった。

 

 

 

 狭い森の中でグレートソードを振るモモンと阿吽の呼吸で合わせる様に拳を叩きこみ、投げ飛ばすタイラント。

 

 蝶の様に舞い、蜂の様に刺す

 

 その言葉を体現している激しくも優雅なその様子は、まるでお伽噺に登場する英雄に相違なかった。

 

 

 「……退路を開く、退くぞ」

 

 タイラントは焼夷手榴弾を取り出すとイビーが集中している一角に投げる。

 すると焼夷手榴弾はボンと弾け、あっと言う間に一面にいたイビー達は炎に包まれた。

 燃え盛る大量のイビーにシズとルクルットは有りったけの炸裂矢を一斉に撃ち込み纏めて爆砕、木っ端微塵に吹き飛ばす。

 切り開いた通路を確認すると皆一目散に恐怖の森を後にした。

 




ライトニングしか使えない(設定)ナーベが空気に……
次回に期待したいナーベ。
誤植、誤字、脱字は発見次第直します。
誤字報告をしてくださる方々にこの場を借りてお礼申し上げます。
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