シャルティアが固まっている。
〈
しかも俺と団長の方を見ながらだ。
しかしスカートの膨らみ具合が凄いぞ。
何かが入ってるいのか、まぁ人知の及ぶ所ではないな。
一応、夢が沢山詰まっているんだろう。
しかし、ロリで花魁口調の巨乳とか……
ぺロロも解ってらっしゃるぜ……
ドストライクです!
まさか、この顔でこんなゲスい事考えているなんて……
誰も思うまい。
俺のロジックは完璧さ、バレる訳がない。
よっ!タイラントフェイス!いいぞ!
『タイラントさん。
心の声、漏れてますよ……』
『……嘘だっ!』
団長の一言で頭が冷えたぜ。
もう少しで俺が危ない奴だと思われる所だった。
今度から気を付けねばならん。
俺がトリップしている間にアウラとシャルティアが喧嘩してるぞ。
大変だ!何があったんだ!
此処は年長者らしく仲裁せねば……
俺の毅然とした振舞いを見せてやるぜ。
タイラントは足音と地響きを立てながら歩き出す。
一歩、また一歩と歩く姿は物言わぬ迫力がある。
タイラントが動いた事を気づいておらず、二人はまだ喧嘩を続けていた。
マーレだけは俺が動く様を見て凄く慌てている。
喧嘩を止めようにもマーレではどうにもならないだろう。
だが安心したまえマーレ……
俺は全然、全然怒ってないよ。
悪い子の所には【
別に何かするって訳じゃあないよ。
さぁさぁ、悪い子は……どんどんしまっちゃうおうねぇ。
喧嘩をする二人の前に立ち見下ろす。
タイラントの巨大な影は楽々二人を飲み込んでいる。
この段階で喧嘩をしている当事者は気が付いたのだ。
自分達を見下ろす暴君の姿に。
「ケンカ……スルナ」
【
絶望のオーラと同じような物だが……
何かスキル能力上がってないか?
自分でも解るぞ、これ凄いオーラが出てるぞ。
でも赤黒いオーラってどうなのよ……
「「もうしわけありません!」」
「キヲツケロ」
違う、違うんだ。
もっと優しく、諭すように言いたいんだ!
もうこれパワハラだよ、パワハラ。
言葉少なく背中でかたる大男……
見方によってはカッコイイかもしれん。
「流石ハ御方ノ中デモ最凶ノ呼ビ声高キ御方……」
「コキュートス……」
おぉ、動く冷凍庫と言われたコキュートス。
彼の周りが凍りついているよ。
うん、完全に蟲ですな。
「良く来たな、コキュートス」
「オ呼ビトアラバ即座二、御方」
しかし良く考えてみれば過疎化したユグドラで……
階層守護者ってどうだったのか?
襲撃なんて殆ど無かっただろうに。
凄く暇だったんじゃないかな……
やることが無い仕事ほど退屈な事はない。
俺達の都合で作っておいて……
俺達の都合で用無しになって……
俺達の都合で消される……
全ての物には魂が宿る。
だから物は大切にしなくてはいけない。
俺達は便利な世に胡座をかいていた。
これは俺達人間に対する【神の罰】なのかもしれない。
「これで皆、集まったな」
モモンガの一言で思考の海から引き上げられた。
目の前には各階層守護者が集まっている。
デミウルゴスよ、一体いつ来たんだい。
寧ろ、気が付かなくてごめんよ。
「では皆、至高の御方々に忠誠の義を」
一斉に守護者各員が姿勢を正す。
揃った隊列は儀仗兵の様に美しい。
流石と階層守護者と言うべきだな。
階層守護者が担当階層と名前そして臣下礼をする。
軍で言う所の将軍が来た時にやる挨拶みたいなもんか。
いつの時代もやる事は変わらんのね……
まぁ、いざその当事者になってみて意味が解った気がするな。
まず最初に各指揮官を自分の掌握下に入れる。
あと部下の顔を覚えるのも大切だしな。
「モモンガ様、遅くなり誠に申し訳ありません」
小走りで此方に向かってくるセバスが見える。
団長が何か命令していたのだろうな。
でなければ遅刻なんてするはずがない。
「いや、構わん。
それよりも周囲の状況を報告しろ」
「はっ、周囲一キロは驚くべき事に草原です」
ナザリック地下大墳墓の周囲は確か湿地帯の沼地だったはず。
それが草原になっているとは……
時間転移、空間転移、次元転移?
ただ俺達がゲームの中に入ってしまった訳じゃあないのか。
なんだか、ますます複雑化してきたぞ。
幸いな事に身を守るには十分過ぎる環境だが……
まずは足下を固めないといかんな。
ナザリック地下大墳墓の隠ぺいと防衛。
周囲の状況収集、警戒網の構築……
団長、あんた凄いよ!
良くそこまで適切な指示を出来るな。
並の指揮官よりも全然優秀だよ!
本当にリーマンだったのか疑いたくなるよ……
「最後に各階層守護者に聞きたい事がある。
まずはシャルティア、お前にとって我々はどのような人物だ?」
「美の結晶と美の権化……
この世で一番お美しい方々でありんす……」
俺達を見て美しいって言うのは君だけだと思うよ。
趣味嗜好は人それぞれたけど。
「コキュートス」
「各階層守護者ヨリモ強者デアリ……
比ベル者ナキ最凶ト最強デアラレル御方……
ナザリック地下大墳墓ノ絶対ナル支配者カト」
まぁ見た目だけなら最凶と言っても過言じゃあないね。
団長は魔法職については現状、最強だから間違ってないな。
流石はコキュートスだ、良く分かってる。
「アウラ」
「慈悲深く、深い配慮を持った頼もしい方々です」
慈悲深くて深い配慮の出来る人……
団長、あんたは凄いよ。
ほぼ初対面の人にここまで言わせるなんて。
頼もしい……これは俺の事を言っているのか?
「マーレ」
「す、凄く優しい方々だと思います」
マーレ、君の目は間違ってはいないよ。
君だけはしまっちゃうおじさん来ても絶対守るから。
タイラントとの約束だ!
「デミウルゴス」
「モモンガ様は賢明な判断力と瞬時に実行される行動力も有された方……
まさに端倪すべからざると言う言葉が相応しきお方。
タイラント様は絶対なる力と他を寄せ付けぬ覇者の風格。
不言実行、まさに忠を尽くす事を身を持って示して下さるお方です」
うおぅ……凄い高評価だな。
デミウルゴスは防衛戦ぐらいでしか見たことなかったけど。
しかし、この評価を下げない様にしないと……
「セバス」
「至高の御方々の総括に就任されていた方。
そして至高の御方の盾で在られた方。
何より、最後まで我らを見捨てず残って下さった……
慈悲深き方々かと存じます」
本当に申し訳ない、セバス。
ネット環境に繋がらない所に移動だったの。
ユグドラINしたくても出来なかったのよ……
本当、ごめん。
「最後になったが、アルベド」
「至高の方々の最高責任者と最凶の盾でおられる方……
どちらも私どもの最高の主人であります。
そしてモモンガ様は私の愛しいお方です……」
ごめんなさい団長。
ビッチからモモンガ愛してる設定にしてしまって……
本当に、本当にすまないと思っている。
でも、超絶美女に好きになって貰えるなら……
俺は全然アリだと思うよ。
「なるほど、各員の考えは十分理解した。
今後とも忠義に励め」
「オマエ達ハ、俺ガ、マモル。
オマエ達モ、ナザリック、マモレ」
再び大きく頭を下げた守護者達の元から二人は転移した。
瞬時に視界が変わり、闘技場から移動したのが分かる。
此処はゴーレムが立ち並ぶレメゲトンか……
二人は揃って肩を落とした。
見えない重りがドスドスと床に落ちている気がする。
そしてアンデッド故に呼吸はしていないにもかかわらず……
大きな、それは大きな溜め息をした。
『『アイツら……マジだ』』
『団長、あれは本気ですよ』
『え、なんか評価高過ぎて別人かと思った』
『しかし、これでもう後には引けませんな』
『ですね、もうこれは深刻なバグではありません。
我々は【異世界】に飛ばされたと考えるべきです』
『大昔の映画に【戦国自衛隊】ってのがあったが……
現代の軍隊がタイムトラベルして過去の日本で戦う……
確かそんな内容だったな』
『結局、その軍隊はどうなったんですか?
無事に元の世界に帰れたんですか?』
『いや、燃料と弾が尽きて全滅する。
兵站の重要性を感じさせる意味では良い映画でしたね』
『まずは足下から固めて行きましょう!
慎重すぎる位に情報収集して、それから行動する。
タイラントさん、頼りにしてますよ!』
『現代は情報戦が勝敗を決する。
細かい事は分かりませんが、御供しますぜ大将』
タイラントとモモンガは互いに腕を組んだ。
この異世界で今の所、信用と信頼出来るのは目の前にいる者だけだから。
異形の魔法詠唱者と最凶の暴君。
このナザリック地下大墳墓の統治者と守護神。
二人の新たな戦いと冒険が始まろうとしていた。
次回 カルネ村、タイラント来るってよ!の巻き