「あ、やっときたぁ!」
モノレール前、結がいる。いや、正確にはカイを待っていた。
今日は学園に外出許可をもらい、カイと結のデートである。
そしてモノレール前で待ち合わせをしていたのである。
「じゃあカイ君♪レッツゴー!」
「ちょ、引っ張るな!」
結に手を引っ張られ、カイ慌ててついていく。
「…デートかぁ……」
「お姉ちゃん……」
物陰、そこに楯無と簪がいた。
学園を出て行くカイの姿を見て、2人は追ってきたのである。
「いいなぁ…私も…」
「羨ましいの?」
「!…い、いや」
「あ、行っちゃうよお姉ちゃん」
「!追うわよ簪ちゃん!」
「う、うん……」
テンションが高い姉にたじろぐ簪。
そして2人は手を繋ぎながら、駅前のショッピングモール『レゾナンス』に来ていた。
「で、結はどこか行きたい場所でもあるのか?」
「どこでもいいわよ。カイ君が行きたい場所に合わせるわ」
「そうか?別に合わせなくていいぞ。俺が合わせるから」
「いいわよ。私が合わせるから」
「いや、遠慮するなって」
「いや、カイ君こそ」
「いや俺が…」
「私が…」
デートが始まってすらいない。
そのやり取りを見て「うぜぇ」とか「死ね」とか言って、通り過ぎていく人々もいる。
が、当然甘ったるい空気を出している2人には聞こえていない。
2人は未だに譲り合っているが
「…もう!生徒会長権限よ!カイ君が行きたい場所を言いなさい!!」
「わ、わかった…じゃあ、服屋はどうだ?」
「いいわよ」
結に迫られ、カイが折れた?
「………」
「…お姉ちゃん、帰らない?」
2人の甘ったるい空気に感化され、早くも帰りたく(逃げたく)なってきた簪。
「うーん……」
「あれ、カイ達じゃないか?」
「「!」」
その時、聞き慣れた声が彼女達2人に耳に届いた。
「あら、本当ね」
「うむ」
鈴、ラウラが一夏の発言に同意する。その他に箒、セシリア、シャルロットと6人の面子が揃っていた。
6人が何故いるかは…休日だからである。
最初、一夏と箒の2人でレゾナンスへ出かけていたが、それを知った(どのように知ったかは不明)彼女達4人は箒だけにいい想いをさせまいと、偶然を装って合流。そして現在6人で買い物をしていた。
当然だが箒は機嫌が悪い。
「おーい、カィ……!?」
「「「「「!?」」」」」
「はーい、静かにしててねー」
服屋に入ろうとしているカイ達に遠くから話しかけようとした一夏だったが、急に現れた楯無の手によって口を塞がれ、話せなくなっている。周りの女子も驚いていた。
「ちょ!?た、楯無先輩?」
「皆もちょっと、付いて来てねー」
「え?い、いやあの「い・い・か・ら!」―――は、はい…」
とりあえず女子達も、楯無の剣幕に押され、一夏を抑えながら物陰へ行く楯無に付いて行く5人。
「ぷはぁ!はぁ…はぁ…」
「お姉ちゃん、やりすぎ」
「ご、ごめんなさい」
「…で、楯無先輩。どうしてこんなことを?」
「…カイさんと…結…さんは、デート中なの」
「「「「「!!」」」」」
「なるほど…」
「だから一夏さんを…」
「あの2人邪魔しないためかぁ」
「じゃあ危なかったね」
「うむ、たまには役に立つな」
「たまにはって…傷付くわよラウラちゃん…」
「?何で皆俺を見るんだ?」
簪の説明に納得する5人と、ラウラの言い方に泣き真似をする楯無と、睨んでくることに疑問を持つ一夏。
「って、じゃあ何故、お2人方はそのことを知ってるんですか?」
「えっと…その…」
「…尾行してるの。私は気が進まないんだけど…」
「ちょっ!?簪ちゃん!?」
「「「「「……………」」」」」
「え、えと……」
5人に睨まれ、流石にたじろぐ楯無。
「あっ、服屋からカイ達が出てきた」
『!』
「ね、ねぇ皆?カイ君達を尾行しない?…彼とデートの時、役に立つかもよ?」
「え?」
最後の言葉は一夏に聞こえず、聞きなおす。
「けど、流石に…なぁ皆?」
「賛成だ」
「え?」
「そ、そうですわね」
「そうね。意外な一面見られるかもしれないし…」
「2人の仲も気になるし…」
「そ、そうだな。シャルロットの言う通りだ」
「皆?」
「じゃあ行きましょう皆!」
「ちょっ?俺もですか!?」
「……はぁ」
ため息をつく簪。もう帰りたい、その思いを込めながら、不幸になっていくと、感じ始めていた。
*
「お腹空いたわねー」
「そうだな」
カイと結はあれから色んな店を周り、時間が経って昼頃になっていた。
「そこのベンチに座るか」
「そうね」
そう言って2人は近くにあったベンチに座る。
「はい、今日もお弁当を作って来ました」
そう言って結は重箱を出す。
IS学園に来てからも、結はアカデミアの時と同じく弁当を作っている。カイが昼頃に弁当を食べているのも見た仭が「おー、彼女の愛妻弁当か」とからかわれて?正拳をかましたのはつい数日前。…受け止められたが。
周囲の視線を感じるが無視し、色とりどりの料理を談笑しながら2人は食べている。
…恋人同士のやる「はい、あーん」もやっていて、周囲にブラックコーヒーを買いだす者がいる始末。当然ピンクのオーラ全開の2人にそんなことは関係ない。
「カイ君」
「ん、んむぅ?!」
結に呼ばれ、カイは弁当から結に視線を向けると…キスをした。いや、正確には結にキスをされた。
「むぅ…ん!」
しばしキスの余韻に浸っていると、自分の口の中に料理が、キスを通して入っていくのを感じて、思考を取り戻す。
「…ぷはっ」
「…結」
「えへへっ♪」
頬を赤らめながら、笑顔を見せる結。
その一部始終を見て、顔を赤らめる女性や無言でその場から立ち去る独り身の男性や、「リア充なんかくそくらえだ!!」「ちょっ!?お兄!?」と涙を流しながら走り去っていく男子のことなど、視界や耳に届いてなどいるわけない。
「爆発しろ」
「死ね」
「ちょっ、箒?鈴?」
いきなりの暴言に驚く一夏。周りも見るとイチャイチャしてる所を見せられて半ば心が折れかけてきている。
「あの…もうやめません楯無さん?」
「…いいえ、まだよ!」
しかしまだやめる気がない楯無。他の面子もやめる気はないようである。
「あっ、弁当を食べ終えたわ!」
「どこか行くみたいね…」
「…………」
再び追跡を開始しようとする面子の中で、簪は携帯を手に誰かと電話をしていた。
*
「うわー!ムード出てるねー!」
「そうだな」
現在、カイと結は少し前にオープンした水族館に来ている。昼食が食べ終わってどこに行こうかという話になったとき、結の提案で来た。
そして熱帯魚のコーナーに2人は今いる。
「おぉー。何か、これがいると熱帯魚って感じがするわね」
「ああ」
「………」
すると結はいきなり組んでいたカイの腕をつねった。
「いてててて!?な、何するんだ?」
「だって反応が薄いんだもん」
「わ、悪かった」
本人に悪気はない。
『ただいまより、イルカショーを始めます。ご覧になる方達はお急ぎ下さい』
「おっ、ショーが始まるみたいだな」
「急がなくちゃね」
「…なるほど。わかった」
「お願いね」
イルカショーの会場の入口付近、そこに簪と帽子やサングラスなどをして顔がわからない男が話していた。
「じゃあ、私は戻るから」
「ん…」
そして簪は待たしている楯無達の元へ戻る。少しして男も会場へ入っていった。
*
「……納得いかん」
「アハハハ」
カイはそう呟いていていた。イルカショーで、結はイルカに触ることができたのだが、自分が触ろうとしたら水飛沫をかけられて逃げられたのである。
「ま、まあイルカのショーも面白かったじゃない」
「…そうだな」
結に貸してもらったハンカチで濡れた服を拭きながら背定するカイ。
「じゃあ次のところ行くか」
「次はペンギンとか、アシカが見てみたいわね」
「わかった」
「ふふふ、カイ君の失態シーンが撮れたわー」
「…………」
離れた場所で、追跡メンバーの中で楯無は笑っていた。…手にカメラを持って。
道中カメラを買って、今までのイチャイチャシーンや先程、水飛沫をかけられたところがばっちり撮られている。
さて、カイ君達の後を追いましょう」
「あっ、お姉ちゃん」
「ん?」
「その…カメラ貸してくれない?次、私は撮りたいから」
「おお、簪ちゃんも乗り気ね!いいわよ」
そう言って楯無は簪にカメラを渡す。そしてカイと結を追って歩いていると
「きゃっ!」
「おっと」
最後尾にいた簪が滑って転びそうになり、それを通りすがった男が支えた。
「あっ、す、すいません…」
「いえいえ、怪我はないですか?」
「はい、大丈夫です」
「では…」
そう言って男は帽子をかぶり直して、簪達とは反対方向を歩いて行く。その男はショーが始まる前に簪と話をしていた者であった。
彼は簪が楯無達にあわてて着いて行って、姿が見えなくなったのを確認した後
「…ふう、何とか上手くいったな」
そう言いながら帽子を取った。その顔は黒髪などがしっかりと確認でき、仭の姿であった。
「まったく、いきなり簪に呼び出されたから何だと思ったが…奴らもくだらんことをしてるな。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんとやら……いや、違うか。この場合はデートか?」
そうぶつぶつ呟きながら歩いて行く。
彼は簪に呼び出され、あることをして欲しいと頼まれたのである。それはカメラを持ってる時にわざと転ぶから自分を支えて、その間にカメラのフォルダを渡すからダミーの物を渡して欲しい…つまりすり替えを頼まれたのである。カイ達の写真は仭の手にあった。
「まあ、カメラも音立てて落ちたし、壊れたんだろうな。…依頼は達成したし、帰るか。あの2人のイチャイチャぶり見せられて今すぐ帰りたいと思ってる自分が明らかにいる」
手に持っていたブラックコーヒーを飲む。さしもの仭も2人のイチャイチャぶりにはブラックコーヒーが必須だったようだ。
「…その前に土産でも買って帰るとするか。…何を買うべきだろうか……」
そう悩みながらお土産コーナーへと向かう仭だった。
*
簪のお陰で帰ってきた時に、失態?の写真などを楯無に見せびらかされるのを免れたカイと結は、その後も充実した時間を過ごした。(カメラは簪が落としたときに壊れた)
大型水槽の魚の群れをじっくり見た後、結にデートでそれはどうなのかと言われたが、世話になっている者のためにお土産を購入し、寮の門限も迫ってきてるため、2人は最後に展望台へ向かい、現在そこにいる。
夕焼けでオレンジ色の空の下、2人はそこから見える景色を見ていた。
「綺麗ね…」
「そうだな」
「…ねぇカイ君」
「なんだ?」
「…元の世界が恋しい?」
「…それはどっちの世界だ?アカデミアのある世界か?それとも…」
「2つ目の方。カイ君は自分の意志で私達の世界に来たわけじゃないわ。元の世界にも親しい人がいたんでしょう?」
「…いや、両親や弟が事故で死んでから、俺に親しいって言うほどの奴はいなかった」
「え?」
カイは自分のことを話す。
高校に入学した年に他界してしまい自分だけが残ったこと、しかも両親は駆け落ちしていたようでそれぞれの親元から勘当されていたこと、高校でもそんなに親しい者はいなかったことなどを…。
「…ごめんね」
カイに昔のことを思い出させたことを申し訳なく感じた結は謝罪する。
「別にいい。だから前の世界に戻りたいとも思ってないし、俺は今の世界に満足してる。…いや、この言い方はこっちだと少し変か?」
「アハハ、大丈夫よ。わかってるから」
結は少し可笑しそうに笑う。カイは結の表情が明るくなったのを見て続けた。
「…アカデミアの世界に来て、色んな事件に遭遇したりもしたが、それでも俺は良かったと思う。…お前に会えたしな」
「えっ?」
「――だから結」
「!」
そう言いながらカイは結の肩を掴む。
「…これからも俺を支えて欲しい」
「!……はい、これからも私、更識結はあなたを支えます」
カイはが顔を近づけてくると、結は目を閉じて、彼を受け入れる。
そして――――2人の姿は沈む夕焼けと共に重なった。
一方その日の精霊たち
フェニス&ヒータの場合
「さて、あの2人がデートに行った以上、ついていくなんて自殺行為なのです」
「そうだな」
「というわけで私たちは山に来ました!」
2人がいたのはIS学園近くにある山。ハイキングコースも設けられていて休日にはアウトドアに家族連れが多く訪れるところだ。
「いや、今更なんだけどなんで山?」
「山なら稲荷日ちゃんを呼んで遊んでも見つからないでしょう?」
2人がいるのは人もめったに来ないような山の奥で、ちょっとした広場のようになっている。
そこをヒータにいつもついている稲荷日が元気よく走り回っている。
「まあ、それもそうだな。よし、私たちも遊ぶか」
「そうしましょう!」
2人と1匹は夕暮れまで山を走ったり、森林浴を楽しんだりして過ごしたのだった。
エリア&ルカ&ルイの場合
エリア、ルカ、ルイの3人はIS学園の海の中で水中散歩をしていた。
「いや~。ほんとあの3人は異世界でも平常運転よね~」
「そうですね」
エリアが苦笑交じりにそういうとルカも同じような苦笑を浮かべそう返した。
「私たちは結のところに来て2年くらいだけど、普段の結からはがらりと変わるよね」
「そう?私としては結が昔みたいに戻ったな~っていう感じだけど」
「そうなんですか?」
ルカとルイが結のところに来たのはカイと結が出会った2年ほど前のことだ。
だから、それ以前のことを知るエリアの話に少し興味がある。
「夢中になれることを見つけたらそれだけしか見えなくなるからね。しかも、それでもほかのことを並み以上にこなしちゃうから性質が悪いんだけど」
「そういうところは簪にもあるよね?」
「まあね」
軽い雑談を交わしながら3人は海の中を歩くという一風変わったハイキングを楽しんでいくのだった。
…そして未だにカイ達を追っている暇人達。(一部除く)
「あ、カイ君達出てきたわね」
「…そうですね」
楯無達追跡組は水族館から一足先に出ていた。カイと結の真面目そうな話に、干渉しない方がいいと、追跡提案者の楯無の図らい?である。
「お姉ちゃん、まだ続けるの?」
「う~ん…さすがに時間でもあるし、2人も帰るでしょうね。けど、最後までハプニングは期待するわよ!」
「…はぁ」
というわけでカイ達に追跡しながら帰ることになってしまった。
そしてしばらく歩いていると2人は路地裏へと入っていった。
「?どうしたのかしら…近道?」
疑問を浮かべながらもメンバーは小走りで2人の後を追う。
「ほら、急いで皆!カイ君達が――」
「…俺達が何だって?」
「そりゃ……え?」
楯無は路地裏の方を覗きこむと…カイと結がいた。
「ア、アハハ、ご、御機嫌よう」
「ああ」
「……い、いつから尾行に気付いてたの?」
「お前が簪と一緒に俺を付けてた時から」
「…え?」
「ええ!?」
楯無、結の順である。
つまり最初から尾行に気付いていたということである。ちなみに結は浮かれていて気が付かなかった。
「と、ということは…わ、私とカイ君のことずっと見てたの!?」
「ちょ、ま、待って!と、取引しましょ」
暴れそうになった結を咎めながら、楯無はフォルダを取り出す。
「こ、この中にカイ君達を撮ったのが入ってるわ。これ渡す代わりに…見逃して?」
「ああ、それ偽物」
「…へ?」
「仭から追跡してる奴らがいて、簪と一緒に楯無の思惑台無しにしたから…ってメール来た」
「そ、そんなは……あの時!ちょ!簪ちゃん!?」
楯無は路地裏から出て、簪を探そうとするも、誰もいない。
「いない!?」
「……どうやら置いてかれたみたいだな」
「ひどい!ってま、待って結ちゃん!わ、私なんだから話せば――――」
その後のことは想像にお任せします。(笑)
ただ、楯無が土下座して「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」と、落ち着きを取り戻した結にもういいと言われるまで連呼していて、3人は学園の寮の門限には間に合ったことを追記しておく。
…どうだったでしょう。自分はイチャイチャ系を書いたことがなく、飛ばされたところが多かったような気がしますが…。
はぁ、文才のなさにため息つきたくなります。